【インタビュー】“親友”になったDear Chambers、最新EPを武器に逆襲へ

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■作風が異常なまでに変わりました

──では、EPのお話に戻しましょう。今作の中では「ワンラスト・ラヴァー」という曲でMVを撮影されていて。『Goodbye to you』(2019年1月)の「ワンルーム・ラヴァー」、『Remember me』(2019年10月)の「ワンサイド・ラヴァー」ときて今回という流れがあるわけですが、これは継続していこうと思っているんですか?

モリヤマ:いや、これで最後にしようかなと思ってます。なんていうか、「ワンナイト」だとさすがにちょっとな……とか。

ペレ:ちょっと気まずいな。

モリヤマ:まあ(笑)、3部作っていいなと思って。ラストって言っちゃってるし、歌の内容的にもここでスパっと終わるのがいいのかなって感じてます。作りたくなったら作ると思うけど。



──<その目にあたしが映ったとき 死ぬほど後悔すればいい>という歌詞って、ある意味“Strikes Back”的ですよね。

モリヤマ:確かに(笑)。そこは特に意識していなかったけど、同時期に歌詞を書いてたから、何かに対して高まっていたのかもしれないですね。それが別に特定の誰かとかではなくて……むしろ、今回は特定の誰かを指さないようにしていたんです。

──というと?

モリヤマ:今回の歌詞って二人称をあんまり使ってないんですよ。今まで自分には何が足りなかったんだろうって考えたときに、<君>っていうワードを使いがちだったんですよね。それを一旦やめようと思って、めちゃくちゃ意識したんです。もしかしたら誰のことを歌っているのかわからないかもしれないけど、この作品を作り始めてからそれがいいと思い始めたんですよ。だから、空っぽではあったけど、そういう意図はありました。

──聴いている人が自分事として受けとめられるような歌詞にしたかったと。

モリヤマ:したかったですね。変わりたかったです、そこは。10年ぐらいずっと“君、君、君、君”だったんで、もういいだろと思って。

──前回そういうお話もされてましたよね。10年間、同じ人のことを思い浮かべて曲を書いていたけど、前作の「forget」で、もうその人の顔を思い出せなくなってしまっていたと歌っていて。

モリヤマ:そう思うと本当に書き切りましたよね。

──その先を書き始めた1枚だと。確かに、そう考えるとポジティブになるかもしれないですね。新しい曲の作り方もできるようになったわけですし。

モリヤマ:そうなんですよ。作風が異常なまでに変わりました。だからなんていうか、何かを作る作業をしていた感じはありますね。自分の想いだけをダイレクトに書いていくんじゃなくて、こうやって歌ったほうが響きやすいのかなって思いながら書いていたんで。メンバーとか、このバンドを支えてくれる人たちとか、本当にいろんな人に向けて書いていたし、それが誰なのかあんまりわからないし、別にわかんなくていいやって。そこは天邪鬼ではあるんですけど。

ペレ:聴き手によって受け取り方を決められる歌詞になったのは、今回かなりデカかったんじゃないかなって思いますね。レコーディング中に歌を聴いて驚いたし、結構感動した記憶があります。

──特に驚いた歌詞というと?

ペレ:「本音」は、<夢>っていう単語が出てきている時点で、今までのモリヤマじゃない感じがある(笑)。

モリヤマ:はははは(笑)。

ペレ:たしか、歌入れ前日に歌詞を書いてたんですよ。で、<夢>とかそういうワードがポロっと出てきて、一回それで書いてみようよってなったんだっけ?

モリヤマ:いや、あれは夢じゃなかった。「本音」の歌詞は15分ぐらいで書いたんだけど、<夢>が入っているところはすでにあったんですよ。で、笑いながら「なんかビーイングみたいでいいね」って話してて(笑)。織田哲郎チルドレンなんで。

──なるほど(笑)。

モリヤマ:で、その前の「幻に会えたなら」から、歌詞がどんどんポジティブになっていくのが明確になったんですよ。でも、本当に書くことがなかったから、そういえば俺らって自分たちの夢って語ったことないよねっていう話になって、書いてみたらめちゃくちゃよくて。だから、ずっとポジティブだったはずなんですけど、隠してたんですよね。ネガティブなこととか、切ないことを歌っている自分が好きだったんですけど、今回のレコーディングの後には、そういうのはもういいやって。

──そういうものも好きではあるんでしょうけどね。

モリヤマ:そうそう。バンドとしても「本音」ができたのは変わり目だったかもしれないですね。その後に作ってる曲も全然女々しくないんで。今度スプリット盤(Dear Chambers × コールスロー『LOVE』/7月15日発売)を出すんですけど、それもポジティブだし、ライブのMCも昔は「元カノが〜」っていう話をしてたけど、最近は別にそんなこともなく。バンドとして一個あがったのかもしれないですね。ヤバい輪廻から抜け出したというか(笑)。

