【対談】燕（BugLug）×猟牙（RAZOR）、「おもしろそうだなあと思ったことはやろうぜ」

■一緒にいいライブの空間が作れればいいなと思います──燕

──BugLugとRAZORとしての初共演は＜バグサミ＞ですか？

猟牙：＜バグサミ＞ですねえ。最後のセッションにも乱入させてもらったりして。だけど俺、めっちゃ久しぶりに会ったんで、若干緊張しました。当時のまま喋れるかなあって。空気感とか、喋り方とか、少なからずお互い大人にはなってましたから。まあ燕は燕なんですけど、やっぱりいろいろ経て今があるんだなって感じましたね。

──燕さんはどんな印象でしたか。

燕：ライブも見て、もうヴォーカリストとしてめちゃくちゃかっこいい存在になってたから、すごいなと思いました。昔から迫力があるヴォーカリストだったけど、久しぶりに見たらシャウトもかっこいいし、歌もいいし、だいぶパワーアップしてたから、「こりゃやべえな」ってちょっと怯えるくらいで。

猟牙：それこそ俺、一聖のことも前のバンドから知っていて、その時いいヴォーカルだなと思ってたんですよ。で、BugLugになって、センスがどんどん開花してるし、すげえなって思いました。結構脅威でしたよ、BugLugは。いい意味で普通じゃないっていうか、変なバンドなんで。ヴィジュアル系といえばヴィジュアル系なんでしょうけど、たぶんそういうマインドで本人たちはもうやってなさそうな気がするし。

燕：そうねえ。

猟牙：どっちかっていうとロックバンドだなあって思いますね。

──ツーマンは今回初めてになるんですね。

猟牙：初めてです。

燕：RAZORは呼ぼうって、すぐに名前が出ました。

猟牙：最初話をもらった時、ぜひやりたい！と思いました。BugLugって、俺らよりも全然先に始まっていて、大きい会場でのワンマンもやっているので。そういう人たちがツーマンで今の俺らを指名してくれるのはありがたいなって思いました。お力添え……というか、BugLugに乗っかるかたちで。


──活動歴でいうとBugLugが先輩にはなりますが、RAZORの活動を見ていていかがですか？

燕：先輩とかそういうのはないんですけどね。でも、まだそんなに長くないのに、急成長を遂げてここまで来てるのはすごいなって思います。早いなあって感じですよ。

──そして両バンドとも、最近4人体制になっての再スタートっていうタイミングなんですよね。

猟牙：はい。大変なんですよ。そっちはどうなの？

燕：いや、うちはわりと前を向いて、前進前進って感じでやってるかな。もちろん、やっぱりちょっとものたりないなって気持ちもあるんですけど、4人でとにかく団結して、前向いていこうぜっていう気持ちのほうが今は強いので。だから、バンドは今強い感じだし、すごくいい空気感ですよ。

猟牙：僕らは特に、長年バンドをやってきて、解散を経て、また組んだバンドなので。そこでまた脱退するのか……って、俺個人的には結構ダメージが大きくて精神的にだいぶ落ちたんです。それでもサポートしてくれる仲間がいたり、事務所の人も止まらずに続けようって言ってくれて。それで背中を押されて、自分を奮い立たせて前に進むことを選びました。だから、今は特に重要な時なんです。いつでも大事なんですけど、今特にいちばん踏ん張らないといけない時期と言いますか。ここをどう乗り切るかで、未来が変わるでしょうね。ずっと5人でやっていくことが当たり前だと思っていたけど、その当たり前がなくなっちゃったから、気持ちに余裕はないし、いい意味であとがないというか……。なので、今回の話はありがたかったです。刺激をもらいに行きたいし、逆にBugLugにも刺激をあたえられたら、俺らが出た意味があるかなと思います。

──BugLugはさらに10周年という大きなタイミングですから。猟牙さんは10年ってイメージ湧きますか？

猟牙：うーん……でもたぶん10年を目指して頑張るっていうより、気づいたら10年だったっていう感じだと思うんですよね。バンドをやってると、時間のスピードの流れがめっちゃ早くて。

