【メールインタビュー】吉俣良(音楽)、水瀬いのり(声優)、安田賢司(監督)の視点から迫る『ソマリと森の神様』

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■監督・安田賢司

──クールごとに多数の新作が発表されている現在のアニメシーンですが、その中でも『ソマリと森の神様』はかなり趣の異なる作品でしたよね。今年1〜3月のオンエア時は“毎週泣けるアニメ”と評判でしたが、原作コミックを読まれたとき、安田監督ご自身はどんな感想を持たれましたか?

安田:異世界ファンタジーをモチーフとした作品があふれる中、今作は“キャッチーなわかりやすさ”や“派手さ”ではなく“世界観”を一番大切としている作品だと感じ、同時に心して取り組まなければ……と緊張したことを思い出します。実際、読み込んでみると一つひとつのエピソードにしっかりと意味があり、全てが絡み合っていて、シナリオの構成にもだいぶ頭を悩ませました。

──わかります。私も「ここまで純粋な“愛”で真っ向勝負するとは!」と衝撃を受けましたから。さらにアニメを観て驚いたのが映像の美しさで、緻密かつ繊細な情景描写が、作品が持つメッセージの清らかさと、見事にマッチングしているなと。

安田:アニメーションは視覚、聴覚、時間をコントロールするエンターテインメントです。その中でも美術、撮影処理を含めた“画面のルック”は視聴者が最初に触れる部分でもあり、どのように構築すれば今作の独特な世界観、空気感を伝えられるかは苦心しました。

──いや、素晴らしかったです。おまけに、今回は数々の名作ドラマや映画を手掛けてこられた吉俣良さんに劇中音楽を依頼されたりと、かなり“音楽”にも力を入れて制作に当たられたようですが、その理由は何だったんでしょう?

安田:キャラクターの細かな感情の変化が大切な作品であり、音楽の役割は通常の作品より高くするべきだと感じたからですね。そんな中、吉俣さんの名前が上がり、これまでご一緒したことはなかったのですが、過去の作品を聴かせていただいて、素敵な化学変化が起きるのではと感じてお願いしました。

──ええ。シンフォニックかつファンタジックで、時にエキゾチックな劇伴もまた、『ソマリと森の神様』という作品の特異性を際立たせていたと思います。吉俣さんもオファーを受けて大変嬉しかったとおっしゃっていましたが、実写でのお仕事が多い方だけに、制作にあたっては驚くことも多かったとか。

安田:アニメーションでの劇伴の発注は、さまざまなシチュエーションだけでなく、さまざまな感情に対応する楽曲を何パターンも、割と具体的な使用構想を含めお願いすることになります。それは、これまであまり経験のなかった発注の仕方だったようで、確かに驚かれていたようですね。

──そこは実写と大きく異なるところですよね。森山直太朗さんが歌うオープニング曲、ヒロインのソマリを演じた水瀬いのりさんによるエンディング曲も、かなり物語とシンクロ率の高いものになっていましたが、例えば歌詞に使うワードやフレーズを提示するなど、何か具体的なオーダーはされたんでしょうか?

安田:森山さんへは「お父さんからソマリへの想いを」、水瀬さんへは「ソマリからお父さんへの想いを」といった、ざっくりとした方向性だけのオーダーだったのですが、お二人が想像以上のものを作ってくださったんです。オープニングの歌詞に“最果ての地”という原作にあるワード使用してくださったのには驚き、感動しました。

──“手を繋ぐよりも 指を繋ぐような”というフレーズとか、ソマリとゴーレムが絆を結ぶエピソードにピッタリだったので、てっきり監督が指定されたのかと思っていました!  もう全12話、心に刺さるエピソードが満載で、時に泣き、時に笑い、時に怒りとジェットコースターのような感情変化を体験しつつ、「人間とは? 種族とは?」と考えさせられてしまったのですが、監督が特に心を掴まれたエピソードを教えていただけます?

安田:作品を作った側としては、どのエピソードも制作時の苦労含め印象に残っており、一番は決められません。ですので、逆にアニメで描けなかったエピソードが、もし映像化できたらどのようになるか……? たまにそんなことを考えてみたりしております。 

──観てみたいですね。となると、今回のサウンドトラックの中で、特にお気に入りのトラックは?という質問にも……。

安田:どの楽曲も素敵で選べません! おかげで映像に音楽をはめるダビング作業はとても楽しく、嬉しいものでした。音楽によって作品の力が一気に強まることを、改めて感じられましたね。

──2枚組で全ての曲が収められていることに、吉俣さんも喜んでいらっしゃいました。あとは視聴者の立場からすると、サウンドトラックのラストに収録されている「わらべ歌〜ことなるかたち〜」については、どうしても伺いたいところで。終盤、危機に陥ったソマリたちの前で、ローザ役の柴田理恵さんが歌う“わらべ歌”に、視聴者の間でも「怖すぎる!」と話題になっていましたが、制作に関して何か裏話があれば教えていただきたいなと。

安田:劇中で歌唱したときに唐突にならぬよう、劇伴でもわらべ歌のメロディを使用した楽曲を作成して、メロディを刷り込ませておきたいとは、吉俣さんに発注させていただきました。



──ああ。サウンドトラックにも「分かり合えない人間と異形」というタイトルで、収録されていますよね。

安田:はい。シンプルながらどこか物悲しく印象に残るメロディで、柴田さんの歌唱もとても伝わるものがあり、作品世界が深まったかと思います。

──シンプルなメロディだからこそ、分かり合うことのできない種族同士の争いによる悲劇が、より強く伝わってきました。ちなみに、数多くの登場キャラクターの中で、もし1日誰かになれるとしたら、どのキャラを選ばれます?

