【インタビュー】メタル・チャーチ「現在進行形で今があって未来がある」

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US産正統派メタルの老舗、メタル・チャーチが25年ぶりの来日公演を果たした。

1984年デビュー、スラッシーなリフと強力なシンガーの組み合わせによるパワーメタルでありながら、ミドルテンポの楽曲やドラマティックな展開も特徴的なバンドである。幾度のメンバーチェンジや再結成を経て、2015年に全盛期を支えたシンガー:マイク・ハウが復帰し、現在は欧州のフェスティバルでは定番ラインナップに入るほど勢力的な活動をしており、日本は二度の来日キャンセルに見舞われたものの、ようやく三度目の正直が実現した。

最新アルバムからのタイトルトラックで幕を開けたステージは、カート・ヴァンダーフーフ(G)の刻む鋼鉄リフにバンドを支える重低音のリズム隊、そして何より衰え知らずのパワフルなマイク・ハウ(Vo)の歌唱とステージングの表現力は圧巻で、これぞメタル・チャーチと言える質実剛健サウンドを見せつけてくれた。




オリジナルメンバーでありながら、過去の来日時には裏方のコンポーザーであったカートの日本初となるそのプレイは、各曲のギターソロ部分はリック・ヴァン・ザント(G)に任せていたが、彼がメタル・チャーチそのものなのだと奏でるリズム/リフが物語っていた。

最新アルバム『Damned If You Do』のツアーではあるが、故デヴィッド・ウェイン(Vo)時代の初期『Metal Church』『The Dark』からの選曲もあり、マイクの歌声が重なる事に目頭が熱くなった。

オーディエンスの好反応に、何度も喜びの表情を見せるマイクは観客フロアに数回降りてのファンサービスも見せ、度々湧き上がるメタル・チャーチ・コールの中で、最新作を筆頭に全盛期の『Blessing in Disguise』『Human Factor』も軸にしながら日本独自のスペシャルセットに偽りなしのライブパフォーマンスを展開してみせた。

東京公演2日目のショウ前に、マイク・ハウ(Vo)と唯一のオリジナルメンバーであるカート・ヴァンダーフーフ(G)がインタビューに応じてくれた。お帰りなさい、メタル・チャーチ。



──25年ぶりの来日となりましたね。

マイク:凄く恵まれてラッキーだと思っているよ。

──二度のキャンセルがあったので、実現して本当に嬉しいです。

カート:フェスティバルのキャンセルは、バンドの方も凄くショックだったよ、どうしよう?って感じだったから僕らも今回は本当に嬉しいんだ。

──昨夜のショウはいかがでしたか?

マイク:素晴らしかったよ。

カート:反応が素晴らしかったんだ。みんな大合唱してくれて、それを聴いて凄く感動したし、自分の国からこんなに遠く離れた日本でたくさんの人が集まってくれて本当に嬉しかった。

──セットリストも新旧の楽曲を取り揃えた充実した内容でしたね。


マイク:このバンドにとって新しい楽曲がある事が重要だと思っているし、昔の曲ももちろん認めているし大好きだけれど、このバンドは現在進行形で今があって未来がある。やっぱり新曲は大事だよね。

──マイクが復帰した経緯を教えて下さい。

カート:そもそも数年前に、普通に友人としてマイクに連絡をしたんだ。その時にメタル・チャーチとは別のプロジェクトもあって、もしかしたらマイクが歌ってくれないかな?という思いもあった。そしたら、その後一週間もしない間にたまたまメタル・チャーチのシンガーが辞めてしまったんだよ。その時に考えたのは、このバンドを続ける上で、4人目のシンガーというのはないな、と思った。唯一、バンドを存続させるにはマイクと一緒にやるしかないと思ったんだ。

マイク:僕はノスタルジアの為だけだったらメタル・チャーチには戻らない。新しい曲ができて、自分たちが誇れるようなものができるならやるけど、それができなければやらないと返事をしたんだ。それでとりあえず始めてみようと、復帰第一弾の制作をしてみた。結果的にとてもエキサイティングで誇らしいアルバムができたからツアーに出ようと。それが『XI(イレブン)』だよ。それが終わった後も同じで、自分たちが誇れるものができるならやるよ、とその都度決めていて、続けられているよ。


──以前のブロンドのロングヘアからはサッパリされましたけど(笑)、歌声は全く変わりませんね?

マイク:ありがとう。肝心なのは音楽であってルックスじゃない、(髪を触りながら)僕らはポイズンじゃない(笑)。

カート:(頭皮を触りながら)髪は僕もだよね(笑)。

──最新作『Damned If You Do』は、緊張感とフックのあるサウンドも見事に復活してますね。今作のこだわりは?

