【インタビュー】感覚ピエロ、<ありあまるフィクション>終演直後に語った「丸くならないでいい」
感覚ピエロのツアー<ありあまるフィクション ONE-MAN TOUR 2018/AW〜Road to MAKUHARI〜>が全国5会場のZepp公演を含む8都市9公演の規模で行われた。<47都道府県ツアー2018>で得た屈強なサウンドと無比のバンド感が発揮された灼熱のステージは、彼ら4人が持つ音楽的ポテンシャルの高さが存分に発揮されたもの。アンサンブルひとつ取っても強靱でしなやか。その一音一音が聴き取れるサウンドに彼らの精神性が宿るようだ。
◆感覚ピエロ 画像
BARKSはツアー<ありあまるフィクション>のセミファイナルとなった12月7日のZepp DiverCity TOKYO公演終演後の楽屋でインタビューを試みた。まさにライヴを終えたばかりの彼らの声は、フロアを激しく揺らしたステージの大成功に満足を浮かべつつ、視線の先はすでに次を見つめている。ツアーの感想や真意、そして現在のバンドの状態について「“今後こういうバンドが出てこない!”って言われるような存在になって行きたい」と語ってくれた4人のインタビューをお届けしたい。
◆ ◆ ◆
■もう嘘をつきたくない
■そういうロマンを見せて行きたい
──今やりたいことがハッキリと見えるライヴを観させていただきました。
秋月:おお、ありがとうございます。
──ひとつは、ローの出し方も含めてサウンド面が太く強くビルドアップされていたこと。もうひとつは、ライヴ自体がかなりストイックなものになっていたこと。ロックバンドとしてどれだけストロングスタイルな勝負ができるのか、そこに重点があるライヴだと思ったんですが。
西尾:まさに、ロックバンドとしてっていう部分は最近みんなが意識しているところで。小洒落た感じというよりも、泥臭くやっていこうっていう姿勢が強くなってるというか。始めたての頃のパワーをもう一回やんちゃに出そうや!っていう気持ちが強いツアーでしたね。
──始めたての頃のパワーを掴みたかったのは何故なんですか。
秋月:このツアーを廻る前の元々のコンセプトがそこやったんですよ。例えば前回は『色色人色』っていうフルアルバムを出して47都道府県を廻ったわけですけど、「O・P・P・A・I」とかで女性ダンサーを入れたり演出面でもトライをして、もっと大きなステージでやれるだけのものを獲得したいっていう意識やったんですね。それを経て、今度は演出面に頼るんじゃなく、セトリにしてもライヴそのものにしても拳が上がるようなライヴ感を大事にしたいと思って。それこそさっきも出た初期の空気感のままZeppクラスでやっていけるような力をつけたいと思ったんですよ。だから、さっき音の変化についても話してもらいましたけど、実際に音作りの面でもライヴ感や熱量を意識していたので、そこが伝わっていたのは凄く嬉しいです。まさにそこを伝えたかったです!っていう感じやったんで(笑)。
横山:たとえば「拝啓、いつかの君へ」を観客の方が一緒に歌ってくれる光景はここまでも作ってきましたけど、本当に理想としているのはその先なんですよね。歌うだけじゃない、さらにハードルを超えてそれこそ拳を上げて自分を示すっていうところまで一緒にやってもらえるだけの熱量を作りたいと思ったんです。「拳を上げてくれ」ってどれだけ煽ったとしても、それはお客さんが本当の意味でやっていることにはならない。“うわ、熱いじゃん!”っていう衝動的なものをライヴそのもので生み出すのがバンドの実力だっていうことは理解していたので。そこが次へのヒントになるんじゃないかなっていうのはずっと考えてましたね。
──実際、「O・P・P・A・I」でも女性ダンサーを出さず、正攻法で行ったわけですよね。前回のツアーであればパーティーに振り切っていた場面も、とにかく4人の音だけで勝負していたライヴで。言ってみれば遊び場感の強い曲も、歌詞云々が関係なくなるくらいソリッドに鳴らし切るトライをしていたと思うんですよね。
横山:まさにそうで。よりバンド感を求めるっていうのは4人の中で一貫してたんですよ。こういう言い方であってるのかはわからないけど、ライヴに集中する方向がダンサー達のほうに行ってしまったら本末転倒なわけで。だから、ああいうエッチな内容の歌でも楽曲のカッコよさを際立たせる形で表現できたらいいなと思ってたんですよ。もちろん今後もダンサーを入れることもあるかもしれない。だけど、今回は僕らのもうひとつの手段として見せられてよかったなと思いますね。
滝口:そうやな。初期の頃の爆発力というか……ステージに立って音をドンと鳴らした瞬間のあの興奮というか。演出とかもいろいろ入れてきましたけど、そこじゃない、もっと根本的なものをツアー後半は特に見せられたと思うんですよ。
──そういう意味でも、「ありあまるフェイク」という曲は肝になる曲だと感じたんですね。これまでのはっちゃけた楽曲や真っ直ぐなメッセージソングともまた違う、誤解や表面的な見られ方も含めて自分達をそのまま表明した楽曲だったなと感じるんです。そのエモーションが、今話してくれた直情的なライヴに繋がったところもあるのかなと思ったんですけど、その辺はどういうふうに感じてます?
