【インタビュー】Official髭男dism、激変する環境にもまれながら自分たちらしい音を追い求めて作り上げた『Stand By You EP』
2018年にデビューしたバンドの中で、サブスクリプション・サービスにおいて最大の再生回数を記録した新人アーティスト、ヒゲダンことOfficial髭男dismの新作は、強力なタイアップ2曲を含む『Stand By You EP』に決まった。人気ドラマ『コンフィデンスマンJP』主題歌に抜擢されたメジャーデビュー曲「ノーダウト」のヒットから半年後、激変する環境にもまれながら「自分たちらしい音」を追い求めてきた、その決意と成果とは? BARKS初のメンバー全員インタビューをどうぞ。
■「こういう音楽をこれからやっていきます」というものが
■一番しっかりできていると思ったのが「Stand By You」
――まず面白いなあと思ったのは、リード曲の「Stand By You」はノンタイアップでしょう。タイアップ2曲を差し置いてこの曲をタイトルにする、そこに何らかの意図を感じるんですけど。
藤原聡(以下、藤原):そうですね。タイアップは、知ってもらう機会としてとてもありがたいことなんですけど、バンドの次の一歩として「こういう音楽をこれからやっていきます」というものが、音的にもメッセージ的にも一番しっかりできていると思ったのが「Stand By You」という楽曲だったので。この曲をリード曲にして、いろんな人の耳に届けられるようにしようということで決めました。
――なるほど。今回のシングルの3曲、できた順番でいうと?
藤原:3曲目に入ってる「バッドフォーミー」は、今年の頭にデモが完成していました。そのあとに「Stand By You」、2曲目の「FIRE GROUND」という流れですね。デモを作った順番でいうと。
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――じゃあ「バッドフォーミー」の話からしましょうか。これはテレビ大阪・BSジャパン深夜ドラマ『グッド・バイ』の主題歌。
藤原:デモ音源をドラマの監督さんが聴いて「この曲をぜひ」ということだったんですけど、デモ音源がそのままタイアップになったというのは、僕としてはびっくりしたことで。デモ音源を考え直すきっかけになったというか、歌詞やサウンドをしっかり作っておくことが大事なんだなということを感じましたね。
楢崎誠(以下、楢崎):もともとのデモの雰囲気とドラマの雰囲気がマッチしていたんですよ。示し合わせたわけじゃなく。
藤原:そうそう。主人公の心情とすごくマッチしていて、ドラマを見て「なるほど。そりゃ合うな」と思いました。テレビ用のサイズから1曲に仕上げる時には、ドラマを意識して作っていったところはありますけど。
――「バッドフォーミー」は、サックスやパーカッションを入れた分厚い音で、アップテンポの楽しい曲だけど、メロディはせつなくて後味はけっこうセンチメンタル。演奏のポイントは?
楢崎:僕は本来ベーシストなんですけど、サックスが楽しかったです。ライブではアルトサックスを吹くことが多いんですけど、この曲でテナーサックスを吹いた時の快感はヤバかったですね。音域的に、ボーカルとの兼ね合いがいいんですよ。レコーディング中に試しにいろいろ吹いていたら、アドリブも入れてみようということになって…あれ、意外とうまくいったよね?
藤原:何かが降りてきてたね(笑)。
楢崎:ベーシストとしても、サビ前に“タララララッ”ていうフレーズがあって、ベースの音域としては明らかにおかしい跳び方をしていて。レコーディングでは別録りしたんですけど、サビにインパクトを与える重要なフレーズになっていて、気持ち良かったです。
小笹大輔(以下、小笹):歌から始まるのもかっこいいし、 最後にAメロに戻って終わるのもかっこいい。Aメロが3回あるので、真ん中は好きに散らかせるなと思って、好きなように作ってきたら、楢ちゃんも好きに散らかしてきて、いい絡みができましたね。最後にドラムがかっこいいフィルで締めるという作りがすごい気に入っています。あと、僕はエモやパンクロックが好きだったんで、落ちサビのところでアンニュイなアルペジオ奏法を入れています。
――確かに。この曲のギター、相当エモいですよ。
小笹:自分の聴いてきた音楽を、うまいことはめ込むことができたので。2番の構成が特に気に入っています。
――2番推しということで。ドラムは?
