【ライブレポート】原因は自分にある。、<仮想げんじぶ空間>で「あなたの手を取って、もっと上へ行きたい」
始動からわずか1年ながら、哲学的なリリックとピアノロックを軸とした前衛的な楽曲で一気に人気を拡大させた7人組エンターテインメントユニット・原因は自分にある。が、7月12日に新曲「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」を配信リリース。それを記念して、特別配信プログラム<仮想げんじぶ空間>を1時間にわたり放送した。事前収録されたスタジオパフォーマンス映像に加えてリアルタイムでのトーク、さらにアニメーションとのコラボレーションなど、いわゆる配信ライブとはひと味違う独創的なプログラムは、グループ名の通り一筋縄ではいかない個性を持つ彼ららしいもの。初めての挑戦にもかかわらず、1年の成長をしっかりと記し、次への期待を繋げて、画面越しにありったけの想いをファンに届けた。
メンバー紹介を兼ねたオープニング映像から“さぁ、いこうか。”の文字が大映しになると、画面はスタジオへと切り替わり、番組の幕を開けたのは1stシングル「原因は自分にある。」の全員パフォーマンス。それぞれメンバーカラーをインナーやジャケットに取り入れた大人びた装いで、真っ白な壁を背に歌い踊る7人に“猶予/言うよ”“沈黙(silence)で/科学(science)で”など、ダブルミーニングを取り入れた抽象的なリリックが被り、彼らの武器である意味深な詞世界の味わい深さを最大限に引き出してゆく。一転、2ndシングル「嗜好に関する世論調査」では別々の場所でパフォーマンスする7人が画面の上下左右から現れ、そこに歌詞のみならずメンバーの似顔絵イラストまで交錯したり、交互にトランプの枠に収まって、その中で2ショットになったりと、次元を超えるような不可思議な世界を創造。なるほど、これぞ<仮想げんじぶ空間>である。
頭2曲で観る者を“げんじぶワールド”へ一気に惹き込むと、今度はリアルタイムでのトークパートへ。大倉空人は「(「嗜好に関する世論調査」のイラストが)イケメンすぎてビビった!」と素直な感想を述べ、小泉光咲はスタジオライブの収録に関して「パフォーマンスするのが約半年ぶりで謎の緊張感があった」と吐露。彼らが最後にステージに立ったのは1月のリリースイベント最終日だったのだから、それも当然だろう。
裏を返せば、現在進行形の彼らのパフォーマンスはレア中のレアということである。再びスタジオライブ映像へと戻り、大倉&吉澤のラップで「Joy to the world」が勢いよく幕開けると、ソロ、ペア、4人、7人と自在に画面の分割数を変えながら、オイシイところを漏らさずキャッチアップ。間奏の小粋なダンスパートに、サビを熱唱する最年長の武藤潤から、ラストに唇を指でなぞって中学生とは思えぬセクシーさを爆発させる最年少の桜木雅哉まで、グループとしてのみならず個々人の成長までをも、配信ならではの至近距離で見せつけてくれる。かと思いきや、続く「ラベンダー」はなんと全編アニメーション映像でオンエア。ラベンダーカラーの温もりある色調の中、部屋に置かれた思い出の品が少しずつ消えてゆくという仕掛けで、ピアノの鍵盤音が響くオシャレな楽曲世界の秘めたる切なさを際立たせるのが実に見事だ。原曲よりテンポを落として歌唱も新しく収録した、このスペシャルアレンジバージョンについて、トークパートで「歌声とイラストの演出で僕たちの魅力がもっと増えたんじゃないでしょうか?」と胸を張ってみせた杢代和人に、ファンなら誰もが共感したに違いない。
また、7月7日で始動1周年を迎えたということで、思い出に残る出来事について語り合う場面も。長野凌大が「やっぱりデビューを発表した7月7日のライブ」と先陣を切れば、「8月の<EBiDAN THE LIVE>。幕張メッセの大きなステージに立てて、メチャメチャ嬉しかった!」(武藤)、「リリースイベントで初めて7人で一緒に地方を回ったこと。反省もあったけどチームワークを高められた」(杢代)等、全員バラバラの返答をしたのもパーソナリティの被らない彼らならではだろう。そして「近所迷惑にならない程度にジャンプして盛り上がってください!」と桜木が呼びかけて、始まったのは「ギミギミラブ」。曲前半ではメンバーが代わる代わる攻撃的なラップを畳みかけながらも、小泉が「画面の向こうの人もみんな一緒に!」とクラップとコールを煽るや、一気にポップに開ける爽快なナンバーだ。メンバーは画面の向こうのコールに耳を澄ませ、分割された画面の中では桜木が金吹雪をばらまいたり、そんな彼に杢代はフレームを超えてハスキー犬のぬいぐるみをパスしたりとハッピーなムード満点。かと思えば、武藤が“Life is beautiful”と画面の向こうに切々と歌いかけて、胸をギュッと掴むようなエモーションを呼ぶのもニクい。
ここで本日が誕生日だという吉澤は、17歳の抱負を「学び!」と力強い一言で表明。このあと初披露される新曲「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」についても、なんと振り付けがリモートで行われた上に、一人ひとりの振りも違って苦労が多かったという裏話が明かされた。そして「今を、そして夏をみんなで感じましょう」という長野の言葉に続き、パフォーマンスが公開された「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」は、ベースの低音と清らかなピアノ音が利いたオシャレなサウンドに、メンバーの投げキスやウィンクが甘い香りを添えるラブソング。メンバー同士で腕を摑んだり、目隠ししたりと、苦悩にまみれた戯曲の登場人物を演じているかのような表情と振り付けは、確かにリモートで行われたとは思えないほど複雑なもので、遠く響く鐘の音もドラマティックなムードをかき立ててゆく。また、歌詞には“To be or not to be. That is the question”“空騒ぎ”“お気に召すまま”“バラの花の香り”など、シェイクスピアの名台詞やタイトル、モチーフがしっかりと盛り込まれて、タイトルに偽りナシ。公式YouTubeには既にリリックビデオとして公開されているので、ぜひチェックしてほしい。
全てのプログラムを終え、「何もかも初めての経験でどうなるかと思ったら、楽しい感じに仕上がって嬉しかったです」と武藤が達成感を示せば、長野は「7月7日で1周年を迎えられたのは、あなたのおかげです。あなたの手を取って、もっと上へ行きたい」と、カメラの向こうに決意表明。また、昨年の8月7日にBATTLE STREETから現グループ名の原因は自分にある。へと改名した彼らだが、桜木からは「改名記念日の8月7日には……なんと? それはお楽しみです!」という意味深な言葉も残された。既成概念を打ち壊す振る舞いで、シーンに衝撃を与え続けてきた彼らが打つ次の一手とは? まずは8月7日へと、期待に胸を膨らませたい。
文:清水素子
撮影:笹森健一
<セットリスト>
M2. 嗜好に関する世論調査
M3. Joy to the World
M4. ラベンダー ピアノVer
M5. ギミギミラブ
M6. シェイクスピアに学ぶ恋愛定理
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