【インタビュー】NIKO NIKO TAN TANの三部作完結「形があって、遊びがあるものを」
■手癖やルールから脱したところで
──もう1曲の「同級生」は、NIKO NIKO TAN TANのもう一つの得意技、ポップでかっこいいエレクトロニックミュージックというふうに楽しく聴きました。
Ochan:そうですね、それでいいと思います。「FICTION feat.Botani」とは正反対のものを入れようということで、これは僕の中では前作「パラサイト」の進化系で、より振り切って、生のビートを打ち込みの音にしています。最初のきっかけは、Samson Leeと話している時に「同級生」という言葉が面白くて、それを曲にしようというところから始まったんですね。たまたま僕たち全員が同級生でもありますし、この曲もミュージックビデオを作るんですけど、Instagramで漫画を描いているベンドットという友人がいて、彼も同級生なんですね。ミュージックビデオは全編彼が漫画を描き下ろしてくれたもので、入魂の作品になっているので、ぜひ見てほしいです。
──明るくてポップな中に、センチメンタルと毒をひそませたような感じが、たとえば電気グルーヴの作品とか、ああいうニュアンスに近いような気がしました。
Ochan:うれしいですね。僕の打ち込みの原点はYMOなんですけど、昔からエイフェックス・ツインとか、クラークとかが好きなので。もちろん電気グルーヴも好きですし、ああいう、えぐみがあるんだけど心地よい日本語のリリックの曲、というテーマで「同級生」は作りましたね。僕が作る曲は若干ダークな色が強いので、明るさの中で僕らしいえぐみをどこに入れるか、そこをいろいろ試行錯誤しました。流れるような曲に見えて、「FICTION」より苦労しています。
──最高の仕上がりだと思います。エレクトロニックなサウンドで、そのへんの繊細なポイントを突いてくるアーティストは今はそんなにいない気がしていて。激しいビートのEDMとか、そこまで行っちゃうとちょっと違うんだよなとか思ったりします。
Ochan:すっごいわかります。僕も作りながら同じことを思っていました。さっき言った話ですけど、ダークな方向でこういうタイプの曲を作ろうとすると、たぶんもっとEDMっぽくなっちゃうと思うんですね。それが自分でわかっているので、あえて明るい曲の中にえぐみを入れる方向にしました。
Anabebe:僕も打ち込みの曲は好きで、フォー・テットとか聴きます。この曲はシンプルなビートがずっと続くんですけど、そこでどう遊ぶかがけっこう難しくて。音源はこれなんですけど、ライブでは生ドラムも入れてやりたいなと思っています。
──2曲合わせて歌ものR&Bと、エレクトロニックなダンスミュージックと、どっちもキャッチー。いいパターンを見つけましたね。
Ochan:そうですね。二つのラインで作れるのは楽しいです。
──そして、このあとの活動は?
Ochan:アルバムを作っています。
──おおー。今、何合目ぐらいですか。
Ochan:2合目ぐらいですかね(笑)。
──登り始めたばっかり(笑)。先は長いですか。
Ochan:ここから追い込んでいこうと思っています。本当は、この曲(シングル3枚)たちも入れようと思っていたんですけど、一切入れないことに決めたので。シングルの曲以外にも10曲ぐらい、YouTubeで公開している曲があるんですけど、それも入れないことにしたんです。そのほうがいいものができるかなと思うので。
──かっこいい。潔いですね。
Ochan:アイディアはあるので、形にするのはかなり大変だと思いますけど、頑張ります。
Anabebe:僕、BPM120がすごい苦手だということがわかったんですよ。
──あら。そうなんですか。
Anabebe:ジャムったりする時は、もっと遅くなりがちなので。いざ120でやってみようとすると、四つ打ちになっちゃったり、普通のエイトビートになっちゃったり、そのへんのBPMだと面白みが出せないんですよね。でもあえてそこを開拓して、アルバムに入れたいと思っています。
Ochan:セッションで作っていくので、無意識のうちにお互いに気持ちいいポイントに寄っていくんですね。調べてみると、BPM90〜100とか、70とかが多くなる。「同級生」はBPM125なんですけど、そのくらいのビートがダンスミュージックでは心地よいラインなので、そこで音楽を作っていきたいというのと、それを映像にした時に映像チームもやりやすいビートなんですね。でも今までの手癖やルールから脱したところで新しいものを作るという意味で、「同級生」ですごい手ごたえが見えたので、そこを新しく発掘するアルバムを作りたいということで、一から作っています(笑)。
▲Ochan
──いやあ、かっこいいです。楽しみにしています。その先の未来には多くのリスナーが待っていると思うんですけど、そこへ向かってこれからどんなふうに進んで行きますか。
Ochan:だんだん音楽の濃度を上げてきているので、もうちょっと振り切ったものをやりたいなと思っていますね。NIKO NIKO TAN TANってどういう音楽?となった時に、レンジが広くていろんな音楽性があるのはもちろんいいと思うんですけど、それをもっと、たとえば「同級生」のような、僕が歌うエレクトロニックなラインの曲は、もっとライブを意識した曲作りにしていこうと思っていて。もう一つは、いろんなアーティストをフィーチャリングしていきたいということで、そっちは音源として完成度を上げていくとか、そういう方向性を考えていますね。プラス、映像のメンバーがいるので、これからやりたいことと言うと、今はお客さんを入れてライブができないので、自分たちでセットを組んでライブをして、映像も入れて、ライブミュージックビデオ作品のようなものを、もっと積極的に作りたいと思っていますね。
──NIKO NIKO TAN TANのリスナーのイメージで言うと、音楽的に感度の高い、映像にも興味がある、センスのいい少年少女という感じなのかな?と。
Ochan:ちょっと変わった、いい違和感を面白いと感じられる人たちに届いたらいいなと思っています。僕もその一人なので、それが第一にありますね。
Anabebe:海外の人にも聴いてほしいですね。
Ochan:ある海外のYouTuberの人がいて、いつもバックに僕らの音楽をかけながらいろんなことをやっているんですけど(笑)。アメリカの人で、たまたま日本に来た時に渋谷のタワーレコードでCDを買って、好きになったらしいです。それで僕らのことを知った海外の人が、僕らのミュージックビデオを見てくれるんですよ。めっちゃうれしいですね。
──そういう人がいるといいですよね。どんどん世界が広がる。
Anabebe:いつか海外でもライブしたいですね。
Ochan:その前にアルバム制作、頑張ります。
取材・文◎宮本英夫
3rd Single「FICTION feat. Botani / 同級生」
NKNK-0003 / ¥500+税
01. FICTION feat. Botani
02. 同級生
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