【インタビュー】sleepyhead、新フェーズ突入の2nd EP『meltbeat』。“3D音楽”に土台ありき
■社長業、プロデューサー、マネージメントを自分でやるって決意した以上は
■右手も左手も同じように使わなければいけない。
——「meltbeat」のMVの監督は多くのアーティストを手がけている東市篤憲(A4A)さんですね。武瑠さんにとって念願だったとか。
武瑠:はい。Awesome City Clubとぼくりり(ぼくのりりっくのぼうよみ)の「sub/objective」のPVがすごく好きで、影響されて「桜雨」という曲のPVを撮ったぐらい好きな作品を撮っている方なんです。去年東市さんが総合演出を手がけたTGC MATSURI(TOKYO GIRLS COLLECTION Super Live -MATSURI-)に出演させていただいた縁で「ぜひお願いします」って。
——じゃあ、映像に関してはそんなにリクエストすることなく、お任せしたんですか?
武瑠:そうですね。曲の属性、イメージを伝えたぐらいですね。東市さんの世界観と「meltbeat」は確実に合うと思ったし、シルエットで見せる手法も曲とマッチしているし。
——武瑠さん以外のメンバーはほぼ顔がわからないですよね。
武瑠:よーく見ると2回ぐらい顔が映ってるんですけどね。ドラマーは「酩酊」のときにもお願いしたセプテンバーミーというバンドの岸波ちゃん。彼女は今、バンドが活休状態なんですけど、活休しているときのドラマーっていうのが曲に合うなって。DURANくんもバンド解散をいくつか経験しているし、そういうストーリーを持った3人が映像で揃うのがいいかなと思ったのもありました。
——リスペクトしている監督とコラボして仕上がったミュージックビデオの、武瑠くん視点での見どころは?
武瑠:見どころっていうのは難しいけど、全体のバランスといちばん勉強になったのはチームを動かすことの上手さ。関わっている人みんなを楽しくさせてやる気にさせる求心力を東市さんはすごく持っている人なんですね。すごく褒めるし、抑圧するような言い方はしないし、風通しがいいクリエイションを間近で見れて勉強になりましたね。自分に求められているのはそこだなって。ステージだけのリーダーシップじゃなくて全てにおいて指揮をとること。そこもphase 2に入らなきゃいけないなって。
——全てにおいてのリーダーシップということですか?
武瑠:バンド時代はステージさえカッコよければよかったんですけど、社長業、プロデューサー、マネージメントを自分でやるって決意した以上は右手も左手も同じように使わなければいけない。わがままなアーティスト脳だけじゃ、もうダメなんだって思いました。自分の次のステップは東市さんのように関わる人たちを幸せにする。例えば誰かが失敗したとしても、そのミスを呑み込んだ上で現状からどうベストな状況に持っていくかっていうこととか。音楽もブランドも自分の全てのプロジェクトにおいてそういう姿勢が必要だなって。俺は3D音楽であるsleepyheadの頂点にいなくちゃいけないから、いろいろなことをクリアに判断して、包容力を持たないといけない。それがクリエイションのレベルアップに繋がるということを体感した撮影でしたね。
——もう右脳だけじゃダメだっていうことですね。
武瑠:そうですね。「アーティストってわがまま言ってもいいし、ほかのことは適当でも音楽だけできたらいい」みたいな美学がずっとあったんですけど、「なんか違うな」って思ってきたんですよ。
——でも、昔から文章も書いたり、絵コンテ描いて監督もしていたわけだから、資質はクリエイター寄りかなと思うんですが。
武瑠:うーん、ただ、どんなにすごいアーティストも昔はバイトしてたりするじゃないですか。ホントにダメなヤツだったら、それ出来てないと思うんですよ。たぶん、自分がやるべきことがあって必要だったからやっていただけで。だから、苦手とか言ってる場合じゃなくてやろうと思ってますけどね。
——自分のブランドを持っている時点で現実的なビジネスに対しても対応できるんじゃないかと思っていましたけど。
武瑠:いや、段違いですね。全てを連動させて動かしていかないとならないので。会社を登記する方法もわからなかったし。sleepyheadとしての初ライブの頃、どうやってやってたんだろうって。2018年の3月17日に全曲、新曲で初ライブしてFCを5月に立ち上げてクラウドファンディングもあって『NIGHTMARE SWAP』を作りながらツアーの準備をしつつ登記してたっていう。
——話を聞いてるだけで目が回りそうです。加えて自分のブランドのデザイン、運営もあるんですもんね。
武瑠:そう。どうやってやってたんだろう?って(笑)。しかも、自分でCD作るのも初めてだったので、JANコードの意味もわからなかったんですよ。ライブでの発表前日に「JANコードがないです」って言われて「え? 何それ? 知らない、知らない」っていう(笑)。書類も契約書の書き方とかわからなくて100枚ぐらい書いたし。学生のとき、ある程度勉強しておいたことが役立ちましたけど。だから、最近、自分を洗脳してるんです。「ゲームみたいなものだから」って。「区役所に3回も行かないといけないのはゲーム」って(笑)。「これをクリアしないと次の画面に進めない」って。
——ははは。刺さってくる話です。
武瑠:おかげで責任を持つことが悪くないっていう方向に考えられるようになりました。前はクリエイションの逆にあるものみたいに思っていたんですけど意外とそうでもないなって。いちばん大事にしなくちゃいけないのはファンと会えること。「その環境を守るのはどうしたらいいんだ?」って。責任持つのはすごく怖いことなんですけど、俺はそれを選びました。選んだ以上は甘えは言えないのでファンに会社を作ったって公表したんです。
——なるほど。
武瑠:例えばアメリカのヒップホップシーンは全員が全員ラップだけしているわけじゃなくてアパレルブランドを持っていたり、会社も持っていたり。プロデュースワークしている人もいるし。日本だとSKY-HIもそうだし。だから、バンドシーンよりヒップホップシーンのほうが少し先に進んでるなと思うんです。
——これからはアーティストの在り方も変わっていくのかもしれないですね。
武瑠:そうですね。今はアプリゲームとかアトラクションに割く時間に音楽が勝たなきゃならない時代だし。そういう意味でサカナクションとかずっと前進して何回もチャレンジしてるなって。俺が昔いたヴィジュアル系のシーンは伝統を踏襲していく面があって、それを否定するわけではないですけど、飽きちゃうタイプの俺には合わないんですよね。今は自分のやり方が見えてきているところです。
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