【インタビュー】SHE IS SUMMER、言葉の硬さや柔らかな響きからストーリーや意味を楽しめるミニアルバム『hair salon』
■「好き」にもいろいろあると思うんですけど
■本当の好きを見つけたいと思いながら暮らしています
――最後に収録されている「女の子の告白」はテンションが違うなと感じるんですが、作詞作業をしながら心境の変化はありましたか?
MICO:むしろ、変化しないときがないんですよね。それが自分だなぁって。しかも、「女の子の告白」だけ、初めて自分のことではないものを歌っているんです。これまで結構、恋愛の歌をたくさん歌っているので、女の子から恋愛相談の手紙をもらうことが多くて、そのお返事ということで作った曲だったんです。Twitterで「SHE IS SUMMERとコレサワちゃんが好きです」というツイートを見かけたので、せっかくだったらお手紙のお返事として、みんなが好きなアーティストの子とコラボしてみようということで、コレサワちゃんに作曲をお願いして。なので、自分の中でも、この曲は一曲だけ違う存在ですね。
――そうなんですね。他の曲は、普段の感じに近いテンション、日常感が伝わってきます。「CALL ME IN YOUR SUMMER」はすごくイントロダクションっぽいし、夏が始まる感じがします。で、その次の「会いに行かなくちゃ」は夏っていうワードはひとつもないのに、溶けそうに暑い夏が感じられる。夏のけだるさというか。
MICO:確かに。日差しがまぶしい感じがしますよね。この曲のデモをもらった時に、私もそういう感じがしたんです。歌詞はそこに引っ張られた部分もあったと思います。
――今の東京の感じ、今年の暑すぎる夏が伝わる。
MICO:本当にこれは「今」のみんなが共通して感じているようなモヤッと抱えてる不安みたいなものとか、モヤッと抱えてる幸せみたいなもの。街の中でモクモクしているものが書けたかと思います。今感じていることや湧き上がっていることを表現した歌詞になったかも。音もそういう感じがしたんですよね。
――3曲目の「未知を探す」も夏の歌。今度は街じゃない夏。
MICO:川沿いの土手の上みたいな。視点の違う夏です。
――景色や匂いが変わるから、そういうのも五感で感じられるような曲ですよね。
MICO:うん。夏に吹く涼しい風みたいな。夜はもう涼しくなっているのに、皮膚の中だけ熱いという感覚とか。夏には好きな感覚がいっぱいあるので。
――うん。それが伝わってきます。いきなり終わっちゃう感じも夏っぽいし。
MICO:あぁ~!そうですよね!知らないうちに終わっちゃいますよね、夏って。あれが悲しいんですよね。
▲1st MINI ALBUM『hair salon』初回盤(CD + DVD)
▲1st MINI ALBUM『hair salon』通常盤(CD)
――「エンドロールの先を歩く」はポップな1曲で、一緒に歌いたくもなる。いま旬のシティ・ポップですね。渋谷系のDNAはあるけど、今の音というのも感じられて。
MICO:確かに。そういう曲になりましたね。作曲をしてくれた原田(夏樹)くん(evening cinema)も、この時代の曲が好きなので。
――「エンドロールの先を歩く」というのは、どういう意味合いなんですか?
MICO:私、幸せなだけの歌詞を書いたことがなくて。苦手だったんです。「そんなわけないでしょ?」ってどこかで思っちゃう。それを理解した上で書いている幸せな曲しか素直に聴けない自分がいて。でも、たった1日だけで、そこまであった辛いこと全部が「この日のためにあったんだな」って思う日ってあると思うんです。生きている意味っていうのは、私は本当はないと思っているんですよね。人間は生物として自然発生しちゃっただけだし、この世界に「やらなきゃいけない」なんてことも本当はないし……って思っているんだけど、それを思った上で、だけど確実に「それでも今日は生きてて良かった!」って思える日ってある。そのたった1日ぐらいは、ここでエンドロールを迎えたんだから、この先はもう物語が進むことはなく、本当にその中だけで、両脇にお花がパァ~っと並んだ道を歩いていくみたいな、そういう気持ちを噛み締めてもいいかなぁと思って。
――なるほど!!!もうすでに物語は一回終わっているわけですね。
MICO:そう。もうここで終わりで、すべてが報われたんだって噛みしめる日があってもいいなぁと思って。まぁ、でも現実世界は続くんですけどね。
――その感覚って「悟り世代」ならではなのかな。
MICO:あんまりないですか? 私はそういうつもりで書いたけど、毎日幸せだと思っている人が聴いて、改めて「毎日幸せだな」って思って聴いてくれてもいいし。このタイトルについて、今回は一番質問をされるんですよ。
――感覚がすごく新鮮です。話は少し戻ってしまうけど、実は「未知を探す」というタイトルも新鮮な感覚だったんですよ。今って、なんでも検索できて「未知」が少なくなってきているから。
MICO:でも、友人とか恋人とか、知れば知るほど思うんですけど、人の仲って深いですよね。延々続いているし、流動的だし、知ったつもりでいても、すぐに知らない人になっちゃうし。そこを知ったつもりにならずに、常に「未知」だと思い、探し続けるのは大事なことだと思ったんですよね。
――そこがすごくメッセージとして沁みる。時代に対してのアンチテーゼというか。
MICO:そうですよね。今、本当になんでも調べちゃうから。
――でもそれは経験から来ているわけじゃないから、知ったつもりになってるだけだから。まさに、「知ったつもりでいても、すぐに知らない人になっちゃう」っていう。
MICO:そうですね。経験したら、本当は自分は違うことを思うかもしれないから。
――「生活」は、このミニアルバムのテーマ的な感じですね。
