【インタビュー】クランベリーズ、「これは悲しいアルバムじゃない」
クランベリーズの通算8枚目にして最後のスタジオ・アルバム、『イン・ジ・エンド』が4月26日に世界同時リリースされる。ヴォーカルのドロレス・オリオーダンの急逝から1年を迎えた2019年1月15日に公開された「オール・オーヴァー・ナウ」をはじめとする全11曲からなり、デビュー・アルバム『エブリバディ・エルス・イズ・ドゥーイング・イット、ソー・ホワイ・キャント・ウィー?』(1993年)やセカンド『ノー・ニード・トゥ・アーギュ』(1994年)なども手がけたステファン・ストリートを再びプロデューサーに迎え、ドロレスの家族のサポートも得て制作された1枚である。
今回BARKSでは、ギターのノエル・ホーガンが現在の実直な思いを語ったオフィシャル・インタビューを掲載する。ぜひこのテキストとともに彼らのアルバムに耳を傾けてみてほしい。
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■ 僕達4人は世界に飛び出してやりたいことをやるギャングみたいだった
── あなたたち3人は現在、『イン・ジ・エンド』のプロモーションに精を出していますが、新作を誇りに思う気持ちをはじめ、いろいろな感情が入り混じっているのではないかと思います。今、どんな気持ちなのかをまず教えていただけないでしょうか?
ノエル・ホーガン:変な気持ち…って言えばいいかな(笑)。まずは楽しみでもあって、というのもこのアルバムは長い時間をかけて完成させたものだから、皆に聴いてもらえるのが嬉しいんだ。遂にリリースできることにワクワクしていて、すでに聴いてくれたジャーナリストの感想を聞いたりしても、僕達がここでやろうとしたことを理解してくれてるのを感じるからね。でもやっぱり、その反面、このサイクルが終わったら、バンドとして一緒に走ってきた長い年月に終わりが来るんだという思いもある。だから複雑な気持ちでもあって、言ってみれば今はゴールが見えてきている状態で、その先の未来のことについても考えざるを得ないわけで。だから、皆に聴いてもらえるのが待ちきれないっていうワクワクした気持ちと、アルバムを誇らしく思う気持ちもあるし、それと同時に、終わりがくるんだっていう気持ちもあって複雑なんだ。
── 『イン・ジ・エンド』というアルバム・タイトルは、クランベリーズの終焉を意味するものではないと思うですが、アルバム・タイトルを『イン・ジ・エンド』としたのは、なぜなんでしょうか?
ノエル:タイトルを決めたのは、メンバー3人でスタジオ入りしていた最終日のことだった。僕達はまずドラムとベースのリズム・セクションを最初にレコーディングするんだ。そこに今回はすでにできていたヴォーカルを乗せて、さらにギターを加えていく感じで、そこからまたヴォーカルを少しずつ削っていったりもした。そうやって、3人でスタジオ入りして最後にやったのが「イン・ジ・エンド」だった。この曲は悲しい曲でもあるけど、すごく美しい曲で、すべてを要約してるような気がしたんだ。バンドとして僕達が一緒にいること、一緒にスタジオにいること、クランベリーズとしてレコーディングをすることがこれで終わるんだっていう。この曲を完成させたときに、これがアルバムのタイトルとしてふさわしいと感じたんだ。
── アルバムのカヴァー・アートがとても印象的ですが、この写真はグランベリーズというバンドの何を象徴していると考えていますか?
ノエル:これには二通りの見方があると思うんだ。まず大勢の人が思うのは、これは子供の頃の僕達で、バンドのスタートを象徴しているってことだと思う。それがアルバムのタイトルとのコントラストになっていると。でも、もうひとつは、これは僕達が次の世代へと引き継いでいっているという見方なんだ。僕達はここで終わるけど、僕達の後ろには次の世代がいて、彼らが音楽を続けていくんだっていう、そういう意味もある。だから二重の意味があって、少なくとも僕にはそう思えるんだ。
── 結成から約30年。良いことも、悪いこともあったと思うのですが、30年を振り返って、いま、どんなことを思いますか?
ノエル:バンドを始めたばかりの頃、つまり皆に知られるようになる前、ビジネスとかそういうこととは無縁で、ただ4人で集まって音楽をやってた頃を思い出すよ。誰もいないような小さなクラブでライヴをやって、最初の数枚のアルバムを作った頃は、音楽を素直に楽しんでいた。趣味のように、週に数回ライヴをやって、他のこともやったりしながらね。その後僕達は幸運なことに、大きな成功に恵まれたわけだけど、より記憶に残っているのはそういう初期の頃のことで、僕達4人は世界に飛び出してやりたいことをやるギャングみたいだった。それから良いことも悪いこともあって、それも皆いい思い出になってる。でも、どういうわけか、特にドロレスが亡くなってからのここ1年は、初期の頃のことをもっとよく思い出すようになったんだ。
── 活動中の最もエキサイティングな思い出を教えてください。
ノエル:これもやっぱりバンドを始めた頃のことで、最初のアルバムを作ったりとか、初めての体験が一番エキサイティングな思い出だね。最初のデモ、最初のアルバム、最初のツアー、最初にラジオで自分達の曲を聴いたこと、最初にテレビに出たこと、そういうことはよく覚えてる。僕達はまだ若くてただのキッズだったわけで、18とか19歳くらいで、そういう体験を重ねていった。バンドを始めて、成功したいと願っていたけど、そんなの無理だって言われたりして。それはバンドを始めるキッズなら誰でも夢見ることだよね。だからそれが実現していく過程、たとえば『トップ・オブ・ザ・ポップス』っていうテレビ番組を僕は子供の頃から両親と一緒に観ていたんだけど、それに自分が19歳くらいで出演できたっていうのは、本当にもう信じられない気持ちで、夢がかなったんだって実感した。でもそれが何度も起きるようになってくると、そのマジックが徐々に失われていくもので。どんな状況でもあることだけど、そういうことに慣れていってしまうんだ。だからと言って当然のことだと思っちゃいけない。だって、すごくいいバンドでもブレイクできずにいて、成功しないというのはよくあることだからね。自分がどんなに幸運なのかを忘れちゃいけないと思ってる。
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