【インタビュー】sleepyhead、新フェーズ突入の2nd EP『meltbeat』。“3D音楽”に土台ありき

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武瑠によるソロプロジェクト・sleepyheadが、2019年3月13日に2nd EP『meltbeat』をリリースする。バンドとソロの両方の血が流れているからこそ生み出せたという楽曲は“melt=溶ける”をキーワードにした切ないメロディとハイブリッドなビートの融合。始動から1年、音楽活動をしていく上での環境を持ち前の閃きとインディーズ精神で自ら築き上げ、ネクストフェーズに突入したsleepyheadを“3D音楽”と定義づける武瑠の今に迷いはない。ギタリストのDURANをフィーチャリング・アーティストに迎え、リスペクトする東市篤憲(A4A)がMVの監督を務めた「meltbeat」で武瑠は“十字架を背負うよりも 未来に口づけ ”と歌っている。

初の全国ツアーを目前に控え、右脳も左脳もフル回転中。ジャンルを含めて立ちはだかる壁を攻略してきた武瑠だからこそ語れる新しい形のアーティスト像に迫る。

◆sleepyhead 画像

■最初の自分が目指そうとしていた音楽の進化形。
■sleepyheadのど真ん中と言えるものになったと思います


——まず、SKY-HIなど様々なゲストを迎えて制作した前作スワッピングEP『NIGHTMARE SWAP』ではドライでゴシックでストリートで踊り狂える世界観を究めたかったと話していましたが、新しいフェーズに突入したのが今回の2nd EP『meltbeat』 なんですよね。

武瑠:そうですね。『NIGHTMARE SWAP』はコラボ作だったんですけど、共作したからこそ、より自分の個性がわかった面があったんです。それとライブを通して、ギターがないからこそビートとメロディが生命だなと感じたので、今作は自分が作る叙情的なメロディとビートをメインに打ち出した曲を作っていこうと。ファーストアルバム『DRIPPING』で最初の自分が目指そうとしていた音楽の進化形をちゃんと提示したいなと思って作ったのが今作ですね。例えば、曲でいうと『DRIPPING』の中の「結局」はメロディは好きなんだけど、音像が普通のバンドっぽくまとまってしまったのが心残りだった。今回はバンドとソロの両方の血が流れている自分だからこそ出来るバランスをちゃんと表現したいと思った結果、sleepyheadのど真ん中と言えるものになったと思います。

——共作したからこそ、見えてきた個性=メロディとダンスロックビートを打ち出した楽曲ということですか?

武瑠:自分ではハッキリわからないんですけど、メロディの癖はあると思うんですよね。どこか切なくてJ-POPっぽいので洗練されたビート感、グルーヴが合うんじゃないかなって。最初は7曲入れようと思ってたんですけど、もっと1曲、1曲をブラッシュアップしたかったので曲数を絞りました。

▲2nd EP『meltbeat』

——『meltbeat』はまさに切ないメロディ、洗練されたサウンドのセンスが光る作品になっていると感じました。以前“上質な闇”とご自分の音楽を表現していましたが、もっと色鮮やかな印象を受けたんです。

武瑠:そうですね。みずみずしいというか。そぎ落としていく過程の中、今作は映像や演出が合体している3D音楽という言い方がハマるなと思いました。

——そういうふうに変化していった理由というのは?

武瑠:ライブをより楽しめるようになったことが大きいと思います。独立してプロデュース、マネージメントもひとりでやっている中、環境もだんだん整っていったんです。FC(※1)の中にオンラインサロン(「社畜飼育場-sleepyhead ONLINE SALON-」)というファンが参加して手伝うシステムができたり、活動の土台ができたんですね。そういう安心感があった上で音をもっと遊んで楽しんだり、挑戦する余裕ができたというか。ひとりになってみて、自分には十字架を背負って血反吐吐きながら、匍匐前進していくみたいなやり方は合わないと思ったんですよね。「こんなスピードで進化していくの?お手上げだな」って思われるぐらいのやり方をしていくのが俺の過去に対する正解の仕方だなって。出すぎた杭は打たれないじゃないけど、「そこまでやるんだったら応援します!」みたいなところに行かないといけないって。実際、自分が思う以上の速度で実現できている実感があって、いろいろな関係者と話していても手応えを感じてはいます。

(※1 編集部注:sleepyheadは従来のファンクラブ機能に加え、ファン参加型の独自機能を持つプロジェクト「秘密結社S.A.C.T.」を運営している)

——イメージしていた活動の理想に近づいているんですね。

武瑠:そうですね。

——そのスタンスについても後で聞きたいと思いますが、今作は新章を意味するナンバー「phase 2」で始まりますね。

武瑠:この曲は一昨年、バンドを休んで準備をする前に自分の服のブランド(million dollar orchestrA)の8周年記念で発表した曲なんですよ。聴き直してみたら今の自分のモードに合ってるなって思ってSEにしました。

——エフェクトがかかったボイスも当時から入っていたんですか?

