【インタビュー】D、こだわり抜いたニューシングル。そしてメンバーの素顔

■いままでやってなかったことをたくさん試した

――衣装が美しく着られるように体型キープにもこだわってらっしゃる訳ですね。ここからはシングル「Revive～荒廃都市～」について聞かせて下さい。ジャケットやミュージックビデオではバイクに乗られてましたけど。Dのみなさんはバイカーなんでしょうか。

ASAGI：違います（笑）。

HIROKI：一人もいないです。バイカーは（笑）。

――でも、ミュージックビデオのなかでASAGIさんはバイクに乗ってらっしゃいましたよね。

ASAGI：ええ。CGという最先端技術で（笑）。


――アーティスト写真も含め、Dがバイクをここまでフィーチャーしたアートワークというのは今回が初ですよね。

ASAGI：そうですね。だから新鮮だと思います。使ったバイクはミュージックビデオの監督さんのところに打ち合わせにいったときに、外に止めてあったものなんですよ。「これ借りていいですか？」といって使わせてもらいました。

――衣装と違ってそこはお手軽だったですね（笑）。そもそも中世のイメージをもったヴァンパイアストーリーなのに、なぜ今回はバイクを使おうと思ったんでしょうか。

ASAGI：まず、ヴァンパイアストーリーのなかでもジャスティスが主人公のときは特に “未来感”を打ち出していて。とくに今回は、ヴァンパイアストーリーの第1章が終わってから3年後の世界を描いていて。そこは荒廃した都市なんですね。そこを移動する手段はバイクかなと思って。

▲HIDE-ZOU（G）

――あー、なるほど。

ASAGI：あと、既存曲で「氷の墓標」という曲がありまして。それはジャスティスが母親であるロザリーの氷で覆われた墓標にバイクで行く曲なんです。その墓標が、荒廃した都市を抜けたところにある森の中にあるんですよ。今回は、母親の命日にバイクで墓標に向かい、そこに白い花をたむけた後、森から帰る途中にある幻を目にするんです。その後ヴァンパイアの血が覚醒して、事故に遭ってしまう…というストーリーなので。

――それがタイトル曲「Revive～荒廃都市～」の物語。

ASAGI :ええ。ヴァンパイアストーリーの第1章を締めくくる曲として「Dandelion」という曲がありまして。その物語の最後はヴァンパイア王が消えることによってヴァンパイアの血がなくなり、人間としてそれぞれの生まれ故郷へと、タンポポの綿毛のように旅立っていく…というものでした。それから3年後、ヴァンパイアの王がいなくなって平和が訪れると思いきや、統率者を失ったことで各地で権力者争いが起こってしまったんですね。その中で、森から帰る途中にジャスティスに突如ヴァンパイアの血が目覚めるという衝撃的なことが起こった…というのが「Revive～荒廃都市～」です。

――近未来だから、サウンドも打ち込みを多用してるんですか？

ASAGI：ええ。今回は新たな試みとしてダブステップとバンドサウンドを融合させたり、ど頭の打ち込みのリズムのなかにバイクの音を加工して融合させていたり。いままでやってなかったことをたくさん試しましたね。

――サウンドにもバイク音が入っていたとは。

ASAGI：ギターのリフも（バイクのエンジン音を真似して）“ブーンブブブブ”っていう感じで入れてって。

――そうやってギタリスト2人に伝えたんですか？

ASAGI：伝えたよね？

HIDE-ZOU：はい。ASAGIさんからデモを聴かせていただいた時にバイクのスロットルを吹かしている音のイメージで、そのように話してくれました。

Ruiza : バイクのエンジン音のイメージについて話してもらいました。デモを聴いて、なるほど！と感じましたね。

▲Tsunehito（B）

――ASAGIさん、そういうところはいきなり素朴でかわいさ全開になりますよね（笑）。

ASAGI：ありがとうございます。自己紹介、「僕、こう見えてじつはかわいいんです」に変えようかな（笑）。

――ヘヴィでスピード感があるなか、キャッチーなサビへ展開していくところがスリリングな「Revive～荒廃都市～」に続いて、「Next Generation」は同じヘヴィでも独特な雰囲気を持った曲調でしたね。

Tsunehito：近未来に合うシンセの音色であったり、音の重なりをすごい自分なりに苦労して作っていった曲です。イントロはヘヴィなリフで幕を開けて、サビでは開ける感じなんですけど。そのあと、1サビが終わったあとのCメロ部分は、揺らぎある音色とフレーズが入ってくるという展開も作って。

ASAGI：この曲はジャスティスと四騎士が人間だった頃のことを描いてます。廃ビルとかスラム街…貧民窟に行ったとき、この風貌なので子どもから石を投げつけられるんだけど。最後には自分たちも君たちのために何かできないか探していくよというお話になっています。

――だから、非常にヒューマンなんですよね。「Next Generation」の歌詞は。

ASAGI：そうなんです。

――「エトワール～白き異端者～」はとにかくクワイアにやられましたね。

Ruiza：この曲は僕が原曲となるものを作って、それをASAGI君に再構築してもらったんです。メロディや構成も変わりすごく引き込まれました。最初に「Revive～荒廃都市～」があったので、荒廃した街並みをイメージしてフレーズを組み立てていきました。

