【連載】フルカワユタカはこう語った 第29回『#エキセントリックな人と繋がりたい』
▲“音楽系YouTuber”セゴリータ三世と
氷は沢山いれてもらったが、ビニール袋の中のマグロとシャケと赤貝が心配だ。
◆フルカワユタカ 画像
上りの矢印が消えた瞬間に下りが点灯した、さっきからそのやり取りが2度ほど続いている。あいにくこの踏切の周りには日陰が無く、先ほど買った刺身には日光が直接降り注いでいる。ただ立って踏切が開くのを待っているだけなのに、背中の真ん中からゆっくりと全体にかけてシャツが張り付いていくのが分かる。遠くから救急車のサイレンが近づいてきて踏切の音と言い争いが始まった。夏というものはただ蝉がないているからという理由ではなく、明らかに騒がしくて鬱陶しいものだ、と僕は思う。この先、歳をとったらなおさらだ。
『epoch』のリリースから今まで、思ったよりも色々と忙しかった。この2月に異動になった元マネージャーに事務所で「忙しそうっすね~」と冷やかされても、ごく自然に「この時期忙しくなかったらやばいでしょ」って返せるくらいプロモーションはある種充実していた。それも先日の<アコースティックプレツアー>をもって一段落。これからは本ツアーの準備に入るのだが、今日は晩酌の刺身と焼酎 (本当は日本酒かビールが飲みたい……、) を鼻先にぶら下げながらせっせとコラムを書いている。
▲2019.7.04@ニコ生『epoch』リリース特番。ゲスト:Base Ball Bear、MC:鹿野淳
ここ1ヵ月ほど、糖質制限ダイエットなるものに挑戦している。40歳も越えてくれば多少の恰幅の良さはむしろ必要だと思っているし、別に健康上の問題も全然ないのでこれまで体重をあまり気にしてこなかった。が、バンド解散から7年、健康診断毎に1キロずつ計7キロ、じわじわと、しかし着実に増えてゆく体重の行方が流石に気になった。
当初は米、パン、麺類等を外したいわゆる炭水化物抜きダイエットだったのだが、調べるうちにそれでは不十分だということが判明。禁煙をした時もそうだったが、一度やると決めればとことんやる性格。今回もかなり本格的に取り組むこととなり、結局、炭水化物を皮切りに果物、根菜、醸造酒 (そう!日本酒やビールなど!) と禁食禁飲案件が増え、いつのまにかこの完全なる糖質制限ダイエットになった。おかげで既に4キロほど落ちたのだが、それでも運動を並行しないと落ちてくれない。
寄る年波というやつか、昔は少々暴飲暴食をしていても太ったりしなかったのだが、これだけしっかり糖質制限してもジョギング無しでは落ちてくれないなんて、そりゃ7キロ太るわけだ。
こういった体型や体力、物忘れだったりの表立った老化というものを自分で意識することは比較的たやすく、これらはダイエット等の努力で改善の余地もある。が、僕らの仕事の根幹を為す“感性”の老化というのは自覚や客観視することが非常に難しく、しかも努力の方法も改善の成果もかなり曖昧だ。僕の“感性の老化”はどれくらい進んでいるのか、そしてそれは改善もしくは改良しうるものなのか否か。これがもっぱらの考え事だ。
▲2019.7.06@Inter FM『Love On Music』。佐藤タイジ、ジョー横溝
免許をもってない僕がこんな例えを用いるのは恐縮なのだが、例えば“感性”はアクセルで“知識”はブレーキだと言える。
若い時はアクセル全開であらゆるものに反応し、行動を起こせるのだが、年齢とともに知識というブレーキがそれを制御するようになってくる。僕の乗り物は今、いかほどのバランスで進んでいるのか。色んなリスクを経験してしまったので確かにブレーキは多く踏むようになった。アクセルは……、自分では踏み込んでいるつもりだが果たしてどうだろうか。
最近、異動で変わった新しいマネージャーから新人バンドの音源をいくつか紹介された──「うちの事務所でちょっと追っかけてるバンド達です」。
聴いた瞬間、敵わないなと。嗚呼、若さってやつには全くもって敵わない。言葉、メロディー、アレンジ、その全てにおいて感性がだだ漏れている。まだ統一性は無いが、決して無ではない個性。大人や社会に対する美しい警戒心。余白だらけで未完成な甚だしくも瑞々しい知識。しかもそれはひとつのバンドに限らない (無論よくない、というか僕に合わないものもあったが)。皆20代前半、中には高校生だというバンドもある中で、勧められた音楽のほとんどに、かつて僕にもあったであろうそれらが光りまくっていた。何ものかになろうとする、感性まみれのそれら。