ペレ:抜け出すまで長かったな。

しかぎ:モリヤマ第二章。

ペレ:ここから?(笑)

しかぎ:うん(笑)。なんか、最初に聴いた印象としては外に向けているというか。今まではいい意味で内に向かっていたし、「ワンラスト・ラヴァー」の歌詞を最初に聴いたときは、こんなズバズバ書いちゃっていいの?ってびっくりしたところはあったけど(笑)、EPとして聴いたらすげえバランスいいし、本当にいろんな人が聴きやすいものになったかなって。前の感じは前の感じで好きだったけど、それが新しいものとライブで混じっていくと、また新しいDear Chambersが見せられるんじゃないかなって思ってます。

▲しかぎしょうた(Dr&Cho)

──あと、EPのタイトルに関してですが、これまでの作品は『Comeback to me』(2017年12月)『Goodbye to you』『Remember me』と、『me』と『you』が交互になっていて、今回は『It’s up to you』。日本語に訳すと“あなた次第”という意味ですが、どういう意図でつけたんですか?

モリヤマ:EPを作る前からこのタイトルだけはあったんですよ。好きなバンドの曲名から取ったので、その人に「すみません、パクります」って言って許可を取って。でも、その曲は「It’s up to me」なんですよ。次のタイトルは『you』だったなと思ったときに、ああ、そうかって。自分のいまの気持ちとか作風的にも、この曲を聴くのは全部“君次第”だし、どんな受け取り方をするのも“君次第”だからっていう意味合いを込めたくて、このタイトルをつけました。

──前からタイトル案としてあったのに、めちゃくちゃキレイにハマりましたね。

モリヤマ:僕ら、思っていないところで全部回収しちゃうんですよ。昔からそういう節があって。結構ノリで決めちゃうんですけど、いまこうやって話をしていて、このタイトルにしてよかったなと思ったし、いつもタイトル通りに自分たちが進んで行ってるから、次はどうなることやらって感じです。

──次作も楽しみにしてますね。そして、9月から<Strikes Back TOUR 2020 〜延長戦〜>が始まりますが、延長戦ということはコロナの影響が出る前にもう決めていたんですか?

モリヤマ:いや、ツアーができなくて、振替公演よりも何かおもしろい言い方はないかなと思って、延長戦でいいんじゃない?って。まだどうなるかわからないですけど、やれなかったらやらないし、やれるんならやるし。そういうスタンスでいるので。まぁ、やれればいいんですけどね。

──そこはホントそうですね。

モリヤマ:やっぱどうなるかわかんないですからね。たとえば、僕がまだ地元に住んでいて、こんなバンドが東京から来たら普通に怒りますもん。「なんか訳わかんねえ奴らが来やがって……!」って。

ペレ:「誰だお前ら!」って。

モリヤマ:そうやって言われそうだしね、本当に。でも、お客さんに「僕らはやりますよ」っていうのを見せたかったんですよ。それこそ前向きなところというか。だから発表してよかったなとは思ってますけどね。

──しかぎさんはツアーであり、今年の後半はどんな活動をしたいと思ってますか?

しかぎ:どうなるか全然わからないところもあるんですけど……まあ、ライブはやっぱりやりたいですね。それに尽きるかな。

モリヤマ:(しかぎは)バンドの動きにあんまり絡んでないんですよ。

しがぎ:会場に行って、ライブやって、お酒飲んで帰るっていう(笑)。

モリヤマ:でもさ、どんなバンドになりたいの? 今年の後半の目標とかある?

しかぎ:今のところの動きは超おもしろいじゃん。いろいろ発表もできたし。だからおもしろいまま行きたいけど、その案を出すのは俺じゃないから(笑)。

──その分、いいドラムをがっちり叩きますよっていう。

しかぎ:そこですね! ドラムがうまくなりたい。それですね、今年の後半の目標。

モリヤマ:お前、そこに行くまで何年かかってんだよ(笑)。

ペレ:ちゃんとやれ!(笑) ライブができるかどうかは本当に状況次第なので、やれたらやるし、できなければまた考えるっていう感じにはなっちゃうんですけど。でも、できることの中で、僕ららしく諦めずに楽しいことを探っていきたいですね。それが何になるかはわからないけど、「あいつらおもしろそうなことやってんな」って思われるようなことを、引き続き探していけたらいいなと思ってます。

取材・文◎山口哲生

▲Dear Chambers/「It’s up to you」

1st E.P「It’s up to you」

2020年6月3日(水)発売
PADF-014 ¥1,500+tax
1.Strikes Back
2.ワンラスト・ラヴァー
3.青年時代
4.幻に会えたなら
5.本音

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