【インタビュー】矢井田瞳の最高傑作『Sharing』「みんなの生活に寄り添えたらいいな」
矢井田瞳のニューアルバム『Sharing』がいよいよ発表となった。フルアルバムとして実に4年振りとなる本作は、今年デビュー20周年を迎えた彼女の確かなキャリアが結実した、矢井田瞳史上、最高傑作と言って間違いないだろう。
タイトルの“Sharing”は共有や分担、分配という意味。それは即ち今の時勢・この状況下だからこそ、我々が決して失ってはいけないものを象徴しているわけだが、本作ではそれをメロディ・歌詞・サウンド…そのすべてにおいて表現していることが何よりも素晴らしい。優れた音楽が時代を映す鏡となり、未来を予見する羅針盤と成り得ることをも体現しているのである。それでいて、その聴き応えにはまったく押しつけがましさはなく、老若男女問わず誰も気軽に聴け、気軽に口ずさめる親しみやすさもある。『Sharing』はポップミュージックのひとつの理想形と言って差し支えなかろう。
──ニューアルバム『Sharing』が完成しました。まずヤイコさんご自身、この新作をどんな風に受け止めているのか訊かせてください。
矢井田瞳:今はCDをリリースできるのが当たり前じゃない時代なので、デビュー20周年という大事な年にすごく納得のいく作品がリリースできたことをとってもうれしく思っています。『Beginning』(2019年8月)と『Keep Going』(2020年2月)では、セルフカバーを多めに収録してアコースティックギターサウンドを追求するというテーマがあったんですけど、オリジナルをたっぷり収録するという感じではなかったので、今回ようやくオリジナル中心でリリースできたということで、とっても喜びが大きいですね。
──フルアルバムとしては4年振りの新作ですが、このインターバルはどんな風に捉えたらいいでしょうか?
矢井田瞳:自然な期間というか、ものすごく空いちゃったなという感じもないし、それこそ『Beginning』『Keep Going』と、去年の春からずっと動いていたので特に違和感はないですね。焦った感じもなかったですし。
──9th『panodrama』(2012年)から10th『TIME CLIP』(2016年)までも3年半くらい空いてますので、ヤイコさんの体内時計的にはこのくらいのインターバルがいい感じなんでしょうか。
矢井田瞳:そうなんですよ。デビュー当時は1年に1枚みたいなペースで出させてもらっていて、それだけ忙しくないと生まれなかった曲もあるんで、それはそれでよかったとは思うんですけど、そのペースで続けているとカスカスになって、きっとポキッと折れちゃう気もしていたので、今このペースでリリースできているというのはありがたいですね。
──決して急き立てられていたわけではないでしょうが、デビューからしばらくの間はかなりバタバタする中でのアルバム制作でしたか?
矢井田瞳:デビューから5年目くらいまでは急き立てられてました。でも、自分もそれに必死に応えたかったし、応えることが楽しかったし、今の自分にはできないくらいのペースで動いてましたね。
──今作と過去10作品と、違いがあるとすればそれはどんなところだと考えますか?
矢井田瞳:内に向かうというよりも、すごく外に向いたアルバムだと思います。それは年齢なものもあるのかもしれないですけど、『Sharing』というタイトルにも表れている通り、想いを共有するというか、見てくれたり聴いてくれたりした方の生活に寄り添えたらいいなという願いが常にありつつ曲作りをスタートした曲ばかり入っています。
──想いを共有できるような曲を作りたいというところから始まったんですか?
矢井田瞳:そこから始まったという感じでもないですけど、去年の春頃から自分の気持ちがそういう感じだったんですね。今回のアルバム制作は<Live Tour『Keep Going』>(2020年2~3月)を終わってすぐ始めていたし、ツアーと並行してやっていたりしていた部分もあるので、「さぁ、今からアルバムを作るぞ」という感じではなく、去年の春から続いている流れの中でアルバムの曲がたまっていったという感じに近いです。
──急き立てられていたというデビュー当初とは、真逆のスタンスですね。
矢井田瞳:ただ、何となくでも「この時期までに…」と決めておかないと人間って怠けちゃうので、チーム間で日程を共有しつつですけど、曲作りで無茶した感じもないし、今回はボロボロになった感じもないですね(笑)。
──近作に『Beginning』と『Keep Going』というセルフカバー作品がありますが、この2作が『Sharing』に与えた影響はありますか?
