【レポート】＜氣志團万博2019＞二日目、放送直前に振り返る「まだまだ僕たちは千葉のために」

＜氣志團万博 2019 -房総ロックンロール最高びんびん物語-＞が9月14日(土)および15日(日)、千葉県 袖ケ浦海浜公園にて開催された。“ありえない”を形にして8年目の夏。今年も奇跡の祭典の模様が11月16日および17日、12時間にわたってWOWOWにて独占放送される。この放送を前に、＜氣志團万博 2019＞2日目公演の模様を振り返るレポートをお届けしたい。

◆＜氣志團万博 2019＞2日目 画像

2日目は灼熱の太陽が会場を照りつけるフェス日和。初日の余熱を持って、袖ケ浦海浜公園にて8年連続開催となる＜氣志團万博 2019＞には、あらゆるジャンルや幅広い層のアーティストが顔を揃えた。しかも2日目は初出演となる大物アーティストも多い。




2日目のWELCOME ACTを務めたのはDJダイノジだ。DJを大谷ノブ彦が、エアギターとパフォーマンスを大地洋輔が担当。BABYMETAL「PA PA YA!!」から始まり、「Fly」「$10」「ダイナマイト」「青いイナズマ」「がんばりましょう」「Otherside」、さらには「Joy!!」といったSMAPメドレーまで、午前中からMOSSAI STAGEを大いに盛り上げた。




2日目のオープニングセレモニーを務めたのはマキタスポーツ。アコースティックギター1本を抱えて、飄々とステージに現れると、西野カナの「トリセツ」を49歳のおじさん風の替え歌にした「トリセツおじさん」で、朝イチから会場に駆け付けたお客さんに爆笑をかっさらっていく。

本編はわずか1曲だが、残りは“アンコール”。サザンオールスターズ「いとしのエリー」と長渕剛の「乾杯」を合体させるというヒットソングのツボを押さえたマキタスポーツならではの名人芸「いとしのエリーに乾杯」を披露して、＜氣志團万博＞2日目の開会を宣言した。




やはり＜氣志團万博＞には、彼らの存在が欠かせない。YASSAI STAGEの2日目トップバッターを務めたゴールデンボンバーのステージは「元カレ殺ス」で口火を切った。47都道府県別の限定シングルとして話題を呼んだ楽曲の千葉県バージョン「やんややんやNight ～踊ろよ千葉～」では、「ファン以外はわからない（笑）」と自虐気味に言う鬼龍院翔(Vo)だったが、圧巻のボーカルでお客さんの心を掴んでいく。

「抱きしめてシュヴァルツ」の曲中では、喜屋武豊(G)がももクロの「おどるポンポコリン」の衣装、樽美酒研二(Dr)が私立恵比寿中学にちなんで私立のセーラー服姿で登場すると、これに鬼龍院が「どこが、ももクロ＆エビ中なんだよ！」と突っ込みを入れ、喜屋武は腿(もも)に黒いサポーターをつけて“腿黒＝ももクロ”、樽美酒は生尻に“つ”の文字で“尻ツ＝私立”という体を張ったオチで笑いをさそった。平成の＜氣志團万博＞に、いくつもの事件と伝説を打ち立てた金爆の型破りのエンターテイメントは、令和に突入した＜氣志團万博＞でも健在だ。




虫歯をネタにした「歯痛くて」の途中に、「One Night Carnival」のフレーズを挟むという遊び心で、＜氣志團万博＞に寄せる並々ならぬ気合いを感じさせた打首獄門同好会は、MOSSAI STAGEのトップバッターとして千葉の復興を願う熱いステージを繰り広げた。

「千葉県の日常を取り戻すべく、いち早くのろしを上げた氣志團を後押しすることが、俺がここに来た意味です」──最初のMCで、大澤敦史(Vo / G)がそんなふうに伝えると、「カモン諭吉」の曲中では、お客さんが集まるフィールドにマブダチ募金の箱を回しはじめた。「氣志團は良識あるヤンキーだけど、俺らは押しつけがましく募金を集める」と、千葉県外から来たお客さんへの募金を呼びかけると、募金箱には次々にお金が入れられていく(もちろん、打首のメンバーも募金していた)。

