【インタビュー】THE SLUT BANKS、最新作『Rock'n'Roll to the MAX』は「免疫力の上がるアルバム」
■「すげえんじゃね? 新しいドラム」
■と言ってもらえるようなものにしたかった
──今回は曲作りをするにあたって、鍵盤導入をあらかじめ念頭に置いていたんですか?
DUCK-LEE:そういうわけでもないし、例によってテーマとかコンセプトはないんだけども、まあとりあえず簡潔に、3分ぐらいの曲ばかりにしたいなというのはあった。最終的には全15曲になったけど、10曲収録だったとしても各3分ぐらいの感じでね。
──でも、15曲って結構なボリュームですよね。
TUSK:そうだよね。正直、ビックリした。
ACE DRIVER:曲が次々と届いてきて、追加で届いた時には「わあ、まだあったか!」と。
DUCK-LEE:コレがねえ、できちゃったのよ(笑)。
TUSK:そこで大変なのは歌詞も15曲ぶん書かなきゃならなくなることで(笑)。いちばん最後に書いたのが「悪くないぜ」だったんだけど、あの曲が届いたのは、もう他の曲の歌詞を全部書き終えて、それをきっちり清書して、仕上げに入ってた時のことで。いきなり携帯に着信があって“ん?”と思ったらそれだった。“いや、もうなんにも残ってないっすけど”みたいな感じ。で、そんな気持ちがあの歌詞には如実に出てる。“悪くないぜ、なんにもない夜だって”というのは、そういうことなんです(笑)。ホントにもう、これ以上何も出てこないっていう状態だったから。
DUCK-LEE:実はあの曲自体、“あっ、忘れてた。まだこれがあった!”と思い出して送ったんだけどね(笑)。
▲TUSK |
ACE DRIVER:そこは大きな違いだよね。やっぱドラムが違えば全然違ってくるし。
──曲を作るうえでの意識にも何かしらの影響は生じましたか?
DUCK-LEE:それはないんだけどね。でも、なんつーか、GODは一生懸命おじさんのリクエストに応えてくれて。「知らないよね? ジョン・ボーナムとかキース・ムーンとかって」みたいな。「ここ、こんな感じなんだけど」とか説明する時にLED ZEPPELINとかTHE WHOの曲を聴かせたりして。
──戸城さんとは世代が親子ほど離れたGODさんとしては、検索しながらロック史を紐解く頻度が急激に高まったんじゃないですか?
GOD:いや、検索まではしてないです。というのも、何かあるたびにいつも“コレだから”って送ってもらえてたんで。言葉で説明が足りないところはそれで充分に補えたというか、そうやって送られてきたものを聴いて「ああ、こういう感じね」みたいに把握して。それで実際やってみると「そうそう、それそれ」みたいな感じに言ってもらえて。
DUCK-LEE:でもなんか、そこですごく努力してくれて。努力っていうか、ちゃんといい感じで臨機応変に対応してくれたんだよね、GODは。
──全15曲もあって、しかも同じようなタイプやジャンル感の曲ばかりというわけでもない。GODさんとしていちばん大変だったのはどんな部分でしたか?
GOD:うーん。やっぱり手数ですかね。まず曲をもらって、自分で譜面を起こしてコピーしてた段階では、もうちょっとシンプルな演奏だったと思うんですよね、完成したものと比べると。だから実際、スタジオでやってる時もほとんどの曲については「ここ、何かもっとフィル入れて」とか、手数を増やして欲しいってことを言われてて。それ以外はもっと何か具体的な指示が飛んでくることがほとんどでしたね。その結果、なんかもうホントにBPMに対して腕がちぎれそうなぐらいフレーズが増えていった曲がいくつかあって。
──拷問ですね、ある意味。
GOD:まあ、なかなかのもんでした(笑)。
DUCK-LEE:GODにとってはメジャー・デビュー・アルバムだから、一応、そうやって輝かしいドラムの記憶を刻ませてやろう、と(笑)。
GOD:俺にとってはむしろ「いやー、輝かしいっていうか、死んじゃうよ」みたいな感じでしたけど(笑)。
DUCK-LEE:いや、でも「すげえんじゃね? THE SLUT BANKSの新しいドラム」って言ってもらえるようなものにしたかったしさ。
──以前も戸城さんは言ってましたよね。実はちゃんと各メンバーの良さを出そうとしてるって。
DUCK-LEE:そうそう、もちろんそういう意識はあるからさ。俺からすると、同じ年代ではもうGODみたいなタイプはいないというか、こういうプレイは求めにくいからね。若くて粗くて雑なんだけど、ちゃんとまとまってる、という良さががある。だからホント、LED ZEPPELINとかTHE WHOの人たちも、バンドを組み始めの頃はこういうドラムと一緒にやってる感覚だったんだろうなって気がするし。
GOD:自分ではまったく心当たりがないんですけどね(一同笑)。
DUCK-LEE:まあでも、そういうもんじゃん。自分ではわかんねえというか。
ACE DRIVER:そうなんだよね。逆に心当たりがあったらビックリしちゃうよね。
GOD:そういったルーツ音楽についても、知識の上では一応ある程度わかってはいるつもりなんですよ。専門学校に行ってた当時に授業とかで出てくる曲程度は知ってたし。だけど逆に言うと、それ以外は何も知らなくて。どちらかと言うと、なんか“今のアニソン大好き!”みたいな人間なんで、自分のどこからそういう部分が出てきたんだろうな、というところについてはホントに思い当たるふしがないんです。
──つまり新曲が出てきた時に“ああ、70年代の何々っぽいな”みたいに解釈することもないわけですよね?
GOD:全然ないですね。
DUCK-LEE:もう、ただただ「叩け、叩け!」って言ってたから(笑)。でもそれをちゃんと叩けるから、そういうふうになれたんだと思うよ。しかもスタジオ・ミュージシャンっぽい音じゃないからさ。なんか、俺たちの音はきっと、そういうのに比べるとちょっと雑に聴こえるんだろうけど、そこがいいのかなって思ってるし。
──雑、という言葉はあんまり良い響きじゃないですけどね。
ACE DRIVER:はははは! 確かに。
DUCK-LEE:じゃあ……粗削り?
TUSK:いや、でもいい言葉ですよ、雑っていうのは。
DUCK-LEE:それこそLED ZEPPELINの初期とかTHE WHOのあの頃の音って粗削りで雑だけどさ、たとえばドラムで言うと、トミー・アルドリッジとかは昔から上手くてきちんとしてるじゃん? 粗削りなところが無くて、そこが俺にはちょっとつまんないんだよね。GODの場合、そういう感じじゃないところがすごくいいかなって思う。
GOD:まあ実際、雑だったという言葉を否定しきれないところはありますけど(笑)。
DUCK-LEE:でもね、そこがいいんだよ。
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