【ライヴレポート】DEZERT、「愚かな自分を愛するために、僕たちの1日を始めましょう」

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4月19日に幕を開けたDEZERTの全国ホールツアー<DEZERT 2019 TOUR “血液がない!”>が6月22日、初日公演と同じ会場となる日本橋三井ホールでファイナルを迎えた。先ごろ公開したオフィシャルレポートに続いて、詳細レポートをお届けしたい。

◆DEZERT 画像

数年前にはDEZERTが大人向けのイス席がある洗練された会場でライヴをするなんて想像もできないことだったが、現在の彼らが選択した場所で“混じり気のない今を見せる”という意味において、DEZERTはファイナル公演にて生々しい瞬間の連続を焼きつけた。

客電が落ちて歓声に迎えられる中、メンバーが登場。SORAはドラム台に立って煽り、千秋とMiyakoがギターを構え、Sacchanが太いベースサウンドを鳴らし、肩慣らしのようにインプロヴィゼーションが始まった。やがて千秋が「ハロー ハロー 聴こえますか?」と呼びかけ、最新両A面シングル収録曲「Call of Rescue」へとなだれ込んだ。千秋の歌を活かすような“静と動”が交錯するバンドサウンドに緊張感が溢れる。Miyakoが感情を増幅させるギターソロを響かせ、SORAが力強いビートを叩き出し、Sacchanのベースがうねる。1曲目からツアーを廻ってきた今のDEZERTを刻みつけ、「胃潰瘍とルソーの錯覚」では客席のヘドバンも壮観だ。



そして、千秋がギターをつま弾きながら会場を見渡して、おもむろに弾き語りで始まったのは、もがきながら汚れながら届かなくても光に向かって羽ばたく様を人間に重ねた「蝶々」だった。「生きてます? 生きてます? ああ、僕たちは醜い。ならば天使になりませんか?」と千秋が問いかけ、飛び回る蝶のように楽器のフレーズがループしていく。初めて聴く曲だとしてもメッセージは響いて刺さってくる。DEZERTが手を伸ばして想いをまっすぐ伝えようとするバンドであるからに他ならない。

そして千秋の口から語られたのは、全国ツアーを振り返ってのあまりに正直な感想だった。

「ようこそ。6月22日、今日は何の日ですか? ウチのツアーファイナルです。短いツアーでしたが、いろいろありました。あえて言わせてください。意気込んで行った札幌、半分しか人がいなかった。消沈した仙台、半分しか人がいなかった。つまり僕たちは現実を見た。何よりいちばんイヤだったのは始まる前から悔しかったこと。“ああ、俺、ちっぽけだな”って。悔しいってことは負けちまったんだなと思いました」──千秋

絶対にリベンジすると約束したこと。これまでは否定していたけれど、目の前の目標は大事だと思ったこと。包み隠さない言葉はやがて叫ぶような声に変わっていった。

「こんなにセンス溢れるバンドのホールのライヴが埋まらない。世界が悪い。負け犬の遠吠え上等! 見てるところが違うんだよ、俺たちは。本日の私たちの混じりっ気ないプライドをお見せするので、今日ここにいない人、そして今日ここに来てる全員に向けて、僕たちのプライドで1曲歌わせていただきます」──千秋



直後に投下されたのが気迫のカタマリのような「「殺意」」。しかし、幾度となくライヴで演奏されているこの曲の凶器は、誰かではなく自分に向けられていた。場内は絶叫。ここからの最新シングル「血液がない!」では「誰か、僕の血液を知りませんか? 僕の才能を知りませんか?」と見渡し、ハンドクラップで盛り上がる場内。DEZERTのリアルタイムが次々に更新されていくような荒々しい演奏で熱を上昇させていく。

「三井ホール、跳べないらしいじゃん(※会場はジャンプ禁止)。知ってる? 跳び方ってあるんだよ。上に跳べばいいってものじゃないんだよ。心臓を跳ねさせませんか? 心臓出せ心臓。まぁ、俺なら普通に跳ぶけどね」──千秋

