【インタビュー】安斉かれん、ドラマ出演を経て改めて思う「誰かの思い出になるような曲を作っていけたら」
2019年5月1日、令和スタートとともにデビューしてから約1年で、安斉かれんの活躍のフィールドは予想以上のスピードで広がっている。
デビュー当初はバーチャルでミステリアスなイメージだった彼女が、先日最終回を迎えた話題のドラマ『M 愛すべき人がいて』で主演を務め、バラエティ番組にも出演するなど、自身の魅力を発揮し始めているのだ。
◆撮り下ろし画像
音楽的にもどんどん幅を広げ、アッパーなダンスミュージックに挑戦した「FAKE NEWS REVOLUTION」に続いてリリースされる新曲「僕らは強くなれる。」は、ダイナミックなビートに乗るブラスバンドのアレンジが華やかな楽曲。これまでにないテイストには、彼女自身が吹奏楽経験者であったり、バンドサウンドが好きだったルーツも影響しているという。
持ち前の好奇心とチャレンジ精神で、どんどん新しい扉を開けていく安斉かれんのこれからに、ますます期待が募る。そんな飛躍の季節の中、始めての「応援ソング」に挑戦した「僕らは強くなれる。」に込めた想いを語ってもらった。
◆ ◆ ◆
■寄り添える応援ソングにしたかった
── 今回の「僕らは強くなれる。」という楽曲は、タイトルのインパクトも強いんですけど、楽曲も今までとイメージが変わって、ドラマチックでパワーを感じる1曲ですね。この楽曲を聴いた時の印象はいかがでしたか。
安斉:この曲は高校生の時にいただいて、その時に歌詞も書いていた曲なんです。だから、実は4年くらい前から何度も何度もレコーディングもしなおしてきていて。一番最初のデモから数えると、もう5回くらいレコーディングしているんです。今までの曲の中で、一番歌ってきた曲かなと思います。最初はブラスバンドのアレンジではなくて、シンプルなバンドサウンドでした。
── そうなんですか。じゃあ思い入れのある曲なんですね。
安斉:そこから、レコーディングを重ねてどんどん完成するにつれて、私も高校生の頃の歌声からは変わっていきますし、周りの音のアレンジも変わっていって。結果的に、すごく成長した最終形態ができたっていう感じです。こうして、ちゃんとリリースすることができて良かったなと思います。
── ブラスバンドのアレンジが印象的ですけど、こうなったのは最近ですか?
安斉:去年です。私も吹奏楽をやっていたので、ブラスバンドと一緒にできればいいなっていう気持ちが前からありました。その中で今回の曲はぴったりだなと思い、高校生のみんなの力を借りて素晴らしい仕上がりになりました。
── 高校生のブラスバンドの音なんですか。
安斉:そうです。京都橘高等学校吹奏楽部の皆さんに参加してもらって。ミュージックビデオもみんなで撮影させてもらいました。
── 音に一体感とかエネルギッシュな感じが出ていて、歌詞のメッセージをあとおしするものになってますね。できあがってみていかがでしたか。
安斉:すごく良かったです! やっぱり、ブラスバンドとかマーチングの音っていいなって思いました。私は吹奏楽でしたけど、懐かしさもありますし、こういうかたちで残せて良かったなって思います。私もミュージックビデオで実際に一緒にサックスを演奏していて、すごく楽しかったです。ミュージックビデオは去年の夏休みに撮らせていただいたんですけど、高校生のみなさんが吹いているのを見て、私が中学で吹奏楽部だった時のことを思い出したりとかして。コンクールの合間をぬって参加してくれてるんだと思うと有難いなと思いましたね。
── 撮影した時のムードはいかがでしたか?
安斉:本当に高校生たちの活気がすごくて! みなさんめちゃめちゃいい人たちで、「頑張ってください」って言ってくれたりして嬉しかったです。撮影も一生懸命に参加してくださって、本当に、目頭が熱くなってうるっときました。
── その子たちにとっても思い出になりますよね。
安斉:でも、撮影したのはかなり前で、リリースまで時間がかかってしまったので。お待たせしてしまってごめんなさい!