秋月:あの曲は、初めて僕と横ちゃんが歌詞を共作したんですよ。だから、5年を経た感覚ピエロがちゃんと融合した曲っていう感覚があって。で、ラストの“「結局僕は誰?」って/「てめぇで考えろボケ」”っていうラインは横ちゃん節なんですけど、あそこで救われた感じがしたんですよね。
──どういう意味で?
秋月:……これはもしかしたら個人的なことかもしれないんですけど、最近は曲を書く上で、なんか普通のものになってきてしまってる感覚があったんです。もちろん求められているものに応えるのは大事なんですけど、たぶん、5年前の僕が今の僕を見たらきっと好きじゃないと思っちゃうんですよね。
──それは、どういう部分に対してですか。
秋月:音楽のテイストとか気持ちの部分も含めて、“そういう音楽やりたいんや?”って5年前の自分が言う気がしてしまうんです。ミイラ獲りがミイラになってしまう、じゃないですけど、勝負し続けてきたからこそ普通になったり丸くなったりしてしまったのかな?って感じることが増えたんですね。だからこそ、「ありあまるフェイク」の“Fuck off”っていう言葉が横ちゃんから出てきた時に、“それでええんや、丸くなることなんてないんや”って強烈に思ったんですよ。その言葉は、今の自分からは出てこないものやったから。それもあったから、もっと感情的なものを表現したいと思ったし、ダンサーも出さずに勝負したいっていうのが裏にあったのかなって。だから、これから4人で作ろうとしているものはもっと棘の多いものになるんじゃないかなって気がしてるんです。初期の感情を取り戻そうっていうのも、そのままあの時に戻ろうっていうことじゃないんやろうなって思うんですよ。あの時の感情を持って今できたら本当に強いんやろうなっていう。そういうイメージなんですよね。そこかな、これからのヒントは。改めて、周りも何も気にせず俺ら4人がカッコいいと思うものだけを作り続けるっていう。だから、丸くならないでいいっていう気持ちとして「ありあまるフェイク」は大きかったと思いますね。
──ただ、言うても初期衝動って意識的に奪い返せるものでもないですよね。その点で、今の衝動ってどういうものなんだと思います?
秋月:ほんまにそうで、初期衝動が売ってたら買いますもん(笑)。
──はははははははは。童貞には戻れないわけですよね。
横山:(笑)。うーん……。でも、実はずっと持ってた衝動をそのまま出し始めたっていう感じなのかもしれない。当初の衝動は、“俺達はこんなに頑張ってるのになんで観てくれないんだ?”っていう気持ちでカウンターパンチを打ち続けていたようなものだと思うんですね。で、今はというと、幕張メッセが見えた段階でも振り向いてくれない人達がまだまだたくさんいるっていう状況に対してガツンと行きたいっていう衝動で。だから、実は昔とそんなに変わらない衝動を爆発させられているのが今のような気がしてるんです。
──なるほど。
西尾:最初って、僕らはもっとカッコ悪かったと思うんですよ。何も被ってないし何も着てないところでがむしゃらにやってて。だけどそれはきっと一生懸命でカッコよかったと思うんです。そういうカッコよさを見せられるように、幕張メッセには裸で行きたいですね。
秋月:ほんまに脱いでくると捉えられないことを願います(笑)。
──はははははははは!