矢井田瞳:それはすごくたくさんあります。例えば「Gradation」という曲は、ここ1年間、高高-takataka-と私のアコギ3本でレコーディングとライブをしてきたからこそ挑戦できた曲だったし、自分の曲をまた違う角度から光を当てると違う風に輝くんだという学びが『Beginning』と『Keep Going』にあったので、今回「いつまでも続くブルー」や「あなたのSTORY」をYaiko Band ver.にすることができたし、音楽をもっと広い意味で楽しめるようになったかなと思います。
──むしろアレンジを変えることでメロディの良さが際立ち、耳馴染みもとてもよくて、バカみたいな言い方ですけど「いい曲だなぁ」って思いました(笑)。
矢井田瞳:わぁ、うれしいです。ありがとうございます(笑)。
──バンドサウンドが前面に出ていますけど、いい意味で聴き応えが変わらない印象なんです。
矢井田瞳:よく分かります。「いつまでも続くブルー」や「あなたのSTORY」が持っている曲のポテンシャル/核みたいなものは変えずに、違う角度に輝きを増すようにというスタンスでやったので、その感想はすごくうれしいです。「美メロ」っていうんですか?美しいメロディを書きたいというのはどの曲を書く時も念頭に置いてやっているんですけど、例えば、次のメロディが全部浮かぶような曲だとおもしろくないなという思いもあって、「裏切られた」という感じとか「安心する」という感じとか、聴いてくれる人とのちょっとずつの積み重ねで、自分にとっての「美メロ」…「ああ、綺麗だなぁ」って思うメロディを常に探すようにしているんです。それと歌詞との兼ね合いですね。
──今作に至るまで、メロディへの意識が変化したようなところはあったんでしょうか?
矢井田瞳:私は元々メロディを書く方が好きなので、それが強くなっていると感じてもらっているとするなら、メロディだけで先行せずに、ちゃんとそこに歌詞を引き連れて、全体となって伝わるように…と最近は気を付けているので、そこかもしれないですね。デビュー当時はメロディだけ先に作っちゃって、あとから歌詞をはめていたので、歌詞を書くのがすごく苦痛だったりしたんですけど(苦笑)、最近はメロディだけが突っ走らないように、ホント絵を描くように、「メロディと言葉でどんなことを伝えたいかな?」と同時進行で作るようになってきているので、そういうところかもしれない。
──耳馴染みの良さは、メロディと歌詞とのはまりの良さに関係しているのかもしれませんね。『Sharing』は「いつまでも続くブルー(Yaiko Band ver.)」と「あなたのSTORY」で始まるので、メロディのよさを強く押し出している印象があって、ここだけでこのアルバムは勝ったと言っていいんじゃないんですかね?
矢井田瞳:うわぁ、ホントに(笑)?でも未だにリリースするまではドキドキですよ。もちろん自分の中では満足のいく作品に仕上げましたけど「どう届いてくれるのかなぁ?」とか、自分がいいと思ったものと周りが思うものって一致するのが難しかったりして、だから今回もドキドキしてます。
──既発曲が連続するというところ、アルバムの間口としては親しみやすいしバッチリだと思いますよ。
矢井田瞳:良かった。じゃあ、曲順は合ってたんだ(笑)。
──今回の曲順はパーフェクトだと思います。3曲目「It's too late?」は高高-takataka-楽曲のカバーですが、これを選曲したところに、彼らの存在を改めてリスナーと共有したいという意志が感じられ、アルバムタイトル『Sharing』に繋がっている印象がありますね。
矢井田瞳:まさにそうです。「It's too late?」がとっても好きで、ライブ会場だけでなく気持ちを持って帰れる曲…家に帰ってからも曲を思い出すような、人の心を動かすものを持っている曲だなって思っているんです。ここ1年間は私の曲に高高-takataka-がギターやコーラスで参加してくれていたので、今回アルバムを作れることになった時に、その逆をするというのも物語として美しいなと思ったし、カバーができるなら私が一番好きな「It's too late?」がいいなって思ったんですよね。
──続く4曲目「Gradation」でギターを弾いているのも高高-takataka-の2人ですよね?