── 一前回のインタビューでも、音楽的にいろんなことをやってみたいっておっしゃっていましたけど、ブラスバンドっていう生音と共演っていうのは、やってみたかったことのひとつですか。
安斉:まさにそうです。だからすごく楽しかったんです。やっぱり生音っていいですね! ほんとに。最近バンドメンバーの方たちと合わせる機会もあったりするんですけど、いいー!って思います。
── 原体験としてバンドサウンドがあるってお話でしたから、そうですよね。
安斉:はい。それに、もともと好きになっている音が吹奏楽というところで、やっぱりみんなで合わせてひとつの音を作るっていうのが好きだったんです。ソロもソロでもちろん楽しいんですけど、みんなでそうやって作るのはやっぱり楽しいです。
── その場所で生まれるものがありますよね。
安斉:その時にしかないっていう。だからノリノリでした。気持ちもやっぱりアガります。できるならずっと生音がいいくらい(笑)。
── 今は、いくらでもパソコンだけで曲作れますからね。
安斉:それはそれでいいんですけど、やっぱり生音の良さを思い出しました。うまく言葉で表せないけど、本当に楽しかったので、このような機会をいただけて本当に良かったです。
── これからさらに色々やってみたいことって増えました?
安斉:楽器もやっていきたいですし、作曲もやりたいなって思います。いろんなことができたらいいなあ、って思いながら楽しんでやっていれば、いざ作品として出すって時にできるので。何かにつながればいいなっていう気持ちでいろいろやっています。
── 聴いている人の背中を押すような歌詞の内容にもこのアレンジがすごく合っていて、そこに皆さんの気持ちが乗ってると思います。この歌詞は高校生の時に書いたものなんですね。
安斉:そうです。歌詞も曲をもらった高校生の時に書いていたので、その時のこととか、吹奏楽部だった時のこととかを書いていたら、自然と応援ソングになりました。だからブラスの音が合うかもっていうアイデアにも繋がりました。
── 応援ソングって、これまでの歌詞ともちょっと違いますよね。歌ううえで、意識したところはありますか?
安斉:「僕らは強くなれる。」というタイトルにもあるように、一方的に応援するような……「あなたはこうしたらいいよ!」みたいな応援ソングではなくて、寄り添える応援ソングにしたかったんです。「僕は」じゃなくて「僕らは」なので。あと、応援される人だけではなく、応援してる人を応援したいっていう気持ちも込めていて。たとえば部活のマネージャーさんだったり、親御さんだったり、そうやって誰かを支えている方も含めて、みんなを応援したい。ピンポイントに応援してるわけじゃなくて「みんなで」っていう気持ちをたくさん入れているので、自分だけの目線にならないように、そういうところに気をつけて歌いました。
── これまでの安斉さんの歌詞は、結構、孤独に戦ってるような視点を感じることが多くて。これまでの曲の歌詞も10代の時に書いたメモから持ってきているとのことでしたけども、この「僕らは~」の歌詞も同じ頃ではあるんですか?
安斉:同じ頃、という感じではありますね。でも、そうやって昔書いた歌詞を出すってなると、やっぱりちょっと言い回しを修正して、今の気持ちに近づけたりするので。だから違って聞こえるのかなと思います。「僕らは」っていう目線は、高校生の時には書けなかったと思いますし。
── 「僕らは」になったのは最近?
安斉:最近というか、2年前くらいですね。一番最初の、高校生の時にはそう書けていたわけじゃないです。最近だからこそ、自分も一緒に頑張るっていうふうな応援ソングになったんだと思います。
── なるほど。「強くなれる」っていう、結論がタイトルにドーンときてるんですけど、歌詞にはそれまでの葛藤がいろいろ刻まれていて。挫折とか、苦しんだことがあるからこそ強くなれるって結論に繋がるわけですよね。
安斉:そうですね。最初の歌詞を書いた高校生の時に、夢を笑ったりする人が実際にいたわけではないんですけど、悔しかったり、そういう気持ちって忘れがちなので。忘れたくないなあと思って、当時の気持ちをできる限り思い出して歌いました。
── 10代の頃を振り返ると、負けそうな時にどうやって踏ん張ってました?
