【ライブレポート】Chanty、5周年ワンマン「一番近くでずっとずっといたい」

今回で5回目を迎えたChantyの周年ライブ＜Chantyの世界へようこそ＞が、9月16日に東京・TSUTAYA O-WESTにて行われた。

◆ライブ写真

毎年同じ日に、同じ場所で行われてきた周年ライブ。今回いつもと違ったのは、5年目にして初めてソールドアウトを達成したこと。メンバーはもちろん、集まったファンもいつも以上に晴れやかな気持ちと期待を胸に、この日を待ち侘びていたのではないだろうか。
開場時刻を迎え、照明が落とされるとともに歓声が上がった。ピアノの音がゆっくりと流れ出し、真っ白な新衣装を見に纏ったメンバーがひとりずつ登場。最後に真っ赤な頭巾を被りギターを手に現れた芥（Vo）は、そのまま力強く歌い出した。「綺麗事」だ。芥の奏でるアコースティックギターと声だけが響く空間に、思わず息をのんだ。

そして「さあ、はじめようか」の声で始まった「m.o.b.」は、幕を切って落とすような疾走感に溢れていた。続けて披露されたのは「ミスアンバランス」「ソラヨミ」と、活動開始当初からライブでお馴染みの楽曲たちだが、以前よりもずっとメンバー各々の奏でる音が混じり気なく、生音らしさを体感することができた。


MCで芥は「まず、本当に本当にありがとうございます。やっと5年目にしてソールドアウトできました！」「あれよあれよと5年間やり続けてこれました。本当にこれは皆さんのおかげです。ありがとう。いつかのWESTの公演でも言ったけど、WESTをソールドアウトするような人たちは、悩み事なんてねえんだろうなと思ってましたが、悩み事めっちゃくちゃあります（笑）。」と素直な言葉を口にする。

そして「だから、お前たちも毎日何か目標が叶っても悩み事まだまだあるななんて思うかもしれないけど、一緒に僕たちと進んでいければと思います。よろしく！」とコメント。ソールドアウトを達成してもなお、悩みは毎日尽きないと正直にステージの上で話す様子もまたChantyらしさだし、そんな毎日だからこそ彼らの楽曲たちがよりファンに寄り添ってくれるのかもしれない。

そして日頃のフラストレーションを発散するように、「無限ループ」へ。芥の放った「かかってこいや！」の声を大きく割るように客席からも力強く「おい！おい！」と声援が飛ぶ。日常のアクの部分を清々しく歌い上げ、元気のいいフロアに負けじと千歳（G)も音数を増やして対抗していく。｢魔が差した｣では、自身の一瞬の気の迷いを責められているような緊張感が走り、｢ダイアリー｣では“消えたい今日も消えたい”という負のフレーズから今日も生かされてることを逆に実感させられた。

新曲「優しいあなたへ」では、芥がアンプに腰かけマイクスタンドを自ら立てポツリポツリと歌い始める。訴えかけるように一言ずつ歌い上げる芥の姿がとても印象的な1曲だ。そして「謳う心臓」「-yureru-」と、胸をギュッとつかまれるような感情的な楽曲を送る。暗闇に包まれた会場にふわりと日が差すように始まったのは「奏色」。Chantyがずっと大事に歌い続けてきたこの曲は、ファンにとってもここに居場所があると再認識させてくれる曲なのではないだろうか。


そして「まだ踊ろうかWEST、両手を上げろ！」と野中拓（B）の軽快なスラップで「インピーダンス」へと続き、「冤罪ブルース」ではお馴染みの「冤罪！冤罪！」の掛け声にあわせモッシュにジャンプにと遊びつくしていく観客。千歳の不安を煽るようなギターから始まる「不機嫌」では、成人（Dr）の機材が“不機嫌”になってしまうトラブルがありながらも、仕切り直しをかけた芥が「ティッシュみたいなのついてるよ」と成人の新衣装に触れ、会場を和ませる様子も見られた。再び演奏を開始すると、一度止められたエネルギーを開放するかのように、「オイ！オイ！」という芥の問いかけに、先ほどの何倍もの声が上がる。

