【ライブレポート】クラウド・ルー、来日公演で「人を愛する人は自由になる」
近年SUMMER SONICをはじめ、日本のフェスにも多数参加しており、くるり、一青窈、さかいゆう、写真家の川島小鳥といった日本人アーティストたちとも交流のある、いま最も注目すべき台湾の人気シンガーソングライター、クラウド・ルーが12月11日、東京・渋谷 TSUTAYA O-EASTにて来日単独公演を行った。
◆クラウド・ルー (Crowd Lu / 盧廣仲) 画像全22点
中華圏でも絶大な支持を受けるクラウドは、現在ワールド・ツアー中。4月に5度目となる台北アリーナでの3日連続公演に初挑戦したのを皮切りに、初の高雄アリーナ公演も大成功に収め、オーストラリア、シンガポール、マカオ、マレーシアなどを回り、日本公演は約1年振りとなる。昨年のマイナビBLITZ赤坂から会場が大きくなり、1300人のファンが国内外から駆けつけた。
スタンディングの会場はフロアを埋め尽くす人で後方の扉までいっぱい。高まる胸の鼓動のように響くバスドラに合わせた大きな手拍子と歓声に迎えられて、クラウド・ルーがステージに登場。軽快なポップス「一個弁當」でライブがスタートした。バンド構成は、ベース、ドラムス、キーボード、トランペットの4人。そして、ギターはクラウドだ。そのまま「我愛你」を歌うクラウドが、逆光を浴びてシルエットとしてステージに浮かび、コーラス部分で早速コール&レスポンスをして会場に一体感が生まれる。
「こんばんは。クラウド・ルーです。お久しぶり!」と滑らかに日本語で挨拶し、「ハロー!アップステア」「ニーハオ!」とだけ言って、アコースティックギターからゴールドのラメのエレキギターに変えて、R&B調にアレンジされた「七天」が始まる。クラウドのギターも、爽やかな原曲からのアレンジも、すべてがエモーショナルだ。
続いて、シンセとトランペットがノスタルジックな「你是我的水」を穏やかに歌い、間奏で中華圏のファンにもメッセージを送った。そして、1コーラス分はピアノ伴奏のみで聴かせる「聽見了嗎」では、気持ちを込めてどんどん調子を上げていくクラウドの伸びやかな歌声が美しく、会場を突き抜けそうなくらいに響きわたっていく。エレキを肩にかけたまま弾かずに、スタンドマイクで歌う姿もまた新鮮。この曲は、台湾でのアリーナ公演では、リフトで高くせり上がり、レーザーをふんだんに用いた大がかりなデジタル電飾の演出で魅了したが(YouTubeにて公式ライブビデオ公開中。必見!)、セットや演出がなくても、彼の歌声だけでその壮大な雰囲気と感動が同じように伝わってくるからすごい。
歌い終えて、アコギに変えるちょっとした間を埋めるように「元気?」とボソッとつぶやくと、返ってくる中国語の声にも「ありがと」と日本語で答えるクラウド。イスに腰掛けてアコギで弾き語る「明仔戴」のイントロを弾いただけで、フロアから歓声があがる。歌もギターも繊細で優しく、温かい。そして、座ったままエレキに変えて、メロディアスな楽曲「好想要揮霍」をしっとりと歌い上げた。完璧なファルセットも聴かせ、クラウドの歌の世界にますます引き込まれていく。
イスから立ち上がり、トランペットがドラマチックな「風雨」を軽やかに歌い、それまでじっと聴いていた観客たちも軽く体を揺らす。再びイスに座って、ピンスポットの下で「藍寶」「魚仔」を続けて熱唱。スタンディングホールとは思えないほどの静寂の中、足首が自然とゆっくり回っていたりヒザがピンと伸びていたりする、クラウド独自のアコギのプレイスタイルで、丁寧にしなやかに歌を聴かせる。場内は感動に包まれ、盛大な拍手が送られた。
今度はパステルカラーのエレキに変えたクラウドが、自分の足下を覗き込むようにしながら、「フグおいしい。みょうがおいしい。松屋おいしい」と言って歌い始めたのは、「早安晨之美」。昨年の来日公演では重厚感のあるパワフルなアレンジに驚かされたが、今回は原曲に近い爽やかな雰囲気でありつつ、さらなる洗練されたポップスに。
次はまたエレキに変え、クラウドの渋めなギターソロからかっこよく始まった、どこかジャジーな「別在我睡著的時候打電話給我」。間奏でのギターソロはまるでロックのように熱くアグレッシブ。途中でコール&レスポンスが始まり、だんだんと思いのままに難しく遊び始め、観客を楽しませる。そして「Yeah!」と煽りながらギターをかき鳴らすクラウドがフロアの温度をどんどん上げていく。