安田:どのキャラクターも当然魅力的なのですが、やはりゴーレムおとうさんでしょうか。表情の無いキャラクターにもかかわらず繊細な感情にあふれており、絵コンテを描いているときもさまざまな表情を感じ……不思議な体験でした。

──感情が無いはずのゴーレムと、感情豊かなソマリ。そんな二人がいかに信頼を築いていくか?というのも、この作品の大きな軸ですよね。そうして人と人……彼らの場合は“生き物”と“生き物”ですが、他者と関係を繋ぐにおいて、今の時代、最も重要なものは何だと安田監督は考えられていますか?

安田:劇中でも語られたことではありますが、やはり互いを思いやる──“絆”ではないでしょうか。新型コロナウイルスにより世界の見え方、感じ方が変化していく現在、改めてそう感じます。

文◎清水素子

『「ソマリと森の神様」オリジナル・サウンドトラック』

2020年6月10日(水)発売
TRAK-0166/0167
¥3,500+税
仕様:2枚組

[Disk1]
M1. 二人の旅(「ソマリと森の神様」メインテーマI)
M2. 子供の目線
M3. ソマリの好奇心
M4. 深い森での出会い
M5. 嬉しい再会
M6. シズノのお薬教室
M7. 優しい指にぎり
M8. お父さんの不器用な優しさ
M9. 雪の日の思い出
M10. 村のお祭り
M11. 市場でのお買い物
M12. 砂漠を進む
M13. 魔女の村
M14. 神秘のベール
M15. 叶える花を探して
M16. 使い魔を操る魔法
M17. かわいい仲間たち
M18. プレゼントを作ろう
M19. 小さな日々の記録
M20. 猫を追って
M21. ドキドキの探検
M22. 追っかけっこ

[Disk2]
M23. 二人の絆(「ソマリと森の神様」メインテーマII)
M24. 危険な予感
M25. 忍び込み
M26. 静かな脅威
M27. 人狩りたちの接近
M28. 追い詰められて
M29. 異形の恐怖
M30. 制御できない力
M31. 大切な思い出
M32. 想いあう心
M33. 叶う願い
M34. ありがとうの気持ち
M35. すれ違い
M36. 小さな存在
M37. 小さな存在(Pf Ver.)
M38. 悲しい約束
M39. 深い悲しみと小さな希望
M40. 分かり合えない人間と異形
M41. 戸惑いと絶望
M42. 残された時間を賭けて
M43. ただ一つの願い
M44. わらべ歌〜ことなるかたち〜

[ボーナストラック]
M45. ありがとうはこっちの言葉(TV version)
M46. ココロソマリ(TV version)

■封入特典
スペシャルイベント(昼の部)優先販売申込券
※スペシャルイベントの中止に伴い、こちらの封入特典は無効となります。

■購入特典
アニメイト/タワーレコード→差し替えジャケット
Amazon→デカジャケット

テレビアニメ『ソマリと森の神様』

2020年1月〜3月放送
■あらすじ
森の中で私は“それ”と出会った。それ(人間)は、わたし(ゴーレム)を「おとうさん」と呼んだ──。
地上は異類異形の人外たちが支配する世界人間は迫害され、絶滅の危機に瀕していた。
そんなある日、森の番人である「ゴーレム」とひとりの人間の少女が出会う。
滅びゆく種族「人間」と森の番ゴーレムの父娘の絆を綴った旅の記録…

■スタッフ
・原作:暮石ヤコ『ソマリと森の神様』(「WEB コミックぜにょん」連載/ノース・スターズ・ピクチャーズ)
・監督:安田賢司
・シリーズ構成:望月真里子
・キャラクターデザイン:伊藤郁子
・サブキャラクターデザイン:大橋幸子、田中穣、吉川美貴
・美術監督:ニエム・ヴィンセント
・音響監督:濱野高年
・音楽演出:佐藤恭野
・音響効果:出雲範子
・色彩設計:中村千穂
・アニメーション制作:サテライト、HORNETS
・音楽(劇伴):吉俣良
・音楽プロデューサー:山岡晃

■キャスト
ソマリ:水瀬いのり
ゴーレム:小野大輔
シズノ:七海ひろき
ヤバシラ:鈴木達央
ウゾイ:早見沙織
ハイトラ:小野友樹
キキーラ:小林ゆう
ムスリカ:速水奨
コキリラ:関智一
ヘイゼル:茅野愛衣
プラリネ:高垣彩陽
ローザおばさん:柴田理恵

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