【インタビュー】-真天地開闢集団-ジグザグ、音源集と映像集に謎を解く鍵「きっとそれがヴィジュアル系の新しいスタイル」
-真天地開闢集団-ジグザグが11月25日、音源集『ハキュナマタタ』と映像集『慈愚挫愚 MV集 壱』を2作同時リリースする。2016年1月の本格始動以来、関西を中心に禊(ライブ)を展開してきた彼らは、そのミステリアスにしてコンセプチュアルな世界観で参拝者(観客)から崇められる一方、サービス精神旺盛でアイディア豊富なスタイルが一般層にまで広がり話題性を高めるなど、今注目のヴィジュアル系バンドだ。先ごろ出演したテレビ番組『有吉反省会』では、3人の親しみやすいキャラクターが浮き彫りにされたばかり。しかし着目すべきは彼らの音楽性にある、という意味では“今注目の”といった時期的なものではないポテンシャルを秘めたバンドだ。
◆-真天地開闢集団-ジグザグ 画像 / 動画
“愚かな者に救いの手を──”というコンセプトに基づいて、手を差し伸べるべく日々活動する“破壊の祈祷師 命-mikoto-”、“鳴弦の陰陽師 龍矢-ryuya-”、“禁忌の大忍 影丸-kagemaru-”から成る3人のサウンドは多面的だ。ラウドからポップまで変幻自在な楽曲の作詞作曲編曲をはじめ、ジャケットデザインやミュージックビデオなどのクリエイティヴを手掛ける命を核として、龍矢と影丸によるリズム隊は個々の技量の高さで強靱にして縦横無尽なグルーヴを築き上げる。そしてリリースされる5曲入り音源集『ハキュナマタタ』と8曲入り映像集『慈愚挫愚 MV集 壱』は、彼らのサウンド的な広がりも原点も十二分に堪能できる仕上がりだ。BARKS初登場インタビューでは、結成の経緯やメンバーの音楽観、そして音源集と映像集の制作秘話に至るまで、-真天地開闢集団-ジグザグの謎を解き明かすべく、音楽的側面を中心にじっくりと話を訊いた。
◆ ◆ ◆
■ヴィジュアル系らしさに捕らわれたくない
■という気持ちが僕の中にはあるんです
──BARKS初登場インタビューですので、まずは-真天地開闢集団-ジグザグの結成の経緯からうかがいたいと思います。
命:ジグザグ結成時点で生まれ変わっている(※命は年齢0歳)ので、前世の記憶になりますけど。前世ではヴィジュアルシーンの中でもいわゆるキラキラ系バンドを同じメンバーでやっていたんです。ところがキラキラ系という方向性に違和感を感じて、180度違うバンドをやるために生まれ変わって結成したのがジグザグなんですよ。そういうスタートだったので、当初はキラキラ系っぽい要素とかは徹底的に排除しました。
──現在ほど音楽性もバラエティに富んだものではなかった?
命:音楽性は後々広げていこうとは最初から考えていたんです。だけど、名前が浸透する前にいろいろな方向性を示してしまうと、なにがやりたいのか理解されなくて、受け入れづらいものになってしまうじゃないですか。まずは、自分達ならではの芯になるものが必要だと思っていたので、当初はコアに絞っていました。徐々にキャッチーな要素を出すようになって音楽性が広がり、今に至ります。
▲命-mikoto- (Vo, G) |
命:子供の頃からずっと邦楽洋楽問わず、ロックやポップス、EDM、ラップ、昭和歌謡曲など、年代もバラバラで結構幅広く聴いてきましたね。最近だと高校生の時にハマっていたメタルが再燃中で、チルドレン・オブ・ボドムとか懐かしいなって聴いてたり、サブスクでメタルとかラウドといったカテゴリーを選んでラフに聴いている感じ。
龍矢:僕が音楽を始めたのは、BUMP OF CHICKENとRADWIMPSがすごく好きだったからで。中学生のときに凛として時雨からも衝撃を受けました。最近はCö shu Nieとかそこに鳴るをよく聴いています。もちろん他にも好きなアーティストがいっぱいいますけど、エモくて、メロディーを大事にしていて、カッコいいバンドに惹かれますね。
影丸:僕がドラムを始めたきっかけがKISSなんです。KISSの8ビートを叩いてみたらすぐに出来て、自分は“天才だ”と思いましたよ(笑)。ほかのハードロックや8ビートの曲もすぐに叩けたので、“これならば簡単にプロになれるんちゃうん?”と思ったくらい。でも、ドラムを始めて1年後にフュージョンのドラムソロを初めて聴いて、“これはアカン”と。そこからテクニカルなドラムに惹かれるようになったんです。周りには“テクニカルなドラマーがいる”という噂が広まって、デスメタルバンドに誘われて加入するんですけど、僕自身はフュージョン系だったので“テクニカル違いなんやけどな…”と思いつつ(笑)。でも、デスメタルはやり甲斐がありましたね。ジグザグはテクニカルな面も活かせるので、フュージョンもデスメタルも通ってきてよかったなと。
──-真天地開闢集団-ジグザグの楽曲を聴くと、3人それぞれの指向性が活かされていることがわかります。
龍矢:命さんが全曲の作詞作曲を担当しているんですけど、僕や影丸さんが影響を受けてきた音楽って命さん自身も好きだから、個性として尊重してくれているんですよ。
影丸:命さんは僕らが好きなものを理解した上で、僕らのプレイスタイルを考えて曲を作ってくれる。だから、僕自身は曲作りに関わっていないけど、命さんの音楽観に縛られるような窮屈さは全くないんです。
──理想的な曲の作り方といえますね。ここまでの話を踏まえて、最新音源集『ハキュナマタタ』についてうかがいます。制作にあたってテーマやコンセプトなどはありましたか?
