【インタビュー】アルルカン、暁と祥平が語るアルバムの違和感と真実「予定調和でないリアルな物語」

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■コロナ禍がなかったらもっとしんどかった
■というか、できなかったんじゃないかな

──祥平さん自身は、そのストーリーのなかでどういう曲を作り上げていこうと?

祥平:これまでは、お客さんの反応も気にしながら作る部分が多かったし、そういう意味では、いつも無意識にかけているフィルターがあったんです。でも、今回はそのリミッターを外して、素直な自分を出すという意図もあってできた曲が多いんですよ。だから、メンバーも新鮮だったんじゃないですかね。書いたことないようなタイプの曲だから。

──祥平さんによる作曲は「空に落ちる」、そしてラストナンバーにしてタイトル曲「The laughing man」ですね。

暁:祥平の曲って、優しくてキレイ、でも少し寂しげみたいなイメージがあるんです。「空に落ちる」はそういう雰囲気を残しつつも新しくて、一回聴いて“いいな”って思いました。でも、「The laughing man」は最初、受け取るのに苦労したんですよ。ちょっと眩しかったというか。自分で“笑いたい”と言ったくせに、“笑う”ってなるとこれくらい眩しい曲になるんだなって。最終的に「The laughing man」としてパッケージされるまで、“この曲を歌ってみよう”って腰を上げるみたいな、ある意味挑戦みたいな感じはありました。良い意味で、予定調和とか確認作業ではないことが多かったですね、今回は。

──「The laughing man」は明るい高揚感のある曲で、アルルカンとしてここまで振り切ってもいいのか?と。

暁:そう。作ってる最中はめちゃくちゃしんどかったですけど、終わった今は、よかったと思います。

▲來堵 (G)

──祥平さん自身は「The laughing man」を作り上げていく過程でどのような意図が?

祥平:とりあえず、この曲は5回くらい作り直してるんですよ(笑)。

暁:はははは。

祥平:“眩しすぎない”というイメージで膨らませながら、構築したり壊したり。最終的に振り切りすぎたこの形になった。まあでも、未来を見据える上では、ふさわしい曲になったんじゃないかと思いますね。

──タイトル曲ですしね。「The laughing man」はアルバム制作でいうとどのくらいの段階で形になったんですか?

祥平:5月半ばくらいだったので、だいぶ後半でした。

暁:うん。みんなしんどかったけど、妥協せずに、いい時間の使い方をしたんじゃないかな。

祥平:そうですね。このコロナ禍がなかったら、もっとしんどかったというか、できなかったんじゃないかなっていう感じもあって(笑)。

──今回はコロナの影響もあってリモートでの制作になったということですが、離れた場所からデータ上のやり取りゆえに冷静にもなれた?

暁:スケジュールに追われて制作するみたいなところもなかったし、あの時の僕らにできることは、これしかなかったので。集中できた感じがありますね。

──実際、リモートでのやり取りはどうだったんですか? やりやすさとか、ここが難しいとか。

暁:PCを立ち上げるのがイヤだった時もありましたけどね。でも、早くZOOMで話したいっていうときもあったんですよ、それは制作とは全然関係なくて、普通に喋ろうみたいな感じで、祥平と。手法はデジタルですけど、動機はアナログですよね。顔を見るってすごく大事なんだなって思う。

祥平:ただ文字を打って送るのと、顔を見ながら喋るのでは、同じようで全然違いますよね。

──文章だけのやりとりはどうしても、受け取り側のそのときの状況や気分に読み方が左右されますし。

暁:言葉ってめっちゃ難しいなって思います。僕は自分本位なところがあって、喋るときも自分が思ったことを伝えるわけですけど、でも“話す”ってそれだけじゃないよなって。コミュニケーションなんですよね。“そこに長い間、気づかずに生きてきたな、自分”って思いました(笑)。アルバム制作中はそこまで考えられなかったですけど、なんとなくは感じていたと思います。

▲奈緒 (G)

──1曲目の「イン・ザ・ミラー」で、“「違和感」これこそが鍵になる”という一節がありますが、その“なんとなく感じていた”ものに気づいたことって、すごく大きかったのかなと。

暁:そこですね。違和感は自分のなかですごく大事にしてます。それがなんなのかは断言できないんですけど、違和感こそ丁寧に処理しなきゃいけない。それくらい人に伝えたり、逆に人の違和感に寄り添ったり、そういうものができるようになりたいと思います。

──今までは自分の感情を伝えるという一方通行だったかもしれない。歌詞は特に、自身の内面的な世界を描いているからこそ、なかなか他人が入る余地がなかったと思うんですが、今回はその世界の窓が開いた感触があるんじゃないでしょうか。実は、ここに描かれているような悩みや葛藤って多くの人が抱えている気持ちの動きで、共感性がより高い作品だと思うんです。

暁:ああ、なるほど……言葉を紡ぐときに、“共感しました”とか“代弁してくれている”とか、僕にとってそれはどうでもよかったというか。僕のなかでは長い間、それが恥ずかしかったり、照れ臭くてできなかったんです。自分が言いたいことを言うためにバンドを選んで始めたので。高い純度で自分の思いを出すことがカッコいいと思ってた。もちろん、そういうカッコよさは絶対にあるし、これからもそれを出すんだろうと思うんです。でも、生きて行く上で、ひとりじゃないから生まれるもの、それを形にしていきたいと思うようになりましたね。

──アルバムの作詞のほとんどは暁さんですが、「FIREWORKS」のみ暁さん以外の4人が歌詞を書いてますね。これはどういった流れででき上がったものですか?

暁:僕が全部書いてしまったら、いつもと一緒になってしまう。だけど、今回のアルバムをしっかりと5人の物語にしたかったんです。だから、「俺が4人に言いたいことを書くから、4人が俺に言いたいことを書いてくれ」と言ったんですよ。

祥平:そういう流れがあっての「FIREWORKS」ですね。だから、全体の物語に寄り添っている部分は言葉選びくらい。それ以外は、今、暁に対して思ってる言葉を4人で集めて。そのなかでもさらに強く思っていることを綴って、言葉を変えたりしながらまとめていった感じですね。

──本当に、暁さんへのアンサーソングですね。

祥平:そうですね。しかも俺、歌詞書くのが初めてだったので、曲作るよりも難しかったです。

──曲の成り立ちを聞くと、もっとトゲがあってもおかしくないですが、結果的にポジティヴに持っていくという。

祥平:まあ、無理やり引っ張り出したようなニュアンスが強いかもしれないですけど(笑)、この曲があって、次の曲の「向日葵」に繋がっていくんで。

暁:面白いですよね。「瘡蓋」という曲は僕が4人に向けて詞を書いたんですけど、これはドロッドロ。膿を出し切ろうくらいの感じで、思い切りやろうと思ったんです。ところが、それの返事でもある「FIREWORKS」がすごく爽やかだった。

祥平:はははは。

暁:今となっては、本当に4人に感謝だなという。あの時は“そうきたか”という感じだったので、それに対しての率直な気持ちをまた「向日葵」の歌詞に綴って、より素直に歌詞にしたのが、その次の「君とのあいだに」です。

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