「煽ってないよ」と付け加えるのも忘れず、思わず跳ねたくなるようなファンクビートの「肋骨少女」では千秋とMiyakoが向かい合い、軽くジャンプしたり、Sacchan、千秋、Miyakoの3人がSORAのほうを向いて呼吸を合わせたりとステージの熱量はまたたく間に伝染し、場内は揺れるほどの沸騰状態に。

みんなが叫び倒し、カオスと化したハードコアナンバー「「教育」」では“嫌いさ!嫌いさ! お前が嫌いさ!“という歌詞を“嫌いさ!嫌いさ! 自分が嫌いさ!”と変えて、苦しいから変わるんだと歌っていた。アップデートされていくライヴの定番曲たち。中でもMiyakoのアルペジオから始まった「「遭難」」は孤独感と喪失感が痛いぐらいに伝わってくるセンシティヴなアプローチで鳴らされ、終わった直後に大きな拍手が巻き起こった。



そこからの最新シングル収録曲「Stranger」は、今のDEZERTならではのポップなメロディと洗練されたサウンド。詞に呼応するようにMiyakoが空を描き出すようなギターソロを響かせた。ライヴハウスで暴れ倒していた頃のDEZERTと違うのは、何をしでかすのかわからない千秋に焦点が当たりがちだったが、今は4人がきっちりフレームの中に入ってくること。UK色の強い「さぁミルクを飲みましょう。」はそんな変化もあいまって新鮮に響き、横ノリのグルーヴが心地いい「浴室と矛盾とハンマー」は千秋が最後の歌詞を“歪な化粧でライヴに向かってる”(※原曲の歌詞は“ライヴ”ではなく“現場”)と変えて歌っていたのも印象的だった。

そして、この日、個人的に息を呑むぐらいに惹きつけられたのは「浴室と矛盾とハンマー」と、同じく最新アルバム『TODAY』収録曲「Insomnia」だった。身体を折り曲げて、全身で歌う千秋のヴォーカルは場内を静まり返してしまうほどの説得力。DEZERTの本質をこれまでになくストレートに表現したアルバムがバンドにとっていかに大きな意味を持っていたのか物語っているアクトだった。

「今日だけはそばにいるじゃないか」──千秋

「Insomnia」の歌詞に繋げるように千秋らしい言い回しで客席に愛を伝え、「こんなに顔覚えられないんで、君たちをひとつの色として思い出すことにします。そうだな。オレンジだ」とギターロック色の強い「オレンジの詩」を披露し、ライヴは後半戦に突入。「脳みそくん。」から「蛙とバットと機関銃」「「君の子宮を触る」」の流れでは、歌い叫び我を忘れる人が続出。



メンバー紹介とともに、楽器隊3人それぞれがサビのヴォーカルを取った「「遺書。」」では、ツアーを通しての成果を披露。Miyakoはなかなか歌い出さずに千秋をやきもきさせ、SORAは千秋にプレッシャーをかけられ、Sacchanは「そんな声援じゃ歌えない」と催促したかと思えば「静かに」とあまのじゃく。しかしソウルフルな歌声に客席から大声援が沸く。そしてメンバーの後には会場全員の歌声が鳴り響いた。

“出口がないなら非常口でいい”とメッセージする名曲「「ピクトグラムさん」」を送ったあと、千秋が想いを解き放つように伝えた。

「わかってたけど、このツアーを通して再確認したことがある。やっぱり強がっていても僕は臆病者だ。いや、カッコつけて言うんじゃなくてクソ野郎です。辛いことから逃げたってよけい苦しくなるだけだって歌詞にして、もうすぐ1年が経とうとしていますが、何か変わったのかなと思うと、“たいして変わってねーな、俺”って思っちゃいます。そう。たぶん僕たちは根本的には変わらない。それぞれがきっといろんなものを抱えていると思います。
 若いヤツだったら勉強だとか受験だとか親とかうぜえとか、仕事してるヤツは最近転職してとか、ちょっと年いったヤツは嫁うぜえとか旦那うぜえとか、きっと僕たちはそれぞれ、歩き方や速度は違えど何か抱えて生きていると思います。天才は明日を歌うし、凡人は過去を歌う。だから僕は今日、どうしても今日を歌いたいと思います。
 何が正しいか何が間違ってるかわかんねーからさ。とりあえず今日を踏み出す一歩。どうせまた戻っちまうんだから、進んだと思ったら勘違いだったってこともあるし。それぞれ抱えてるもの──不安な未来も明るい未来も目をつぶりたくなるような過去も楽しかった過去も、この5分間は忘れて今日だけを僕らと送りましょう。オマエたちの5分をどうか僕たちにいただけませんか? 跳べないんだろ? じゃあ、手を挙げてくれよ! 愚かな自分を愛するために僕たちの1日を始めましょう」──千秋

