【ライブレポート】Chanty、現体制ラストワンマン「後悔の命日」。そして大きな決意

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Chantyが4月10日に高田馬場CLUB PHASEにて現体制ラストのワンマンライブを行った。

◆ライブ写真

4月に入り、寒さは残るものの春らしい天候に恵まれていた都心だったが、この日は久し振りの雨模様。会場へ向かう途中、傘を差すことを要され、しとしとと降る雨を少し鬱陶しく思ったのと同時にChantyの節目らしい1日だなと妙に納得した。

千歳(G)の脱退が発表されたのは2018年12月。アグレッシブなギタープレイでChantyの楽曲を体現してきた千歳の突然の脱退発表だっただけに、衝撃は受けたもののあまり現実味のないままこの日を迎えてしまった。公演は即日ソールドアウト。会場には現メンバー最後となるChantyを見届けようと多くのファンが詰めかけたが、フロアに湿っぽさはなくいつも通りの開演待ちの光景で、今日で4人のChantyは最後となることはやっぱり実感できなかった。


開演を知らせるように会場が暗転、ステージに明かりが灯ると成人(Dr)の力強いドラミングが始まり、それに合わせ自然と手拍子が沸き起こっていく。順にメンバーが登場、千歳は出てくるなり殺気だった様子で「死んでんのか、てめえら!」とフロアを責め立てるように煽る。「「後悔の命日」へようこそ!始めようか!」という芥(Vo)の一声で、1曲目「ダイアリー」へ。初っ端からエグみの強いナンバーを届け、その後も「ミスアンバランス」「不機嫌」と負の感情を剥き出しに猟奇的な3曲を披露。

MCに入り、芥は「外、雨降ってますか?なんかやっぱり我々そんな感じだね(笑)。始動ワンマンの時に戦後最大級の台風とかきて、地方にツアー行くときも、初めてのところに行けば大雪が降ったり大雨が降ったり、節目の時には雨が降ったなと思うわけですよ。(中略)少なくとも今日までに知ってくれた人は、本当にこのバンドは雨に愛され雨に好かれているバンドなんだなっていうことを体感してくれたんじゃないかなと思います。」と、生憎の雨模様にも自虐的に触れた。

そしてソールドアウトとなったことに改めてお礼の言葉を告げると、「さあCLUB PHASEまだまだいいとこ見せてくれますか?」の問いかけに、大きな歓声で答えるフロア。「さあ、雨の日祭始めようか!」と「やんなっちゃう」へ。“Chantyと言えば”の定番のお祭り騒ぎな1曲で一気にヒートアップ。最後の千歳のギターソロは早くもライヴ終盤のような熱量を纏っていた。

さらに「衝動的少女」「魔が差した」とChantyの狂気を覗かせる2曲が続く。繊細でクセのある楽曲たちは音源で耳なじみがいいのはもちろんだが、生の感情が乗ることで120%が引き出されるような“ライヴでかっこいい”楽曲たちが多い。この日も “ライヴを見てる!”と全身で実感できるような瞬間に何度も胸が熱くなった。

その後も、芥がアコースティックギターを手に取り、ポツリポツリと歌い出した「誰」、「monorium」「とある星空の下」と少し感傷的な楽曲に、フロアも一音一音を噛み締めるように聞き入る。そんな静寂を「揺らめくあの日は万華鏡」の軽やかなメロディが和らげたかと思えば、再びギターを手にした芥が力強く歌い出した「ゴーシュ」。前を向く目印となってくれるような救いあるギターロックナンバーでChantyの夜が段々と明けていく。

「さあ、まだまだ続けよう。」と野中拓(B)のスラップベースから軽快に始まった「インピーダンス」では、手を上げリズムに合わせ飛び跳ねるフロア。勢いそのままに「冤罪ブルース」へ続くと、楽器隊のコーラスにも一体感が増し会場中がさらに熱を帯びていった。「もっともっと見せてください。」とスリリングに「m.o.b.」を届け、一呼吸置いて披露した「奏色」。フロアに広がった笑顔を色とりどりの照明が映し出し、演奏の儚さを後押ししていた。