西尾:やっぱり、ここ2年くらい“俺らは他とちゃうし”みたいな部分を意識的に出していた気もするんですよ。だけど、もうそういうことじゃないんですよね。カッコ悪い俺らでええやんって思えてるし、そのままの俺らを出して熱く行きたいです。
滝口:まあ、僕は常に自分のレベルアップを考えてやってきたんですけど──そういう意味ではやってることは変わらないんですよ。だからライヴも、常にやってきたことをいつも通りにやるっていう意味で変わらないんです。だからどんなに大きなステージに行っても、その積み重ねがどれだけ通用するかっていうだけやと思ってます。
──安定の修行僧だと(笑)。バンドの足腰を担うに相応しい方だなと思います。
横山:そうですね(笑)。今日のライヴでも僕は「最強のバンドだ」と言ったんですけど、人によっては“青臭いこと言ってるな”って捉えられることもあると思うんです。だけど、その誤差を埋めていくのがこれからだと思うんですね。心からカッコいいと思えることをやれているからこそ、自分達が最強のバンドだって言っていいと思うんですよ。そこに、もう嘘をつきたくない。そういうロマンを見せて行きたいですね。
秋月:そういうロマンがあるからこそ、僕らにとって幕張がゴールではないっていうことは改めて伝えたいよね。だから11月4日の幕張メッセも次に繋がる面白い日にできたらいいなって。その先で、今後こういうバンドが出てこない!って言われるような存在になって行きたいんですよ。感覚ピエロっぽいね!って言われるバンドが一切出てこられないようになりたい。僕らの活動面や運営面っていうのはあくまでヒストリーの一部なだけで、やっぱり音楽が本質なのは変わらないので。どんな曲ができていくかはまだわからないけど、音楽として唯一無二のものになって行きたいっていうのはさらに思ってます。
取材・文◎矢島大地
撮影◎ヤマダマサヒロ
◆感覚ピエロ<ありあまるフィクション>ライヴレポートページへ
■<ありあまるフィクション ONE-MAN TOUR 2018 / AW ~Road to MAKUHARI~>12月7日@Zepp DiverCity TOKYOセットリスト
02. LET IT DIE -Wake up-
03. Japanese-Pop-Music
04. She say O.K.
05. LOVE GENERAL
06. ワンナイト・ラヴゲーム
07. A BANANA
08. CRAZY GIRL
09. 一瞬も一生もすべて私なんだ
10. 夜のスピード
11. 変幻
12. 思い出して
13. 無い ナイ 7i
14. CHALLENGER
15. A-Han!!
16. 拝啓、いつかの君へ
17. ハルカミライ
18. メリーさん
19. Just to tell you once again
encore
20. さよなら人色
21. 落書きペイジ
22. O・P・P・A・I
23. 疑問疑答
■<感覚ピエロ 5-6th anniversary『LIVE - RATION 2019』〜奮い立たせてなんぼでしょ~>
2019年05月10日(金) 東京 渋谷 CLUB QUATTRO ※ワンマン
2019年05月14日(火) 神奈川 横浜 BAYSIS
2019年05月15日(水) 埼玉 HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
2019年05月17日(金) 愛知 名古屋 CLUB QUATTRO ※ワンマン
2019年05月23日(木) 北海道 PENNY LANE24
2019年05月28日(火) 茨城 水戸LIGHT HOUSE
2019年05月30日(木) 栃木 HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
2019年06月01日(土) 宮城 仙台 CLUB JUNK BOX
2019年06月07日(金) 京都 MUSE
2019年06月08日(土) 奈良 NEVER LAND
2019年06月14日(金) 滋賀 U★STONE
2019年06月15日(土) 兵庫 music zoo KOBE 太陽と虎
2019年06月16日(日) 香川 高松 DIME
2019年06月26日(水) 熊本 B.9 V2
2019年06月27日(木) 福岡 DRUM Be-1
2019年06月29日(土) 岐阜 CLUB ROOTS
2019年06月30日(日) 三重 松阪 M'AXA
2019年07月05日(金) 岡山 CRAZYMAMA 2nd room
2019年07月07日(日) 広島 CLUB QUATTRO
2019年07月13日(土) 山梨 甲府 KAZOO HALL
2019年07月14日(日) 東京 マイナビBLITZ赤坂
2019年07月15日(月・祝) 群馬 高崎 club FLEEZ
2019年07月19日(金) 愛知 DIAMOND HALL
2019年07月20日(土) 大阪 BIGCAT
▼チケット
東名阪公演:スタンディング / 2F指定席&スタンディング(マイナビBLITZ赤坂のみ) 4,500円(税込)
対バン公演:3,900円(税込)
一般発売:2019年02月23日(土)10:00~
※スタンディングは整理番号順の入場
※別途ドリンク代必要
※小学生以上有料。未就学児童は入場不可。
■<感覚ピエロ 5-6th anniversary『LIVE - RATION 2019 FINAL』〜幕張ヴァージンはあなたのもの~>
開場 17:30 / 開演 18:30
全席指定 ¥5,800円(税込)
※年齢制限:小学生以上有料。未就学児童は入場不可
(問)HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
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