【インタビュー】COMEBACK MY DAUGHTERS、EP『WORN PATH』にサブスクの影響とバンドの変化「僕らが腑に落ちるリリースの仕方」

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■6年間出してなかったのは、このためです
■踏んでました、この道を

──「HAVE A TOUGH TIME」は、CHUN2さんの曲だそうですが。

CHUN2:ケバい音楽ってけっこうあるじゃあいですか。僕、ケバい音楽も好きなんですよ(笑)。

──あ、そうなんですか(笑)。

CHUN2:ただ、家で聴くロックとか、アコースティックポップとかって、すごく渋いものばかりで。それのどこが渋いのかなって考えてたら、わかったんですけど、ドラムがサビでクラッシュシンバルを鳴らさないんです。それがずっと気になっていて、“ここがサビですよ”ってならないドラムっていうのを再現したいと思いながら作った曲です。

──じゃあ、飯島さんにはクラッシュシンバルを鳴らさないようにとオーダーして。

CHUN2:そうですね。だから葛藤もあって、僕、ケバいのが好きなんで、“サビ!”って感じにしたいけど、したらダサいしっていう。結局、最終的にトラッドな感じにやってもらえて良かったです。

高本:今回、そういうことはけっこう心がけたかもしれないです。「STRAY BIRD」もなるべくそういうふうにすると言うか、僕の中で1990年代のエモってテーマがあったんですけど、エモって言っても平坦なほうのエモなんですよ。PEDRO THE LIONとか、最近だったら、(Sandy) Alex Gとか、ああいう感じ。曲として、コードで“来た!”みたいな感じは出すんですけど、おおっぴらにやらないと言うか、バシーンと入れば、サビになるんですけど、“あれ、何かいい感じに鳴ってない?”って転調の仕方を心がけていて。それは、たぶん最近の僕らのモードと言うか、そういう感じでアレンジしがちなのかもしれないですね。

▲2019年11月17日@新代田FEVERワンマン

──そして、4曲目の「SAME OLD SAME OLD」は、CHUN2さんのスライドギターも大きな聴きどころです。

CHUN2:苦手なんですよ、すごくスライド(笑)。正直、“スライドギター? は?”って感じなんですけど(笑)。

──じゃあ、渡辺さんが作ったデモがすでにスライドギターだったんですか?

CHUN2:いや、入ってなかったです。「そこは任せるよ。いいの乗せてね」ってところだったんです。すごく時間がかかって、最後の最後まで悩んで、みんなに迷惑かけましたね。

──うん? 苦手だけど、スライドギターが一番ハマると判断したってことですか?

高本:みんなで音を出した時に「違う。コードじゃない。アルペジオじゃない。リフでもない。あ、スライドだ」「じゃあ、それで行こう」って。

CHUN2:最初、自分の手癖で入れたみたら、THE SMITHSみたいになっちゃって、うーんと思って、スライドをちょっとやっちゃったら、「全編、スライドで行けるんじゃない?」ってなって、やっべーって(笑)。おかげですごく時間がかかりました。

──でも、時間をかけただけあってすごく良いですよ。

CHUN2:良かったです(笑)。

高本:あのBPMで、あの明るさでスライドギターって、やっぱコンセプトとしてすごく良いと思うんですよね。

──5曲目の「FRIDAY NIGHT」もスライドギターが入っていますよね?

CHUN2:入ってますね。僕はこれがいわゆるカムバックの曲だと思っていて。

高本:僕の手癖だけで作られた曲ですね。

CHUN2:良いところがぎゅっと詰まった曲だと思います。

──後出しするみたいに言いますけど(笑)、今回、一番好きな曲です。

高本:Paul McCartneyとか、Graham Nashとか、消したくも消せない僕の趣味の部分が思いっきり出てますよね。ほんとはもっとサッドで、アーティスティックな音楽が好きでいたいんですよ、僕は。そっちにもっと自分をひっぱられたいんです。サイケデリックなものも含め、もっと妖艶なものに行きたいんです。だから、自分の趣味を消そう消そうとするんですけど、そのまま曲を作ってしまう時がある。それがうまくハマると良い曲が出来るという感じなんでしょうね。

──らしい曲に加えられたラグタイム風に鳴るピアノが新鮮で。

高本:ああ、そうかもしれないですね。

──中盤のギターも歪んでいて。

CHUN2:ワウも加えて、ちょっとローファイな感じで録っていますね。

──そんなふうに単なるルーツポップで終わらないところがカムバックなのかな。ところで、『WORN PATH』というタイトルは、どんなところから?

高本:踏み固めた道という意味なんですけど、要は「6年間出してなかったのは、このためです。踏んでました、この道を」って思い込めて、『WOEN PATH』としました。

──11月17日のワンマンライヴでも、「今回、CDを作って、物を作るモチベーションが戻ってきた」と言っていましたね。

高本:冒頭で、CDを作る気がなくなったと偉そうに言いましたけど、やっぱり、作ったり、出来たりするとすごくうれしくて、それに対して反応をもらったりするとまたうれしくて。そういう気持ちを少しずつ忘れたり、それよりもネガティヴな気持ちを先行させたりしてたのかなって思いましたね。単純にジャケが出来上がってきた時とか、現物が届いた時とかの「わー!」って感じも含めて、やっぱりこうやってみんなで物を作るっていいなって思いましたね。

▲EP『WORN PATH』裏ジャケット

──ジャケットは、Joji Nakamura (中村譲二)さん。どんなところが気に入っているんですか?

高本:まず日本人とは思えない作風じゃないですか。じゃあ、どこなのって言っても、それもわからない。でも、そういうところもカッコいい。自分も物を作るなら、そういうふうにありたいとずっと思っているんで、そこがすごく好きなところですね。

CHUN2:ハードコアパンク界隈で出会ったんですよ、2000年ぐらいに。そこから付き合いがあるんです。

高本:付き合いと言っても、僕らがただ「いいな」って言っているだけなんですけどね(笑)。ちょっと前だったらOHAYO MOUNTAIN ROADの『Untitled Movie』とか。彼が書く字もすごく好きで、「字もぜひ書いてもらえないか」ってお願いして、ジャケ裏の6曲のタイトルも含め、書いてもらったんです。

CHUN2:レコーディングする時にTKと「Joji君にジャケをお願いしようか。やってもらえたら最高だね」って話をして、オファーしたら、「ぜひ」ってことになって、うれしかったですね。

──こういう絵を描いていくださいってリクエストしたんですか?

高本:いや、何もないです。そこはただのファンなんで(笑)。

CHUN2:Joji君にお任せしました。

──じゃあ、曲を聴いてもらって、好きなように書いてください、と。

高本:いや、曲名だけ伝えて(笑)。あとは想像で。僕らのことはたぶん知ってくれてるだろうから。どんなものが出来上がってくるんだろうかって、物作りにはそういう歓びもありますからね。やっぱり単純作業じゃないなって言うのは、今回、思いました。ジャケットのデザインやってくれたり、写真を撮ってくれたり、僕らの周りには素敵な仲間がいるんで、そういう人たちと何かを作る楽しさはやっぱりあるなって。

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