――そこにクワイアを入れたのはASAGIさんのアイデアですか？

Ruiza：はい。これがあるのとないのでは全然違います。いきなりクワイアで引き込まれますからね。

ASAGI：嬉しい。この曲は「Next Generation」に出てきた貧民窟が襲われるイメージです。ジャスティスや四騎士が貧民窟に毛布や食べ物を援助して子どもたちといい関係を作り始めたのに、ヴァンパイアの血が蘇ることで廃ビルで蘇ったアンデッド＝ゾンビまで蘇ってしまって、貧民窟が襲われてしまうというすごく悲しいシーンなんですね。だから、クワイアにもオペラみたいな声以外に貧民窟にいる人々の苦しそうに救いを求める声を混ぜたんです。さらに、間奏には目覚めたアンデッドたちが徘徊している気持ち悪い声を入れたり。映画音楽のように自分の声で様々な登場人物を表現してみました。エンジニアも「今の声、おじいちゃんが見えた！」とか楽しんでやってくれてくれて。結果、70人分ぐらい録ったんですけど。

――ASAGIさん一人で？

ASAGI：ええ。100トラックぐらい使って。

――みなさん、よくこんなクレイジーな方と15年も一緒にバンドやってらっしゃいますね（笑）！

ASAGI：ひどい（笑）。でもそこはメンバーには迷惑はかけていないんで（笑）。70人全員はさすがに憶えてられなくて、ミックスの段階では「難民を一人一人送ってもらえますか？」といって、1トラックずつ声を送ってもらい、それを聴きながら「難民9を1dBあげてください」っていうやりとりをエンジニアさんとしてました（笑）。

――こだわり屋さんを通り過ぎて病気ですね。

ASAGI：（笑）。何かをやり始めると、それが頭から離れないんですよ。

Ruiza：でも、こうやってASAGI君がこだわり抜いて録った歌はすごく衝撃的でしたし、最初にこれを聴いたときは本当に感動しました。

ASAGI：この曲はブランシェというジャスティスの恋人を主人公にしていて。貧民窟の難民、子供たちが襲われているのを目撃したブランシェは、ゾンビに噛まれてこのままだとゾンビ化してしまうから、人間のまま一生を終えたいと強く望んでいる子どもの尊厳死を叶えるために、泣く泣くその子どもに手をかけてしまうんですね。でも命を奪ったことで、ブランシェは封印されていた白魔女の魔法が解かれて覚醒してしまうんです。ブランシェは過去にバレリーナであった設定があるので、踊るようにアンデッドを倒して行くという楽曲です。

▲HIROKI（Dr）

――この曲を聴いたとき、戦場でドレスの裾を破り捨て、子どもの命を奪ってしまった悲しみをこらえてアンデットを倒していく光景が絵画のようになって頭に浮かんできたんですよね。

ASAGI：本当ですか？　僕もまさにそれなんです。覚醒前がナイチンゲールで覚醒後がジャンヌダルクのような…そんな女性が描かれた絵画。そういうイメージがあったのでクワイアも合うなと思ったんですよね。

――「Diamond shape（Instrumental）」は一人ひとりの騎士にスポットが当たっていく曲構成になっていましたね。

Tsunehito :とはいってもただ楽器のソロを回していくのではなくて、Ruizaさんは水を司るヴァンパイア、HIDE-ZOUさんは風、HIROKIさんは大地、自分は火という役どころがあるので、ASAGIさんから色んなアドバイスをもらって、ソロのセクションではその役どころをイメージできる効果音を入れたりして作っていきました。

ASAGI：タイトルは直訳するとひし形という意味です。水、風、大地、火というものの均整がとれていて、その絆は永遠に続くというイメージです。この曲はジャスティスが墓標に花をたむけにいっている間、四騎士は森の入り口で待ってるという光景を描いていて。だから霧深い森のイメージから始まり、ソロで各々のキャラクターの過去と現在にスポットがあたって、最後にジャスティスが四騎士の元に戻ってくるという物語になっています。

――そして、このシングルを掲げてDは7月7日から全国ツアー＜D Tour 2018「Revive～荒廃都市～」＞をスタートさせます。こちらはどんなツアーになりそうですか？

ASAGI：久しぶりにヴァンパイアストーリーのツアーなので、今回のシングルを主軸にしながらも、既存曲が深みを増して聴こえたり、ストーリーの繋がりもみえてくると思うので。最新のヴァンパイアストーリーが楽しめるライブになればいいなと思います。

――これを機会に初めてDのライブに行こうと思っている方々に、なにかアドバイスがあったらお願いします。あ、Dのライブといえば旗！　今回のツアーでも旗は？

ASAGI：使うと思います！　15周年記念の特別なデザインの旗を作りましたので。

――お客さんが旗を振るライブって、Dはいち早くやっていましたよね？

ASAGI：15年前から使ってますから。自分が知ってるなかでは、僕らがわりと最初なのかな？「Night-ship“D”」という曲を作ったとき、船がイメージの曲だったんですよ。船にお客さんも乗ってて、一緒にDの旗を振ってる映像が浮かんだので旗を作ろうと思ったんです。だから、旗を振る曲を作ろうではなくて、世界観ありきだったんです。15年前は、旗を作ってくれる業者を探すのが本当に大変で。やっと探し出した業者さんだったので、以来ずっと同じところで旗は作ってます。旗はどこで作ってるんですか？と良く聞かれるんですけど、業者は紹介できませんよ（笑）？

取材・文◎東條祥恵





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