【インタビュー #1】doa、デビュー15周年を語る_前編「転機は“3人全員がリードボーカル”」
■“レースと音楽”の二足のわらじ
■みんなに迷惑がかかると思っていた
──では、doa前期のターニングポイントを挙げるとしたら?
吉本:レースの世界での今後の道を決定する大事な時期にdoaに参加して、その後、最高峰レベルのレースに参戦するために、デビュー間もなくして僕がヨーロッパに移り住んでしまったんです。doaのほうは、僕が日本に帰ってきた時に、一気にレコーディングできるような環境を作ってもらって。でも、やっぱりそれでは追いつかないんですよ。そのタイミングですよね、徳永さんがリードボーカルを取る曲が出来たりするようになったのは。僕がみんなに迷惑をかけた結果、そういうことになったのでいいようには言えないけど、doaの引き出しが増えた時期だったという意味で、そこがdoaのターニングポイントになったと思う。
──レースに専念するためにdoaをやめようと思ったりはしませんでしたか?
吉本:たしかに二足のわらじを履くのは、みんなに迷惑がかかると思っていたんですけど、両立は僕一人の判断ではなくて。それが可能な環境を徳永さんと大田さんが作ってくれたからできることなんです。恩着せがましさとか、悲愴感なんて全くなくて、「いいんじゃない」ってすごく軽い感じで言ってくれたり。そのおかげで、今がある。メンバーが同年代だったり、僕より若い世代だったら、こうなってなかったと思いますね。“レースはやめて、バンドに専念してほしい”という話になっていたかもしれないし。
大田:だって一度きりの人生じゃん? やりたいことがあるなら、全部やったほうがいい。
徳永:そうそう。
大田:レースをやめてほしいとか、違うメンバーを探そうみたいな考えは一切なかったですから。で、僕自身の前期の転機を挙げるとすれば、歌詞を書き始めたことですね。「君だけに気づいてほしい」(2005年8月発表)という曲で初めて歌詞を書いたんです。歌詞を書くのは難しい作業だし、元々書くつもりはなかったんですけど、徳永君が作詞で悩んでいる姿を見て、「俺もちょっと手伝おうか」と言ったら、「それはぜひ」ということになって。歌詞を書いてみると、メロディーに対してどういう符割りで言葉を乗せるかを理解してもらうために、自分で仮歌を歌うことになるんですね。それを聴いたメンバーが「大田さんもリードボーカルをとれるんじゃないか」と思ってくれたみたいで、その頃から僕がリードボーカルの曲が出来始めた。つまり、「君だけに気づいてほしい」をきっかけに自己表現の場が一気に広がったんです。
徳永:僕のターニングポイントは、「あるアニメのタイアップを」という話をいただいて、納品前日に、ほぼ完成形まで作り込んだんですよ。でも、プロデューサーのところに持っていったら、その日の夜に、曲ごとボツになった。「楽曲自体はいいけど、アニメとのマッチングがよくない」ということで。でも、納期は翌日昼だったから、大急ぎで新たな曲を作らないといけないということで、夜中から曲を作り出したんですけど、“あ、吉本君がいないぞ”と(笑)。彼はボーカルレコーディング後に、ヨーロッパへ帰ってしまったんですよ。
──なるほど。どうしたんですか?
徳永:“doaはボーカルが3人いるんだから、この曲は自分で歌ってみよう”って曲を作り直して、自分で歌ったデモを翌日提出したら気に入ってもらえたんです。それがシングル「心のリズム飛び散るバタフライ」(2006年12月発表)。シングル曲で僕がリードボーカルを取ったのは初めてだったんですけど、有線で年間賞をいただいたり、結果も残せた。こういう方向性もありだなと思えたということも含めて、doaのターニングポイントだと思います。
──3人がそれぞれリードボーカルをとるようになったことで、doaの音世界は一層広がりましたよね。ただ、徳永さんはベーシストで、大田さんはギタリストということで、歌わない曲は楽器を弾くわけじゃないですか。吉本さんは自分が歌わない曲が出てくることに抵抗感なかったですか?
吉本:全然なかったです。2人が歌ってくれると僕は休憩できるので(笑)。ま、それは冗談として、やっぱり自分には歌えない曲もたくさんあって、レコーディング中に「これは徳永さんじゃないですか?」とか「これは大田さんでしょう?」と言うことがあるんですよ。だから、最近は3人全員が一度メインで歌ってみて、誰が歌うかをその後で決めることが結構あって。僕は楽曲が一番いい形に仕上がることが一番大事だと思っています。
──さすがです。それに最近は「誰が歌うか?」という話になると、全員が「どうぞどうぞ」と譲りあっているとか(笑)?
徳永:そう(笑)。doaはリードボーカルを取り合って険悪な雰囲気になったりすることはないですね。
吉本:そういえば、僕もギターを弾けるようになるために練習しようかなと思った時期があったんですよ、2人がボーカルをとる曲のためにね。でも、これは人に聴かせられるレベルまでいくのは無理やなと思って、途中で断念したんです(笑)。僕の家には、弾けないのにギターが3本くらいあります(笑)。
──ははは。doaの前期活動トピックとしては、2005年にR.E.Mが来日した際、オープニングアクトを務めました。
吉本:ありましたね(笑)。もうわけがわからないままステージに立つことになりました。どれだけすごいことなのかも含めて、よくわかっていなかったんですけど、東京公演が日本武道館だと聞いて、“ええっ!? デビューしたばかりのバンドが武道館!?”みたいな。もちろん緊張したし、本番前に徳永さんが「きっと缶々とかが飛んでくるぞ」とか言っていたんですよね。
徳永:だって完全アウェイじゃないですか。僕らのことなんか全然知らないお客さんしかいない場で、みんなが初めて聴く曲を演奏して歌うとなると、そこにはダイレクトな反応しかないわけですよ。拍手が沸くか、それとも、缶が飛んでくるか。逆に、“そういうことすら楽しもうぜ”という覚悟でステージに臨んだら、本当に拍手してもらえたんですよ。それで、完全なる勘違いだったかもしれないけど、“いける!”みたいに背中を押してもらえたオープニングアクトでしたね。
吉本:ライブが始まったら場内の雰囲気が本当に良くて、ライブを楽しむことができたんですよ。本当にいい経験でしたね。
大田:僕はただただ、“武道館に立てる! すげぇ!”と(笑)。もう、それだけで進んで、そのまま本番も気持ち良くライブができたかな(笑)。今でも夢のような記憶ですけど。
吉本:緊張しなかった?
大田:したよ。したけど、doaの前に組んでた自分のバンドの初フルライブほどは緊張しなかった。
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