【インタビュー】ユーライア・ヒープ「ノルタルジアは最もパワフルなドラッグだよ」

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1970年代からブリティッシュ・ハードロックの代表としてディープ・パープルやレッド・ツェッペリンと並び称されたユーライア・ヒープが、通算25枚目のスタジオアルバムを引っさげ約3年ぶりとなる来日公演を行った。数々の名曲を生み出した一方で、メンバーの他界や多くのメンバーチェンジなどで低迷、迷走した時期も否めないが、現在はバンド史上最も安定したメンバーで現役を貫いている。2010年からは3度も来日を果たし、コンスタントにリリースされるアルバムはどれもアグレッシブでその充実した内容に驚くばかりだ。



初のビルボード・ライブ東京/大阪での公演は、一夜に2公演というシステム上、1ステージの時間はコンパクトにはなるものの、ニューアルバムを筆頭に一部と二部では若干の選曲を入れ替える構成となった。新曲からスタートしたその第一音にも、現役感がみなぎっており、過去の名曲もよりヘヴィに蘇っていた。ミック・ボックス(G、Vo)は真骨頂であるワウをふんだんに使い、1986年からバンドを支えているバーニー・ショウ(Vo)とフィル・ランゾン(Key、Vo)の安定感に加え、現在のリズム隊の存在も非常に大きい。デイヴィー・リマー(B、Vo)とフィルとミックによるユニゾンプレイやラッセル・ギルブルック(Dr)の度肝を抜くパワープレイの上で、コーラスワークやアコースティックパートでの聴かせどころもたっぷりと酔わせ、ミックのソロや曲間のインストパートでは常に前屈みにさせられたショーとなった。レジェンドでありながらも決してクラシック・ロックにとどまるところではない、今を生きるバンドであることをまざまざと見せつけることとなった。

バンドの中心人物であり唯一のオリジナル・メンバーであるミック・ボックス(G、Vo)と、ミックとともに制作の中心人物であるフィル・ランゾン(Key、Vo)が、東京公演前にインタビューに応じてくれた。フィルがインタビューに同席するのも大変貴重な機会である。


──約3年ぶりの来日ですね。

ミック:時差ボケがひどいけど(笑)、気分はとても素晴らしいよ。

フィル:昨日、大阪で2ショウを行ったんだけど、機材が多過ぎて飛行機で東京に来たんだ。ホテルで1時間ほど仮眠したけど、もうヘロヘロさ(笑)。

──ニューアルバム『Living the Dream』では、ジェフ・スコット・ソートが楽曲を提供していますね。

ミック:ベースのデイヴ(デイヴィー)が曲を書いていたんだけど、なかなか良い歌詞が浮かばなくて、書いてもらったんだよ。ジェフとデイヴがもともと友達だからね。

──ミックとフィルが中心となった今の制作スタイルで、決まり事はありますか?



ミック:お互いに相手を認め合っているし、僕はギタリストとしてギターリフやソロを作り、フィルはキーボーディストとしてメロディを考える。アルバムを作るとなれば、お互いに持ち寄って広げて色々な意見を重ねていくんだ。

フィル:すぐにできる曲もあれば、しばらく寝かせてから録り直すものもある。だいたいは音楽が先にできて、後から歌詞をのせる形かな。

──素晴らしいアルバムとなりましたが、これまでのバンドキャリアで“Living the Dream”を感じた事は?

ミック:自分たちがやっている事がまさに“Living the Dream”だよね。夢が叶ってその夢の中に生きている。それは自分たちが本当に大好きな事をやっていて、世界中の61カ国をまわる。仕事ではあるんだけどこれって素晴らしい事だよね。必ずしも好きな仕事をしている人だけではないし、単にお金の為の仕事もある。僕らは本当に好きな事で生きていられて、まさに“Living the Dream”は自分たちの事を表しているよ。

──ちなみに、ワウペダルは昔と今とは違うものを使っているのですか?






