【インタビュー】ReN、EP「Fallin'」に温もりとギターとの出会い「目をつぶったら景色が見えるような音楽」

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ReNが11月27日、EP『Fallin’』をリリースする。同作は2019年4月にリリースされたデジタルシングル「HURRICANE」同様、米国現地ミュージシャンとのセッションから生まれた「Hot and Cold」ほか、タイトルチューン「Fallin'」や「Love you」といった全4曲を収録。とりわけ、オールディーズを連想させる「Fallin'」はクリスマスシーズンにふさわしく温かで情緒豊か。1950年代のヴィンテージギターの音色が導いたというサウンドメイクも秀逸だ。

◆ReN 画像

同シングル付属DVDには今年5月に開催された<ONE MAN TOUR 2019『衝動』>新木場公演より、8曲のライブ映像を収録。ReNにとって初の映像作品となる。ギターを抱えてひとりステージに立ち、ループステーションを駆使することで、ギターフレーズはもちろん、ビートやコーラスなどを重ねるグルーヴスタイルの全貌が明かされる映像は必見だ。

「聴いたとき、なんとかして景色を見ようとする」というReNの音楽観が語られたEP『Fallin’』ロングインタビューには、卓越したソングライティング力、無尽蔵なアイディアに裏付けされた普遍的な音楽への敬意、独自性をひた走るライブスタイル、そしてその中核にある飽くなき冒険心が溢れ出している。

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──4月に配信リリースした「HURRICANE」はナッシュビルで制作した楽曲ですよね。その際のBARKSインタビューでは、ロサンゼルスやナッシュビルのセッション等でいくつかの楽曲を作ったという話を伺いましたが、今回のEP『Fallin’』収録曲も、アメリカでのセッションで生まれた曲で構成されているんですか?

ReN:「Hot and Cold」は「HURRICANE」を作ったときの旅の、ロサンゼルスで出来た楽曲ですね。「Fallin’」と「Love you」は基本的には日本で作ったものなんです。

──そうだったんですね。そもそも、前作をアメリカで制作しようとなった理由は、何がいちばん大きかったんですか?

ReN:もともと自分が好きな世界観や、今のメインストリームで流れているものがアメリカとか、もっと言えばロサンゼルスとか、そのあたりのものが多い気がしていて。“海外でセッションをしてみたい”と思ったときに、いろんな国が候補に挙がったんです。僕は10代の頃、イギリスにいたことがあるので、ブリティッシュもルーツのひとつなんですけど、まずは、今のメインストリームのスタンダードを見に行きたいと思ったら、やっぱりロサンゼルスだなってなったんです。ミュージシャンやプロデューサーもすごく多いし、あとはロケーションが音楽制作にいい。“気候がいいから空気も乾燥していてギターの音がすごくよく鳴る”という話も聞いていたので。とにかくまず、そこを確かめに行きました。

──肌で感じてみて、インスパイアされることも多かったですか?

ReN:実際その通りでしたね。いろんな国に行ったわけではないので比較はできないですけど、ロサンゼルスとナッシュビルでセッションをしてみて、その場でしか出来ない音楽が存在することがわかりました。同じ空間にいると、どうしても“入り口がいつも一緒で、どうにか違う出口に行こうとするんだけど、最終的に似たようなところに落ち着いちゃう”というのがある。でも、ガラッと環境を変えてみることで、同じように弾いていたフレーズもまったく違うように聞こえたり、それに対するメロディが変わったりというのが、本当にあるんです。それは簡単な話、部屋をちょっと変えるだけでも起きることなんですけど、それがもっと如実に“ああ、すごいな”ってわかるくらいテンションが上がるんですよね。それがアメリカに行って良かった部分で。そういった意味では、イギリスは気候がドンヨリしているから、行ってみたら湿度の高い音楽が生まれたかもしれない。とにかく、発想がいっぱい浮かぶような旅でしたね。

──「HURRICANE」はシンプルだけど、ドラマティックでセッションのボリュームが楽曲の後半でより高揚していくような楽曲ですよね。「Hot and Cold」は同じくアメリカで作ったということですが、牧歌的な雰囲気があって、いい乾きがある楽曲に仕上がりましたね。

ReN:「Hot and Cold」のほうがナッシュビルで作ったような説得力があると思うんですけど、逆で(笑)。「HURRICANE」がナッシュビルで、「Hot and Cold」がロサンゼルスで出来たという。「Hot and Cold」は、牧場に山小屋のようなスタジオがあって、そこのセッションに参加して出来た曲で。牧場だから涼しげな世界観があるんですよね。一方、ナッシュビルはカントリーの聖地なんですけど、「HURRICANE」を作ったときは痛いくらいに寒い時期だったんです。そういう荒れ狂ったフィーリングの中で作ることができた。2曲とも、“何か面白いものがあるかな”ってパッと開いてみたら“やっぱりあった!”っていう感覚でしたね。

──「Hot and Cold」はどんなセッションだったんですか。

ReN:日本でいうアレンジャーとか、現地ミュージシャンと一緒に音を出しながらのセッションですね。自分のフィーリングを音に出したりするなかで、サビのフレーズがポンと浮かんできたんです。そのフレーズを元に、“次はこうだな、ああだな”っていう展開を繋いで出来上がったんです。

──セッションでは歌詞も?

ReN:そう。サウンドも新鮮ですけど、歌詞についても最初は、日本語と英語を混ぜてみたり、いろんなトライもして。実は、この曲は“答えのない男女の恋愛の歌”で、結構ドロドロとしているんです。だからこそ最終的には、あえて英語詞で、涼しい世界観で歌おうと着地しました。

──メロディとそこに乗る言葉のスムーズさがより意識された感じでしょうか?

ReN:そうですね。しかもメロディはすごく日本的というか、あまり洋楽っぽくない感じ。自分では聴きやすいと思っているんです。

──はい、とても哀愁感があって。

ReN:そういう部分も、日本で自分が作る方法とは全然違って、予期せぬものが生まれた感じ。

──セッションメンバーからは、日本的なメロディに対してのリアクションもありましたか?

ReN:アメリカではいろんな人とセッションしたんですけど、すごく細かく言ってくれる人もいれば、「自分の思うようにやってみていいんじゃない?」っていう人もいたりで、いろいろでしたね。これまで自分が作ってきた3作品の世界観もあるから、最初はその世界観を理解してもらう作業も必要だったんですよ。それを踏まえて、“だったらこういうのがいいんじゃない?”って提案してくれたり。

──なるほど。

ReN:自分は音楽をはじめて4年が経つんですけど、もともと音楽をやっていたわけではなく。まったく違う世界から飛び込んで、本格的にスタートしたわけで。セッションのときに、“独学でいろんなことを紐解いてきたからこそ、どうしても時間がかかったし、だからこそ今の自分があるんだ”ということも説明をしたんです。なおかつ、今、自分は引き出しを増やす作業が必要だと思っているから、その場でたくさん話をしたり、他愛もないことをする時間も大事にして。そういう時間のなかで、音楽が瞬間的に生まれる時間を初めて感じることができた。

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