矢井田瞳:そうです。高高-takataka-の2人に「アコギでロックする」というテーマでレコーディングに参加してもらって。
──見事な繋ぎだと思います。高高-takataka-の楽曲「It's too late?」から、イントロから印象的な高高-takataka-のギターアンサンブルが聴こえてくる。
矢井田瞳:おお…やっぱり曲順はこれで合ってるかもしれない(笑)。
──この1年間で高高-takataka-のギターにも大分、馴染みが出てきましたね。
矢井田瞳:2人はいつもすごいことをやってるんですよ。大変なことをあっさりやっちゃうから、なかなか伝わりづらいんですけど、例えば1小節の中で2拍ずつ2人で担当を分けて細かく構築していって、アコギ2本が1本のように聴こえるようにしていたり。そういうおもしろさを「Gradation」でギュッと凝縮させることができたらなというのはありました。ループマシーンも使わないですし、全部人力で毎回やっているんで、そういう凄さが伝わりやすいアレンジになっているとも思います。
──この「Gradation」からアルバムのテーマがさらに深まっていく印象があります。サビメロこそ爽やかですけど、歌詞をみると言葉の端々に不穏な感じがあって、それに呼応するかのようにサウンドにもどこか不穏な雰囲気もある。『Sharing』という作品の物語性がどんどん露わになっていくようです。
矢井田瞳:これは私の性格的なものかもしれないですけど、100%ハッピーになったことがなくて、例えば周りから見たら「とても幸せでしょう?」と思われるような場面でも、「いや、こんな幸せなことはないから、たぶん次に何かが起こる…不安だな」って自分で不安要素を持ってきちゃうみたいなところがあるんです(笑)。今は空は晴れているけど、不穏な黒い雲が向こうから流れて来ている、みたいな光景も嫌いじゃないんですよね。不安要素を感じつつ幸せを感じるほうが私にとっては安心できたりする…そういう感情が昔からあって、それも曲にしてしまえば美しいというか。
──不安から安心というグラデーションもあるでしょうし。
矢井田瞳:そうです。そういう瞬間を曲に切り取ってもおもしろいのかなと。もちろん夢に向かって走ってるんですけど、「ゆっくりと何かは変わっているよ」というのをこの「Gradation」で表現できたらと思って。ドラマや映画で主人公がすごくハッピーで笑顔になっているシーンで、ナレーションが「このあとに起こることを彼はまだ知らない」みたいなの、結構好きなんです(笑)。
──物事は決して一面だけではないことが、歌詞・メロディ・サウンドで総合的に表現されている感じですね。そして5曲目「かまってちゃん」もなかなか強烈な歌詞で。
矢井田瞳:タイトルも強いし、すごく個人的な感じになっちゃってるかなって心配していたんですけど、そうやって「かまってちゃん」を気にしてくださる人は多いみたい。
──SNSの問題であったり、コロナ禍での勝手な振る舞いや同調圧力であったり、いろいろと感じるところがありますよ。
矢井田瞳:うれしいです。ありがとうございます。ここ2~3年、かまってちゃん問題が多いと思ってて、それこそSNSとかテレビのニュースでもそう思います。私も実際いろんなかまってちゃんにちょっとずつ触れ合うたびに、心に塵みたいなものが積もっていって、それが1曲分溜まったのでこうして出ました…みたいな感じですね(笑)。
──「かまってちゃん」で歌われているような人たちが増えていると感じますか?
矢井田瞳:感じますし、もしかしたら私が引き寄せているのかもしれない(苦笑)。「この人間関係、困ったな」という時に思う感情を書き溜めておいたものが溜まった感じですかね。この曲の気持ちいいところは、最後はすっぱり「サヨナラ」ってするところ(笑)。その冷たさとサウンドの可愛らしさとがバランスを取れていたらおもしろいかなって思いました。
──「♪名残惜しいけど私はサヨナラ/ほんとの笑顔 見つけ出してね thank you」ですからね。ウクレレのポップで可愛らしいサウンドながら、歌詞で突き付けている内容はとても残酷で。
矢井田瞳:ははは(笑)。最後は「もう無理」という(笑)。
──「こんな感じで言えば分かる?」と言っているようで、ロックな姿勢を感じますよ。
矢井田瞳:ホントですか(笑)?あんまり説明はしたくなくて「分かる人が分かってくれたらいいな」くらいに割り切って書いた曲なので、経験者なら深く共感していただける曲だと思うし、かまってちゃんに会ったことがない人だと全然意味が分からない曲かもしれないです(笑)。でも、そのくらいでいいかなって思っていて、狭く深く掘り下げた曲もアルバムでいいフックになるかなと。
──次の「ネオンの朝」では関西弁がいいですね。
矢井田瞳:関西弁を曲に入れるのってとても勇気が必要で、何かと似た曲になっても嫌だし、メロディとサウンドとしっかり合って関西以外の人もサラッと聴ける関西弁を入れられたらなと思っていました。「あほ」という言葉は必ず入れたくて、「あほ」は関西人にとって時に褒め言葉だったり「あほほどおもろい」って言えば「めっちゃ」「very」になったり、関西特有の何でも使える愛されている言葉なので、「あほなこと言うて あほやなぁ」って「あほ」始まりにしました。
──喜怒哀楽のどれでもないというか喜怒哀楽のどれでもあるというか、独特なニュアンスがありますね。
矢井田瞳:そうですね。「馬鹿」と「あほ」は一緒だと思うんですけど、東京に出て来始めた頃、江戸の人が使う「馬鹿じゃないの?」に傷ついたりして「あ、私、馬鹿なんだ」と思ったりして(笑)。今から思えば「あほ」と同じなんですけどね。
──ここまで関西弁を取り入れた楽曲は過去にありましたか?
