【対談】小林幸子 × 松岡充が語る、ユニット“シロクマ”誕生秘話「人生をオセロゲームに」
小林幸子と松岡充が、ユニット“シロクマ”を結成した。『ニコニコ超パーティー2018』でのステージ初共演が音楽家としての両氏を急速に近づけたようだが、それにしても“演歌の女王でありラスボス”と“ロックミュージシャンであり俳優”の融合は、あまりにもセンセーショナルだ。
◆小林幸子 × 松岡充 画像 / 動画
シロクマによる初シングル「しろくろましろ」は松岡充が作詞作曲を担当、そのモチーフは小林幸子の人生訓だ。同曲は『ニコニコ超会議 2020 夏』のテーマソングに起用されることが決定しており、10月7日のCDリリースに先がけて、イベント初日となる8月9日に先行配信リリースされることも決定している。
コロナ禍で打ちひしがれている世界中の人々に、“幸あれ”と歓びの種を贈り届けるような「しろくろましろ」に込めた願いとは? 音楽性もキャリアもまったく違う2人のコラボがどんな経緯で誕生したのか? その強い想いについて、小林幸子 × 松岡充に語ってもらったシロクマ初インタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■私の歌ができちゃったんです
■自分の想いを歌うのはこれが初めて
──そもそも2人はどこで出会ったんですか?
松岡:最初の出会いは数年前の『ニコニコ超パーティー』(ニコニコ動画のイベント)です。たまたま楽屋が隣りだったんですよね。
小林:それで「どうもー!」って会いに行ってお話をして。
松岡:その後も何度かご一緒させていただくなかで、幸子さんとは一度ステージで共演させていただいたんですよ。
▲シングル「しろくろましろ」 |
松岡:はい。あの日、幸子さんと2人で歌った瞬間、僕は打ちのめされたんです。それはテクニカルなものではなくて、幸子さんの“声”の持つパワーに。心が、声というものに成り代わって出てきてる感じがして。感動値がヤバかったんですよ。
小林:困っちゃうな。そこまで言われると。私、どうしたらいいの(照笑)?
松岡:いやいや、本当にすごいんですから。“どうやったらこの波動が会場のあの子に届くか”とか“カメラの向こうに側に届くか”とか、ヴォーカリストってそういう“魔法”が使えるんですけど、幸子さんはその魔法を使える権化みたいな人で(微笑)。僕はぶっ倒れるかと思いました。こんな歌手の方には、今まで会ったことがなかったですから。
小林:いやいやいや。あのときは私の「存在証明」という歌を一緒に歌ってもらったんですよね?
松岡:はい。
小林:実は、松岡君とステージで共演させてもらったあのときから、“この人と何かやってみたいな”と思ったんですよ。
──何年も前から今回のコラボのアイデアがあったということですか?
小林:そうです。私は演歌の世界でずっとやってきたので、ボカロもそうですが、今まで自分の血液やDNAにはないものを歌ったときの化学反応……それにとても刺激を受けたんですね。それで、松岡君のミュージカルも観させてもらって、“この人は演歌とはまったく違う引き出しを持ってる。この人なら私の違う才能を引き出してくれるんじゃないか”と思ったんですね。それで今年6月頃、一緒にご飯を食べる機会があったので。そこで……。
松岡:もぉ、突然ですよ! 「ちょっとそこのサービスエリア寄って」みたいな感覚で、軽〜く言われたんです(笑)。
小林:「急になんだけど、今度私、デュエットしたいなー。一緒に。コラボで。作って!」と言ったら松岡君が固まっちゃって(笑)。
──あはは。アプローチが面白すぎます。
小林:その後すぐに、「嬉しい。やりたい」って言ってくれたので、「よかった」ってホッとして。
──楽曲について、小林さんから松岡さん側にリクエストされたことはあったんですか?
松岡:「演歌じゃないもので」というのは最初からおっしゃってましたね。あとは、「ポケモンで知った子供たちから、長年支えてくれている演歌ファンの人たちまで、3世代でコンサートに来て、一緒に口ずさめる曲に」ということもおっしゃってました。
──それを念頭に置いて具体的に曲作りに入っていった?
松岡:僕は幸子さんの演歌はもちろん、「存在証明」のような演歌ではない歌もいろいろ聴かせてもらっていて。そっちではシンガーとして、例えば夏木マリさんと共通するようなソウルフルなものをすごく感じてたんですね。自分が作るのであれば、そこを幸子さんからもっと引き出したいと思ったんです。
──なるほど。それで、このようなハンドクラップとともにみんな歌いたくなるようなゴスペルフィーリングなサビがあって、松岡さんのラップパートも相まって、リスナーの幸福感を呼び覚ましていくような曲というか。ロックでもヒップホップでもない、包括的なソウルミュージックに仕上がったわけですね。
松岡:幸子さんが歌うのであればジャンルも世代も関係なく、地球全体で歌えるようなものじゃないとダメだと思って。それでイメージしたのが坂本九さんの「上を向いて歩こう」だったんです。なので、勝手ながら、この曲を幸子さんが『紅白歌合戦』に出て歌ってる姿や、もっと言うと延期になった『東京2020オリンピック』の開会式で歌ったら、日本語が分からない外国人まで手拍子してノッてしまう。そんなところまで想定して曲は創りました。
小林:へえ、そうだったんだ。
──歌詞はどういう書き方をしていったんですか?
松岡:僕がわがままを言って、幸子さんに取材をさせてもらったんですよ。
小林:「いろいろ話を聞きたい」と言われまして。インタビュアーさんではなく、同業の歌い手さんから取材を受けるのは初めてでした。取材を受けたら核心をバンバンついてきて、自分のなかに封印していたことまでポロポロと本音をしゃべっちゃって。そうやって私のことをしゃべっていったら、私の歌ができちゃったんです(笑)。
──取材を通して、松岡さんが小林さんの心の代弁者となって歌詞を書いていったという?
松岡:そうです。そうすることで幸子さんがこの曲を歌うときに、毎回心を開いて、歌い手としても犠牲を払って歌うものになる。そういうものじゃないと受け取る側の心も開けないんじゃないかなと思ったから、そこまでいきたかったんですよ、この曲で。
小林:だから、私はこの曲を初めて聴いたとき、号泣しました。演歌というのは男がいて女がいてという歌詞の世界があって。その物語にこっちが入り込んで歌うんですね。ロックの人たちはよく「この歌で自分の思いを伝えました」とかおっしゃるけれども、私は自分の思い、メッセージを歌で伝えたことは正直言ってないんです。なので、「しろくろましろ」を聴いた瞬間、自分のことが歌になっていたからびっくりしたんです。自分の想いをメッセージとして歌うというのはこれが初めてですね。
◆インタビュー【2】へ
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