「巡り合ってくれてありがとう、この曲を送ります。」そう芥が呟き始まったのは「交差点」。“今は別々の道を歩いてまた繋がる”今とリンクするようなワンフレーズを、声が裏返ることも気にせず感情的に歌い上げる芥の姿にはグッとくるものがあった。そして「思いっきりここまで届けてください。」と始まった「フライト」。疾走感溢れるメロディにつられ、いつでも笑顔になれるこの楽曲で本編の最後を締めくくった。

そして盛大なアンコールを受け真っ先に登場したのは千歳。「アンコールありがとう!生きてますか!」と熱くフロアに問いかけ、「今日は俺にとってPHASE最後になるかもしれないんで、PHASEぶっ壊すくらい、店長さんすみません。ぶっ壊します。」と宣言。この日の意気込みが伺えた。少し喋ろうか、と話題はこの日のライヴタイトルにちなんで、各々の“後悔”について。後悔が8割の人、たらればが嫌いで後悔をしない人、後悔しても忘れてしまう人、と思いの外それぞれから深い話が飛び出し「良い言葉教室みたいになっちゃった(笑)。」と芥。

そして「曲行こうか。」との一声で、千歳は「みなさーん、生きてますか?まだまだやれるよな!」とフロアを挑発。熱が入りすぎたのか、仕舞にはギターをかき鳴らし始め周りを置いて自身を煽り立てた。アンコール1曲目は「おとなりさん」で騒ぎに騒ぎ、「久し振りにちょっと、無理してみたいと思います。」と「まっさかさまにおちていく」を続けて披露。フロアも割れんばかりの声とともに拳を突き上げ、また頭を振り乱す様子に野中も満足そうな表情を浮かべる。

そのまま「ひどいかお2」へ流れると、自然と左右二手に分かれるフロア。ここでステージから芥、野中が姿を消し、それに気付いた千歳が不安気に成人を見つめていると、楽屋の方から戻ってきた2人。手にはあるものが。「これで色んなものを調理し、色んな人を幸せにしてください!あ、縁は切っちゃダメだからね」と“良い感じの包丁”を千歳に卒業祝いとして贈呈。ちょうど包丁を買おうと思っていたという千歳は、「ありがとう!これで頑張ります!」と新しいスタートへの意気込みを見せる一幕となった。

そしていざ曲へ、芥は「1曲丸々戻ってこなくていいんで。」と千歳へフロアに降りファンへ挨拶回りする事を命ずると、「営業やね(笑)」と野中。言われた通りファンと同じ目線まで降り立った千歳は、曲がスタートすると共に起こった大モッシュに助走をつけ飛び込むと、その後はフロアの中に見つけた男性客数名を捕まえよじ登り、担がれながら隅から隅までを移動。終始会場中の笑いを誘った。

「あっという間だね、本当。しんみりとは違うけど、一言もらおうと思います。」と、芥。「今日はマジでありがとうございました。(中略)一つ、お願いがあります。この先もChantyは続いていきます。みんなの応援があれば、これから先もどんどん歩んでいけるから、どうかみんなChantyをよろしくお願いいたします。」約6年間、共に歩んでくれたファンと、この日に晴れやかに送り出してくれるメンバーに改めて感謝の言葉を述べた千歳。「だからみんな結局別の道だけど、同じように歩んでいくから、俺もChantyもみんなも、幸せになりましょう!これからもよろしくな!」


不器用で、ちょっとだけ言葉下手な千歳の精一杯の挨拶。“どうかみんなChantyをよろしくお願いいたします”千歳のそんな言葉に、もう明日から別々の道を歩むのだと少しだけ実感が湧いてきた。しんみりした別れにはならないことは分かっていたという芥。「想像はしてたんだけど、終わりたくない気持ちだね。明るい気持ちっていうか、なんか終わりたくない。」と素直な思いを口にする。千歳脱退の話が出た際には、バンドの歩みを止めることも考えたと語った。5人で始まったChanty。千歳の脱退を受け3人となる事実を前に、止まるも進むも大きな決断だったに違いない。

そして、バンドの歩みを止めないことを決断し、その決意の表れとして2019年9月16日、これまで始動当初からTSUTAYA O-WESTにて行ってきた周年ライヴを、新宿BLAZEにて取り行うことを発表。さらには、それまでに2、3リリースしたいと芥が口にすると、会場からは少しばかりどよめきが起こった。これまで大事にしてきた周年ライヴの場を、変えなければならなかったことについて、「3人の弱さ」だったと語った芥。けれど、そうして選んだ会場は今まで行ってきたO-WESTの倍ほどの大きさの新宿BLAZE。