さらに、「千葉から来ている飲食店に赤字を出させるな！」というメッセージと共に「ニクタベイコウ」を届けたり、千葉県の漁師を想い、「島国DNA」につないだりと、いつもの食べ物系ネタ曲たちをエールソングに変えたステージは、こんなとき、ロックバンドに何ができるのか？という問いに対する、打首らしい回答だった。なお、このステージのあと、打首獄門同好会は、わずか数曲の募金で70万円以上が集まったことを発表した。




8年連続8回目、唯一の皆勤賞が“万博ヒロイン”ももいろクローバーZだ。登場SEはなし。厳かな面持ちでステージ上に登場したメンバーは「ももクロ万博、始めます」とLEDに国旗がはためく中で国歌斉唱。そして、柏倉隆史(Dr)、やまもとひかる(B)、TAKUYA(G)、佐藤大剛(G)、宗本康兵(key)、竹上良成(Sax)、真砂陽地(Tp)、鹿討奏(Tb)、といった“ももクロバンド”8名とメンバー4人の計12人が円陣を組んで、いよいよそのステージをスタートさせた。

ちなみに、ももクロが生バンドを従えて＜氣志團万博＞に登場するのは今回が初。オープニングナンバー「Nightmare Before Catharsis」、2曲目の「あんた飛ばしすぎ!!」といったロックチューンの音圧があまりにも攻撃的でオーディエンスの高揚感を高め続けた。また、1曲目から氣志團の早乙女 光が飛び入り参加。2曲目では学ランを脱ぎ捨て、ウエイトリフティング選手に扮してセンターステージへ。

中盤には“表彰式”が用意されていた。これは、ももクロから氣志團への感謝をしるしたもの。「＜氣志團万博＞、8年連続皆勤賞。小さい頃から見ていただいて、氣志團さんはお父さんみたいな存在。なので今日は、感謝の気持ちを伝えたくて感謝状を持ってきました」と百田が氣志團メンバーをステージへ呼び入れた。「皆勤賞は私と氣志團さんだけとなってしまいました。私たちはこれからも氣志團さんの背中を追いかけるだけです。連れて行って下さい、私たちをピリオドの向こうへ！」と感謝状を読み上げて氣志團メンバーに手渡すシーンには会場からの大きな拍手が注がれる。しかし、「僕らから」と氣志團からの逆サプライズも。ももクロメンバーに皆勤賞の表彰状が送られたほか、メンバーの学ランの第2ボタンをメダルに見立ててプレゼントされる場面が、会場に笑顔と感動を呼んだ。

後半は「鋼の意志」「ツヨクツヨク -ZZ ver.-」「行くぜっ！怪盗少女 -ZZ ver.-」を立て続けに披露。ラストは『ラグビーワールドカップ』よろしく百田がゴールキックを鮮やかに決め、バンドメンバーとガッチリスクラムを組んで8回目の＜氣志團万博＞のステージを終了した。




12時35分、MOSSAI STAGEに登場したのは真っ赤な衣装が鮮烈だが、それ以上にヴィヴィッドなステージを展開したC&Kだ。5人のダンサーとDJを従えた彼らはオープニングナンバー「C&K X」から全開。CLIEVYのサックスソロがサウンドと会場をより華やかなものにしていく。続く「to di Bone」ではオーディエンスを右へ左へ前へ後ろへとステップさせ、「ジャパンパン～日本全国地元化計画～」ではKEENが「地元じゃなくても地元です。なぜなら俺たちは日本人、全国が地元だから」とあっという間にステージと客席を一体化させてしまった。

「＜氣志團万博＞へ、お祭りにやって来ました！ みんなが出演者だ」とのMCに導かれて披露されたのは「MATSURI」「パーティー☆キング」。お祭りに、パーティーに、とアゲアゲの選曲に続いて披露されたのはバラード「嗚呼、麗しき人生」だった。ピアノの音色をバックに聴かせる2人のボーカルは、それまでのテンションの高いナンバーとは異なるもの。2人のハーモニーがうねりを上げて、どこまでも高く空へすいこまれていくように美しい。