締めくくりはオルタナティヴで音も詩も刺さりまくりの「TODAY」。“受け入れろ 瞳を開けろ ここが出発点”と歌うこの曲はDEZERTが新たに踏み出した一歩であり、繰り返していくことの虚無も希望もひっくるめての生命力を感じさせる。まさに今日、この瞬間にしかないライヴ。それは心を揺らす日々があったからこその今日であり、ツアーファイナルだ。


アンコールの声は鳴り止まず、再びステージに出てきた4人が届けたのは、ライヴで何度もアレンジが変わってきたという音源化されていないナンバー「オーディナリー」だった。

「オーディナリー」のリズムパターンを変えたことに続けてSORAの誕生日を祝うなどアンコールならではのトークも。そして、アンコールに1曲だけこの曲を送るのは「お土産だから」と、「みんなには、お土産を返しに、またライヴに来てほしい」と伝えた。さらに、年内にツアー予定はないけれど、カッコいいアルバムを制作中だと今後についても触れた。

「また明日からしょうもない1日、素晴らしい1日が始まると思いますが、僕は僕の味方だし、君たちの味方でありたいと思ってます」──千秋

これからもDEZERTはもがきながら探しながら楽しみながら生々しい“今”を更新し続けていくだろう。なお、DEZERTは12月23日(月)に渋谷CLUB QUATTROにて年末恒例企画<くるくるまわる-2019->を特別ワンマンとして開催することが発表となっている。

取材・文◎山本弘子
撮影◎柴田恵理

■<DEZERT “血液がない!”>2019年6月22日(土)@日本橋三井ホールSETLIST

01. Call of Rescue
02. 胃潰瘍とルソーの錯覚
03. 蝶々
04. 「殺意」
05. 血液がない!
06. 肋骨少女
07. 「教育」
08. 「遭難」
09. Stranger
10. さぁミルクを飲みましょう。
11. 「排泄物」
12. 浴室と矛盾とハンマー
13. Insomnia
14. オレンジの詩
15. 脳みそくん。
16. 蛙とバットと機関銃
17. 「君の子宮を触る」
18. 「遺書。」
19. 「ピクトグラムさん。」
20. TODAY
encore
en1. オーディナリー

■ONEMAN LIVE<BlackHole 10th Anniversary SPECIAL LIVE “真夏のハウる日”>

8月24日(土) 池袋 BlackHole
▼チケット
一般発売:7月27日(土)~
【オフィシャルHP先行】
受付期間:6月24日(月)12:00~7月5日(金)23:00
https://eplus.jp/sf/detail/2991000001-P0030001

■<くるくるまわる -2019->

12月23日(月) 渋谷CLUB QUATTRO
open18:15 / start19:00
▼チケット
前売4,000円(税込)
当日4,500円(税込)
一般発売:10月26日(土)
※オールスタンディング / 入場時ドリンク代別途必要
※営利目的の転売禁止 / 未就学児童入場不可
【オフィシャルHP先行】
※イープラス抽選受付
※枚数制限:お1人様4枚まで
▼第一次先行
受付期間:8月3日(土)12:00〜8月25日(日)23:00
▼第二次先行
受付期間:9月9日(月)12:00〜9月23日(月祝)23:00

■イベント出演

▼<ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2019>
8月03日(土) 国営ひたち海浜公園
▼<アルルカンpresents STAND ALONE COMPLEX>
8月04日(日) TSUTAYA O-EAST
▼<MUCC BIRTHDAY CIRCUIT 2019 “40” 「SATOち day」~じゃっくいんざぼっくす -さとちのおたんじょうかい-~>
8月12日(月) 豊洲PIT

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