【インタビュー】BIGMAMA、『Roclassick』シリーズに終止符を打った理由
BIGMAMAが、12月18日にコンセプトアルバム『Roclassick 〜the Last〜』をリリースする。『Roclassick』とは、“ロックとクラシックの融合”をテーマに掲げ、クラシックの名曲群をBIGMAMA流にアレンジしてきた恒例シリーズで、今作で第3作目。そしてタイトルにもある通り、本作をもってシリーズに幕を降ろすこととなった。この日の取材で金井政人(Vo&G)は「前作を“超える/超えられない”ということじゃなく、別次元のものを作るのが一番いい3作目の作り方だと思っていた」と話していたのだが、事実、本作はシリーズ史上最もバラエティに富み、かつ普段の彼らとは一味違った顔も見せる大充実の1枚に仕上がっている。しかし、5人はなぜ今作で「the Last」と銘打ったのだろうか。金井政人と柿沼広也(G&Vo)に話を訊いた。
◆ ◆ ◆
■これ以上のものができるなら逆に教えてくれ
──まず、今作でラストと銘打った経緯からお聞きできればと思います。
金井政人:これをラストにしようと思って作っていたというよりは、最終的にどんなタイトルにしようと思ったときに、素直に『3』が出てこなかった。そこに尽きるかなと思っていて。
──結果的にラストになったんですね。
金井:BIGMAMAというロックバンドの物語があって、その時々で作りたいものを作ってきたけど、バンドを長く続けていく上で、いろんな寄り道や、その時々でテーマや遊びがあるほうが楽しい。『Roclassick』シリーズは、そういう中から出てきたアイデアのひとつなんですよね。クラシックと自分達をミックスする、メンバーにバイオリニストがいるからこそできることをする、そこで得たものを自分達のオリジナル曲やライブに連れてくるという。だから、このシリーズは自分達にとってすごくいい“養分”というか。正確に言うと“エサ”なんですよね。
──なるほど。
金井:ただ、これってやっぱりものすごく他力本願なんですよ。クラシックという元ネタをイジることが前提にあるし、“BIGMAMAの曲が好きだ”と言われて、一番好きな曲が『Roclassick』の曲だと、それはそれで悔しいから。もちろん作る上ではそういうものにしようと思ってはいるけど、やっぱり100%オリジナルなものを期待されていたいし、かっこいいものを作りたいというのが、まずは一番なので。それに、自分達がおいしく料理できそうな素材は、ここですべて料理し切ってしまったというか。これ以上のものができるなら逆に教えてくれっていう。自分ではそういう状況ですね。
柿沼広也:『Roclassick』シリーズって、いろんな挑戦や戦いが多くて。メンバー各々がクラシックの名フレーズと戦うことで、普段の自分からは出てこないものが出てくるし、僕らとしては発明だなと思いながらやってきたんですよ。もちろん海外とかでも有名なクラシック曲を使ったりすることはあるけど、あくまでも僕ら5人が作るオリジナリティの中で、クラシックのフレーズを演奏して再現したり、アレンジしたり、なんなら歌詞やメロディも作る。そこに僕らのアイデンティティを込めてきたんです。ただ、僕らの中で有名なフレーズも出尽くしてきたし、これ以上作らなくても悔いはないっていうぐらいの作品ができたから、ラストがふさわしいかなっていうところはありますね。
▲金井政人(Vo&G)
──このシリーズは「計算高いシンデレラ」から始まったわけですが、作っていた当時と今では、クラシックと向き合うにあたって心境の変化があったりします?
金井:心境の変化で言うと……みんな知らなかったら申し訳ないんですけど、『幽☆遊☆白書』という漫画があってですね。飛影というキャラクターに邪王炎殺黒龍波っていう技があるんですけど、邪王炎殺黒龍波は飛び道具じゃなくて、術師の妖力を高めるための栄養剤(エサ)なのよっていうシーンがあって。
柿沼:よく淀みなくその話が出てきたよね?(笑)
金井:そういう意味では、今は“エサ”だと確信してます。意図と狙いが明確にある。昔はもうちょっと無邪気でしたね。このフレーズでどう遊ぼう?っていう子供の遊びみたいな感じだったので。
──『Roclassick』の第1弾がリリースされたのは2010年で、4thアルバム『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』のタームに入っていく前。『Roclassick2』は2014年、タームとしては6thアルバム『The Vanishing Bride』のときで、シングル「Sweet Dreams」の後にリリースされましたが、結果的にこのシリーズは、バンドがより大きなところへ向かおうとしているタイミングに存在していたような感じもあるんですが。
金井:“『Roclassick』を作った後は、いい曲が生まれやすい”というセオリーが僕の中であって。僕の中で、1枚目の『Roclassick』の後に作ったオリジナル曲は「秘密」で、『Roclassick2』のときは、リリースは前後しているけど、改めてバンドの代表曲にしようと向き合っていた曲が「Sweet Dreams」だったんですよ。やっぱり、100年引き継がれた名曲の後に出すオリジナル曲って、ひょろいものを出せないじゃないですか。それはドラマティックさなのか、王道なのかわからないけど、とにかく何か強いものを作らなきゃっていうエネルギーが生まれてくるというのは、今だからわかったことですね。昔は言葉でうまく説明できなかっただけかもしれないけど、でも思っていたと思います。
柿沼:金井は曲に関してだったけど、僕はアルバム単位だと思うんですよ。『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』と『The Vanishing Bride』は、僕らの歴史の中でも大事な1枚なんですよね。ライブでやることも多いし、『君がまたブラウスのボタンを留めるまで』は、それまで出してきたアルバムと全然違っていたし、みんなのスキルや、やろうとしていることが一段上がった作品になったのは、やっぱり『Roclassick』があったからで。
──それこそ、いい養分だったという。
柿沼:なおかつ、僕は金井とちょっと違うかもしれないけど、『Roclassick』シリーズは名刺代わりというか、僕らを知ってもらういいキッカケだと思うんですね。カバーがすごく売れて、そこから順風満帆になる方もいっぱいいらっしゃるし、この作品がそういう存在になってくれたらいいなと、僕は思っていて。だから毎作思っているし、今回は特になんですけど、“この1枚で人生変わるでしょ?”って。そう思うぐらい、自分とも、バンドとも、世の中の音楽とも向き合っているので。ただ、この次で刺しに行くための1枚を毎回作っているような感覚ではありますね。
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