ラストナンバーはCLIEVY曰く「ふざけた中にもシリアスなメッセージを詰め込んだ」という「踊 LOCCA ～around the world 新たなる冒険～」。巨大なサークルが客席エリアに出来上がり、場内に笑顔が咲き乱れて彼らのステージが終了した。




初日のROTTENGRAFFTYの衣装を拝借して登場した10-FEETは、「氣志團はヤンキーだ言うとるけど、ワシらはロックの極道じゃ！」というTAKUMA(Vo / G)の煽り文句から、「RIVER」「1sec.」でライブをキックオフ。メロディックパンクをベースにした陽性のスリーピースサウンドがYASSAI STAGEに絶景を作り上げていく。

MCでは、TAKUMAが7年出演し続けてきた＜氣志團万博＞に寄せる想いを語りかけた。最初はロックファンとアイドルファンで互いのノリ方がわからずに意見をぶつけ合う時期もあったけれど、本音で衝突し合う時期があったからこそ、いまはお互いのカルチャーをリスペクトできるようになった、と。それを、＜氣志團万博＞の開催をめぐる賛否とも重ね合わせると、「みんな千葉を元気にしたい一心や。今日は全員ゲラになって帰ったらええねん！」と覚悟をもって伝えた。

そして、人と人が本当の意味でわかり合える世界を切望する「ヒトリセカイ」の曲中で、「ほんまにめっちゃおもろい場所や、翔やん！ ありがとう！」と絶叫。今年は恒例の寸劇はなしか……と思いきや、最後に初日のROTTENGRAFFTYとまったく同じオチできっちり笑わせてくれた。




2013年の大雨のWELCOME ACTを筆頭に、毎年この＜氣志團万博＞の地でドラマを作り上げる私立恵比寿中学。今年は川谷絵音(ゲスの極み乙女 etc.)が作詞作曲を手がけたクールな新曲「トレンディガール」という意外なナンバーから始まった。

氣志團を呼び込み、総勢12人が横に並び、肩を組んで歌った「ゼッテーアナーキー」のあと、「ここからノンストップでまいりますので……」と宣言をすると、ファンタジックな「紅の詩」や、椎名林檎カバー「自由へ道連れ」、TOTALFATのJoseが手がけた「HOT UP!!!」まで、曲を重ねるごとに激しさが増すパフォーマンスで魅了。まるで1年間の成長を確認するように、毎年この場所へと帰ってくる彼女たちにとって、＜氣志團万博＞は大切なホームグラウンドだ。





＜氣志團万博＞初登場となるのが、ACE OF SPADES。EXILEのTAKAHIRO(Vo)、GLAYのHISASHI(G)、LOSALIOSやunkieのTOKIE(B)、THE MAD CAPSULE MARKETSのMOTOKATSU(Dr)といった豪華メンツによる4ピースは、紹介VTR曰く「奇跡の4カード」だ。また、同紹介VTRでは「GLAYとEXILEの曲、やります！」と宣言されるなど、メンバー登場前から場内に期待の熱気が渦を巻いている。

黒の衣装がスタイリッシュな4人は「WILD TRIBE」からステージをスタートさせた。TOKIEの瞬発力の高いスラップがうねりを上げて、MOTOKATSUのソリッドな8ビートがリズムを疾走させる。HISASHIのコードリフはド迫力の音壁を築いて、TAKAHIROのボーカルがその核を貫く。メンバー個々の技量の高さはもとより、4人が一体化したときのグルーヴが凄まじい。とりわけ、ベースソロからギターソロへリレーした中間部のスリルはACE OF SPADESならではのもの。2曲目にGLAYとEXILEのコラボ曲「SCREAM」を惜しげもなく披露するなど、序盤からステージのテンションも高い。