「新曲やるけど今日一番の盛り上がりを期待してます」と芥が告げ始まった「まっさかさまにおちていく」。フロアは芥の声に必死に食らいついていき、音に合わせジャンプするセクションが気付けば逆ダイブに変って行く熱狂ぶり。千歳も上手、下手のマイクを陣取ってどんどん煽り、野中拓は最前列の観客の上に身を預けて寝転がる。ステージ上のテンションもますます上がり、間違いなく芥の期待通りにこの日1番の盛り上がりを見せつけた。

そんな熱をゆっくりと落ち着けるように披露された「冷たいてのひら」。そして彼らが本編の最後に持ってきたのは、5年前にすべての始まりとなった曲、「終わりの始まり」。確かな意思がしっかりと感じられる力強い楽曲ながら、奏でられるどの音にはどうしようもない儚さを感じる。メンバーが退場し、割れんばかりのアンコールの中現れたスクリーンには“Chantyからのお知らせ”の文字。10月のリリース情報と、新曲のミュージックビデオが解禁され、その後のワンマンライブのお知らせでは大きな歓声が上がった。告知の最後、「それではアンコールの続きをどうぞ」という彼らの遊び心ある一文に、フロアには笑い交じりのアンコールが再び巻き起こった。

アンコールに応え、5周年の記念Tシャツに着替えたメンバーが登場。1番に口を開いた千歳は、「やっと5周年迎えましたね。この素敵な景色作ったのは、俺たちとそしてここに来てくれたみんなのおかげです。本当に本当に感謝してます。」とまずファンへの感謝を述べた。そしてこの日より発売となった新グッズの話題では、発注したマフラータオルの素材が思わぬものだったことを嘆き謝罪する野中に、千歳が「でも気持ちはこもってるからさ。その辺は組んでくれよ（笑）。」と会場の笑いを誘う場面も。


そして芥は、先ほど発表されたワンマンライブについて「ワンマンツアーをやろう考えていたんですよ。ワンマンツアー大好きだし。でもワンマンツアーって悪く言えば1会場通り過ぎてしまう、通過してしまうのが寂しい感じがしてるんです。だから今回思考を凝らして、普段自分たちがツアーを回っていたら手が出せないような地方のライブハウスに挑戦してみようかなって気になりました。」「だからここはひとつ、1本に絞って色んなものを作れたらいいなと思ってる。」と、想いを語った。そしてその後も各々のワンマンライブをやってみたい場所、やってみたい企画などについて好き勝手言い合ういつものChantyらしい緩いトークを展開。終始、笑顔の絶えないにこやかな雰囲気に包まれる様子が、とても微笑ましかった。

アンコール1曲目を飾ったのは「赤い糸」。心が幸せで温かくなるような楽曲だが、まっすぐにフロア一人ひとりを見つめるように歌う芥の姿に、この日は背中を押して勇気をくれるような力強さを感じた。そして「【3.017】」と疾走感のある1曲を放り込むと、「最高の景色を作りましょう」と晴れやかな笑顔を見せ、「最低」へ。日常にあること全部“仕方ない”と前に進ませてくれるこの曲。決して諦めなどではなく、どうしようもない日常を消化しながら生きていくことに美しさを見出させてくれる。

「本当に楽しい時間をありがとう。弱音ばっか言ってる俺たちが5年間こうして奏で続けることができました。そしてこれからもこの音色は絶やさず奏でていけると信じています。」と口を開いた芥。「久しぶりに1曲送ります！」と始まったのは「C」。芥は、会場全体に高く挙がった手を見て、「今鳥肌たってる！」と思わず言葉にする。千歳と2人背中合わせになり遠くこれからを見つめるような仕草をしたり、ドラム台に集まり顔を見合わせながら演奏するメンバーの晴れやかな笑顔がとても印象的だった。

