【インタビュー】ダニー・マッキャスリン「ボウイとのコラボは変革の体験だった」
Photo by Jimmy Fontaine
──前作『Beyond Now』(2016年)は、そのボウイとのコラボ体験の影響が色濃く、彼に捧げたものだと言われましたが、最新アルバム『Blow.』はどうなんでしょう? テーマやコンセプトは念頭にありましたか?
マッキャスリン:『Beyond Now』は確かに、曲を作っているときデヴィッドからインスピレーションを得たところはあったし、彼に捧げたものだけど、あれは彼が亡くなって数ヶ月後に作り始めたもので、その後、ツアーを行ない、最新作を作るころには、あの体験全体や、それが僕にとってどんな意味を持つのか、よりしっかりと把握することができていた。そして、自分の方向性を変えたくなったんだ。ヴォーカルの要素を加えるとかね。これは想定外のことで、そうなるとサックスの役割はどうなるのかとか、どこへ向かうのかとか不安はあったけど、プロデューサーのスティーヴ・ウォールが素晴らしくて……。彼が新しいソングライター・チームを用意してくれて、彼らと共作し、メロディや歌詞をベースに曲を作り始めた。そういうプロセスは、デヴィッドとのコラボでも体験していたけど、僕自身にとっては新しい領域だった。まるで、地図なしに目的地を見つけるようなものだった。デヴィッドは「芸術的に何かを得たいのであれば、不安を感じていなければならない」って言ってたけど、僕はこのアルバムを作っているとき、正にそうだった。どんなものができるんだろう、みんな、どう思うだろうって、不安だったしナーバスになってた。だから、『Blow.』はデヴィッドとのコラボ体験をより深く掘り下げた末、できたものだと感じてる。「タイニー・キングダム」は、作っているときは意識していなかったけど、聴き直していると、『★』のときのストラテジーを思い浮かべた。
──『Blow.』制作時の最大のチャレンジは?
マッキャスリン:ソングライターと共作し、メロディや歌詞、即興、インストゥルメンタルなんかをバランスよく融合していくところだったね。僕はサックスがリードのインストゥルメンタルを作ることには慣れているけど、今回、サックスはリードじゃなかった。『Blow.』ではメロディや歌詞、曲の構成が重要だった。
──これまでに、自分って天才だなって思った瞬間はありましたか?
マッキャスリン:ないねえ(笑)。あとで、あのプレイ良かったなって思うことはあるけどね。『Blow.』も聴き直してて、自分の成し遂げたことに満足してるよ。
──ジャズのミュージシャンとプレイするときは即興もあり、より自由に演奏できると思いますが、ポップやロックなど別ジャンルのミュージシャンとコラボするとき、彼らはあなたにどうプレイして欲しいか、明確なヴィジョンを持っていると思います。それを、制限されていると感じますか? そんな中でどうやって自分の個性を出すのでしょう?
マッキャスリン:時と場合によるね。状況によって本当に違う。例えば、デヴィッドの場合、彼は僕らに自由に感じて欲しがっていた。チャンスは逃すなって感じだった。それに、僕は提供された曲を前もって吟味し、自分なりにどう深く掘り下げたらいいかアイディアがあって、それも自由に感じた一因だと思う。でも、デヴィッドは最初から、僕らに自由にやるよう、挑戦するよう明言していた。これ以上は望めないほど、クリエイティブな環境だった。
──ボウイとはどうやって知り合い、彼からアルバムでプレイしないか誘われたときはどう思いましたか?
マッキャスリン:僕が一緒に仕事をしていた作曲家のマリア・シュナイダーを通じ、出会ったんだ。彼女がデヴィッドとコラボレーションしていて、僕は彼女のバンドにいたから、その話は聞いてた。あるとき、僕らがニューヨークでプレイしているのをデヴィッドが観に来たんだ。その1週間後、マリアとデヴィッドがコラボレーションのためにワークショップを開き、そこで初めて彼に会った。それから、コラボしないかってメールをもらったんだ。すごく興奮したよ(笑)。
──『★』のレコーディングのとき、彼の具合が悪いことを知っていましたか?
マッキャスリン:うーん……、知ってたよ、ああ。
──レコーディングに影響はなかった?
マッキャスリン:なかった。彼はとても集中していたし、すごくエネルギーがあった。スタジオで起きていること全てに関与してた。
──グラミー賞でボウイの代わりにスピーチをしましたよね。
マッキャスリン:彼のマネージャーから連絡をもらったんだ。光栄だったよ。
──間もなく日本での公演が始まります。どんなショウを期待できますか?