「＜氣志團万博＞、初めてのステージです。夏の思い出を作っていきたいと思います！」とTAKAHIROのMCに続いては、TOKIEのボーカルもフィーチャーされた「Vampire」、モーターヘッド張りのヘヴィでソリッドなリフが展開される「ACE OF SPADES」といった楽曲で豊富なバリエーションと濃厚な空気を放出しながらステージが転がり続けていく。

後半を前にHISASHIがこう語った。「夏フェス出演は初めてです。昨日(14日)に千葉に入ったんですけど、夜は停電で、電気が消えているところが多くて緊張感がありました。メンバー一同、早期復旧を願っています。開催を英断した氣志團の曲をカバーしたい」と「330」をリスペクトを込めて披露した。そして「JUST LIKE HEAVEN」ではセンターステージでTAKAHIROとHISASHIがパフォーマンス。ラストナンバーに用意されたEXILEの「Rising Sun」は完全バンドアレンジで、ロックバンドならではの鋭利な切れ味を印象付けた。




ラッパー／DJにして、“エロ神クズお”の異名を持つt-Aceは、6人のセクシーダンサーを従えてMOSSAI STAGEへ登場した。「超ヤバい」「タイトドレス」「ワンチャン」と1分〜2分台にアレンジされた楽曲を小気味良く連発。エロく刺激的なワードとパフォーマンスに女性ファンからの黄色い声援が止むことがない。

「DJ OZMAです！」という挨拶に続いては、前列に陣取ったコアファンを「ブスが手を振ってます（笑）」とイジるなど、嫌味のない笑いを交えたトークに氣志團ファンも爆笑。陽の空気感を振りまいて、加速度をつけながら過ぎていく時間の中でt-Aceは圧倒的な統率力を発揮していく。このステージ終了後、「本日、沼津でのイベントに出演する」という多忙ぶりを極めるt-Aceは、「気に入った女の子をピックアップして連れて行く」と宣言。女性ファンの笑顔がさらに熱気を高めていく。

ラストナンバーを前にYouTuberのラファエルがサプライズ登場、客席に挨拶をしてステージを去るという場面も。そしてt-Aceはこう続けた。「音楽が好きでやり続けていたら、いつのまにか、子供の頃に好きで聴いていた安室奈美恵さんの名曲をサンプリングすることが出来た。やりたいと思っていたことが実現した。最高！」と語った。披露された最後の楽曲は「SWEET 19 BLUES」をサンプリングした「Sweet 19 Blues～オレには遠い～」。この日、初披露された同曲が客席エリアに最高潮を描いてt-Aceのステージが終了した。





「こんなに、この言葉が重いとは思いませんでした。＜氣志團万博＞へようこそ！　やって良かったよ。みんなの顔を見たら」というナヲ(ドラムと女声と姉)の温かい言葉に大きな歓声が湧いたマキシマム ザ ホルモン。

「やることは変わらないけど、気持ち、半端ないです」と、4回目の出演にして特別な意味を帯びた＜氣志團万博＞への気合いを滲ませると、ダイスケはんの獰猛なシャウトと、マキシマムザ亮君のボーカルとギター、上ちゃんの超絶ベースが織りなす破壊的なラウドロックが腹ペコたちを全力で暴れさせていく。

「三度の飯より」「飯が好きー！」という掛け声から「maximum the hormone II ～これからの麺カタコッテリの話をしよう～」では、花道に歩みでたナヲが体をくねらせながら花道へと歩み出て歌唱。

最後のMCでは、「万博とはよく言ったもので、いろいろなジャンルがひとつのなるオンリーワンのフェスです」と伝えると、TOKIO「LOVE YOU ONLY」から「恋のスペルマ」へとなだれ込み、ももクロから夏菜子としおりん、れにちゃんが乱入する大団円。ホルモンのライブは“見る”のではない。お客さんも一緒に“やり切った”40分間だった。




“サブカル界のグランドキング”と紹介VTRがいざなった大島渚は、30年ぶりの復活。1980年代後半に放送された『三宅裕司のいかすバンド天国』に出演して話題となった彼らは、もちろん＜氣志團万博＞初出演となる。