矢井田瞳:ないです。自分で関西弁の曲を書こうと思って書いたのはこれが初めてですね。「一人ジェンガ」の歌詞で「足らん心のパズルで」という「足らん」が関西弁だと気付かずに歌入れの日にディレクターさんに「ここの関西弁、いいね」って言われて初めて気付いたということはありますけど(笑)。
──元々「いつか関西弁を使った楽曲を作りたい」という想いはあったんですか?
矢井田瞳:ありました。今回はロックサウンドで関西弁なんですけど、憂歌団の方たちのようなブルースで関西弁ってやっぱりカッコいいなと思う。私はまだあそこの域には達してないし、それはやれないなとは思うんですけど、人生がにじみ出る関西弁とサウンドみたいなものはそれができる年齢になったらできるのかなって思ってます。
──「ネオンの朝」はその第一歩ですかね。
矢井田瞳:そうかもしれないですね(笑)。
──柔らかで伸びやかなサビメロに関西弁が乗っているのがとてもいいですね。「行けたら行くわ」というのもいいです。
矢井田瞳:ははは(笑)。そこのニュアンスは、関西人の「行けたら行くわ」=「行かない」なんですけどね(笑)。関西弁が苦手な人でも「ネオンの朝」だったら鼻歌で歌えると思うので、是非歌ってみてほしいです。
──親しみやすいメロディの「ネオンの朝」が終わるとアルバムも終盤で、「はだしのダイアリー」「きっとJust fine」ではリスナーに向けて投げかけがなされているような印象を受けました。
矢井田瞳:確かにそうですね。この2曲は…そうだと思います。
──「はだしのダイアリー」は素晴らしいサビメロで、古今東西、名曲と言われるタイプの作品ですね。
矢井田瞳:うれしい。この曲はNHK『みんなの歌』で「はだし」をテーマに書いた曲なんです。『みんなの歌』って、生活の中でフッと鼻歌で出てくる曲というイメージがあるので、散歩中でも入浴中でも仕事中でも誰かの生活の中で出てくるような曲を発明したいなと思ったんです。だから、この曲を書いている時は1日10キロ歩いたり、ひたすらバスに乗ったり、電車に乗って気付いたら片瀬江ノ島に着いていたり(笑)、とにかく自分の中から歌詞とメロディが同時に生まれて来るのを待って作った曲なんです。サビのメロディはバスの中で急に降りて来たんで、バスの後部座席でボイスメモに入れて作りました(笑)。
──日常生活から自然と出てきたメロディを形にしていったんですね。
矢井田瞳:机の上ではできない気がしたんです。とにかく歩きまくって身体の中から湧き出てくるまで待った感じ。アンテナを立てつつ生まれてくるまでひたすら余計な感情は入れずに。
──一方でサウンドはゴージャスで、豊富に音を使っていますよね。
矢井田瞳:高高-takataka-のギターサウンドでGAKUさんの打ち込みが小気味良く映えている楽曲だと思うんですけど、間奏の部分とかは大分カオスになっています。1番と2番は優等生というか綺麗な感じなんだけど、間奏ではびっくりしてもらいたいなというのがあって、拍子が変わってもいいし、テンポが変わってもいいし。地球儀の上を小さい人間が散歩しているみたいな、そんなイメージの間奏になるといいなってGAKUさんに伝えましたね。
──多国籍というか無国籍というか、ケルトっぽくもあるんですけどアフリカンな感じもあって。
矢井田瞳:それはうれしい。アフリカの土着っぽい感じ…壺や革の鳴っている音だったり、私の好きなケルトな感じとか、いろんな多国籍な感じを出したくて。ティンホイッスルは自分で吹いたんです。
──多国籍なサウンドと「あまりにも広い世界」という歌詞から、「もっと広い視野を…」というニュアンスも感じる楽曲ではないかと思います。
矢井田瞳:この曲は聴いた人それぞれに聴いてくれた人の数だけ、この曲の正解がある気がします。自分の原点を思い出してもらうようなことがあってもいいし、まだまだ世界は広いんだからどんどん挑戦していこうと思ってもらってもいいし、いろんな捉え方をしてもらっていいと思います。
──続く「きっとJust fine」はGAKUさんの作曲ですね。人の曲をアルバムに収録するのは初めてですよね?