続く、原曲もノリの良い明るいポップス「再見勾勾」で、クラウドがエネルギッシュな歌声で攻めていき、フロアもノリノリに。メンバー紹介に続き、厚めのギターサウンドでアレンジされた「口水流下來」でさらに盛り上げる。間奏でキーボードのメンバーがチャルメラ風な楽器でチャルメラソロを披露すると、そこにクラウドが加わりギターで応戦。チャルメラv.s.ギターの即興の掛け合いは、センスに溢れまくっていてめちゃくちゃかっこいい。こんな瞬間を楽しめるのもクラウドのライブの醍醐味だ。
「最後の曲です」と英語でつぶやき、アラビアンチックなシンセに乗せて、「すき家〜、たい焼き〜、アサヒ〜(アサヒビールのことらしい)、松屋〜、シュ〜クリ〜ム、あんぱん、みなさん一緒に歌おう〜!」と、それ風に歌って始まったラストソング「Oh Yeah!!!」。出だしから「Yeah! Yeah!」のかけ声で盛り上がり、歌が始まると、エレクトリックにエフェクトしたマイクで1コーラス分を歌い切る。クラウドの声はそれでも美しく、歌の巧みさまでがさらに浮き彫りとなって、聴き応えがあり面白い。通常のマイクに戻して歌い、「Oh Yeah!!!」と観客が答えるコール&レスポンスも。
先の「すき家」「松屋」というせっかく覚えたおいしい日本語ワードや「グッドモーニング!」「メリークリスマス!」などをコールして、自分で笑っているクラウド。再びボイスチェンジしたマイクで、曲に合わせて「愛してる〜」という嬉しいワードを交えてファンを喜ばせた。同じ1曲であることを忘れさせるくらいに多彩な展開があり、毎回違ったアレンジで様々な表情を見せる「Oh Yeah!!!」」で、ライブは最高潮に。最後に「トーキョー!」とシャウトして本編のフィナーレを迎えた。
アンコールではギターを持たずにクラウドが再登場。現在の彼の代表曲のひとつと言える「幾分之幾」を熱唱した。感動的な歌に涙する観客の姿も。歌い終えると、会場のあちらこちらからたくさんの「我愛你!(愛してる)」の声が飛び交い、「ありがと」と答えるクラウド。関係各位と観客に感謝を伝えて、「みんなと僕、すべてを合わせてクラウド・ルーになる」と英語で付け加えた。さらに、2020年にニューアルバムをリリースすることを宣言。
そして、最後の歌を歌い始める直前に、日本語で「人を愛する人は自由になる」と、これから歌う「大人中」の歌詞のワンフレーズを最後のメッセージとして伝えたクラウド。こうして始まった「大人中」は、彼が奏でる穏やかなアコギの響きがさっきまでの熱を包み込むように柔らかく、気持ちのこもった歌が心に響く。優しく穏やかに、感動と幸福感に包まれながらライブの幕が閉じた。
このツアーの台北、高雄でのアリーナ公演では、大掛かりな舞台セットやEDMにアレンジした楽曲も多々あり、ダンスまで披露して見事なエンターテイナーぶりを発揮したクラウド。今回の東京公演では、シンプルなライブスタイルによって、クラウドの歌や曲の良さはもちろん、サウンドセンスと多彩な音楽世界をじっくり味わうことができた上、ギタリストとしての魅力までがより感じられるライブとなった。もっと聴いていたい、ずっと見ていたい……ライブを見た人はそう思ったはずだ。2020年もまた来日公演を希望したい。次はぜひニューアルバムを携えて。
取材・文◎小俣悦子
撮影◎Viola Kam 写真提供◎TEAM EAR MUSIC
協力◎ワイズコネクション
■クラウド・ルー 2019 ワールド・ツアー・東京<Crowd Lu 2019 World Tour Tokyo>12月11日(水)@TSUTAYA O-EASTセットリスト
02. 我愛你
03. 七天
04. 你是我的水
05. 聽見了嗎
06. 明仔戴
07. 好想要揮霍
08. 風雨
09. 藍寶
10. 魚仔
11. 早安晨之美
12. 別在我睡著的時候打電話給我
13. 再見勾勾
14. 口水流下來
15. Oh Yeah!!!
encore
en1. 幾分之幾
en2. 大人中
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