【インタビュー】キズ、来夢「僕が死にました」(後編)
■自然体で好きになってもらえればそれで嬉しい
■でも次の曲も次のツアーの箱も押さえていない。ということは……?
──こういった「ちょっとくだけた来夢さん」もファンに伝えたいんですよね。字面だとどうしても伝わりにくいんだけど。
来夢:なんで字面にすると尖った人間みたいになるんですかねぇ。
──「(笑)」を文中に増やしたら良いんですかね。
来夢:それだとけなした感じになるからダメでしょ(笑)!でもね、こんな感じ見せたくない。自然すぎるでしょ。
──来夢さんは自然派だから望むところじゃないですか。
来夢:それはそうなんですけどね。多少はヴィジュアル系として演じたいですよ。そこはあれです。エンターテインメントとしてね。
──……それは、逃げじゃないですか(笑)?
来夢:ははは!うん、それはね、逃げ(笑)。仰る通り!
──いますよね、「これはエンタメです」と言えば何でもまとまると思ってる輩が(笑)。
来夢:でも仮にこういう「緩めの空気を伝える場を設けます」と僕から言い出したら、言い訳をめっちゃする会みたいで。それがもう不自然すぎる。例えば僕も誕生日が近いんですよ。僕も人間としては祝って欲しい気持ちも少しはあるじゃないですか。でも、自分で主催して祝わせるのは違いますよね。「俺を祝ってくれー!」みたいな不自然さは絶対に嫌だ(笑)。
──祝いたいというファンの方の声はあるんじゃないですか?
来夢:それなら祝いたいファンが企画して (笑)。ファンが主催イベントを開いて、バンドを集めて欲しい。あ、これだ。これですよ。それで僕にオファーしてくれたら行きますよ。ちょうど良い箱おさえてくれたら。
──キャパの具合まで調整しろなんて、高度なことを言わないでください(笑)。
来夢:こういうのが自然ということなんです。バンドは不自然なことが多すぎるんですよ。キズは自然な成り行きが良いんです。
──ファンの方とバンドの関係も、自然が理想ですね。
来夢:どう思ってくれても構わないし、ありのままに感じてもらいたいですしね。一年前も今日でさえも冷たく聞こえちゃうことを話しちゃったかもしれないけど、それでも付いてきてくれる人がいるんですよ。ということは、伝わっている部分があるということだと思うんです。その理由が単純に「顔が好き」「曲が好き」「世界観が好き」でもなんでもいい。どこを好きになって欲しいとかはもうない。前はありましたよ。音楽とかメッセージ性を好きになって欲しいとか。でもね、今はない。なんでもいいですよ、自然体で好きになってもらえればそれで嬉しいんです。
──話が逸れたような、来夢さんの新たな一面が見れたような、不思議な展開になりました。
来夢:これも自然なら良いですよ(笑)。最後に、「変わっていない」と分かっている部分だけ話しておくか……。キズが始まってから変わってないことが一つあるとしたら、それは「キズは長く続ける気はない」ということです。これは冷たく聞こえるかもしれないけれど、<消滅>ツアーで終わりにしても良いと思っています。今の僕の全てを持って行ってこれ以上伝えたいことがないと思ったら辞めるし、伝えたいことがあると思ったら続けます。いつでも辞める準備は万全です。でも、終わりを見ているからこそ、今も全力を振り絞れているんだと思うんです。
──ここまで「長く続けることは目的ではない」と宣言するバンドも少ないですね。
来夢:それがキズの良いところ。ボーカルが「いつでも辞める」と言ったら、メンバーも全てを振り絞るじゃないですか。「今日で最後かもしれないから良いライブにしよう」とする。
──「いつ最後になるか分からないから来いよ」と不安感を煽った動員目的でもないわけですね。
来夢:そうそう。自分でも想像つくんだよなぁ、僕が突然「辞める」と言い出すことを。でもまだ辞めないかな。「黒い雨」は自分の墓場にできるくらいの作品になりました。あとはもう棺桶に入るだけです。でも、お花くらい持って入りたいじゃないですか(笑)。その花を探しに行くのが<消滅>ツアーですね。
──それくらい終わりは現実的かつ、近づいている感覚があるんですね。
来夢:ありますよ。だって、次の新曲をリリースするかも決めてないし、<消滅>ツアーの次のツアーも全然決めてません。箱を押さえることもしていません。ということは……。
──終わりを予感させないでください。
来夢:だってそういうことじゃないですか? 何もするつもりがないし、何の予定も決めてないんですから。ということは……! ね? ということは……?!
