【インタビュー】BIGMAMA、身体のパーツをモチーフに制作されたメジャー1stアルバム『-11℃』
2017年10月15日に日本武道館でのライヴをソールドアウトさせるなど、多くのファンの支持を受けながら活動してきたBIGMAMA。キャリア11年目にして、メジャー1stアルバム『-11℃』をリリースする彼らが、これまで以上に広いフィールドに立った今、何を思い、何を表現しようと思ったのだろう。『-11℃』は、全ての楽曲が身体のパーツをモチーフに制作されているという今作。12曲を読み解くカギとして、金井政人(Vo.Gt)柿沼広也(Gt.Vo)へのインタビューをじっくり読んでみてほしい。
■「Strawberry Feels」が自分の中で「心臓」に思えたとき
■そこから先の曲・歌詞を作る法則性が見えてきた
――BIGMAMAはこれまでのキャリアの中で、コンスタントに作品を発表してきましたが、メジャー1stという作品を作るにあたって、どんなことをコンセプトにしましたか。
金井政人(Vo.Gt):各々、思うところはあったとは思うんですけど、改めて「メジャーの1stだからこうしよう」みたいなことはなかったし、必要もなかったと思います。前作を作り終わったくらいから、「次をどうしよう」ということは自然に考えていたところはあって、それで言うと、“一点突破型”の作品を作りたいと思っていました。好きな音楽は増えて自分のなかに貯蓄されていて、好きなものを好きなだけやれって言われたら、割と風呂敷が広がったなという自覚があった。それは、何かを包むには便利かもしれないけど、人の心を刺しに行くとき、強いものを作る分には、そこまで向いていないかもしれないという思いがあったんです。そういう意味で、ここで一度固めて点で攻める必要があると思ったんです。一つ漠然と思っていたのは、とくに日本のロックバンド、ポップスバンドも、最近はすごく大きな流れで一つの方向に向かっているような気がしているということで。
――音楽というもの全体が、ということですか?
金井:そうです。わかりやすさだったり、ロックフェスの流れであったり、メディアでの扱われ方であったり。みんなが同じものを作っているような気がしているんです。そういうものに対して自分自身が食傷気味なところがありました。それはたぶん、アーティスト、マネージメント、レーベルがみんなマーケティングが上手すぎてこうなってるんじゃないかな、みたいなことを思っていて。色んなことに気を遣いすぎていて、少し接客業みたいになってるんじゃないかって思ったときに、アーティストとしてはそこから離れたいなって思ったんです。きちんと差別化した方が、誇らしく自分たちのオーディエンスと向き合える。音楽的には彼(柿沼)をすごく信頼しているので、作曲で7割くらい「こういう風にしたいんだ」という状態で預けるみたいな感じで制作していきました。
――作曲の段階で、7割のアイデアの状態で柿沼さんに託される?
柿沼広也(Gt.Vo):ゼロから金井が一人で7割を作るっていうことはほとんどなくて。リアド(偉武)と三人で曲を形にしていくんですけど、金井の歌詞やイメージ、世界観は7割あったら良い方なんです。共有した後のサウンドに関して、僕とリアドで「この曲はこういう感じだよね」と煮詰めていきます。このアルバムに関して言うと、自分たちが好きだった1990年代、2000年代のロックバンドの1stや2ndアルバムを意識しました。そういうアルバムって聴いていてすごく気持ち良いんですよね。その理由はギターの歪みとかがほぼ一緒で、ドラムのサウンドも一緒でまとまっているというか。色んな楽曲があってもアルバムとしての色が出ていると思うんです。一貫して前のアルバムよりも何回も聴ける、聴いていて心地よいアルバムになったというのは、そういうところを意識したからなのかなと思います。
▲『-11℃』初回限定盤
▲『-11℃』通常盤
――その結果生まれたアルバムのタイトルを『-11℃』と名付けた理由を教えてもらえますか?
金井:まず、世間的にはまだ誰も付けてないタイトルにしたいなっていう理由が一つ。字面で態度を示せればいいなって思ったのが一つ。あとは、ずっと好きでいてくれる人が、何か一つだけ自分にわかる喜びを見つけてくれたらいいなっていうのが一つ。それと、初めましての人が、この記事を読んでくれたときに、「なんだろう?」って思ってくれるのが僕の中では正解です。
――今回、「躰」とテーマにして全ての楽曲が体のパーツをモチーフに制作されているということですが、これは制作のどの時点で出てきた発想なんですか?
金井:「Strawberry Feels」を先行シングルとして出したタイミングですね。音楽が切り売りされてプレイリストで他のバンドと並べられる時代なので、CDを買ってくれることはありがたいし、すごいことだと思っているんです。なので、聴いた時の感動だったり、パッケージを手に取ったときの喜びは、僕の中では必ず用意したいものなんです。テーマがある方が一つの世界観を作ることができるし、どんどん目に見えないサウンドスケープが大きくなるイメージがあるので。「躰」というテーマは、今僕が一番書きやすかったんです。
――書きやすかった、というと?
金井:「Strawberry Feels」という曲が、自分の中で「心臓」に思えたというか。レコーディングで曲を聴きながら、この曲って自分たちにとっての心臓の部分になる曲ができたんだなって。それと、以前にリリースした「CRYSTAL CLEAR」も今回収録することになったんですけど、この曲が自分にとって「目」の部分に見えてきて。そのときに、そこから先の曲・歌詞を作る法則性が見えてきたんです。
▲金井政人(Vo.Gt)
――曲ごとにつけられたパーツを見ていくと、「耳」がないですよね。もしかして「耳」は、リスナーの側に残しているのかなと。
金井:リストアップしたパーツの中に、確かに「耳」は残っていましたし、どういうものを書くかも想定していました。ただ、僕なりに優先順位があってこうなりました。
――リード曲を選考するファン投票を実施して、その結果「Step-out Shepherd」がリード曲になりましたね。この曲が選ばれた理由はどこにあると思ってますか。
金井:これは、30秒~40秒の聴きどころを切り取って、1週間くらいファンの方に選んだもらう企画でした。僕からしたら、どの曲も自信作ですから、フラットに見てどれでも良かったんです。ただ、作ってる本人って一番盲目的なところもありますから、そこは自覚していて。なので、この人気投票企画に、僕はひょいっと乗っかりました。
――こういう企画をやると、バンドに何が求められているのかがわかるのかなって、傍から見ると思ったのですが。
柿沼:そうですね。ただ、色々みんなのコメントを見たんですけど、僕らのファンは良い子が多くて。「どの曲だったら、多くに人にBIGMAMAを好きになってもらえるか」っていう視点も入っているみたいで。
――なるほど、「私たちが推したいBIGMAMA」を知らない人に伝えたいというか。
柿沼:そうなんですよね。もっと広まってほしいという思いがあるというコメントを見た時に、すごく納得がいったというか。シンプルで暗めなサウンドにヴァイオリンが乗っていて、サビのメロディはしっかりしているっていう。純粋に僕らを後押ししてくれている、良いファンの人がいて良かったなって思いましたね。
◆インタビュー(2)へ
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