そしてラストの「フライト」。曲が始まると同時に割れんばかりの声援で応える観客たちに、芥も嬉しさと感動が入り混じったありのままの表情を見せた。映画のハッピーエンドのようなクリアで爽快なサウンドに、観客も最後まで笑顔と声を絶やさなかった。最後は「5周年、本当に本当にどうもありがとう。」と芥の素直な言葉で締めくくられアンコールに幕を下ろした。


演奏が終了すると、ステージ前方に集まったメンバー。芥がステージを降りてメイクを落とした自分たちについて、「俺たちってバンドマンオーラゼロじゃない？」と会場の笑いを誘いながら自虐的に話し始めた。「でもそんなChantyがこうやって、こういう景色を作り上げることができて、また新しい道に進めるってすごい素敵なことだと思いませんか？」という問いには客席からも拍手が湧き上がる。「引っ張ってってあげるとか、背中を押してあげられるようなバンドじゃないかもしれないけど、一番近くでずっとずっといたいと思います。これからもChantyをよろしくお願いします。」と飾り気のない、素直でChantyらしい言葉を送ってくれた。

そしてワンマンライブ恒例のカーテンコールへ。“カーテンコーラー千歳”も登場し、最後はこれからのChantyの発展を祈ってと景気よく「Chanty 5！5！」の掛け声でこの日のライブを締めくくった……はずだった。メンバーが退場するも再び鳴りやまないアンコールに応え、メンバーが再登場し急遽ダブルアンコールへとなだれ込んだのも記念すべきライブだからこそ。ダブルアンコールは本編中、トラブルがあり心残りだったという新曲の「まっさかさまにおちていく」を選曲。

「決まりはないので自由に好きなように楽しんじゃってください。自立！」という芥の言葉を受け、フロアには先ほどの本編よりもっと自由に暴れまわる光景が生まれる。「今日で俺たちの夏が終わりだと思います。だから、今日ですべてを吐き出していけるか！目に焼き付けて帰るからもっとちょうだい！」と芥がさらに欲張り、「やんなっちゃう」へ。スピードを上げて一気に駆け抜ける祭囃子に、会場の熱気もますます上がっていった。

そして最後は「疑ってもいいし、信じてなくてもいい。ずっとずっと、僕たちのこの関係性が続きますように。」そんな芥の言葉で始まった「おとなりさん」。観客は思いっきり腕を上げて飛び跳ね、声をあげ、歌い、メンバー4人との想いが重なったところでChantyの5周年公演が幕を閉じた。

「このままで終わったら後悔するかもしれないっていう気持ちを助けてもらったかもしれない。また、僕たちにチャンスをください。ありがとうございました。5周年これにて終了ですが、俺たちChantyまだまだ終わらねえから！」と最後に告げた芥。“まだまだ終わらない”そうはっきりと言い切ったその言葉が、何より嬉しかったのは自分だけじゃないはず。


公演を終えての1番の感想は、“去年より良いライブだった”ということだ。新体制で初となった2017年の4周年ライブでは、ひとつの踏ん切りがついたような、どこか吹っ切れた人間味が滲み出ていて良い意味で泥臭いライブだと感じられたし、今より何が劣っていたとかそんなことではない。ただ、あれから1年経ったこの日のワンマンライブは、生きていることそのものみたいなライヴだったな、という印象なのだ。芥、千歳、野中拓、成人の4人が余計なものをすべて取っ払い、残った魂だけで演奏をして歌っているような、“生”が感じられる瞬間がいくつもあった。

あっという間に5周年という節目を迎えたChanty。決して早い月日ではなかったかもしれないが、ここまでくれば6年も7年も8年、9年も変わらないんじゃないだろうか。これからも“Chantyらしく”一歩一歩をファンとともに確実に歩みながら、いつかの10周年へ向けさらに躍進してくれることを願うばかりだ。

文◎糸永緒菓子
編集◎BARKS編集部



◆Chanty オフィシャルサイト