▲2019.7.13@<KESEN ROCK FESTIVAL>初出演。キャンプナイトにて
数年前から新しい音楽と僕の間に、飛び越えられないボーダーみたいなものが出来た気がしている。それがずばり年齢差から来るもので、どうやったって抗えないことに気づいてからは、焦りや嫉妬ではなくて、心地よい諦めや続いて行く文化に対するリスペクトに変わった。こう言うとファンの中にはがっかりする人もいるかもしれないが、常に新しくあろうという時期が僕の中で完全に終わったのだ。
どうやったら若くあれるかより、どうすれば若さと遭遇できるか、僕の求める新しさは自己から他者へ。その構えが僕にとって正しい新しさへと、ひいては感性の改善へと自然に繋げてくれるような気がしている。どう踏み込んだってもう僕のアクセルは彼らのようには回らないのだから。
と、熱くなってえらい小難しく書いちまったけど、ようはみっともなく若作りするのはやめたぜってこと。もちろん老け込んじゃいかんがね。
▲2019.7.17@下北沢風知空知<企画ワンマン>。ゲスト:堀之内大介(Base Ball Bear)
そういえば、糖質制限ダイエットの他に最近始めたことがもうひとつある。ツイッターだ。
一昨年の夏から (もう二年になるのか!) インスタグラムをやっていたのだが、段々と告知やライブの感想を綴るだけのツールになりつつあり、さらには写真を撮るのが苦手というか恥ずかしいというか、バックヤードとかで「インスタ用に一枚撮っていい?」とか食べる前にパシャリとかが全然出来ない僕は、そもそも写真投稿が向いてなかったりして。徐々につまんなくなっているのは自覚していたので、ここらへんでツイッターでも始めれば割り切ってインスタが出来るかなと。
現状、インスタやオフィシャルツイッターとはリンクせずにやっているし、呟いている内容が比較的エキセントリックなものが多いので、当初は知り合いですら真偽がわからずに尋ねてくる人もいた。
ちなみにこのツイッターの目的はアルバムのプロモーションにあらず。なので始めてからこの二週間、新譜のプロモーション期間中にもかかわらず告知などは一切していない。かといってストレス解消やなれ合いの場所にするつもりも全くない。このツイッターは僕の新しい表現の場所にする。お行儀よくなってしまったインスタでは出来ない僕の感性を試す場所。しかも瞬発的なやつを。だから事前にチェックを入れて公開しているインスタやコラムと違って、酔っぱらって呟いたりもする。そしてそれを翌朝見て、羞恥心やらなんやらでへこんだりもする。いい歳して厨房かよって自問自答もする。が、しかし、それもまた感性の鍛錬である、と信じる。
▲2019.7.20@水戸ライトハウス。THE BLACK COMET CLUB BANDとツーマン
って話を「これユタカ本人? 遊びのツイッター? ストレス発散のため?」ってマーちゃん (原昌和[the band apart]) がラインしてきたので、上記説明を丁寧にしたら即座に“可愛い豚のキャラクターが壮絶に嘔吐しているスタンプ”が返ってきた。ストイックな人のストイックなエピソードが嫌いなマーちゃんの感性が拒絶反応を起こしてしまったのだろう。申し訳ないことをしたね。
が、ツイッター開始のもっと大元のきっかけは、何を隠そうこのマーちゃんとのラインチャットに他ならない。
マーちゃんと僕のラインはひとたび始まれば、長い時で1時間程度続く。その際の彼の言葉とスタンプのセンス、そしてそれに対峙するスリル。左脳をフル回転させて返ってきたボールを打ち返す、するとさらにラインギリギリ (LINEの話をしている時にテニスで例えるとややこしいね)の言葉を返してくる、そしてそれをまた打ち返す。会心の言葉を送信したはずなのに20分くらい既読スルーで放置されることもある。なのにこっちが「ごめん、移動中だから後で」って打つと嵐のようにスタンプを打ってくる。まさに感性の対決。
会話が終わった後、僕はいつも冒頭から読み返すのだが、高速で移り変わってゆくテーマとそこに交わされる高次元なトークラリーが本当に至高でもはや“作品”と言っても過言ではない。
を公衆の面前でやってやろうじゃないかという話なのだ。今のところまだ始めたばかりで手応えらしい手応えは無いが、今後に期待。やっていくうちにこれもまた素敵なアイテムになるはず。あえて広げようとしてないため現状はこの感じなのだが、正真正銘本人のアカウントなので以後もよろしく。