燕：ほんとそうだよ。1年とかもう秒だよね。

猟牙：だから、10周年を目指してとかはあんまり考えずに、今は目の前にあるものをどう突破していくかっていうモードですね。

──10代の時から仲良かったおふたりが、今こういうお話をしてるというのも貴重ですね。

猟牙：最近は全然つるんでなかったけど、会うとお互い昔話がめちゃくちゃ出てくる（笑）。ここでは言えないような話もいっぱいあるんですよ。

燕：あと共通するのが、俺たちヴィジュアル系バンドがすごい好きだったってこと。いろんなバンドのCDを聴いて、いっぱいバンドの話したなあっていうのを覚えてる。

──そういう意味では、同じ時代のヴィジュアルシーンをずっと見てきたわけですけど、印象的だった時期はありますか？　いろんなブームもありましたし。

燕：ちょうど俺らぐらいの世代で、ヴィジュアル系がみんな黒のエナメルの衣装着てた時代から、ちょっと私服まじりな感じになっていったんだよね。

猟牙：kannivalism、BAROQUEが時代を変えた時。で、そこに影響は受けてるじゃん？

燕：とても受けた。ローディもやってましたからね。

猟牙：で、俺もちょっとそういう方向に走ろうと思って挑んだこともあったんですけど、どんズベリして。

燕：猟牙はそっちじゃなかったよね（笑）、黒系なイメージで。でもそっちに行きかけたんだ。

猟牙：行きかけた。行きかけたんですけど、俺にはできなかったですねえ。BORNの時も、ほんとはスマートにかっこつけた美しいヴィジュアルを目指してた時期もあるんですけど、まあスベって。

燕：スベったんだ（笑）。

猟牙：結果、キワモノに走ったっていう（笑）。あとは、SNSとかが始まったり……時代が移り変わる瞬間を体感してる感じはありますね。

燕：当時は魔法のiらんどしかなかったんだから。

猟牙：そのとおり。それこそBORNの初期なんて、チェキっていうものが出始めたばっかりだったんですけど、なにそれ？って言ったから（笑）。

燕：世代的にわからないんだよね。「チェキって何？　今そういうのが流行ってんだ？」みたいな（笑）。俺らの時代って、アー写セットだったじゃん。

猟牙：そうなんですよ！　あと、雑誌がどんどんなくなっていったりとか、こうやって時代は変わっていくんだなっていう。

燕：そうだねえ。


猟牙：特にここ10年くらいはすごかったんじゃないですか。いわゆるヴィジュアル系シーンも波がハンパなかったと思うし、今大変な時期だと思うんですよね。だから、逆にいうともう考えなくなりましたね、流行り云々は。いろいろ迷ったりもがいたりもしてるんですけど、結局自分が何をしたいかっていうところでしかないから。ただ、そんな中でBugLugは10年やり続けて、武道館とか野音でライブもやって、すごいなって思います。時代を耐え抜いてると思う。

燕：続けられていることが何よりありがたいですよ。バンドにもいろんなことがあって、このシーンも今話にあったようにいろいろ変わった中で、でもやっぱり好きだから続けられるんでしょうね。もう何でも屋さんって感じだし。おもしろそうだなあと思ったことはやろうぜ、みたいな感じかな。

猟牙：それ強いよなあ。

──逆に、燕さんがRAZORみたいな黒っぽいヴィジュアル系に憧れたこともありました？

燕：もともとそこから入ってるんで、見たらやっぱりかっこいいなって思うし、機会があったらやりたいなと思いますよ。俺、たまに猟牙みたいな頭したりしてるし（笑）。好きですねえ。

──猟牙さんとしては、やっぱり今日のような黒い系のスタイリングにこだわりが？

猟牙：いや、BugLugとの対談で、しかもYouTubeでも流れるって聞いた時に、どう攻めたらいいんだろうって悩みました（笑）。たぶん、燕がラフな感じでくるのはわかっていたので、せめてこっちは黒を着ようかなあ、みたいな。一瞬寄せようかなとも思いましたよ（笑）。もう黄色とか着て行ってやろうかと。

燕：俺も、ライダースでも着てこようかなと思ったんですけどね。やっぱりラフなスタイルでいいかなって（笑）。

──では、ツーマン当日への想いも聞かせてください。

猟牙：まずプレッシャーですね。まあ俺、どんな時もライブは常にプレッシャーを感じてるので。毎回死にそうになってるんですよ、もうピリピリしちゃって。RAZORはあんまりルールは作らずにやってるので、アドリブも多いし、結構感覚的な瞬発力が大事なんです。しかも久しぶりにBugLugのメンバーとライブ、しかもツーマンとなると、まったく空気が読めないので。とりあえずいい意味で喧嘩を売りに行きたいと思います。

燕：いいじゃん、いきなり「トイレだー！」って出れば。

猟牙：ははは！

燕：今そんな感じだとは知らなかったので、結構考えるヴォーカリストになったんだなあって思いました。素晴らしい。ライブを見ると、すげえ考えてるなあっていうのはわかりますけどね。あの頃とは違って。

猟牙：大人になっちまったな！

燕：なっちまったね（笑）。まあ、長年の友達でもあるし、RAZORもすごくかっこいいバンドなんで、一緒にいいライブの空間が作れればいいなと思います。

猟牙：今、RAZORにとってすごく大事な時期というか、乗り越えないといけない壁がたくさんある時期なので。でも、逆にそれを背負ってやっている緊張感が、最近いい意味でライブに出てる気がしています。いろんな思いがありますけど、とにかくいちばんは来てくれた人が来て良かったなって思ってくれることなので。ぐっちゃぐちゃにしてやりたいなと思いますね。

取材・文◎後藤寛子
写真◎大塚秀美