MICO:そうかもしれないですね。SHE IS SUMMERの活動自体、私のソロプロジェクトなので、片寄さんだったり、いろんな方と一緒に作っているプロジェクトなんですね。でも私のプロジェクトなので、発信源は私にあって。私が日常生活で感じていることや最近、好きなことを丁寧に選ぼうというのが私の中でもテーマになっていて。自然に好きって思っちゃうものと、好きになりたくて好きになるものと、「好き」にもいろいろあると思うんですよ。私は、その中から本当の好きを見つけたいと思いながら暮らしています。ディレクターは、そういう私を近くで見てくれているので、それによって活動の舵きりが変わっていくなぁと感じていて。
――うんうん。
MICO:だから、私の生活が活動にも反映しちゃうし、私がしているこういう活動自体が人間活動だと思う。仕事を選ぶ感覚よりは人生の中を豊かにするにはどうしたらいいのかって考えた結果がSHE IS SUMMERの活動になっているんです。最初は歌いたいからそのために日常でこういうことを頑張るっていう発想だったんですけど、やっていることは変わってないのに、その発想が逆転した瞬間があったんです。だから、まさに、この曲は今の私の生活を歌った曲で。そのほかにも私の生活が反映されているから、この曲がミニアルバムの軸になっているように聞こえるのかもしれないですね。
――そうですね。この曲が一番「素のまんま」な感じだから。
MICO:そう。そのまんまです(笑)。私、いろんなことを忘れやすいんですよ。だから、そういうことを歌詞にしていて。
――忘れやすいのは日々、いろんなことがあるからじゃないの?
MICO:それにしても忘れやすすぎなんです。高校時代の友達と会って、「昔こういうこと言ってたよね」って言われても、「言ってたっけ?」って1ミリも覚えてなかったりするんです。それがどんどんひどくなっていく(笑)。自分がやったことも忘れちゃうし、逆にみんなよく覚えてるなって思うんですよ。思い出話で盛り上がるような時は、ひたすら自分の忘れたことを聞かされて、新鮮な気持ちになるんです。でも、覚えておこうと思って写真に撮ったりするのって好きなんです。じゃあ、この瞬間を覚えておくことにしようって決めたことは覚えていられるし、歌にしたことも覚えていられる。だから、「♪日々を歌って また思い出を手に入れる」という歌詞は、まさにそういうことで。歌ったことだけ私の思い出として残って手に入ってるんです(笑)。
――いつも「今」なんでしょうね。
MICO:うん(笑)。未来を後悔しない「今」を作るためにそういう歌を作るとか、そういうことが多いかも。過去を悔やんで書くっていうのもあるかもしれないけど。
――だけど、いろいろ忘れてしまっても、活動とか歌っている内容が支離滅裂にならずに、辻褄があっているから、心の深層部分では忘れていないのかもしれないですね。
MICO:確かに。全部がないと今のことをやっていないっていうのはありますね。不思議ですね。ほんとに、なんでこんなに忘れっぽいんだろう?(笑)
――忘れっぽいからこそ、こういう歌詞が生まれてくるということでもあるから表裏一体でもある(笑)。
MICO:そうかもしれない。
――今作は初回盤にライブDVDがついているんですね。
MICO:そうなんです。4/1におこなった「WATER TOUR」の渋谷www X公演の映像なんです。ライブDVDを発表するのが初めてなので、ぜひSHE IS SUMMERのライブの雰囲気も味わってほしいですね。
取材・文●大橋美貴子
リリース情報
8月1日(水)RELEASE
初回盤(CD + DVD) SCL-004 \2,778(+税)
通常盤(CD) SCL-005 \1,833(+税)
※通常盤にはMICO本人書き下ろしの全曲解説を封入。
1.CALL ME IN YOUR SUMMER
2.会いに行かなくちゃ
3.未知を探す
4.エンドロールの先を歩く
5.生活
6.女の子の告白
初回盤のみ収録
2018.4.1 WATER TOUR @ SHIBUYA WWW X 収録時間 約30分
(mirage)
WATER SLIDER
NIGHT OUT
あれからの話だけど
女の子の告白
とびきりのおしゃれして別れ話を
うしろめたいいい気持ち
ライブ・イベント情報
8月1日(水)21:00~ タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
8月14日(火) 18:00~ ナディアパーク 2Fアトリウム イベントスペース
8月17日(金) 19:00~ タワーレコード梅田NU茶屋町店 イベントスペース
8月25日(土)13:00~ タワーレコード横浜ビブレ店 店内イベントスペース
<集団行動 × SHE IS SUMMER 東名阪ツアー「避暑2トーク」>
2018/08/15(水) 愛知CLUB UPSET
2018/08/16(木) 大阪ROCK TOWN
2018/08/23(木) 東京Shibuya www
<hair salon music ~1st MINI ALBUM「hair salon」Release Party~>
2018/08/26(日) kawara CAFE&DINING FOWORD福岡パルコ店
<SHE IS SUMMER BIRTHDAY LIVE “26”>
2018/09/01(土) TSUTAYA O-crest
<ZIMA MUSIC FIGHTERS meets ライブナタリー>
2018/10/05(金) LIVE HOUSE Pangea
2018/10/18(木) 恵比寿 LIQUIDROOM
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