「大島渚のみうらじゅんと申します。今日、勝新(勝新太郎)が大麻で捕まったときの帽子で来ました」とMOSSAI STAGEに登場したみうらじゅんがひとりアコースティックギターを手に登場、のっけから笑いを誘う。しかし、大島渚のステージは約35分間、ソリッドにロックンロールし続けた。「アイデン＆ティティ」の弾き語りから口火を切ったライブは同曲途中で喜国雅彦(B)、山田五郎(G)、和嶋慎治(G / 人間椅子)、安齋肇(Cho)、古田たかし(Dr)が姿を現してバンドインすると、情感豊かなフォークサウンドが一気にロックンロールへと変貌していく。

「若い」は和嶋の歯弾きによるギターからスタート。ハードロック色の強いアレンジはスリリングで、続くミディアムチューン「大人の悩みに子供の涙」へと直結。怒濤の展開が印象付けたのは30年振りの復活というトピックよりも、強靭なグルーヴが濃縮された今を生きるバンドサウンドである。「うちらの唯一のヒット曲」と紹介されたラストナンバー「カリフォルニアの青いバカ」までの全5曲は時間の概念を超越して、実に密度の濃いアンサンブルを響かせた。「翔やん、ありがとう！」という言葉を残してロックバンド・大島渚のステージが終了した。




田原俊彦も＜氣志團万博＞初出演。真っ赤なスーツ姿による鮮烈な登場は、まさにスターの風格だ。ちなみに＜氣志團万博 2019＞のサブタイトル“房総ロックンロール最高びんびん物語”は、田原俊彦主演ドラマ『教師びんびん物語』をもじったもの。それだけにオーディエンスの注目度も高い。その期待に応えるようにオープニングナンバー「海賊」からパフォーマンスはキレキレ。センターステージに躍り出た「どうする？」でみせた鋭いターンに会場が沸く。

「僕、フェス初出演なんです」という挨拶をはじめ、團長との縁、楽屋裏での再会について語った後は、ファン感涙の「氣志團万博メドレー」へ。「抱きしめてTONIGHT」〜「哀愁でいと」〜「NINJIN娘」〜「ハッとして！Good」〜「恋＝Do！」〜「さらば・・夏」〜「ブギ浮ぎ I LOVE YOU」〜「悲しみ２ヤング」〜「君に薔薇薔薇…という感じ」〜「チャールストンにはまだ早い」〜「ごめんよ涙」といったヒットチューン連発の選曲にオーディエンスの拍手が止むことがなかった。

10分を超えるメドレーを駆け抜けた田原は「もう死にそう」と笑いを誘い、「最高のお客さん。初フェス出演だけど、クセになりそうです」と團長へ感謝を語った。後半は最新曲「好きになってしまいそうだよ」を披露。そして「最後に１曲、盛り上げていきましょう」と「ジャングルJungle」へ。最後のキメ台詞「そうさ！」で満面の笑みを見せてステージをあとにした。




「お手柔らかにとは言いません。本気でかかってこい！」──挑発するように客席エリアを見据えた渋谷龍太(Vo)の言葉を合図に、はじまりの季節を歌う爽快なナンバー「青い春」から始まったSUPER BEAVER。初めて立つ＜氣志團万博＞に寄せて、渋谷は「氣志團という音楽の“意志”が、好きな人の前で歌えるのが、うれしいです」と喜びを滲ませた。

彼らのスタイルは、1曲1曲、どんな想いを込めているかということを、演奏だけでなく、渋谷が言葉でも伝えていくというもの。「目の前にいる“あなた”に届きますように。これは戦う人間のための音楽だ」と力強く宣言した「東京流星群」のあと、「音楽は腹の足しにもならないし、明かりにもならない。世界を変えることはできないけど、自分自身は変えられる」と語りかけたラストナンバー「27」へ。正しく想いを伝えることに重きを置く、筋の通ったステージは、結成から14年、泥臭くライブハウスで戦い続けるビーバーの正攻法だ。




