【インタビュー】Void_Chords、「現代的なULTRAMANのテーマとして新しいヒロイックさを醸し出したい」
作曲家・高橋諒のソロプロジェクトVoid_Chordsが、TVアニメ『ULTRAMAN』のエンディング主題歌を担当。この主題歌「my ID」は、Unlimited toneのRyoheiとONE III NOTESのFoggy-Dをゲストボーカルに迎え、アニメ『ULTRAMAN』の世界観を描き出している。アニメは、神山健治監督、荒牧伸志監督という二人体制で手掛けられ、日本が世界に誇るヒーロー・ウルトラマンの世界の新たな歴史の幕を開いている。このインタビューではVoid_Chordsに肉薄し、「my ID」制作秘話、この曲に込める思い、そして高橋諒の人物像に迫る質問に答えてもらった。
■親から子への血と物語の運命づけられた“ID”なんです
■my IDを受け入れて立ち上がるさまを描いています
――まず、「ULTRAMAN」のエンディングテーマを担当すると決まった時のお気持ちを聞かせてください。
高橋諒(以下、高橋):驚きました。二度見してアルファベットを左から確認した記憶があります(笑)。歴史あるタイトルの一端に参加させていただけてとても光栄でした。
――もちろんリアルタイムではないですが、もともと、特撮テレビドラマ「ウルトラマン」自体はご覧になったことがありましたか?最初に見たきっかけ、どんなところに惹かれたかなど、ウルトラマンにまつわるエピソードがありましたら聞かせてください。
高橋:まったく思い出せないくらい子供の頃ですね(笑)。出会いを意識する前に出会って普通に触れているところが偉大なコンテンツだなと思います。ゼットンとメフィラス星人のフィギュアは家にあったなぁ、、、デザインが刺さったんでしょうね(笑)。
――今回のアニメ版『ULTRAMAN』は、新たな設定やストーリー、3DCGのアニメーション、世界同時での配信など当初から大きな話題を呼びました。これまでたくさんのアニメ作品に関わってこられたVoid_Chordsとして、または1個人として、どういうところに魅力を感じていらっしゃいますか?
高橋:歴史ある“ウルトラマン”の看板を背負いつつも、作風は全く新しい試みが詰まっていて、モダンでダークなスタイルはVoid_Chordsの音楽にも直感的なシンパシーがあるなと。
©円谷プロ ©Eiichi Shimizu,Tomohiro Shimoguchi ©ULTRAMAN製作委員会
――実際に楽曲を制作していくにあたって、監督やスタッフサイドからイメージや方向性の提案などがあったのでしょうか。
高橋:画として影絵のコンセプトだけ伺っていて、あとはEDテーマとしての立ち位置、一般に求められる要素をどの程度取り入れていくかというところを確認しました。いわゆる読後感やある種のメタ的な視点や客観性などについてです。今作はそういう意味での立ち位置は意識せず、主観的で没入感のある作りにしようと。
――なぜ「my ID」というタイトルになったのか、ここにはどんな思いが込められているのでしょうか。
高橋:親から子への血と運命の物語において、それは進次郎本人が選んだものではなく、運命づけられた“ID”なんですよね。それを否定と葛藤を超えて、自らの運命を自らのものにする、my IDを受け入れて立ち上がるさまを描いています。何で自分なんだよ!という反発もありつつ。
――「my ID」は作詞がKonnie Aokiさんで、作曲と編曲が高橋さんです。歌詞をお読みになった時の第一印象、個人的に共感できた部分などはいかがでしたか?