「言い訳すると思ったんですよ。1人大事なメンバーがいなくなった時に、同じO-WESTを形にするのさえも難しいんじゃないか。でもきっとなんとかみんな来てくれてなんとか形になるんじゃないかっていう甘えが出てくる気がしたんです。その中で、去年WESTに来てくれた人たちが全員収まりきってもまだまだっていう会場に挑むくらいの気持ちでいないとやれないなって思ったんですよ。だからこれは周年祝ってくださいっていう気持ちっていうよりは、みんなを引っ張ってあのデカい会場を最高の空間にしたいと思います。」6年目となりメンバーがまた一人と欠けることとなった今、自身の甘えを押し殺しバンドのこれからをしっかりとファンへ提示したChanty。

そしてとうとう残るはあと2曲に。「届けます。」と芥の一言から始まった「赤い糸」。千歳のいるChantyが過去になったのを実感するのはもう少し先かもしれない。いつもと変わらない暖かいメロディに包まれていると、なんとなくこの時間がまだまだ続いてしまうような気がした。「4月10日、「後悔の命日」また会えますように、最後の曲を送ります。」とラストを飾ったのは「最低」。メンバー各々が目を合わせ、呼吸を整えながらも音楽を遊び尽くす様子は、憎いほど清々しいいつもと変わらぬライヴ風景。「そこにいてくれてありがとう。Chantyでした!」芥がそう叫んだ時には、さよならのような湿っぽさは微塵も感じられず、雨の上がったような晴れやかな笑顔だけが会場中に広がっていた。


そして鳴りやまぬ拍手の中メンバー4人がステージ中央に集まると、ワンマンライヴではすっかり恒例となった、千歳扮する“カーテンコーラー千歳”の登場。「最後と言っても、最後ではないんですよね。未来は続いていくので、そういう意味を込めて。」と「まーたあーしーたーっ!」と両手に持った未来の種の花を咲かせるようなアクションでこの日を締め括ることに。「明日、きっといいことがあります。だって今日こんなに楽しいんだから。今日よりも明日、みんなで最高の明日にしましょう。後悔の命日は終わりです。」そんな千歳の言葉とともに、フロア中が掛け声で一斉にジャンプ。最後の最後まで、相も変らぬ和気あいあいとした雰囲気がただ嬉しかった。

予定ではここで公演終了となるはずが、その後も鳴りやまないアンコールに応えメンバーが再々登場。「最後に、俺に最高の思い出をください!」と現体制、正真正銘最後の曲となったのは「C」。涙、涙のような悲しい別れではなく、前向きに、“また会える”という思いを残し最後を迎えられたのは、千歳の人柄あってのような気がする。曲が終わると、止まらない千歳コール。最後にステージに残った千歳は、「今までありがとう!」と、シンプルな感謝の言葉を述べ、ステージを後にした。

かえって寂しくなるくらいに、しんみりしたライヴにならなかったのは、各々がこれから進むべき道へもうすでに一歩踏み出していたからだろう。1日を通して、“別れ”ではなく“新しいスタート”のような晴れ晴れしさを感じられるライヴだったのと同時に、これからのChantyが純粋に楽しみになった。歩み続けることを決めたChantyも、新しく踏み出した千歳も、そして今までChantyという音楽に出会ってくれた全ての人も、そもそも、こんな広い世界で同じ時代に同じ時を共有した奇跡はすでにあるわけで。それを思えば、それぞれが歩みを止めない限り“またどこかで”なんて何も難しいことなんかじゃないはずだ。

まずは芥の宣言した、9月までに最低2リリースを待ちわびようと思う。1人欠けようと、前へ歩むと決めたからにはChantyにはまだまだこれからも多くのファンを引っ張って行ってもらわなければならない。この日をもって「後悔の命日」は過ぎていった。あとは、それぞれが歩き出したその先へ、たらればを殺しながら進んでいくとしよう。

文◎糸永織菓子

<6th anniversary oneman>

2019年9月16日(月・祝) 新宿BLAZE
詳細後日発表

◆Chanty オフィシャルサイト
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