【ライブレポート】<貴ちゃんナイト>でフルカワユタカ×百々和宏×渡會将士が共演「音楽が好きで良かったね!」
ラジオパーソナリティの中村貴子によるライブイベント<貴ちゃんナイト vol.11>が2月16日、東京・下北沢CLUB251にて開催された。<貴ちゃんナイト>の起源は中村のパーソナリティによるラジオ番組のリスナーが、岡山で開催した“オンエア曲縛り”のDJイベントにある。2回目以降は本人がライブイベントとして引き継ぎ、今回で中村主催10回目を迎えた。
◆<貴ちゃんナイト vol.11> 画像
その記念すべき回に出演したのはフルカワユタカ、百々和宏、渡會将士の3組。<貴ちゃんナイト>は毎回、音楽を愛する中村が“自分が観たい3組”をブッキングするという100%オーディエンス目線のライナップが特徴だ。
開場時間を迎えるとフルカワユタカが選曲したSEが流れ出し、イベント恒例のドレスコード“手首に赤いもの”を巻いた来場者たちが続々と入場してきた。そして彼らの多くはまず、フロア後方の中村の元へ向かう。ある者は手紙を手渡し、またある者はアーティストへの熱烈な思いを語る。これもリスナーと中村が“いち音楽ファン同士”として集うこの日ならでは光景だろう。
「音楽が好きで良かったと思える一夜にしたいと思います。思いっきり音楽を楽しみましょう!」──中村貴子
と中村が開会宣言。そのバトンを受け取り一番手に登場したのは、FoZZtoneやbrainchild’sのヴォーカリストとしても知られる渡會将士だ。ベース、ドラム、キーボードのサポートメンバーを伴って、バンド編成で出演。小気味良いリズムと渡會のくっきりとした歌声が鮮やかな「Good Routine」でスタートした。ベースを効かせたファンキーな「Vernal Times」では、渡會が持ち前の陽気なキャラクターで早くも観客たちのハートをガッチリと掴み、コール&レスポンスでは大盛り上がりをみせる。一転、バラード曲「Weather Report」では、伸びやかさと力強さを併せ持つ抜群の歌唱力で観客たちを魅了した。
渡會曰く「パリピな曲」の「コイコイ月見りゃSeptember」で、再びフロアは大熱狂へ。モノマネも交えたコール&レスポンスの煽りは、最早芸人顔負けだ。渡會自身は出演者の中では最年少とのことで緊張もあったようだが、最後の最後までフロアをハッピーな空気で満たし、トップバッターの大役を務めあげた。
続いてはMO’SOME TONEBENDERのフロントマン百々和宏がエレキギターによる弾き語りで登場だ。角打ち酒屋に生まれ、酒場を呑み歩くコラム連載を持つなど酒好きとしても知られる百々は、ステージに上がると、まずは自身にちなんだドリンク“もものウーロン茶割り”をオーダー。出演者をモチーフにしたスペシャルドリンクが提供されるのも<貴ちゃんナイト>の名物でもある。
「渡會くんのギャラから引いといてください」と笑いを取ったところで、酔いどれのブルース「高架下の幽霊」を披露。エレキギターとハーモニカによる哀愁を帯びたサウンドと、しゃがれた百々の歌声で紡がれる物語に、瞬く間に引き込まれていく。すがるように繰り返される“ぼくのことを好きにして”というフレーズと、柔らかなアルペジオが胸を締めつけた「すきにして」でもブルースマンとしての手腕を見せつけた。
そして合間に歯に衣着せぬMCで観客たちを楽しませながら、3種類のスペシャルドリンクを全制覇。
「ロックンロールをやっていれば、人が死んでも曲は残る」と前置いて自らの生き様を歌いきった「ロックンロールハート (イズネバーダイ)」を経て、ラストは中島みゆきのカバー「悪女」で全7曲のステージを締め括った。
そしてトリを務めたのは、“ロックスター”ことフルカワユタカ。1曲目の「revelation」から3ピース編成とは思えない分厚いサウンドでフロアを圧倒する。「busted」ではステージ前方に乗り出して十八番の高速タッピング奏法を披露。その華やかなパフォーマンスと歌に、あちこちから感嘆の声があがる。
MCでは「イベント10回目の開催、おめでとうございます!」とステージから祝福し、「<貴ちゃんナイト>出演を秘かに確信しつつ、いつ声がかかるのか、心待ちにしていた」と明かした。また、DOPING PANDA結成当初にMO’SOME TONEBENDERと共演したことを振り返り、「これがプロなんだ!」と衝撃を受けたというエピソードも。時を経ての共演に、感慨もひとしおだろう。
後半は、ロックスターたる所以の真骨頂ナンバーを投下。リズム隊の重厚なビートとソリッドなギターが炸裂した「I don't wanna dance」から「Beast」と、ダンスロックで会場の熱は無限大に上昇していく。「シューティングゲーム」ではフロアに割れんばかりの手拍子が響き渡った。
「誘ってくれた貴子さん、ありがとう。愛してます!」と告げ、ラストはテクニカルなプレイも見どころ聴きどころの「ドナルドとウォルター」でこれでもかと畳みかけ、観客の心を強くギュッとつかんだまま本編が終了した。
アンコールは<貴ちゃんナイト>のお約束、セッションステージだ。まずはフルカワと百々が登場し、フルカワユタカが荒井岳史(the band apart)を迎えて制作した「バスストップ」(アルバム『Yesterday Today Tomorrow』収録)へ。“当時”を振り返りながら“これから”に思いを馳せる歌詞が、約20年ぶりに同じステージに立った二人の関係性ともリンクし、色気のある歌声が混ざり合ってグッとくる。