ミック:それがずっと同じなんだ。1970年代からずっとね。他にも試してみたけれど、僕にとってベストなのはジムダンロップのCRY BABYさ。単にワウワウ鳴らす為のものではなくて、エクスプレッションペダルとしても連動させるときの音や、トーンをコントロールする為にも使っていて、本来のワウペダル以上の機能も引き出して活用しているよ。まぁ、今の人たちはみんなそうかもしれないけど。

──今回は特定のアルバムの再現企画ではなく新作ツアーですが、違いはいかがですか?

フィル:確かに以前は『Demons & Wizards』や『Look At Yourself』だったね。

ミック:どちらも好きだよ。アルバム全曲再現も作った頃の気持ちになれてそれはそれで好きで楽しいし、新曲はもちろんやりたいし。アルバム全曲再現は、ある意味でチャレンジでもあるんだ。何十年も経て当時の気持ちに戻る事も難しいからね、1973年とかに作ったものを2019年にやるわけだから。

フィル:当時のアナログレコードは40~45分と短いから、そこはいいかもしれないね(笑)。

──最新ツアーでは、ニューアルバムから10曲中6曲プレイされていますが、残りの4曲も今後どこかのツアーでプレイされますか?

ミック:そうだね、ひとつのセットに加えるのは時間的に厳しいけど、入れ替える事はアリかもしれないね。次のツアーでは十分あり得るよ。

──多くの名曲がありますが、長年プレイしてきても色あせずに楽しめている曲はどの曲ですか?




ミック:全部だよ。よく「もう飽きてるんじゃない?」って訊かれるんだけど、そんな事はないんだ。

フィル:「July Morning」や「Gypsy」「Easy Livin'」「Lady in Black」なんてイントロを弾いただけでお客さんがすぐに反応してくれて、ワッ!と盛り上がるじゃない?そんな顔を見ると僕らもやる気満々になるんだよ。

ミック:懐かしさって凄くいい事で、お客さんもその曲を初めて聴いた頃の気持ちに戻れるわけでしょ?それがマジックを生むんだよ。ノルタルジアっていうのは最もパワフルなドラッグだよ。

──さて、2020年は50周年を迎えるわけですが、何かアニバーサリー的な予定はありますか?

ミック:2019年はジョン・ロートンやリー・カースレイクをゲストに迎えてやるショーもあるけど、それはそれで単発のもので50周年ツアーとは別でね、50周年というのはそこで終わりではなくて、ここから先も進んで行くという意味なんだ。だから過去のものとは混同はしたくなくて、今のメンバーだけでやる。もちろん日本も視野に入れているよ。

──それはとても嬉しいです。期待しています。

ミック:ドモアリガトー。日本に来る度にどんどんサポートが大きくなって感謝しているよ。求められれば毎年でも日本には来たい。もっと都市の数も増やしたいよね。東京、大阪だけでなく札幌とかもいいな。時差ボケが治る薬ができるといいんだけど(笑)。

フィル:ずっと忠実なファンにとても感謝しているよ。日本のファンはヨーロッパまでも観に来てくれたりね。本当にありがとう。

取材・文:Sweeet Rock / Aki
写真:Takumi Nakajima







<URIAH HEEP ~LIVING THE DREAM Japan Tour 2019~>
2019.3.21 Billboard Live Tokyo
【1st Stage】
1.Grazed by Heaven
2.Return to Fantasy
3.Take Away My Soul
4.Rainbow Demon
5.Waters Flowin'
6.Rocks in the Road
7.Gypsy
8.Look at Yourself
9.Lady in Black
~Encore~
10.Easy Livin'
【2nd Stage】
1.Grazed by Heaven
2.Too Scared to Run
3.Living the Dream
4.Knocking at My Door
5.Rainbow Demon
6.Stealin'
7.Gypsy
8.Look at Yourself
9.July Morning
~Encore~
10.Sunrise
11.Easy Livin'
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