【インタビュー】平林純、春らしさを湛えた爽やかさを前面に出した新境地の1stシングル「恋する私は美しい/愛しているよ」
平林純の1stシングル「恋する私は美しい/愛しているよ」が、3月6日にリリースされる。表題曲の「恋する私は美しい」は映画『Bの戦場』の主題歌ということに加えて、彼女ならではの憂いを帯びた世界観とは一味異なる、春らしさを湛えた爽やかなナンバーということも注目といえる。新境地に挑戦しつつ良質な楽曲を披露する辺り、彼女のポテンシャルの高さは計り知れないものがある。カップリングも含めて、彼女の多面性を改めて感じさせるシングルを完成させた平林純の最新の声を、お届けしよう。
■点滴を打って家に帰って2~3時まで曲を作るという状態だった
■だから朦朧としていて書いた時の心境は覚えていないんです(笑)
――新曲の「恋する私は美しい」は、映画『Bの戦場』の主題歌ですね。
平林純(以下、平林):「恋する私は美しい」は、ちょうど1年前くらいに映画の主題歌というお話をいただいて書き下しました。その時点ではまだ映像はなくて、映画の説明と脚本からイメージを膨らませて曲作りに入ったんですけど、映画の制作サイドから、明るくてポップなものにして欲しいという要望がありまして。私は暗い音楽が好きで、“明るくてポップ”というのは自分の中にない概念だったんですよ。それで、曲調が明るくても歌詞はダークにしたりという風にいろいろ作ってみたり何度かやり直して、6曲目に作った「恋する私は美しい」で、ようやくOKが出ました。お話をいただいてから締切まで2週間しかなかったし、その間に私はアナフィラキシーショックという奇病にかかってしまったんです。
――それは、どういう病気でしょう?
平林:全身に発疹みたいなのが出るんです。それで、救急車で病院に運ばれたという。でも曲を送らなきゃ…という状況で、がんばって曲を作りました。なので、ちょっと朦朧としていたというのもあって、「恋する私は美しい」を書いた時の心境はそこまで覚えていないです(笑)。もう死にそうになりながら、点滴を夜中まで打って、家に帰って2~3時まで曲を作るという状態だったので。
――「恋する私は美しい」は、これまでの平林さんとは一味異なる軽快かつ爽やかなナンバーですが、こういう曲もすごくいいなと思いました。
平林:えっ、本当ですか!?
――そう思いましたが、そんなことはないですか?
平林:そう言っていただけて、すごく嬉しいです(笑)。私の中では、不安があったんですよ。明るいけど、大丈夫かな…みたいな感じで。しかも、それを自分が歌うとなると、さらに大丈夫かなという。この曲は歌詞も4パターンくらい書いたんですよ。結局、最初に書いたのが良いということになったんですけど、歌録りの時は別バージョンも歌ったりしました。それくらい不安だったんです。明るいし、アレンジもすごくストレートなので。映画サイドの要望として、アレンジや歌詞もヒネらないで、わかりやすくして欲しいというのがあったんですよ。私はヒネりたくなるほうなので、それも課題みたいな感じでしたね。歌詞は自分のヒネくれたところをなるべく取っ払おうと思って書きました。『Bの戦場』で主演をされているガンバレルーヤのよしこさんは、特に中高生に人気があると思うんですよ。なので、今回は中高生が親と一緒に聴ける曲ということを意識しました。
――その結果、10代のリスナーの背中を押す曲になっています。
平林:そうですね。そうなんですけど、曲ができた時に、こんなにストレートでいいのかなと思ってしまって。曲作りも、歌詞も、レコーディングも自分がやれることを全力でやりましたけど、録り終わった後に、どうなんだろうと思ったんです。なので、いいと言っていただけて安心しました(笑)。
――明るい曲の表現力も高いことを感じましたし、特にサビのボーカルの心地好さは絶品です。
平林:ライブでやるたびに馴染んでくる感じはありますね。最初は、こんなに明るいコード鳴らしちゃって…みたいに思ったんですよ(笑)。最近は、昇華できつつあるのかなということを感じています。そういう意味では、今回のタイアップは自信になりました。暗い曲を書いて欲しいという話であれば得意ですけど、全く違う方向性のものを作ってOKがもらえて、それが自分の中でもシックリくるものになったので。