高橋:主人公の若さはありつつも、その等身大の葛藤から運命を受け入れていく様が見事に描かれていると思います。楽曲デモを一度聴いて頂いてから作詞に入っていただくのですが、全体の湿度感のようなコントロールも見事に効いていて毎回楽曲にベストフィットするKonnieさんの歌詞は本当に素晴らしいです。
――高橋さんが作曲/アレンジをするにあたっては、どんなイメージやテーマをお持ちだったのでしょうか。音的にこだわった部分や、「ULTRAMAN」のエンディングテーマだからこそ打ち出したかった部分などをお聞かせください。
高橋:サウンド感は自分なりの今のULTRAMANのテーマとして聴きたいものを素直にやってみようと。その中で現時代的な、新しいヒロイックさというものも醸し出せたらというところを目指しました。重厚なベースに、Void_Chords的なクロスオーヴァー感は踏襲しつつ、足回りの軽快さというか、構えすぎないクールさとダークさを感じれられるように。そして読後感は意識しないとしつつも、ひとつまみの爽快感としてキレというかスカッと終われるような楽曲。そのようなイメージです。
――今回のボーカルがUnlimited toneのRyoheiさんとONE III NOTESのFoggy-Dさんに決まった経緯を聞かせてください。
高橋:上記のスタイルを決定したところで、曲を牽引しつつも撹乱するようなトリッキーなラップパートを乗せてみたいと思いFoggy-Dを、そこから繋いで一段階華やかさを引き揚げてくれるような、ドライヴ感と品を兼ね備えた男声の絡みがあればというイメージで、Ryoheiさんをお誘いしました。
――お二人と出会われたきっかけ、また、それぞれの声や歌のどういった部分に魅力を感じていらっしゃいますか?
高橋:Foggy-D氏はONE III NOTES(ACCA13区監察課)の制作で一度一緒に音楽を作っていました。半端なオケだと横倒しになってしまいそうな激しいグルーヴなのに不思議とクリアな印象を感じていて、またお呼びしたいと思っていました。そして人柄も最高。Ryoheiさんはずっと良くしていただいている先輩という間柄で、いつか歌ってほしいと思いつつ音楽は間接的にしか関わっていなかったんです。今作のイメージを描いた時にピッタリだと思い、満を持してお誘いしました。包み込むような優しい表現も力強いドライヴ感も、品と華を兼ね備えた素晴らしい歌は流石の一言です。
――ボーカルレコーディングなど、お二人とやり取りする中でのエピソードがあればお願いします。
高橋:曲の理解度はお二方とも言わずもがなで非常にスムーズでしたし、RyoheiさんのテイクにもFoggy氏もネイティブスピーカーとしてアドバイスもらいつつ、野郎率100%で作るのは楽しかったです(笑)曲はアグレッシブですが時間をかけて非常に丁寧に作っていただきました。
――高橋さんご自身の制作はいかがでしたか? 大変だったことや今回ならではの作業工程、ハプニング、完成した瞬間のお気持ちなど、状況が少し見えるようなお話があればぜひ聞かせてください。
高橋:バッキングに特殊な8弦のギターを使ってリフを作っているのですが、目当ての弦が中々手に入らなくて焦りました(笑)。コロナ禍の状況でいうとカップリングの「Outer Circulation」のレコーディングあたりからシビアな状況になってきたので、進行には気を使いましたね。Void_Chords作品も多く手がけていただいている内藤岳彦さんによるREC&MIXですが、本作のミックスチェックあたりからオンラインでした。オンラインはメリットとデメリット両方ありますが、様々なワガママを見事に落とし込んでくださいました。
――カップリングの「Outer Circulation」についてはいかがでしょうか。楽曲のテーマ、歌詞をどう解釈されたか、サウンドを構築していくにあたって大切にしたことや聴きどころなどをお聞かせいただければと思います。
高橋:要素の多いA面に対して、よりフリーフォームで明快で楽しめる曲として作っています。歌詞もA面が運命を受け入れていくさまに対して、ストレスを跳ね除けていく反発心、反骨そのものがテーマになっています。
――今回のジャケット、アーティスト写真などは「ULTRAMAN」でも登場する渋谷のスクランブル交差点がモチーフとなっていると思いますが、ジャケットのデザインについて、撮影時のエピソードなど、ビジュアル面についてのコメントもぜひお願いいたします。
高橋:仰る通りアニメ上での都市の描写も好きで強く印象に残っていて、都市の強さや正確さのような物質的なものを象徴しつつ、そこを渡る人たちの運命の交差を連想させるイメージは楽曲にもピッタリだと。
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