稲垣吾郎・草なぎ剛・香取慎吾の3人がせり上がるかたちでステージに登場すると、YASSAI STAGEにひときわ大きな歓声が湧き上がった。何色にも染まることができる彼らの現在地を象徴するように、真っ新な衣装に身を包んだ3人は、まずラップを交えたスタイリッシュなダンスナンバー「#SINGING」からライブをスタート。軽やかにダンスをしながら歌う3人の一挙手一投足には信じられないほど華やかで、これが国民的アイドルの存在感かと思わせてくれる。

「“フェス”への出演は初めて」だという3人は、「ワイルドだね」(稲垣)、「こんな大勢の男性の前で歌のは久しぶりです」(草なぎ)と初々しい感想を口にする。新たな挑戦として草なぎがアコースティックギターの弾き語りでカバーした「歩いて帰ろう」では、氣志團メンバーが援護射撃として参加。パラスポーツ応援チャリティーソング「雨あがりのステップ」など全6曲を届けると、「音楽の楽しさは知ってたけど、(フェスを知らなくて)いままで損してたなと思います」(香取)と、会心の笑顔を見せた。




「はじまるよー！」──まるで親しい友だちを遊びに誘うような口調でスタートした、ヤバいTシャツ屋さんがMOSSAI STAGE2日目のトリだ。もりもりもと(Dr)が叩き出すノリのいいビートにのせて、こやまたくや(Vo / G)としばたありぼぼ(B / Vo)の男女ツインボーカルが関西弁で紡ぐ「かわE」の人懐っこいメロディが駆け抜けると、会場からは自然にハンドクラップが湧き上がる。歌詞はしょうもないが、演奏は骨太。タンクトップへの想いをぶちまけえた「Tank-top of the world」、USBメモリの使い勝手について歌う「Universal Serial Bus」から、Wi-Fiの便利さを絶賛する「無線LANばり便利」へと、間髪入れずに畳みかける高速チューンが根こそぎ客席エリアを暴れさせていく。

ラスト3曲を残して「開催してくれてありがとう！ みんな笑顔で最高のフェスやったと思います！」と、こやま。最後の楽曲「あつまれ！パーティーピーポー」に至るまで、頭を空っぽにして、ひたすら音楽に身を委ねれば、それで正解という、その潔さこそヤバTの最大の強みだろう。





2日間にわたり総勢32組のアーティストが繋いできたバトンを最後に託されたのは、我らが氣志團だ。オープニングナンバーは、東京スカパラダイスオーケストラのトリビュートアルバム『楽園十三景』に参加した「砂の丘～Shadow on the Hill～」のカバー。歌がないからこそ真の演奏力が問われるインスト曲が、彼らのロックバンドとしてのタフさを浮き彫りにする。

「Let's Dance」や「One Night Carnival」の後、改めて今回の＜氣志團万博＞の開催に寄せて、「一生でいちばん悩みました」と團長。「まだやって良かったかはわからないけど、音楽だけは信じられると思いました」「ここがはじまりです。まだまだ僕たちは千葉のために頑張っていかなきゃいけないと思います」と真摯に言葉を重ねた。

圧巻だったのは、先日亡くなったジャニー喜多川への追悼の意を込めたジャニーズメドレー「氣志團万博スペシャルメドレー」。「パラダイス銀河」(光GENJI)や「Real Face」(KAT-TUN)、オレンジ(SMAP)など、12曲をつなぐ怒涛のアレンジにも痺れたが、同時に、ジャニーズの根底にある“ショー・マスト・ゴー・オン”(ショーは続けなければならない)の精神が、氣志團にも受け継がれている偉大さが素晴らしいと思った。

本編を「スタンディング・房総」で締めくくると、アンコールではメンバーがグループサウンズ風の衣装に着替えて、「明日はあるさ」の替え歌を披露。“パワハラ”や“コンプラ”といった2019年らしいワードを交えてアップデートさせたリアリティのある歌が、やたらと胸に沁みる笑顔のフィナーレだった。

取材・文◎秦理絵／梶原靖夫 (BARKS)
撮影◎青木カズロー／上山陽介／釘野孝宏／中野修也

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