武瑠:入ってました。当時のまんまなので無意識に自分がやりたい方向性だったんだろうなって。その頃から“みずみずしい”というテーマがあったんです。曲のベースはヒップホップなんだけど、みずみずしくて切なくて、っていう。そのときのコレクションのタイトルが“PINK FALLIN ♥ WITH BLACK”。ピンクと黒という相反するイメージの色でも愛しあえるっていうテーマだったので、少しロマンティックな音になったんですよね。

——じゃあ、偶然、ピースがハマった感じだったんですね。タイトル曲「meltbeat」はまさにタイトル通り溶けていくような気持ちいいナンバーです。

武瑠:この曲の原型はSuGが日本武道館に向かっていくときの、最後の選曲会に出したワンコーラスがもとになっています。“青春時代の総括”みたいな気持ちで書いたのでノスタルジックなムードが入っていたんですけど、それを今の自分のスタイルで作り直しました。歌詞は最後の“十字架を背負うよりも 未来に口づけ ”っていうフレーズから書いたんです。

——さっき話してくれたことに通じていますね。

武瑠:そうですね。SuGの「AGAKU」という曲に“たとえ女神に見放されても 口説き落として また惚れさせてやるからさ”という歌詞があって、自分の中で前向きな言葉だったのでリンクしている感じがしますね。過去の十字架が重いって言ってるんじゃなく、そんなものは降ろして蒸発させて腹の中に溶け残っている信念だけ持っておけば振り返る必要はないっていう。過去に時間を使うより目の前の女神様を愛したほうがいいというテーマで書いたのが「meltbeat」です。

——いい歌詞で終わるなと思いました。言ってほしい言葉でもあったし。

武瑠:ははは。昔のJ-POPっぽくベタに繰り返しちゃいましたからね。

——それと“嘘も愛も裏切りも 空に溶けてゆけ ”っていうのがまさにタイトルとリンクしているのかなって。

武瑠:そこは最後に書きました。いちばん大事な歌詞だったんですけど、最初は“空に溶けてゆく”だったんですよ。でも、レコーディングのときに開放感を感じて“溶けてゆけ”のほうが合うなって。自分のことや未来のことを真剣に考えていたら、意外とどうでもよくなっていく感じがあるなって思えたんですね。自分自身、活動する中、積み上げてきたものがある分だけ、解散で大きなダメージを受けましたけど、ダメージを受けたからこその跳躍というところでこういう軽やかな曲になったんだと思います。とは言え、爽やかなだけではなく、間奏にガラスの割れる音や人の叫び声とか、わざと不穏な音を入れているんですね。青く浄化されていく怨念みたいなイメージで作りました。

——確かにただの前向きで躍動感のあるナンバーではないし、傷を負った人にはより刺さってくるんじゃないかと思います。ゲストギタリストのDURANさんのプレイがまたカッコいいですよね。

武瑠:すごいですよね。「これはズルいな」って(笑)。

——間合いが絶妙な演奏です。

武瑠:間合いもそうだし、シーンに対しての音色も完璧ですね。情感もあるし、浮遊感もあって。『NIGHTMARE SWAP』にAISHAが参加してくれたとき、彼女が外国で育っていたら、ああいう日本人の良さ、奥ゆかしさのある歌にならなかったんじゃないかなと思ったんですけど、DURANくんも弾き倒すのではなく押し引きがあるというか、わびさびがある。聴いたときには「このカッティングすごい! なんだ、このクリアな音は!?」って笑っちゃいましたね。曲にホントにグルーヴを与えてくれました。

——DURANさんとは前から交流があったんですか?

武瑠:面識はあったんですけど、話したのは昨年のsadsのラストライブの打ち上げだったんです。席が向かいだったのでお互いの作品のことについて話して、MVのアートワークを褒めてくれたので「俺はああいうのは得意だけど、音楽力が足りないから誰かの力を借りないと完成形に持っていけない。ギターも弾けないし」って伝えたら「全然、弾くよ」って言ってくれて「じゃあ、絶対、オファーします」って。

——その場で交渉、成立みたいな。

武瑠:バンド時代はプロデューサー業に徹していたから、あまり外交してなかったんですよ。そのあたりはほかのメンバーに任せていたので孤立しがちだったのかもしれないですね。今は自分がやっていることを見せて先輩のミュージシャンでも「面白い」とか「新しい」って思ってもらえる土台がやっとできたというか。だから、話が繋がっていくのかもしれない。


——バンド時代からギタリストはブラックミュージックの影響を受けている人が好みなのかな? というイメージがあります。

武瑠:ブラックミュージックかシューゲイザーか、どっちかですね。メタルはあまり好きではないです。

——トラックは洗練されたダンスグルーヴなんだけど、そこにちょっと肉感的なギターが入ってくる感じが。

武瑠:無機質なものと生なものを混ぜてグルーヴを作るのが好きなんです。ドラムかギターのどっちかは生がいい。だから、音圧で埋めるパワーコードなんかはそんなに好きじゃないんですよね。それが合っている曲ならいいんですけど、打ち込みがある分、ギターで埋めすぎるとノリが出なくなってしまうので。エフェクトに凝りだしたときはシューゲイザー的なギターロックを目指していたのかもしれないけど、今は俺はそれを違う手法、違う属性でやりたいんですよね。

——なるほど。

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