【インタビュー】海蔵亮太、大竹しのぶとのコラボ曲で得た「感じたことのない価値観」

■焦らずじっくり、一歩ずつ

──カップリングには海蔵さんのソロ曲を2曲収録。「Everyday Heroes」は介護・医療従事者の方々にエールを送ることをテーマにした、華やかなシンセが印象的なダンスポップナンバーです。

海蔵：デビュー曲の「愛のカタチ」が認知症をテーマにした楽曲で、実際に僕の祖父も認知症になって。介護・医療従事者の方々が患者さんに尽くす姿を間近で見て感銘を受けて、音楽で恩返しをしたくて病院や介護施設でライブをするようになったんです。コロナ禍になってより強く“僕にできることはないかな？”と考えた結果、ライブに行けないかわりに感謝の気持ちを込めて「Everyday Heroes」──みんながいつも主役でヒーローなんだ、という曲を歌わせていただくことになりました。森浩美先生のおかげで、世界観も伝わって、日本語をしっかり届けられる歌詞になっています。僕も歌っていて気持ちいいですね。



──海蔵さんはコロナ禍ではリモートで慰問ライブをなさっていて、「Everyday Heroes」のMVではその映像も使用されています。でも介護・医療従事者の方々だけではなく、今の時代を生きる人々すべてにエールを送る曲になっている印象がありました。

海蔵：日本語の妙ですよね。“みんながヒーローなんだよ”からさらに、“みんな生まれた瞬間からいつもヒーローなんだよ”という意味が込められている気がしました。こういう状況で心を支えてくれるのは、やっぱり音楽なんじゃないかなと思っていて。僕自身もオンラインライブをすることで、聴いてくださる方々からメッセージを頂いたり、歌を通して心が救われてるなと感じたりするんです。「Everyday Heroes」がみなさんにとってそういう曲になってくれたらうれしいですね。


──「素敵な人よ –chingu version-」は、作曲者のSIWOOさんをフィーチャリングアーティストとして招いたデュエットバージョン。SIWOOさんとは8月に生配信もなさっていましたよね。

海蔵：SIWOOさんとはデビュー直後に紹介してもらって知り合ったんですけど、意気投合した結果、生配信は井戸端会議みたいな内容になっちゃいました（笑）。「素敵な人よ -chingu version-」は、僕ひとりで歌うのとはまたまったく違う曲になったなと思いますね。

──そうですね。SIWOOさんによるハングルの歌が入ることで、また全然違うドラマが立ち上がってきて。

海蔵：相手が歌っているのを聴くだけで、“この曲はこういう見え方もするんだ、こういう聴こえ方にもなるんだ”という発見がありました。後半のハモりとか、お互いの言語でコーラスをしたりとか、ふたりで歌うことの良さが出せただけでなく、この曲の良さもより出たんじゃないかなと思ってます。でも僕、ハングル喋れないのでコーラス大変でした（笑）。何回歌っても“ちょっと違います”って言われちゃって……やっぱりハングルは難しいんだなと痛感しました。ハングルには日本語にはない音の響きがあって、その言葉で歌うとまた違う曲になるんだな、という発見がありましたね。

──“chingu”は韓国語で“友達”という意味らしいですね。

海蔵：SIWOOさんいわく“めっちゃなかよし”って意味らしいです（笑）。最初は“日韓version”とかだったんですけど、なんかワールドカップみたいだし（笑）、ハングルバージョンというわけでもないし……と悩んでSIWOOさんに相談してみたら“chingu”という言葉を提案してくださって、即決でした。“めっちゃなかよしバージョン”です（笑）。

──今回の3曲は、歌手・海蔵亮太の人とのつながりを感じられる曲が揃いましたね。

海蔵：たしかに、言われてみるとそうですね。出演者が多い。

──それぞれの楽曲で、その人と一緒でなければ出てこない海蔵さんの表情を見ることができるシングルでした。人とのつながりは、今年のテーマでもある気がします。

海蔵：なかなか会いに行けない状況ですけど、この期間は絶対無駄じゃないと思っていて。またみなさんと会える世の中になったときに、僕もよりみなさんを楽しませられるんじゃないかと思いますし、僕自身もさらにみなさんと一緒に楽しめるんじゃないかと思っています。そのための大事な助走期間だと感じていますね。これからも「ありがとうって気づいていてね」のふたりのように、焦らずじっくり、一歩ずつ進んでいきたいです。

取材・文◎沖さやこ