――2曲目の「愛しているよ」は母に向けた感謝の気持ちを歌ったウォームなスロー・チューンです。
平林:これは私が18才の時に書いた曲で、今回レコーディングするにあたって歌詞を大幅に書き直しました。それに、ずっと弾き語りで歌っていたのを、今回バンド・アレンジにしてもらったんです。
――18才の時に、こんなに良い曲を書かれていたんですね。
平林:はい。ちょっとヤサぐれていた頃に(笑)、アコースティック・ギターを弾きながら作りました。歌詞も内容を変えたわけではないんですよ。母への感謝というテーマは変わっていないし、出だしの“誰も産んでなんて頼んでない”は前と同じですけど、全体的に拙いというか、幼い感じの歌詞だったんですよね。それを、今の自分の感覚に合うように書き替えました。「愛しているよ」はすごく大切にしていた曲で、いつか出したいなと思っていて、今回一番いいタイミングに、いい形で出せたんじゃないかなと思います。
――10代ならではの熱さと20才を超えた女性らしい柔らかみが混ざり合って、強く響く歌になっています。こういうことも歌われるんだなと思いましたし。
平林:今回はせっかくのシングルなので、平林純の新しい部分を押し出したいという気持ちがあったんです。最近はシングルをリリースするというのはあまりなくて、自分は超恵まれた環境だなと思って。「恋する私は美しい」は自分的にすごく攻めた曲なので、新しいところに行きたいというのがあって、今回は新境地の3曲を揃えることにしたんです。攻めるという意味では、“愛しているよ”というタイトルだから異性に向けたラブソングかなと思いきや、お母さんへの感謝を綴った歌という。そういう私のややこしいところが出ているんですよね(笑)。
――平林さんの個性が感じられる、いいタイトルだと思います。
平林:本当ですか? タイトルでいうと、「恋する私は美しい」も攻めたんですよね。“それ自分で言っちゃうんだ…”という(笑)。
――“恋する私は美しい”というタイトルに関しては、曲調も相まって、そう自分に言い聞かせてがんばっている10代の子をイメージしました。なので、タカビーな印象は受けなかったです。
平林:それなら良かったです。言われたとおり、自分を明るく鼓舞するというイメージで、こういうタイトルにしたので。
――平林さんの意図は、リスナーにちゃんと伝わると思います。話を「愛しているよ」に戻しますが、この曲は楽曲の良さに加えて、温かみや憂いを帯びたボーカルも本当に聴き応えがあります。
平林:「愛しているよ」は去年の12月くらいに録ったので、記憶が鮮明です(笑)。私はバラードというのを、ほとんど出していないんですよ。1stや2ndは、ゆっくり目な曲が少ないんですよね。でも、元々私は綾香さんが好きで、中高生の時に綾香さんの「三日月」を、もう何百回とカラオケで歌っていたんです。バラードが嫌いだったり、苦手だったりするわけではないので、「愛しているよ」の歌録りはスムーズでした。
――今回、歌詞が変わったことに違和感もなかったんですね?
平林:なかったです。そういえば、この曲も歌録りの直前まで歌詞の細かいところを詰めていったんですよ。レコーディングの初日がバンドの録音で2日目が歌録りだったんですけど、それこそ初日の録りが終わった段階で、ようやく歌詞が決まったような気がします。歌詞を書いていると、ちょっと尖りたくなる自分が出てきて、端々に“ドキッ”とする言葉を散りばめようかなと考えたりしたんですけど、最終的にすごくストレートなところに落とし込みました。それは、シングルの表題曲が「恋する私は美しい」ということが大きかったですね。「愛しているよ」も「恋する私は美しい」と同じように中高生が聴いてくれた時にわかるというか、そんなにアダルティな雰囲気はいらないと思って。そうじゃなくて、聴いている人に寄り添えるものということを意識しました。だから、今までと全然違いますね。
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