【インタビュー】感覚ピエロ、5年間の歩みと挑戦と幕張メッセ「はっきり口に出さないと意味がない」

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結成5周年を経て、11月4日の幕張メッセイベントホールでのワンマンライブに向け、いっそうギアをあげている感覚ピエロが、初のベストアルバム『全裸』をリリースした。配信や限定販売など、一癖あるリリース形式を重ねてきた彼らにしてはストレートな作品だ。内容もMVを発表してきた順にそのまま16曲が並んでいるのだが、わかりやすい作品だからこそ、感覚ピエロの“わかりにくさ”が際立って見えてくるのがおもしろい。

◆感覚ピエロ 画像

キャッチーに振り切っていたり、エモーショナルに叫んでいたり、エロが爆発したり。自分たちの顔であるリード曲のコレクションにしては珍しいほど多彩な楽曲たちは、そのままライブでの熱狂を思い出させたりもする。固定概念や“らしさ”に囚われることなく、なぜ彼らはこんなに自由でいられるのか? 改めて振り返る名曲の制作秘話とともに、4人にじっくり語ってもらった。

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■今、「A-Han!!」「O・P・P・A・I」
■みたいな曲は作れない

──そもそも、感覚ピエロがベストアルバムをCDでリリースするっていうのが意外でした。今まで配信とか限定販売とか、いろいろやってきているので。

秋月:そうですね。むしろ、CD好きじゃないんで(笑)。でもまあ、“こうやってかたちに残すっていうことも、今の時代には大事なのかな”って一瞬思ったのもあります。僕らの音源って、配信でかたちに残らないことが多いんで、持っておきたい人のためにあってもいいのかなって。で、ミュージックビデオを出した時系列順に並べたんですけど、僕らが今、6年続いて、幕張メッセイベントホールでのワンマンライブをする前に、ファンの人たちに向けても、新しい人たちに向けても、名刺代わりの1枚かなと思います。僕らの一個のケジメというか、区切りみたいなところもありますね。2015年に『Break』ってアルバムを出した時も「僕らの名刺がわりの1枚です」って言ってたんですけど、それを新しく更新したっていうほうが、もしかしたらニュアンスは近いかも。

滝口:単純に、今バンドやってて、ベスト盤を出せるってすごいことですよね。自分が音楽を始めた時には、できると思ってなかったし。

▲横山直弘 (Vo / G)

健太:ひと言で言うと、感覚ピエロのフルコースみたいな感じになってると思うんですよね。おのおのメンバーが食材を持ってきて、それを調理して。今はそれをより多くの人に食べていただきたいっていう気持ちですね。自分らで食べるために作ったんじゃないんで。

秋月:めっちゃいい喩えやな(笑)。

横山:ただ、今、現在進行形で突っ走ってる最中の自分としては、このアルバムに並んでいる16曲を続けて聴いたときに、“ああ、この5年間、こういう歩みをしてきたんだな”って気付かされたというか、再確認したことのほうが大きいです。聴いてくださる方も、同じように感じ取っていただけると思います。

──確かに、6年目でベストアルバムを出せるって大きいと思いますよ。横山さんが仰ったように、ライブで盛り上がる曲なり、タイアップなりを積み重ねて、ちゃんとタイミングごとに代表曲を作ってこれたからこそ、フルコースができあがるわけで。

秋月:ありがとうございます。リード曲っていうものをこうやってまとまった1枚にできるのは、ある種、誇りなのかなとは思いますね。しかも、今でも昔の曲もライブでよくやるし。いい意味で色あせずにちゃんとできてるのは、すごくいいことだと思います。

▲秋月琢登 (G)

──ちょっと振り返って訊いていきたいんですけど、まず「O・P・P・A・I」ができた頃って、いわゆる四つ打ち全盛期でしたよね。そこに剛速球投げ込んだ、みたいな曲で。

横山:ある種、その流行をスカしてはいたんですよ。“盛り上がってるものに乗っかってやりたくない”っていうひねくれた感じもありながら、“やってみるんだったら”って。仮歌で「OPPAI」って入れた歌詞を、メンバーが「そのままでええやん」って言ってくれたからそのままいったものの、下手したらコケてる1曲なんで(笑)。

健太:ははは!

──たしかに、スベったらもう二度とできない(笑)。

横山:そうそうそう。だからそれは、お客さん様々というか。「O・P・P・A・I」っていう曲を、僕たちの代表曲にしてくれたのはお客さんだと思ってます。




──この頃って、今回のベスト盤収録曲で言うと、「A-Han!!」とか「Japanese-Pop-Music」とか、ナナメから見て流行を皮肉っている歌詞を、ポップな曲調で聴かせるっていうのがひとつの武器でしたよね。

横山:メロディはいいけど、すごく皮肉めいたことを言ってるっていうギャップは、たぶん意識してました。皮肉めいたことを言いながら、全然メロディもキャッチーじゃなくて、ただがなり散らしてるだけだったら普通だし。曲はすごくキャッチーなんだけど、歌詞はすごくひねくれてるっていうのが、その当時の感覚ピエロの色だったような気もします。でも、耳馴染みのいいメロディをちゃんと残していこうっていう。

秋月:そうやって狙って作るところももちろんあったんですけど、根本的にはその時やりたいことをやって、言いたいことを言い続けてきたっていうところは、たぶんずっと変わらないと思います。だから今「A-Han!!」とか「O・P・P・A・I」みたいな曲は作れないと思いますし。

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