矢井田瞳:提供曲をオリジナルアルバムで歌うのは初めてです。これもタイトルの『Sharing』に通じるんですけど、音楽を広い意味で分け合うというような意味も込めて。かと言って、知らない人の曲は歌えないというよりも私が覚えられない(笑)。GAKUさんとはここ1年間濃厚な音楽の時間を過ごさせてもらって、GAKUさんに私の歌をたくさん録ってもらっているので、GAKUさん自身、私のことも分かってくれているし、「ヤイコだったらこういう風に歌ってくれそう」とか「こういうメロディが合いそう」というところで作ってくれたことがすごく伝わったので、私も自然に歌詞が書けたし自然に歌えたんです。
──サビなどは、まさにヤイコですし。
矢井田瞳:それはGAKUさんがプロデューサー目線で「ヤイコの声はたぶんこの辺が一番いいな」ってところを当ててくれたんだと思います。歌詞も「世の中がこういう情勢だし、とびきり前向きで明るいところだけを切り取った歌詞がいいと思います」とGAKUさんがリクエストしてくださって、外のキラキラとした世界を切り取って表現できたらいいと思いました。
──実際「ベランダで揺れてる 洗濯物」「新しい公園」「おろしたてのスニーカー」といった清潔感のあるワードが並んでいますね。最後に「あなたのSTORY」のYaiko Band ver.がボーナストラックとしてアンコール的に収められていますが、元々アコースティック寄りだったものをバンドサウンドで演奏されることで、『Sharing』=“共有”というアルバムにテーマを改めて体現しているかのようでした。
矢井田瞳:ありがとうございます。曲順は正解ですね(笑)。「あなたのSTORY」は自粛期間中にGAKUさんとほぼリモートで仕上げた曲だったので、また違う角度から光を当てようと、バンドメンバーと久しぶりに顔を合わせてスタジオでワイワイとレコーディングしたナンバーなんですね。
──2020年8月15日に生配信ライブ『矢井田瞳 20th Anniversary『ヤイコの日』』のときのメンバーですか?
矢井田瞳:まさにそうです。
──あのライブは素晴らしかった。プロフェッショナルのすごさを見せつけられましたよ。
矢井田瞳:無観客ということで臨場感をどう伝えられるかなって、始まる直前までドキドキでしたけどね(笑)。でもめちゃくちゃ本番感があったというか、画面を通して見てくれている人の想い・魂みたいなものが無観客でも見えたというか、すごく不思議な感覚でした。だからこそ、いつもライブのように最後まで出し切ることができたのかな。
──緊張感のあるアンサンブルとグルーブがモニター越しにも伝わってきていました。すごかった。
矢井田瞳:皆さん、敏腕ですからね。ずっとやってきたからこそ生まれるグルーブもたくさん詰まっていたと思うし、それがバンドの楽しいところですよね。ギター選手権1位、ベース選手権1位、ドラム選手権1位、キーボード選手権1位の人たちとやってもあのようにはならなかったと思うし、バンドって人間が作るものだなってことを再確認できました。私の機材トラブルがあったんですけど「ちょっと延ばして」って合図するだけでメンバーが演奏を延ばしてくれて、私が歌い始めたところからAメロになるみたいなことができたのも、バンドならではだなと思いますね。
──「あなたのSTORY(Yaiko Band ver.)」によって、音楽は皆で共有するのもの・分け合うものという感覚が伝わってくるようです。
矢井田瞳:ありがとうございます。それがリスナーにも伝わってくれたらうれしいと思います。
──いろんな意味での『Sharing』があふれている、作り手の意志がはっきりと感じられるアルバムですね。