安斉:昔は、行き詰まっちゃったら「もう全部イヤだ!」みたいになっちゃうタイプだったんです(笑)。イヤなものはイヤだから、もうどこも行かない!っていうタイプだったんですけど、最近は、自分の気持ちをコントロールできるようになって、悩むまで至らなくなりましたね。やっぱりその頃って、デビューする前だったりして、先も何も見えなくて怖かったんだろうなって思います。でも、もう進み始めちゃったら仕方ないから。今は、全部を楽しもうって感じです。
── その度胸が付いたのはここ1年?
安斉:どうなんでしょう、最近スルースキルがつきました(笑)。悩んだって仕方ないからねって思って、もう凹まないです。
── (笑)。メッセージもですが、曲調も、すごく広い世代で聴ける曲ですよね。最近の曲は、どんどん音楽的な幅が広がっていってると思います。
安斉:そうですね。やっぱりいろんなジャンルをやりたいので。今回も、今までとも違うところがいいんじゃないかなと思うんです。ドラマの出演もあって、とても有難いことに見てくれている人も増えていると思いますし。今までJーPOPを出してきたんですけど、新しい感じの曲を出していくことで、ちょっとずつでも幅が広げていけるので、このタイミングでこの曲を出せて良かったと思います。さらに広げていきたいです。
── そのドラマ『M 愛すべき人がいて』も先日最終回を迎えましたね。今の達成感はいかがですか。
安斉:もう、達成感だらけです!(笑) 終わった時、ひとつの作品をみんなで作るのっていいなあって本当に思いました。
── コロナの影響もあって、予定より長い間かかりましたからね。
安斉:長かったです。だから余計感動しました。最初にクランクインした場所と、クランクアップの場所が一緒だったんです。海のシーンで。だから、いろいろ考えちゃいました。ここから始まったんだって……。本当に怒涛でしたから(笑)。でも、終わったら終わったでやっぱり寂しいです。スタッフの方とかに、ドラマは1回出たらハマるよって言われていて、その意味もちょっとわかりました。達成感があるし、もうみんな仲間、みたいな気持ちになるんです。
── 初出演ドラマにして、かなりいろいろ体張ってましたし。
安斉:張りました張りました!(笑)
── (笑)。そのぶん、反響も大きかったと思いますが。
安斉:そうですね。有難いことに毎回毎回Twitterのトレンド入りになっていたことも、嬉しかったです。見てくれてるんだなあって。
── この経験を踏まえて、得たものはありましたか。
安斉:ありありです! 言葉ではうまく説明できないんですけど、絶対、今後自分のアーティスト活動にも活きてくると思います。それに、人生の中で最初で最後だと思うんですよ。演技もほぼ初めてって状態で挑戦することもだし、しかも主演させていただくことなんて、絶対に最初で最後だから。すごく感謝しています。
── 確かに、とにかく飛び込むっていう経験はなかなかできないですよね。
安斉:そういう気持ちは大事ですよね。クランクインの前に、監督さんに部活だと思ってねって言われたんです。確かに部活っぽかったなって思います。楽しかったですし。なので、今引退した気分です(笑)。
── では、これから演技っていう分野に関してはどうですか?
安斉:楽しかったですし、また機会があればチャレンジしてみたいですけど、とりあえず今は、音楽に集中したいなと思っています。軸は変わらず、音楽を大切にしていきつつ、演技だけにかかわらず、いろんなものに挑戦できればいいなと思っています。
── 楽しみにしています。今は、コロナ禍の中で自由に動けない人もたくさんいると思うんですけど、音楽を届ける立場として思うことはありますか。
安斉:なんでしょう……。私が何か言うのはおこがましいんですけど……でも音楽って、おうちにいても聴けますし、何があっても絶対に無くならないものだと思うんです。たとえば今がつらくても「あの頃に聴いてた音楽だなあ」みたいな感じで思い出すだろうし、いつでも、絶対音楽が何かしらの思い出になっていくと思うので。だから、誰かの思い出になるようないい曲を作っていけたらいいなと思います。
■安斉かれん「僕らは強くなれる。」
7月22日(水)サブスクリプション音楽配信ストリーミングサービス限定リリース
取材・文◎後藤寛子
写真◎尾藤能暢
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