【インタビュー】OLDCODEX、絆の強さを“並走”で示す挑戦作「Heading to Over」

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■並走してる感覚。形は違えど同じように走ってるよっていう。(Ta_2)
■H2O(H to O)という発想ありきで付けたタイトル。(YORKE.)

——Ta_2さんは『Free!』に声優として橘真琴役で出演しているわけですが、役柄目線で歌詞を見て重なるなと思うところは?

Ta_2:重なるというか、ちゃんとテーマ曲として登場人物たちの背中を押したかった。それは大人としてじゃなく、俺らにもまだ青い部分があって走り続けているから、並走してる感覚。形は違えど同じように走ってるよっていう。だからこそ、サウンドだけじゃなく歌詞にもいろいろな意味を持たせたかったんだよね。例えばDメロの(Close your eyes)から始まるラップのセクションは水泳のリレーが4人だから4箇所作ったんだけど、OLDCODEXは楽器隊を合わせて5人だから、4人で引き継いでいった後にギターのショーンにバトンを渡すイメージで作っていった。

——こだわりが詰まっていますね。「Heading to Over」は“向かっていく”という意味ですか?

YORKE.:H2O(H to O)。

——ああ〜! そういう意味が隠されているんですね。

YORKE.:H2Oという発想ありきで付けたタイトル。意味としては向かっていくなんだけど、1行目の“眩しい光が厚い雲の向こうへ”っていう歌詞のニュアンスに近いかな。

——なるほど。


——ミュージックビデオを作るに当たってリクエストしたことはありますか?

Ta_2:まず、今回は映像もシンプル設計にしたいから場面がガンガン変わるような映像にはしたくないっていう話をしたかな。俺らのMVの利点はYORKE.が絵を描いている姿、筆を持ったり、ペンキを撒き散らす様がライブ以上に近くで見られることだと思うから、そういうところをフィーチャーしたかった。外で撮影するなら絵が映えるようなカットにしてほしいってオーダーをして。

——ランプを効果的に使ったスタジオのシーンとロケでスピーカーにペイントしていくライブに近いシーンで構成されていますよね。

Ta_2:そう。ロケーション的には2箇所しかない。場所がコロコロ変わると絵が霞むかなと思って。「どういう絵が出来上がるんだろうな」とか、「OLDCODEXってこういうアーティストなんだ」って楽しんでもらえる内容にしたかった。

——映像も含めて直球で爽快なOLDCODEXですかね。

YORKE.:そうかもね。すごくストレートに伝えたかったっていう想いもあるし、リリースも夏だからね。

■結果、全体的に今までより大人っぽいシングルになった(Ta_2)
■表題曲と並走する感じ。ある意味、テーマは一貫しているんじゃないかな。(YORKE.)


▲「Heading to Over」通常盤

——ではカップリング曲についても教えてください。

Ta_2:カップリングに関しては今回、作曲者がわからないスタイルでコンペで決めさせてもらったんだよね。アルバムだとテーマ性が重要になるから、そういう冒険はできないんだけど、自分たちの新しい可能性が見てみたいと思ったのもあって、今回は3曲とも作曲者やアレンジャーに好きに楽しんで作ってほしかった。あとバンドのメンバーにも投げて。

——バンドのメンバーが考えたフレーズも入れていくということですか?

Ta_2:「まずはみんなで考えてほしい。その上で意見を言うから」って自主性を重んじるっていう。結果、曲が並んだ時に全体的に今までより大人っぽいシングルになったなって。今まで以上にシンプルなアレンジになったのも新鮮だったし、だからこそ、ボーカルを重ねても音にかき消されずに映える作りになった。レコーディングも1曲、1曲、カラーとか声色を変えて歌入れしたんだけど、例えば2曲目の「Bang」では平歌にファルセットを重ねていて、音が少ないこともあって、より耳に飛び込んでくると思う。

——「Bang」はファンキーでライブ参加型の踊れるナンバーですね。

Ta_2:「Bang」は俺らと長い付き合いの小山(寿)さんが、こういうダンスロックを1回やってみたいって言ってて面白い楽曲になったなって。

YORKE.:EDMっぽい曲調に日本語を乗せるトライは今まで何度もやってきたから悩むことなく書ききったかなって。

——ただ、この歌詞も“ここからが本当の戦いだろう”とか熱いですよね。

YORKE.:そこは1枚のシングルとしての世界観があるから、「Heading to Over」がないとこういう歌詞にはなってないと思うし、表題曲と並走する感じ。ある意味、テーマは一貫しているんじゃないかな。

——「another point」はオルタナティブなロックという印象でした。

Ta_2:この曲はライブでいうとYORKE.の絵にスポットが当たるセクションのイメージ。俺も楽器隊と一緒に一歩下がるボーカルでありたいと思ったから強い芯のある声じゃなくて母音を消すような抜けた歌い方をしたかった。たゆたうようなメロディを活かしつつ、フックのある部分だけは棘を出すみたいな。意外とデリケートな歌い方が要求される楽曲だった。

——ボーカルに色気がありますものね。

Ta_2:今回のシングルの制作中にクラシックの発声の基礎を教えてもらったので声の響かせ方も若干、変えてるんですよ。コーラスの絡みも面白くて、この曲は楽器みたいな在り方の歌になれたなって。

——歌詞は“表現は依存的な状態だと知る程 未完成で臆病になる”という表現が興味深かったです。

YORKE.:そこの歌詞は表現することの本質だよね。表現すればするほど足りなくてまた表現して、まさに依存状態。俺自身、そういうことを強く感じながら作っているから。受け取る人からしたらピンとこないかもしれないけど、雰囲気をキャッチしてもらえるようなメロディだったからいいんじゃないかなって。鬱々としたけだるい感じの曲で最初から世界観が明確だったので肩に力を入れずにスーッと書けた。

——「another point」は何を意味しているんでしょうか?

YORKE.:絶対に自分が行けない方向というか、求めていても反対側にあるみたいな場所というイメージもあるかな。見えてるけど届かない。見えていても選ばないかもしれないし。

——そしてアニメ盤にのみ収録されている「Clean out」はまさにシンプルなアプローチで旅しているような感覚になれる魅力的な曲だなって。

Ta_2:この曲は岡本武士さんという方と初めて組んで作ったんだけど、ものすごく雰囲気のある曲だったので、聴いた瞬間、アニメ盤に絶対に入れたいなと思ってましたね。今までのOLDCODEXにはなかった面をより出せるようにロングトーンの良さを再確認できるような歌い方にして、細かいところでビブラートを使ったりとか。

YORKE.:聴いた時にまずメロディが最高だなって。スタジオで岡本さんがサウンドディレクションをしている姿を見て「本物だな。才能溢れてるなぁ」って思った。細かいフレーズまで徹底的に設計図があって“こうしたい”っていうヴィジョンを明確に持っていてしびれましたね。「これは絶対、いい曲になるでしょ」って思ってた。

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