そして最後は渡會将士とフルカワのバンドメンバーも加わり、斉藤和義の「歩いて帰ろう」をセッション。恐縮しきった様子の渡會を先輩2人がイジったり、観客も交えての大合唱が起こったりと、和気あいあいとしたムードで笑顔の絶えないフィナーレとなった。
この日の出演者全員と共に再びステージに上がった中村は「音楽が好きで良かったね!これからも大好きでいようね!」と、会場にいる全員と約束を交わした。音楽が好き、その純粋な気持ちの連鎖だけで守り続けてきた<貴ちゃんナイト>。このイベントが愛されるのは、その真摯な愛が来場者にも出演者にも伝わっているからだろう。このピュアなイベントが、これからもずっと続いてほしい。そう願わずにいられない夜だった。
取材・文◎イシハラマイ
撮影◎釘野孝宏
■中村貴子主催<y's presents「貴ちゃんナイト vol.11」>2019年2月16日(土)@下北沢 CLUB251セットリスト
Tame Impala『Lonerism』
▼渡會将士
01. Good Routine
02. Vernal Times
03. マスターオブライフ
04. Weather Report
05. コイコイ月見りゃSeptember
06. Chloe
〜Floor SE (選曲:フルカワユタカ)〜
Spymob『Sitting Around Keeping Score』
▼百々和宏
01. 高架下の幽霊
02. クラクラ
03. ポテトフォーピープル
04. すきにして
05. 箱舟
06. ロックンロールハート (イズネバーダイ)
07. 悪女
〜Floor SE (選曲:フルカワユタカ)〜
Sky Ferreira『Night Time, My Time』
▼フルカワユタカ
01. revelation
02. busted
03. 僕はこう語った
04. DAMN DAMN
05. days goes by
06. I don't wanna dance
07. Beast
08. シューティングゲーム
09. サバク
10. ドナルドとウォルター
〜encore〜
▼フルカワユタカ+百々和宏
en1. バスストップ (オリジナル:フルカワユタカ)
▼フルカワユタカ+百々和宏+渡會将士
en2. 歩いて帰ろう (オリジナル:斉藤和義)
〜Floor SE (選曲:フルカワユタカ)〜
Vulfpeck『The Beautiful Game』
■︎<フルカワユタカ ワンマンツアー「ロックスターとエレキギター」>
2月03日(日) 神奈川・横浜BAYSIS
2月09日(土) 静岡UMBER
2月10日(日) 京都MOJO
2月11日(月・祝) 岡山・ペパーランド
2月23日(土) 埼玉・西川口ハーツ
3月01日(金) 福岡・Queblick
3月03日(日) 北海道・札幌COLONY
3月09日(土) 宮城・SPACE ZERO
3月10日(日) 福島・郡山PEAK ACTION
3月22日(金) 石川・金沢vanvanV4
4月13日(土) 大阪・梅田シャングリラ
4月14日(日) 愛知・名古屋APOLLO BASE
4月21日(日) 東京・渋谷WWW ※ツアーファイナル
※ツアーファイナル・ゲスト:原昌和 (the band apart)、ハヤシヒロユキ (POLYSICS)
▼チケット
¥3,990(税込)+ドリンク代別
※オールスタンディング/整理番号付
■︎百々和宏出演<SIX LOUNGE pre.「祝トップス30周年!VooDoo Night!」>
出演:SIX LOUNGE、さよならポエジー、BAN’S ENCOUNTER、武藤昭平withウエノコウジ、百々和宏とテープエコーズ[Ba.稗田美和(ex.super egg machine,yeah!!!Setztonder) / Dr.松田みわこ(miu mau)]
▼チケット
¥3,000(税込) +ドリンク代別
■︎百々和宏出演<TH eROCKERS TOUR 2019 Around & Around>
5月11日(土) 東京・下北沢GARDEN
5月12日(日) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO
5月17日(金) 福岡・イムズホール
▼チケット
¥6,000(税込)+ドリンク代別 (福岡公演以外)
TH eROCKERS (ザ・ロッカーズ) [Vo.陣内孝則 / B.穴井仁吉 / G.澄田健 / G.百々和宏(MO'SOME TONEBENDER) / Dr.田中元尚(BLUE TONIC)]
■<渡會将士 TOUR 2019>
6月01日(土) 大阪・バナナホール
6月02日(日) 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
▼チケット
¥4,300(税込)+ドリンク代別
※オールスタンディング / 整理番号付
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