マッキャスリン:『Blow.』の収録曲が聴けるよ。間違いなく日本でレコーディングした「TOKYO」もね。それに、ボウイの曲もちょっとプレイする。新曲もある。僕らみんな、すごく楽しみにしているんだ。僕は日本のオーディエンスが大好きなんだ。温かくて、エモーショナルだからね。プレイしているとき、いつも彼らとの間に繋がりを感じる。だから、彼らに会えるのをとても楽しみにしてるんだ。
──いまは『Blow.』をプロモートしたツアーの真っ最中ですが、この先の目標は?
マッキャスリン:音楽を作り続ける。自分にとって新しい方法で音楽を作り続けていきたい。それに集中する。
Ako Suzuki
2019年2月7日(木)、8日(金)、9日(土) 東京・ブルーノート東京
(*1日2回公演)
〈メンバー〉
ダニー・マッキャスリン(Sax)/ ジェフ・テイラー(Vo,G)/ ザック・ダンジガー(Dr)/ ティム・ルフェーブル(B)/ ジェイソン・リンドナー(Key)
公演詳細: http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/donny-mccaslin/
SICX30061 ¥2,500+税
※高品質BSCD2
※日本盤ボーナス・トラック1曲収録
01. What About the Body ワット・アバウト・ザ・ボディ
02. Club Kidd クラブ・キッド
03. Break the Bond ブレイク・ザ・ボンド
04. New Kindness ニュー・カインドネス
05. Exactlyfourminutesofimprovisedmusic 4分間の即興
06. Tiny Kingdom タイニー・キングダム
07. Great Destroyer グレイト・デストロイヤー
08. The Opener feat. Sun Kill Moon オープナー feat.サン・キル・ムーン
09. Beast ビースト
10. Tempest テンペスト
11. Eye of the Beholder (Gail Ann Dorsey:vocal) アイ・オブ・ザ・ビホルダー(ゲイル・アン・ドーシー:vo)
- 日本盤ボーナス・トラック -
12. TOKYO 東京
〈パーソネル〉
ダニー・マッキャスリン(Ts,Fl,AFl,Cl)
ジェイソン・リンドナー(Syn,Pf,Wurlitzer)
ティム・ルフェーブル、ジョナサン・マロン、ネイト・ウッド(B)
マーク・ジュリアナ、ザック・ダンジガー、ネイト・ウッド(Dr)
スティーヴ・ウォール(Wurlitzer,Drum Programming,G)
ライアン・ダール(G、Mellotron)
ベン・モンダー(G)
ヴォーカル:
ライアン・デール(1,2,4,7)
ジェフ・テイラー(6,10)
ゲイル・アン・ドロシー(11)
サン・キル・ムーン(8)
──前作『Beyond Now』(2016年)は、そのボウイとのコラボ体験の影響が色濃く、彼に捧げたものだと言われましたが、最新アルバム『Blow.』はどうなんでしょう? テーマやコンセプトは念頭にありましたか?
マッキャスリン:『Beyond Now』は確かに、曲を作っているときデヴィッドからインスピレーションを得たところはあったし、彼に捧げたものだけど、あれは彼が亡くなって数ヶ月後に作り始めたもので、その後、ツアーを行ない、最新作を作るころには、あの体験全体や、それが僕にとってどんな意味を持つのか、よりしっかりと把握することができていた。そして、自分の方向性を変えたくなったんだ。ヴォーカルの要素を加えるとかね。これは想定外のことで、そうなるとサックスの役割はどうなるのかとか、どこへ向かうのかとか不安はあったけど、プロデューサーのスティーヴ・ウォールが素晴らしくて……。彼が新しいソングライター・チームを用意してくれて、彼らと共作し、メロディや歌詞をベースに曲を作り始めた。そういうプロセスは、デヴィッドとのコラボでも体験していたけど、僕自身にとっては新しい領域だった。まるで、地図なしに目的地を見つけるようなものだった。デヴィッドは「芸術的に何かを得たいのであれば、不安を感じていなければならない」って言ってたけど、僕はこのアルバムを作っているとき、正にそうだった。どんなものができるんだろう、みんな、どう思うだろうって、不安だったしナーバスになってた。だから、『Blow.』はデヴィッドとのコラボ体験をより深く掘り下げた末、できたものだと感じてる。「タイニー・キングダム」は、作っているときは意識していなかったけど、聴き直していると、『★』のときのストラテジーを思い浮かべた。
──『Blow.』制作時の最大のチャレンジは?
マッキャスリン:ソングライターと共作し、メロディや歌詞、即興、インストゥルメンタルなんかをバランスよく融合していくところだったね。僕はサックスがリードのインストゥルメンタルを作ることには慣れているけど、今回、サックスはリードじゃなかった。『Blow.』ではメロディや歌詞、曲の構成が重要だった。
──これまでに、自分って天才だなって思った瞬間はありましたか?
