【インタビュー】サイダーガール、“炭酸系”ならではのキャッチーかつ爽やかな最新作『SODA POP FANCLUB 2』
2014年に活動をスタートさせると同時に大きな注目を集め、2017年にメジャーデビューを果たし、複数のタイアップも手掛けるなど、ポテンシャルの高さは折り紙つきといえるサイダーガール。そんな彼らの最新作『SODA POP FANCLUB 2』は“炭酸系”と称される彼らならではのキャッチーかつ爽やかな楽曲を核としたうえで、より幅広さを見せていることが印象的。意欲作を完成させたサイダーガールの3名に、バンドのプロフィールなどと併せて、『SODA POP FANCLUB 2』について大いに語ってもらったインタビューをお届けしよう。
■「サテライト」はサイダーガールを凝縮した曲になってくれた
■これがあることで、いろんな方向に振り切ることができた
――サイダーガールは、ネット上で知り合ったメンバーで結成されそうですね。
知:はい。元々三人それぞれ『ニコニコ動画』にオリジナル曲を投稿していて、Yurin君はオリジナル曲も作りつつ『ニコニコ動画』にアップされている楽曲を二次創作として歌っていたんです。それで、僕の曲をよくYurin君が歌ってくれていて、僕は彼の声がすごく好きで、お互いに認知しあうようになるんです。フジムラは神奈川に住んでいて、よく一緒に遊んだりしていたけど、Yurin君は九州に住んでいたんですよ。Yurin君はよく大阪でライブをしていたので、彼が大阪でライブをするときに、ライブを観に大阪まで行ったんです。そのときに僕の曲も歌ってくれて、初めて実際に会って話をして。それから1年後くらいにバンドをやりたいということで二人に声をかけたところ、フジムラはすぐに快諾してくれました。
フジムラ:知から、バンドをやらないかというLINEが来たんです。僕は彼の曲がすごく好きだったので、もう速攻で「やろう、やろう」と返しました。
知:フジムラは、人間性も作る曲も好きだったので、一緒にやりたいと思ってすぐに誘えたんですけど、Yurin君は遠くに住んでいるし、断られたらどうしようという気持ちがすごく強くて誘えずにいたんですね。そうしたら、僕の知り合いがライブを決めてくれて、「知君が、Yurin君をバンドに誘いたがっているよ」と話してくれたという(笑)。その後Yurin君と会ってバンドに誘いました。
Yurin:僕も知君たちとバンドができたらいいなと思っていたし、ちょうど上京するタイミングだったので、即OKしました。
フジムラ:インターネットを介してバンドを組んだことの面白いところなんですが、バンドを組んで初めてのミーティングで、僕とYurinは初めて会ったんです(笑)。どんな人かわからないし、顔も見たことがなくて、歌だけを知っているという状態だった。だから、怖い人だったら嫌だなと思ったけど、会ってみると柔らかい人だったので安心しました(笑)。
――すごい時代になったなと、改めて感じます(笑)。それぞれの音楽的なバックグランドなども話していただけますか。
知:将来音楽で食っていきたいと真剣に思ったきっかけは奥田民生さんでした。民生さんの曲をたまたまラジオで聴いたときに、電流が走ったような感覚があったんです。自分でも歌ってみたんですけど全然できない。民生さんのすごさがわかって、すごく好きになりました。それが中学生のときで、それから今に至るまで、常に奥田民生さんは僕のボックボーンになっています。いろんな音楽が好きだけど、基本的に民生さんが好きな音楽だったり、民生さんのことを好きなバンドとかを掘り下げていったことがすごく多いです。GRAPEVINEさんやフジファブリックさんも、それで好きになったんです。民生さんの曲はシンプルそうに聴こえるけど、実はそうじゃなくて、いろんなところにすごくこだわっているんですよね。僕も民生さんみたいに、真似できそうなんだけどできないみたいなところはこだわっています。それに、民生さんの生き様とかも憧れなんです。民生さんがプロデュースしてPUFFYさんが生まれたりとか、もうすべてが好きで、民生さんの息子になりたくて一時期悩んだ時期もありました(笑)。夢の中で一度競演したことがあって、それを現実にしたいなと思っています。それくらい奥田民生さんをリスペクトしていて、洋楽ではオアシスとか、ビートルズとかが好きです。
Yurin:僕は子供の頃に母親がジョン・レノンを流していて、そこからビートルズを聴くようになって、小学生のときにアコギを買ってもらっいました。中学に入ったら友達がBUMP OF CHICKENさんが大好きで、BUMP OF CHICKENさんのコピーバンドを一緒にやらないかという話になって、ギター&ボーカルでバンドをやるようになるんです。中学の3年間はそのバンドをやっていて、高校に入ってからはELLEGARDENさんやメロコアをコピーするようになって。それと並行してYUKIさんや椎名林檎さん、東京事変さんも大好きで、その辺りが自分のバックボーンかなと思います。振り返ってみると、一貫してポップでキャッチーなものが好きだったことを感じますね。
フジムラ:僕は中学3年生のときに姉の影響でSOPHIAさんを聴くようになって音楽に目覚めました。僕の父がずっとブルースロックをやっていてギターが家にいっぱいあったので、ギターを1本もらって弾くようになるんです。父親がジミ・ヘンドリックスを教えてくれたんですが、1ヶ月で挫折してしまったんです。その後、高校に入ってすぐに友達とコピーバンドをやろうという話になって、友達がACIDMANさんを教えてくれて、ドハマりしました。そのバンドを組むタイミングで、ベースに転向したんです。あとは、ベースを始めたことでグルーヴィな音楽が聴きたくなることが多くて、スティーヴィー・ワンダーなどのブラック・ミュージックを漁ったりしていました。そんなふうに、いろんな音楽を聴いてきていて、すべてが自分の血や肉になっているかなという気がします。
▲『SODA POP FANCLUB 2』【完全数量限定生産盤】
▲『SODA POP FANCLUB 2』【通常盤】
――では、11月22日にリリースされるサイダーガールの2ndフル・アルバム『SODA POP FANCLUB 2』について話しましょう。作るにあたってテーマやコンセプトなどはありましたか?