松浦匡希(以下、松浦):その、2番の鬼畜フィルがヤバいです(笑)。何十回テイクを録ったことか。
藤原:しまいには「これ以上やると音楽の神様に怒られる」って、エンジニアさんに言われたという。
松浦:さとっちゃん(藤原)が、自分では絶対思いつかないようなフレーズを打ち込んできて、「こういうの、どう?」って言われて。頑張って叩きましたけど、すごく勉強になった1曲でした。
――ヒゲダンの曲って、歌とメロディだけじゃなくて、細部の楽器のプレーまでちゃんと聴いて楽しめる作りになっているから。
藤原:今回はブラスにも注目してほしいですね。これは、「もしも東京スカパラダイスオーケストラのみなさんをフィーチャリングするならこういう曲がやりたい」という設定で作った曲なんですよ。その時のイメージでデモを作っているから、ブラス・セクションがバリバリ活躍して、パーカッションが細かいフレーズを叩くのも、そういうイメージがあってのことだったので。
楢崎:これはいつかライブで、大編成でやってみたいです。
――いいですねえ。続いて「FIRE GROUND」に行きますか。こちらは10月からスタートしたアニメ『火ノ丸相撲』のオープニング主題歌になってます。
藤原:これはヒゲダンが主題歌を担当させていただけることが決まって、「こういう感じで」というお題をいただいてから作った曲です。
――具体的には?
藤原:『火ノ丸相撲』なので、炎や熱さを連想させるものとか、スポーツ漫画の爽やかさ、若々しさ、勝負の激しさとか、そんな感じで、でも結局「好きなようにやってください」というお話だった。タイアップって、ドラマやアニメとのコラボレーションだと思っていて、ヒゲダンらしさもありながら、『火ノ丸相撲』にとって最高のオープニングテーマにするにはどうしたらいいんだろう?と考えた時に、ハードロックな印象だと思ったんですよ。技をかけるところとか、すごい気迫を感じて、この気迫はハードロックだなと。
――おお。相撲にハードロック。
藤原:だからハードロックのギターリフをやりたくて。でもそれだけじゃヒゲダンらしさは出ないから、ファンクの要素も加えて、タワー・オブ・パワーとか、エクストリームとか、いろいろ参考にしながらこの曲が生まれましたね。
――ちなみに相撲好きっているんですか。メンバー内に。
藤原:誰かいなかったっけ? 見に行ったことある人?
小笹:楢ちゃんが、押し相撲の名手なんですよ。
楢崎:あ、そうです。押し相撲のプロです。
――押し相撲って何でしたっけ。
楢崎:立ったままで、手だけで相手を倒すやつです。これはもう、僕はロジックがわかっているんで。両腕を体につけた状態だと負けちゃうんですよ。人体力学で、腕を体につけた時に押されると、力が逃げられないけど、広げておくと力が逃げられる。広げた方が負けにくくて、相手が腕を閉じた瞬間に攻めるのが勝つやり方ですね。
――すごい。ためになるなあ。
藤原:でも、あります? 日常生活で押し相撲やることって(笑)。
――ないけど(笑)。この曲、ギター、めっちゃ生き生きしてます。
小笹:最初から気迫で行ってます。リフがすごいキャッチーで、しかもこんなにギターの音が大きいことは今までなかったので、気持ちいいです。
藤原:確かに。破格のボリュームだね。
小笹:ギターソロも頑張りました。テクニカルなプレーだけじゃなく、音楽的にすごく構築されていて、後ろでベースと管楽器がユニゾンしてるフレーズもかっこよくて、ギターが出てきたと思ったら、シンセがそれに食ってかかるみたいな。
――もはやバトルですよこれは。
藤原:やっぱり相撲なんで。「残ったのはどっちだ?」という。
小笹:僕が速弾きしても、シンセが全然譲ってくれない。
藤原:でも最後に一緒に、ものすごく速いフレーズを“ブルルルルンッ!”ってやる。
小笹:何連符を弾いてるのかもわからない(笑)。トリルです。
――ドラムに関しては?
松浦:エンジニアさんと一緒に、音作りにけっこうな時間をかけたんですよ。バスドラはこうで、スネアはこうで、スティックは太いものを使おうとか。そこまでやらないとあの音は出せなくて。
藤原:あの轟音の中で、音を抜けさせるのは大変だからね。
松浦:パワーがあって、重めにプレーしました。
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