▲2019.7.21@TOWER RECORDS 難波店『epoch』インストアイベント
▲2019.7.21@蔦屋書店 枚方『epoch』インストアイベント
さて、今月はこんなところかね。ちょうど日も暮れて涼しくなってきたので、これからジョギングして、後は刺身をあてに晩酌ですな。一昨日、マーちゃんからラインで送られてきたバンアパの新曲 (よく送られてくるのだ! 羨ましいだろ!) やら、今度マネージャーとライブを観に行く予定の若いバンドやらを聴きながら。
■4thアルバム『epoch』(エポック)』
NIW147 / 3,056円(+税)
01. コトバとオト feat.Base Ball Bear
02. ゲッコウとオドリコ
03. クジャクとドラゴン feat.安野勇太(HAWAIIAN6)
04. コーラとアメスピ
05. セイギとミカタ
06. インサイドアウトとアップサイドダウン feat.ハヤシヒロユキ(POLYSICS)
07. ボトルとサイダー
08. デストラクションとクリエイション ※Guest:岸本亮(fox capture plan)
09. ドナルドとウォルター feat.原昌和(the band apart)
10. ロックスターとエレキギター
■<フルカワユタカ ワンマンツアー「epoch」>
open17:30 / start18:00
09月01日(日) 神奈川・横浜F.A.D YOKOHAMA
open17:30 / start18:00
09月08日(日) 群馬・高崎club FLEEZ
open16:30 / start17:00
09月29日(日) 茨城・水戸LIGHT HOUSE
open16:30 / start17:00
10月14日(日) 埼玉・西川口LIVE HOUSE Hearts
open17:30 / start18:00
10月19日(土) 京都・京都磔磔
open18:00 / start18:30
10月20日(日) 岡山・岡山ペパーランド
open17:30 / start18:00
10月22日(火) 静岡・静岡UMBER
open18:00 / start18:30
10月27日(日) 宮城・仙台space Zero
open16:00 / start16:30
11月02日(土) 北海道・札幌COLONY
open17:30 / start18:00
11月03日(日) 福岡・福岡Queblick
open16:30 / start17:00
11月09日(土) 大阪・梅田Shangri-La
open18:00 / start18:30
11月10日(日) 愛知・名古屋APOLLO BASE
open16:30 / start17:00
11月16日(土) 東京・渋谷TSUTAYA O-WEST
open17:30 / start18:00
▼チケット
4,200円(税込/Drink別)
一般発売:7月6日(土)
受付URL
この記事の関連情報
【ライブレポート】LOW IQ 01、<Solo 25th Anniversary チャレンジ25>日比谷野音公演を豪華ゲストも祝福「25周年、楽しいお祭りができました」
【ライブレポート】<貴ちゃんナイト>、fox capture plan、フルカワユタカ×木下理樹、CONFVSEの共演に和やかな音楽愛「笑っててほしいよ」
フルカワユタカ × 木下理樹 × 岸本亮 × 山﨑聖之、<貴ちゃんナイト>共演に先駆けてラジオ番組対談
<貴ちゃんナイト vol.16>にfox capture plan、フルカワユタカ×木下理樹、CONFVSE
フルカワユタカ(DOPING PANDA)、the band apart主宰レーベルより新曲「この幸福に僕は名前をつけた」リリース
フルカワユタカ(DOPING PANDA) × 荒井岳史(the band apart)、ソロ10周年記念Wアコツアーを5月開催
ACIDMAN主催<SAI 2022>ライブ映像を出演者らのトークと共に楽しむ特別番組生配信
フルカワユタカ(DOPING PANDA)、周年イベント<10×25>出演者最終発表
フルカワユタカ(DOPING PANDA)、5thアルバム発売日に周年イベント<10×25>開催発表