マッキャスリン:ないねえ(笑)。あとで、あのプレイ良かったなって思うことはあるけどね。『Blow.』も聴き直してて、自分の成し遂げたことに満足してるよ。
──ジャズのミュージシャンとプレイするときは即興もあり、より自由に演奏できると思いますが、ポップやロックなど別ジャンルのミュージシャンとコラボするとき、彼らはあなたにどうプレイして欲しいか、明確なヴィジョンを持っていると思います。それを、制限されていると感じますか? そんな中でどうやって自分の個性を出すのでしょう?
マッキャスリン:時と場合によるね。状況によって本当に違う。例えば、デヴィッドの場合、彼は僕らに自由に感じて欲しがっていた。チャンスは逃すなって感じだった。それに、僕は提供された曲を前もって吟味し、自分なりにどう深く掘り下げたらいいかアイディアがあって、それも自由に感じた一因だと思う。でも、デヴィッドは最初から、僕らに自由にやるよう、挑戦するよう明言していた。これ以上は望めないほど、クリエイティブな環境だった。
──ボウイとはどうやって知り合い、彼からアルバムでプレイしないか誘われたときはどう思いましたか?
マッキャスリン:僕が一緒に仕事をしていた作曲家のマリア・シュナイダーを通じ、出会ったんだ。彼女がデヴィッドとコラボレーションしていて、僕は彼女のバンドにいたから、その話は聞いてた。あるとき、僕らがニューヨークでプレイしているのをデヴィッドが観に来たんだ。その1週間後、マリアとデヴィッドがコラボレーションのためにワークショップを開き、そこで初めて彼に会った。それから、コラボしないかってメールをもらったんだ。すごく興奮したよ(笑)。
──『★』のレコーディングのとき、彼の具合が悪いことを知っていましたか?
マッキャスリン:うーん……、知ってたよ、ああ。
──レコーディングに影響はなかった?
マッキャスリン:なかった。彼はとても集中していたし、すごくエネルギーがあった。スタジオで起きていること全てに関与してた。
──グラミー賞でボウイの代わりにスピーチをしましたよね。
マッキャスリン:彼のマネージャーから連絡をもらったんだ。光栄だったよ。
──間もなく日本での公演が始まります。どんなショウを期待できますか?
マッキャスリン:『Blow.』の収録曲が聴けるよ。間違いなく日本でレコーディングした「TOKYO」もね。それに、ボウイの曲もちょっとプレイする。新曲もある。僕らみんな、すごく楽しみにしているんだ。僕は日本のオーディエンスが大好きなんだ。温かくて、エモーショナルだからね。プレイしているとき、いつも彼らとの間に繋がりを感じる。だから、彼らに会えるのをとても楽しみにしてるんだ。
──いまは『Blow.』をプロモートしたツアーの真っ最中ですが、この先の目標は?
マッキャスリン:音楽を作り続ける。自分にとって新しい方法で音楽を作り続けていきたい。それに集中する。
Ako Suzuki
<ダニー・マッキャスリン 来日公演>
2019年2月7日(木)、8日(金)、9日(土) 東京・ブルーノート東京
(*1日2回公演)
〈メンバー〉
ダニー・マッキャスリン(Sax)/ ジェフ・テイラー(Vo,G)/ ザック・ダンジガー(Dr)/ ティム・ルフェーブル(B)/ ジェイソン・リンドナー(Key)
公演詳細: http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/donny-mccaslin/
最新アルバム『ブロウ』|『Blow.』
SICX30061 ¥2,500+税
※高品質BSCD2
※日本盤ボーナス・トラック1曲収録
01. What About the Body ワット・アバウト・ザ・ボディ
02. Club Kidd クラブ・キッド
03. Break the Bond ブレイク・ザ・ボンド
04. New Kindness ニュー・カインドネス
05. Exactlyfourminutesofimprovisedmusic 4分間の即興
06. Tiny Kingdom タイニー・キングダム
07. Great Destroyer グレイト・デストロイヤー
08. The Opener feat. Sun Kill Moon オープナー feat.サン・キル・ムーン
09. Beast ビースト
10. Tempest テンペスト
11. Eye of the Beholder (Gail Ann Dorsey:vocal) アイ・オブ・ザ・ビホルダー(ゲイル・アン・ドーシー:vo)
- 日本盤ボーナス・トラック -
12. TOKYO 東京
〈パーソネル〉
ダニー・マッキャスリン(Ts,Fl,AFl,Cl)
ジェイソン・リンドナー(Syn,Pf,Wurlitzer)
ティム・ルフェーブル、ジョナサン・マロン、ネイト・ウッド(B)
マーク・ジュリアナ、ザック・ダンジガー、ネイト・ウッド(Dr)
スティーヴ・ウォール(Wurlitzer,Drum Programming,G)
ライアン・ダール(G、Mellotron)
ベン・モンダー(G)
ヴォーカル:
ライアン・デール(1,2,4,7)
ジェフ・テイラー(6,10)
ゲイル・アン・ドロシー(11)
サン・キル・ムーン(8)