矢井田瞳:めっちゃ褒められた(笑)。
──もっと褒めますよ(笑)。この『Sharing』、トータルタイムが40分弱という収録時間もいいですよね。
矢井田瞳:それは私もマスタリングの時に思ってました。1stアルバム『daiya-monde』が38分くらいなんですけど、聴きやすい長さで、そういう意味でも20年経って一回りした…そういうことを思いました。。
──『Sharing』は内容もしっかり濃くできてますから。
矢井田瞳:ありがとうございます。うれしいです。
──そしてジャケ写も素晴らしい。
矢井田瞳:ジャケットのグラフィックは初めてdunkwellさんにお願いしたんです。dunkwellさんの描く絵が大好きで、彼の個展に行ったりしてたんですよね。グッズのTシャツのデザインをしてもらったことはあるんですけど、今回ガッチリdunkwellさんとジャケットでコラボが叶った。
──カラフルでシャープで、「カッコいい」はヤイコさんになくてはならない要素かな。
矢井田瞳:可愛くないのでカッコいい方がいいんですかね(笑)?
──そんなこと言ってないです(笑)。
矢井田瞳:ジャケットって人物が美しく写ってなくてもよくって、収録されている音楽に似合っているかどうか、ちゃんと音楽を感じてもらえるジャケットかどうかが、私がジャケットに求めるものなんです。
──『Sharing』は限定盤を買うべきですね。ジャンプしている姿がカッコいい。
矢井田瞳:ジャンプのイメージありますか(笑)?
──それはもう、デビュー時からそのイメージはありますよ(笑)。
矢井田瞳:4thシングル『Look Back Again / Over The Distance』(2001年)でジャケットで初めて飛んで、そこからいろんな場面で飛んでますよね(笑)。20年経って流石に跳躍力は下がってきてますけど(笑)、やっぱりジャンプするとブレちゃったりズレちゃったりするから、「こういう感じ」と思っていた写真はなかなか撮れないんです。だからミラクルを狙うことになるんですけど、だからこそのライブ感が出るところは好きですね。その一瞬を切り取る…みたいな。
──写真は修正されていないんですか?
矢井田瞳:(マネージャーに向かって)これはいじってないよね?衣装とか飛んだ姿とか。
マネージャー:はい、いじってません。ミラクル待ちでした。澄ました顔をしてますけど無茶苦茶ハードな撮影でして、マネージャーがこう言うのも何ですけど、見てて申し訳ないくらい飛ばせてるんです(笑)。
矢井田瞳:ははは(笑)、翌日は筋肉痛という(笑)。衣装はいいけど髪はブワーとか、髪はいいけど衣装はぺっしゃんことか、いろいろあるんですよ。そこは大変ですけど、大変な方がその場の一体感が生まれて、「じゃあ、扇風機持って来る」って髪をブワーッとやってみたりとか楽しいんですよ(笑)。
マネージャー:ミラクルな1枚が撮れた時には全員がうわーとなりますし、全員が同じところを見ている瞬間がありまして、矢井田を中心とした空気がギュッと集まる瞬間は鳥肌が立ちましたね。
──いいエピソードですね。そんな作品を引っさげて、10月31日にはZepp DiverCity Tokyoで有観客でのリリース記念ライブが行なわれますね。
矢井田瞳:今回は有観客であって生配信もあるんですよ。有観客&生配信のセットは初めてなので、どんなことをしたら来てくれたお客さんにも配信を見てくれているお客さんにも喜んでもらえるかなって日々スタッフさんと話をしている最中です。
──リリース記念ライブですから、『Sharing』を中心に?
