【インタビュー】シキドロップ、日本のポップ・シーンに残る新たな1ページを刻むデビュー・ミニ・アルバム『シキハメグル』
■僕の歌詞は怨念がすごくて情緒豊かに歌ったら演歌の世界になっちゃう
■それが悠人というフィルターを通して歌うことで聴きやすくなっている
――そしてついにファースト・ミニ・アルバム『シキハメグル』が世に出ました。オープニングのインスト「キミへ」があって、春夏秋冬を表す4曲があって、「シキハメグル」で総括して、アンコールのように「PS」がある。コンセプチュアルに、すごく良くできていますよ。
平牧:今できる最高のものは作れたと思います。ミニ・アルバムにして正解だったね。
宇野:正解だった。名刺代わりのものを作りたいと思っていたので、曲数が少ないと、より濃くなるじゃないですか。今の僕らはこれだぞ、という証明になったと思います。
――一貫してあるのは、「さよなら」というテーマ、和を感じる音階やアレンジ、花鳥風月に思いを乗せる歌詞。どういう作り方をするんですか。
平牧:言葉にならないから音楽を作ると僕は思っていて、全て言葉にできるような器用な人間だったら音楽はやっていないので。不器用なものをあえて溜めるようにして、それがこぼれた瞬間に曲になるので、作り方と言われても説明するのが難しいんですけど。今回のテーマは、「どうしてこんなさようなら」(*「おぼろ桜」の歌詞)になったのかという思いを、全部ふくらませただけの曲だったりするんですよ。それを春夏秋冬にしたのは、月日が経つと、その人との楽しい思い出を急に思い出したり、逆に怒りがこみ上げたり、いろいろあるじゃないですか。それって四季の移ろいと一緒で、感情も移ろっていくということで。それと、春夏秋冬の4曲「おぼろ桜」「ホタル花火」「さくら紅葉」「なごり霙」は全部、上から下に落ちていくものをテーマにしてるんです。それこそドロップ=落ちる、ですよね。それで「どうしてこんなさようなら」をひたすら歌っている、呪いのような歌です(笑)。細かいメッセージとか、いらないと思ってるんですよ。本当に伝えたいことは、「好きだ」「憎い」とか、「愛してる」「また会いたい」とか、最上級の気持ちってとても簡略化されると思うんです。だから、サビには絶対そういう言葉を入れています。
宇野:自分の人生に当てはめて、四季を感じ取ってほしい。僕も、自分の経験に当てはめて歌っているので、みんなも好きに感じ取っていいよということです。
平牧:人の気持ちは、みんな同じだと思うんですよ。友達にしろ家族にしろ恋人にしろ、誰かのことを「愛したい」と思った時に、その気持ちは一個しかないという、そういう歌なので。シチュエーションは違えど、人を思う心は一緒だなと思えば、これはなくした友達の歌かもしれないし、恋人なのかもしれないし。
宇野:好きなように聴いてくださいということですね。
――言語感覚が面白い。「さくら紅葉」「なごり霙」とか。歌詞で誰かに影響を受けたとかは?
平牧:最近だとamazarashi、竹原ピストルさんとか、すごく好きです。僕のルーツで言ったら鬼束ちひろさん、一青窈さん、ユーミンさん、山下達郎さんとか、大御所の方もすごく好きです。ブルーハーツや椎名林檎さんも。斜に構えないで、物事に正面から向き合う歌詞が好きですね。不器用だけど、傷つきながらもこうありたいみたいな歌のほうが得意というか、僕が書いて面白いのはこういう歌詞なんだろうなと思います。
――悠人くんが歌う時は、歌詞を意識する?
宇野:いや、何もないです。僕はさっきも言ったように、歌詞で歌をほとんど聴かないので。これは前に仁ちゃんが言ったと思うんですけど、「歌が乗るから歌詞なんだ」って。詩じゃないんだって。僕はその考えが強く出ちゃうタイプで、歌詞は歌って初めて歌になるから、感じ取るものだと思うので、特に何も考えずに、出て来るものを出しています。
平牧:それが悠人のいいところだと思っています。僕の歌詞は情緒的というか、怨念がすごくこもっている歌詞なので、これを本当に情緒豊かに歌ったら、演歌の世界になっちゃうと思うんですよ。それが悠人というフィルターを通して歌うことで成立して、すごく聴きやすくなっている。あくまで僕はJ-POPの枠の中でやりたいので、悠人が歌うことで、10代にも聴きやすい曲になるでしょうし。
――どんな人に届いてほしいというイメージがありますか。
宇野:最初に戻るんですけど、シキドロップの名刺代わりの作品なので、いろんな人に聴いてもらいたいです。年齢層を絞って作ったわけでもないし、自分の人生に当てはめて聴いてほしいです。
平牧:欲を言えば、僕が10代の頃に鬼束ちひろさんとか、センセーショナルな出会いがあったので。たとえばこのアルバムを、17歳の不登校の子が聴いて、価値観が変わるような、そのぐらい僕は命を削って作ったアルバムなので。大きい出会いになるようなアルバムになってほしいなと思います。
――最後に、今後の話をしましょう。何かのインタビューで、東京ドームを目指すと言ってたのを見たけれど。目標はそこですか。
宇野:もちろん目指します。僕は、ライブは好きじゃないけど、ライブに挑戦するのは好きなので。それは、大きなところへ行けば変わるのかな?という思いもあるし、大きなところへ行けば、自分のやりたいことがもっとできるようになるだろうし、そういった意味も含めて、一番は多くの人に聴いてもらいたいので。僕みたいに、動画サイトにシキドロップのカバーをどんどん投稿して、シキドロップのCDが全然売れないぐらいカバーしてくれれば嬉しいです。
――おっと。それ、書いちゃっていいのかな。
宇野:いいです。売れるための音楽は、好きじゃないんですよ。そもそも僕が最初に動画投稿した理由は、ただ歌うのが好きだったからで、音楽業界なんてぶっつぶれないかなって思って、動画投稿を続けていたので。それが今度は、自分たちが反対側になるわけじゃないですか。だから自分たちも、売れるための音楽はしたくないし、みんなも、売れるための音楽をどんどんぶっつぶして、自分の好きな音楽だけでやっていってほしい。僕らが東京ドームに行けば、一つの結果になるから。みんなも頑張りましょうという感じです。
取材・文●宮本英夫
リリース情報
2019.3.21 リリース
1.キミへ
2.おぼろ桜
3.ホタル花火
4.さくら紅葉
5.なごり霙
6.シキハメグル
7.P.S.
ライブ・イベント情報
6月29日(土) 青山 月見ル君想フ
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