カート:プロダクションの面にこだわったよ。僕はアナログ盤が好きだから、あまりモダンではないオールドスクールなものにしたかった。正直、最近のメタルバンドはどれを聴いても同じに聞こえてしまうんだ。もう少し緩急がついて、もう少し隙間があって、コンプレッションがあまりかかっていない、デジタルではないバンドの音を出したかったんだ。

マイク:これは凄いと思ったよ、全ての音がハッキリと聞こえて情熱を感じる本物のバンドサウンドだと思った。

カート:完璧なものでなくていいんだよ。今はテクノロジーを使えば完璧なものは作れてしまうけど、昔からロックやメタルは完璧である必要はないと思うんだ。子供の頃から聞いていたバンドもそうさ、それがバンドの個性だったはずなんだけど、今はみんな同じに思える。

マイク:バンドの不完全な部分も違いであったし、今は違いがわかるとすればシンガーの声くらいかな。

カート:ブラック・サバスやレッド・ツェッペリン、ユーライア・ヒープなんかもレコーディングでのエンジニアの個性が色々と出ていたでしょ?そういうものをまた作りたかったんだ。


──まさに『Blessing in Disguise』の頃のオールドスクールな感じがありますよね、ギターサウンドもエッジが効いてますし。

カート:あえて当時のアルバムを真似てみようとかは思わなかったけど、オールドスクールを目指した結果がそうなったよね。

マイク:ギターサウンドはピッキングや弾き方もあるけど、カートの心がそうさせるのさ。

──今年はデビュー35周年、『Blessing in Disguise』30周年ですが、振り返ってみて印象深い事はありますか?

カート:(頭を抱えて)もう生きている事が凄いよ(笑)。こうして日本でインタビューを受けたり、ツアーができる事もそうだし、この後は初めてオーストラリアにも行くんだけど、まだ未だに初めての新しい経験ができる事が素晴らしいよね。僕自身、日本も初めてだしさ。1980年代で言えば音楽シーンのムーブメントに乗ってクリエイトできた事かな。

マイク:僕は1988年にカートと出会ってメタル・チャーチに加入できた、この出会いそのものが全てだよね。

──マイクは一度メタル・チャーチを離れてみて、どんな事を考えましたか?



マイク:一度辞めてからはあまりバンドの事は考えていなかったよ。バンドが嫌だったわけではないんだけど、音楽ビジネスにうんざりしたんだ。むしろバンドは大好きだったし、その大好きなものが音楽ビジネスのせいで別の方向に行ってしまった。別にメタル・チャーチじゃなくても別のバンドをやれば?と周囲に言われた事もあったけど、自分にとってのアイデンティティはメタル・チャーチ以外にはないんだ。だからその後は妻と二人の息子を育てる事に専念して別の世界で生きていたよね。

──当時のビジネスシーンと今ではどう違いますか?

マイク:大変さは一緒だけど、質が違うよね。やっぱりCDが売れないからそれでは稼げない。一方で、バンドの全てを自分たちでコントロールができる。レコード会社やマネージメントに左右されずにやれている部分は良いよね。

カート:本当にそうさ。レコード会社はついているけれど、全て自分たちでのDIY精神だね。そこが決定的に違う。確かにCDは売れないけどね。

──一時は日本での契約も無くなっていましたが、日本のファンは復活すると信じていましたよ。ファンへメッセージをお願いします。

カート:ずっとついてきてくれて本当に感謝しているよ、ありがとう。

マイク:こんな50代の2人がこうして日本に居られるなんて4年前には想像もしなかったよ(笑)。本当にありがとう。

取材・文:Sweeet Rock / Aki
写真:Yuki Kuroyanagi






<METAL CHURCH ~ Damned If You Do Special Japan Tour 2019 ~>

2019.8.24-25 Kawasaki Club Citta'
<8/24>
1.Damned If You Do
2.Needle and Suture
3.Badlands
4.Gods of Second Chance
5.Start the Fire
6.Date with Poverty
7.Watch the Children Pray
8.No Friend of Mine
9.Agent Green
10.The Black Thing
11.Human Factor
12.Beyond the Biack
13.By the Numbers
14.In Morning
15.Fake Healer
~ Encore ~
16.Anthem to the Estranged
<8/25>
1.Damned If You Do
2.Needle and Suture
3.Fake Healer
4.In Morning
5.Human Factor
6.Date with Poverty
7.The Black Thing
8.Agent Green
9.Gods of Second Chance
10.Start the Fire
11.No Friend of Mine
12.Watch the Children Pray
13.Beyond the Biack
14.By the Numbers
15.Badlands
~ Encore ~
16.Anthem to the Estranged
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