矢井田瞳:もちろんアルバムの曲もやりたいと思っているんですけど、最近コンスタントにライブができてない状況なので、久しぶりに私のライブを見てくれる人にも自宅でご覧になる人にも喜んでもらえるように、20周年イヤーのライブでもありますから、集大成的な内容にもなるのかなと思っています。今回もバンドでやりますので楽しみにしていただきたいです。
取材・文◎帆苅智之
■11thアルバム『Sharing』
▲『Sharing』限定盤
▲『Sharing』通常盤
2020年10月14日(水)リリース
CD予約URL:https://vaa.lnk.to/zSUOW6
・限定盤(CD+DVD)ZLCP-0399/3,454円+税
・通常盤(CD)ZLCP-0400/2,272円+税
※BONUS TRACKに「あなたのSTORY(Yaiko Band ver.)」を収録
[収録曲](限定盤/通常盤共通)全9曲収録
・CD
01.いつまでも続くブルー(Yaiko Band ver.) ~日本テレビ系「スッキリ」2019年9月度エンディングテーマ~
02.あなたのSTORY ~産経新聞社プロジェクト「#コロナの先で」希望のSTORY~歌のチカラ~ソング~
03.It’s too late? ~高高-takataka-カバー曲~
04.Gradation
05.かまってちゃん。
06.ネオンの朝 ~関西限定シングル~
07.はだしのダイアリー
08.きっとJust fine ~GAKU作曲~
-BONUS TRACK-
09. あなたのSTORY(Yaiko Band ver.)
・DVD
1.My Sweet Darlin' (Live at 大阪市中央公会堂, 2020.2.23)
2.MOON (Live at 大阪市中央公会堂, 2020.2.23)
3.あなたのSTORY (Music Video)
4.ネオンの朝 (Lyric Video)
5.Go my way (Music Video)
6.B'coz I love you (Music Video)
-秘蔵映像-
7. DARLING, DARLING (Live at LONDON, 2001.4.25)
【ダウンロード・アルバム】
[収録曲]全8曲収録
01.いつまでも続くブルー(Yaiko Band ver.)~日本テレビ系「スッキリ」2019年9月度エンディングテーマ~
02.あなたのSTORY ~産経新聞社プロジェクト「#コロナの先で」希望のSTORY~歌のチカラ~ソング~
03.It’s too late? ~高高-takataka-カバー曲~
04.Gradation
05.かまってちゃん。
06.ネオンの朝 ~関西限定シングル~
07.はだしのダイアリー
08.きっとJust fine ~GAKU作曲~
▼iTunesプレオーダー(ダウンロード予約注文)
2020年10月13日(火)まで販売
URL:http://itunes.apple.com/jp/album/id1527225494?l=ja&ls=1&app=itunes
※プレオーダーすると「いつまでも続くブルー(Yaiko Band ver.)」「あなたのSTORY」「ネオンの朝」3曲が即ダウンロード可能になります。
■ライブ情報
2020年10月31日(土)OPEN 17:00/START 18:00
会場:東京・Zepp DiverCity(TOKYO)
バンドメンバー:西川 進(G)、FIRE(B)、水野 雅昭(Dr)、鶴谷 崇(Key)
【Ticket】
・前売り:指定席 ¥8,800(税込)
来場者特典記念グッズ付、ドリンク代別途
※未就学児童入場不可
[来場者特典記念グッズ内容]
・直筆サイン入り11thアルバム『Sharing』“デカジャケット”
・ライブ会場限定カラーフェイスタオル
※記念グッズは公演当日会場でのお渡しになります
・FC先行受付
2020年9月12日(土)18:00~9月19日(土)23:59 ※抽選
FC先行予約:https://yaiko.futureartist.net/livesharing
・一般発売
2020年9月27日(日)10:00~
チケットぴあ・ローソンチケット・イープラスにて一斉発売開始
【ライブ生配信】
2020年10月31日(土)18:00配信開始(17:30サイトオープン)
アーカイブ配信期間:2020年10月31(土)23:00~11月8日(日)23:59
視聴Ticket:¥3,500(税込)
視聴Ticket販売期間:2020年10月11日(日)00:00~11月8日(日)21:00
・早割販売
2020年9月18日(金)21:00~10月10日(土)23:59
¥3,000(税込)
【チケデリ販売期間】
・早割 2020年09月18日(金)21:00~10月10日(土)23:59
・一般 2020年10月11日(日)00:00~11月08日(日)21:00
販売URL
https://ticket.deli-a.jp/
配信:Thumva:https://thumva.com/
[問]ソーゴー東京:03-3405-9999
(月~金 12:00~13:00/16:00~19:00 ※土日・祝日を除く)
http://sogotokyo.com/
※ライブ配信サービスに関して:https://info.thumva.com/html/help.html
◆矢井田 瞳 オフィシャルサイト
◆矢井田 瞳 オフィシャルYouTubeチャンネル