【ライブレポート】松尾太陽名義初ステージで「本当に幸せな時間でした!」
9月2日にミニアルバム『うたうたい』でソロデビューを果たした松尾太陽が、CD発売記念の生配信ライブを9月16日に開催した。生バンドを従えたアコースティック形式で、アルバム収録曲を中心に全6曲を披露し、変幻自在にきらめくその歌声を存分に発揮。ソロライブとしては昨年9月の<Utautai>以来1年ぶり、松尾太陽名義では初となったステージで、歌えることの喜び、そして、エンターテイメントを通して人々を幸せにしたいという決意を、改めて我々に伝えてくれた。
デビュー作『うたうたい』の初回生産分に封入されたシリアルコードにより、誰もが無料視聴可能な本公演。開演前にはレコーディングやMVの撮影風景、インタビューなどの秘蔵映像も流れ、観る者の期待を煽ったところでカメラが切り替わり、まずは生バンドによるセッション演奏が。そしてギターがミニアルバムのリード曲である「Sorrow」のイントロを奏でると、ステージ中央に松尾太陽が現れて、“悲しみ”と名付けられたVaundy提供のリードチューンを笑顔で歌い上げる。マイクスタンドに飾られたタイダイ染めのカラフルな布は、MVでも印象的なモチーフとして使われていたもので、まるで松尾の七色の歌声を象徴しているかのよう。事実、爽やかな曲調を柔らかなトーンで届けて、最後は力強いロングトーンでバンドを指揮する一方、続く「mellow.P」では表情にも歌声にも曖昧な“浮遊感”を漂わせて不可思議な空気感をポップに演出と、見せる景色を次々に変える表現力の幅広さは目覚ましい。ダンサブルな「mellow.P」の間奏では“clap!”と手拍子を煽る場面もあり、甘さのある歌声は作詞・曲を手掛けた大塚愛のコーラスとも相性バッチリ。序盤から世界観のまったく異なる、それでいて共に曲と歌詞にギャップのある2曲を並べて、松尾太陽の“陰と陽”を巧みにさらけ出してゆく。
「お久しぶりです、松尾太陽です。やっとライブできた! もうそれだけで僕はホントに嬉しいです。本来は客席にお客さんがいて、みんなで直接ライブができたら一番だったのですが、今は新型コロナウィルスという見えない敵が現れている最中で。まだ始まって間もないんですけど、本当に貴重なライブになること間違いナシだと、僕自身が思えるライブになっています。ネガティブになったり“楽しいことないな”って思うこともいっぱいあるだろうけど、そういったことを忘れられるような時間にしていきたいので、何も考えずに、ただただ音楽を楽しんでください!」
率直な想いを述べたあとは、「久しぶりにライブハウスっていう場所でライブができることを本当に嬉しく思います。それくらい当たり前のことが当たり前じゃなくなってしまった世の中なのかもしれないけど、そんなの“なにくそ!“っていう気持ちで、もう反骨心だけで僕は生きているようなものなので(笑)。これからもその中で、フルで楽しめるようなことを、いっぱい出していきたいと思っています!」と決意表明。続いて、その想いを歌で証明した「掌」は、大阪から上京してきた時期の不安や葛藤を元に松尾自身が詞を書き、彼とバンドマスターの山口寛雄で曲を共作したナンバーで、ソロシンガー・松尾太陽にとっては大きなチャレンジを為した曲でもある。歌詞とシンクロするがごとく、自身が経験した苦しみをそのまま乗せた歌声や表情は実にエモーショナルで、だからこそメロディアスに開けたサビでの笑顔と伸ばされた掌からは、とてつもないエネルギーが放出。“僕はココで生き抜く”“太陽が味方だから”というワードも彼のリアルな本心を映し出し、全身でカメラの向こうへとアピールするクライマックスの凛々しさは、「ひとりでも二人でも、歌詞が刺さると嬉しい」とMCで語った彼の願いを十二分に叶えたに違いない。
また、バックバンドによる小粋なインタールードを挟み、黒のツナギから濃緑のスーツに早着替えしての「The Brand New Day」では、ミニアルバムのコンセプトであり、自身の音楽ルーツである“City Pops”ド真ん中のナンバーをノリノリでパフォーム。作曲・堂島孝平&作詞・浅田信一のペアによる爽快すぎる楽曲で、フェイクも交えながら“うたうたい”であることの喜びを身体中で表現する。歌い終えると、思わずといった体で「本当にライブって楽しいですね」と心境を吐露。今日のライブをサポートしてくれている、松尾いわく「憧れの存在のお兄さんたち」を紹介してからは、“未来”への想いも口にした。
「ソロ活動を超特急と並行してやらせてもらうということで、少しでもいろんな方を元気にしたり、笑顔にしたりできるエンターテイメントを届けたい。そんな一心で、今、こうして配信ライブを届けられることをありがたく思います。今は直接会える機会がホントに少ないですけど、ライブだったりポジティブな活動を続けていけば、そういったものが言霊となって、また新しい明日だったり明るい未来に繋がっていくと僕は信じています。これからも松尾太陽と、そして超特急の活動も両方とも頑張っていきたいので、これからも見てくれると嬉しいな」
そして、いわく「超特急の楽曲の中では異彩を放っている曲」という「ソレイユ」を、昨年のソロライブ『Utautai』から1年ぶりにステージ披露。ギターを軸に少しずつ音が増すバンド演奏をバックに、吐息も交えて気だるげに、ブルージーに魅せる姿からは、大人の男の“ちょい悪”な色気が滲んで、末っ子イメージの強い彼に“こんな顔もあったのか”と驚かされる。さらに「これから歩いていく道に紆余曲折はあるかもしれないけど、それでも僕は見えない明日へ突き進んでいくんだという気持ちを込めた曲」という前置きからフィナーレを飾ったのは、アルバムのラストソングでもある「Hello」。軽やかに身体を揺らしながら、しかし、真摯な眼差しに秘められた決意は重く、バンドメンバーに、そしてカメラの向こうの視聴者へと、ソロシンガー・松尾太陽としての“Hello”を告げる。そう。今、この瞬間が松尾太陽の“始まり”なのだ。
「素敵な時間になりました。また会いましょう! 本当に幸せな時間でした!」
そう告げてライブを終えた松尾は、終演後に「ホンットに緊張した! でも、さらに上をいくのが、ホンットに楽しかった!」と笑顔で告白。そんなライブの一部始終は、9月30日までアーカイブ配信でも確認できる。1週間後の9月23日には24歳の誕生日を迎える松尾太陽の新たなる挑戦は、今、始まったばかりだ。
◆ ◆ ◆
文:清水素子
撮影:米山三郎
<セットリスト>
M1;Sorrow
M2:mellow.P
M3:掌
M4:The Brand New Way
M5:ソレイユ
M6:Hello
■ミニアルバム『うたうたい』
ZXRC-2069 2,530円(税込)
<収録曲>
M1: mellow.P
M2: The Brand New Way
M3: 掌
M4: Sorrow
M5: libra
M6: Hello