知:僕らはサイダーガールを結成してから、ずっとギター2本、ベース、ドラムという形にこだわって制作していたんですけど、前作の『SODA POP FANCLUB 1』を作るときに、バンド外の音も採り入れたんですが、今回はそれを踏まえたうえで、バンドでどんなことができるかなという思考に戻ってきた。今回のアルバムはシーケンスの数も増えてはいるけど、楽曲を支配するような使い方ではなくて、プラスαというあり方になっています。そういうところにこだわったというのがまずあって、あとは『SODA POP FANCLUB 1』の曲の流れがすごく美しいと思っていたので、今回も良い流れのあるアルバムを作ろうということを話し合ったうえで制作に入りました。
――『SODA POP FANCLUB 2』はキャッチーかつ爽やかな楽曲はもちろん、起伏に富んだ構成も光っています。曲を揃えていく中で、アルバムの指針になった曲などはありましたか?
Yurin:「サテライト」が今までのサイダーガールを凝縮した曲になってくれたと思います。「サテライト」があることで、さらにいろんな方向に振り切ることができたというのはありますね。
知:そうだね。「サテライト」は、僕が10代のときに作った曲なんですよ。それをどうしても世に出したかったけど、原曲のままだと今までのサイダーガールと印象が変わらないものになってしまうというのがあって。新鮮さを感じてもらえるものにしたいけど、サイダーガールらしさも保ちたいというところでかなり悩んで、いろんな人に相談しました。僕らのレコーディングはマネージャーがドラムを叩いてくれているんですけど、彼はFoo Fightersが好きなんですよ。僕もいろいろ聴かせてもらってすごく好きになって、「Everlong」みたいにストレートだけど、メチャクチャ重心が低くて、ズッシリしているサウンドはカッコいいなと思って。それで、「サテライト」は、今までのサイダーガールよりもズッシリと構えたものにするという意識でオケを構築していきました。
――Bメロでドリーミィーな雰囲気に変わる構成も秀逸です。それに、“君と過ごしたこの6畳が僕の宇宙だった”という歌詞も胸に染みました。
知:歌詞は妄想でいろいろ書いています(笑)。この曲の歌詞は今回録るにあたって全部書き直したんですけど、元々“サテライト=衛星”というタイトルのデモだったんですよ。それを、改めて聴き返したときに、なぜ当時の自分はこの曲に“サテライト”というタイトルをつけたんだろうと考えて。それで思い出したんですけど、僕が小さかった頃、家に8ミリビデオとVHSの両方が入っているデッキがあって、それぞれに時刻がついているんですけど、点滅のテンポが違っていたんですよ。違うBPMを同時に刻んでいると、普段はズレているのに点滅が同時になる瞬間がありますよね。その記憶がすごく鮮明に残っていて、そこから衛星のイメージにつながったんです。地球の周りには沢山の衛星が回っていて、それぞれ周回のスピードが違っていても一緒になる瞬間があるはずだと思って。そういうところから、さらにイメージを膨らませて書いたのが「サテライト」です。僕が書く歌詞はすごく童貞っぽいとよく言われるんですけど(笑)。
一同:ハハハッ! わかる(笑)。
――個人的には、知さんはロマンティストなんだなと思いました。
知:どうなんでしょうね(笑)。でも、自分が今まで武器にしてきた歌詞感でもあるなと思ったので、そこは恥ずかしがらずに書きました。
Yurin:歌詞にもそれぞれの個性が出るのはバンドとしていいことだから、知君は今のままでいいと思う。「サテライト」がある意味アルバムの軸としてありつつ僕の中では1曲目の「アクセル」が、印象が強いですね。この曲は1分弱くらいの曲で、なおかつボーカルがどんどん交替していくというスタイルが、すごく気に入っています。僕はバンド感があるものが好きだし、短いのもいいなと思うんですよね。
知:「アクセル」は、僕の中ではビートルズなんです。全員が歌って、曲が短いというところで。でも、曲調的にはビートルズらしさはない。そういう意味で、面白いものになったかなと思います。
Yurin:それに、「アクセル」は、結構いろんなエピソードがあるんです。フジムラさんが制作に行き詰まって悩んで、めちゃくちゃ泣いた時期があったんですよ。でも、彼次第でどうとでもなるような問題で泣いていたので、知君が“フジムラ、そんなしょうもないことで泣いてんなよ”という感じで「アクセル」の歌詞を書いたんです(笑)。そういうのは、すごくバンドっぽいじゃないですか。それも含めて、僕はこの曲にはかなり思い入れがあります。
フジムラ:「アクセル」はライブで披露する機会があったんですけど、自分が歌うときにいろんなことがフラッシュバックしました。でも、その分“ガァーッ”と歌えたので、良かったんじゃないかなと思います。僕の中で特に印象が強いのは、6曲目の「最終電車」です。知君はアップテンポの曲を作ることが多くて、こういうミドルのバラードは珍しいなと思って。サウンドもR&B調というかリズムがすごく際立つ曲なので、ベースのフレーズやリズムに関して、すごく実験的な曲という印象がありますね。レコーディングのときも知君のディレクションがすごく厳しくて、ここはもうちょっと溜めて上がってほしいとか、ここのタイミングが微妙に違うというふうに、すごく細かいところまで指摘されたんです。知君のこだわりをすごく感じたし、またサイダーガールの新しい一面を出せたんじゃないかなと思っています。
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