【インタビュー】キズ、来夢「僕が死にました」(前編)

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■「僕にも殺略の血が流れている」──それが「黒い雨」のきっかけのひとつ

──これまでの人格がいなくなって、自然体でいられるようになったことは「黒い雨」に影響しましたか?

来夢:どうだろう。影響したかは分からないですけど、「黒い雨」はめっちゃ良い曲です。今度はあれが人生を詰め込んだ第二の「おしまい」だと思っているから、あれ以上の曲はもう無理です。「俺が伝えたいことはこれだった」と思えた。歌詞も愛を歌いながら皮肉もあるし、どこか一筋縄ではいかない自分がいる。「黒い雨」を歌うために生まれてきたんじゃないかと思うくらいでしたよ。それくらいちゃんと、今まで見てきた世界と自分を照らし合わせて、自分が言いたいことと人に感じてもらいたいことが合わさって、伝えられたのかなと思いましたね。

──今まで「愛している」ということは、ライブで伝えることはあっても、真っすぐには出してこなかったですよね。だから歌詞を見て、これまでで一番大きな変化があったのかもしれないと思いました。

来夢:変わったと感じましたか? 僕的には変わったというよりも、核なるところがやっと素直に表現できたと思っています。ライブでは映像無しでこれまでも歌っていたからか、「愛している」というシンプルな言葉だけが聞こえていたからなのか、ファンの中では誤解があったみたいなんですよ。それで白服限定ライブの時に初めて歌詞と絵を映したじゃないですか。その時の「この曲、こういうこと歌っていたのか」という驚きの空気、すごかったですね(笑)。

──「ただのラブソングじゃなかった!」と伝わったんですね。

来夢:あれを聴いて単なるラブソングだと思う人はいないでしょ。僕の中での「極論の愛」です。愛がなければ争いも何も起こらないと思っているんです。

──来夢さんが何をきっかけに「黒い雨」に行き着いたのか気になります。

来夢:この世界が怖く見えた時があったんです。「戦略を繰り返し家を建て」という歌詞がありますけど、現実なんですよ。フィクションじゃない。しかも、自分にもその殺略の先祖の血が流れているんですから。この先また強い者だけが生き残っていく。そんな世界で「何が愛なんだろう」と感じたことないですか?

──今話を聞いて、恐ろしさが込み上げてきました。

来夢:僕はずっとその怖さを感じているんです。殺略の血が流れている者同士の争いの中で、正しさを争っているんです。正義もなければ中立に裁ける法もない。ただ、勝った奴が正義という世の中があるだけ。この事実に対する恐怖が「黒い雨」を生み出したきっかけの一つかもしれないですね。

──その事実を知ると、「黒い雨」をただのラブソングとして聴けなくなる人もいそうですね。

来夢:んー、でも答えをぶつけたいわけじゃないんですよ。僕なりの答えはあるけれど、それを教えたいわけじゃない。こういった歴史があって、自分にも殺略の血が流れているということを知って、「どう思うの?」と問いかけるくらいな気持ちです。

▲「黒い雨」通常盤ジャケット

  ◆  ◆  ◆

「小さなことはどうでもよくなった」、「僕は歌を捨てた」、「殺略の血が流れているという自覚」と話されると、今日にも身を投げてしまいそうに思えてしまう来夢。しかし、その一方で「メンバーが一番のファン」であったり「僕という船にファンも自然と乗せられると思う」と感謝とも約束とも受け取れる言葉もあった。

このインタビューは後編に続く。そこでは『黒い雨』のCDジャケットや衣装といった「曲以外の部分の真意」も明かされる。そしてまた一線を超えた。「バンドの終わり」を予感させる発言を始めたのだ。

しかし、「黒い雨」が「愛している」だけを歌うシンプルなラブソングではなく真意が込められているように、「キズは永遠ではないですよ」という言葉も字面だけでは見誤る可能性が高い。後編もまた、来夢がそうであるように「自然体」で待っていて欲しい。

取材・文◎神谷敦彦(『ヴィジュアル系の深読み話』編集長)
編集◎服部容子(BARKS)

◆後編

8th SINGLE「黒い雨」

2019年10月29日 RELEASE

■初回盤
DMGD-011~012(CD+DVD)¥4,000+税
[CD]
1. 黒い雨
2. BLACK RAIN
3. 銃声
[DVD]
・黒い雨 -Music Clip-
・キズ ホールワンマンツアー「天罰」X「天誅」
2019.4.7 「天誅」 東京・国際フォーラム ホールC
1. ストーカー
2. 豚
3. 平成
4. 0
5. 東京

■通常盤
DMGD-013 ¥1,500+税
[CD]
1. 黒い雨
2. 息のできる死骸

発売元:DAMAGE

<キズONEMAN TOUR「消滅」>

2019年11月2日(土)埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2019年11月4日(月・祝)宮城 仙台MACANA
2019年11月9日(土)石川 金沢AZ
2019年11月10日(日) 新潟 CLUB RIVERST
2019年11月23日(土・祝)千葉 柏PALOOZA
2019年11月24日(日)栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2019年12月6日(金)宮崎 SR BOX
2019年12月8日(日)福岡 FUKUOKA BEAT STATION
2019年12月10日(火)岡山 IMAGE
2019年12月12日(木)兵庫 MUSIC ZOO KOBE 太陽と虎
2019年12月13日(金)大阪 梅田CLUB QUATTRO
2019年12月15日(日) 愛知 名古屋ElectricLadyLand

<キズONEMAN TOUR「切望」>

2020年1月11日(土)福島 郡山HIPSHOT JAPAN
2020年1月17日(金)広島 CAVE-BE
2020年1月19日(日)長崎 アストロホール

◆キズ オフィシャルサイト
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