命:今回は特になかったです。第二完全音源集(2ndアルバム)『慈愚挫愚 弐 ~真天地~』を2020年3月にリリースした後、8月に配信リリースした「Requiem」は、僕たちの次の動きを示す楽曲だったんですね。であれば、今回はアルバムだなということで、普段からじわじわ作っていた楽曲から今の自分たちが提示したいものをセレクトしてまとめたのが、音源集『ハキュナマタタ』。多面性を見せたかったので、全くカラーの違う5曲を収録しました。
龍矢:そういう意味では、すごく自分たちらしい作品だなと思います。
──最初に語っていただいた「音楽性の広がり」がわかりやすい音源集ですよね。タイプの異なる5曲から、それぞれのお気に入りナンバーを挙げるとすると?
龍矢:もちろん全曲気に入っていますけど、特に印象が強いのは2曲目の「コノハ」です。最初に聴いたときからめちゃくちゃいい曲だなと思っていたし、世界観がきれい。それにジグザグ史上一番と言っていいくらいベースが難しくて(笑)。これまで命さんが作ってきた曲って、サビはルート弾きを基本にスケール内で少し動くフレーズが定番だったんですけど、「コノハ」はサビの間中、ずっと動いているんです。なので、レコーディングがすごく大変だったことも含めて印象深いです。
命:強いて1曲挙げるとしたら、僕も「コノハ」かな。もともとは10年くらい前に作った曲なんですけど、メロディーやコードの感じが気に入っていて、これまでいろんなバージョンを作ってきたんです。前のバンドでも一度リリースしていて。当時はキラキラ系バンドだったので、アレンジもやたらキラキラさせたんですけど、それがもったいなかったというか。今は、あの頃よりも自分の実力も上がっているので、現在の自分たちが「コノハ」をやったらどうなるのかな?というのもあって、今回改めてリアレンジしました。
──“コノハのように風に吹かれ 辿り着いたんだ あの日 君が憧れた未来”と歌っていますが、歌詞も10年前のままでしょうか?
命:半分くらい書き換えましたね。自分たちの現状だったり、その中で感じることを歌いたかったので。テーマ自体は普遍性があるものだから、そこは残しつつ、今の気持ちに寄り添わせる言葉を選んで。そういうことも「コノハ」に対する思い入れにつながっていますね。
──特にサビがそうですが、ヴィジュアル系らしからぬテイストが-真天地開闢集団-ジグザグならではの魅力として味わえます。
命:そう感じてもらえたなら良かったです。僕の中には“ヴィジュアル系らしさに捕らわれたくない”という気持ちがあるんです。楽曲も歌もそう。だから、ヴィジュアル系っぽくない歌い方をしている曲が多いんですね。そもそもヴィジュアル系っぽい歌というのは、世代で違ったりするし、きっと誰かが新しく生み出した歌い方で。それが流行って、みんながマネすることで定着したんだと思うんです。それはヴィジュアル系に限らず、カリスマをフォローする人がたくさん出てきて、ひとつのジャンルが確立されるわけじゃないですか。つまり、僕が僕らしい歌い方をして、それが流行れば、きっとそれが新しいスタイルのヴィジュアル系の歌い方になるのかなとも思いますね。
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