──「ということは!」を言いたいだけですよね(笑)?
来夢:いやいやいや。新曲はあるにはあるんですよ。でもまだライブでも歌うつもりはないし。ということは……?!
──もう聞きません(笑)。
来夢:僕も「バンドは辞めたら負けだ」とか言ってみたいこともある。でも、思ってないことは言えないです。その代わりに、バンド名の由来をいつかぽろっと話しちゃうかも。
──バンド名の由来、頑なに話さないですよね。
来夢:バンド名の由来を言うかも……ということは?!
──お酒入ってます?
来夢:飲んでたらこんなもんじゃないですよ(笑)。バンド名の由来を言う時は、辞める時か、本当に限界を感じた時でしょうね。これもファンの人に寂しさを感じさせてしまうかもしれないけど、キズは永遠じゃない。でも、だからお互いライブで振り絞れるんです。振り絞り続けられた一握りのバンドだけが、永遠に人の心に残るバンドになれるはず。
◆ ◆ ◆
読み終えて混乱した人もいるかもしれない。後編と前編、そして一年半前のインタビューを併せて読むとその混乱は激しさを増す。インタビューの後半には本気半分、冗談の暖かい空気が流れたと思ったら、具体的に「バンドの終わり」を予感させる発言もあった。
ただ、これが来夢であり、キズなのであろう。既に確立されたバンドの定義も曲の説明も振り払って前に進んでいく。その道はどこまでも続いているようにも感じられるし、突然の終わりを迎えそうにも思う。そんな「明日のないバンド」であるキズと、「明日がないことを知っているファン」が作るものが、永遠に心に残るライブなのかもしれない。
取材・文◎神谷敦彦(『ヴィジュアル系の深読み話』編集長)
編集◎服部容子(BARKS)
8th SINGLE「黒い雨」
■初回盤
DMGD-011~012(CD+DVD)¥4,000+税
[CD]
1. 黒い雨
2. BLACK RAIN
3. 銃声
[DVD]
・黒い雨 -Music Clip-
・キズ ホールワンマンツアー「天罰」X「天誅」
2019.4.7 「天誅」 東京・国際フォーラム ホールC
1. ストーカー
2. 豚
3. 平成
4. 0
5. 東京
■通常盤
DMGD-013 ¥1,500+税
[CD]
1. 黒い雨
2. 息のできる死骸
発売元:DAMAGE
<キズONEMAN TOUR「消滅」>
2019年11月4日(月・祝)宮城 仙台MACANA
2019年11月9日(土)石川 金沢AZ
2019年11月10日(日) 新潟 CLUB RIVERST
2019年11月23日(土・祝)千葉 柏PALOOZA
2019年11月24日(日)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2019年12月6日(金)宮崎 SR BOX
2019年12月8日(日)福岡 FUKUOKA BEAT STATION
2019年12月10日(火)岡山 IMAGE
2019年12月12日(木)兵庫 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
2019年12月13日(金)大阪 梅田CLUB QUATTRO
2019年12月15日(日) 愛知 名古屋ElectricLadyLand
<キズONEMAN TOUR「切望」>
2020年1月17日(金)広島 CAVE-BE
2020年1月19日(日)長崎 アストロホール
◆キズ オフィシャルサイト
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