【インタビュー】GOING UNDER GROUND、20周年を迎えてなお新たな道を切り拓き続ける意欲作「スウィートテンプテーション」

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■「アワーハウス」は、伝えたい人に向かって歌うというよりも
■自分に言い聞かせているようなテンションで書いた


――続いてカップリングの「アワーハウス」にいきましょう。

松本:僕らは2017年に『真夏の目撃者』というアルバムを出したんですけど、その辺からモードが切り替わって、やっぱり自分たちはこれだというのがどんどん見えてきたんです。だから、新しいシングルのカップリングも、元々あった曲よりも最新のパッと出てきた一筆書きみたなものがいいなと思って。ちょうどその頃にトリビュート・バンドのレコーディングがあったんですけど、それがすぐに終わっちゃって、時間が空くのはもったいないから1曲書くわといって、スタジオであれこれやっていたらできたのが「アワーハウス」です。

――「アワーハウス」もギター1本で作られたんですね。この曲はグラスミュージックの匂いやストンプ・ビートとドラムの中間っぽいリズムなどが生む、独自の心地好さが光っています。

中澤:ドラムは、素生が言ったトリビュート・バンドのレコーディングがきっかけになりました。ビートルズをモチーフにしたTHE GOGGLESというバンドが、福岡でビートルズの要素を採り入れたオリジナル・ナンバーを作っていて、ビートルズ・マニアの界隈では有名なんです。その人たちが『ゴーグルズ・マジカル・ミステリー・カヴァーズ』というトリビュート・アルバムを作ることになって、THE GOGGLESが好きな奥田民生さんや伊藤銀次さんに声をかけた中にGOING UNDER GROUNDも入っていて。それに参加させてもらって、ビートルズ・ネタをさらに盛って遊んで返したんですよ。その直後に「アワーハウス」ができたので、その余韻が残っていたんでしょうね。「アワーハウス」を聴いたときに、リンゴ・スターみたいなドラムにしようと思ったんです。そこから派生して、全体的にビートルズっぽい感じにしたいと思って。素生に「1回デモを作っていい?」といって完全に預けてもらって、そういう頭でアレンジしたから、ホーンが鳴っていたり、ビートルズっぽいコーラスが入っていたりするんです。過去の経験からいって、自分たちが好きなものを、ちょっとやり過ぎかなという思うくらいやっても、聴く側には意外と伝わらないんですよね。バレる、バレないという話ではなくて、純粋にリスペクトだったり、楽しんでやっていることだから、だったら振りきってもいいかなと思ったんです。


――「アワーハウス」はもろにビートルズではなくて、好きなのかなと感じさせるものになっていて、そこが絶妙です。

中澤:全員が全員マニアだったらコテコテのものになってしまうけど、そうでもないので。絶妙と感じてもらえたならよかったです。

松本:石原なんか、ビートルズのCDは1枚も持ってないだろう?

石原:持ってるよ(笑)。

中澤:アハハ(笑)。あとは、歌詞も最初の時点でほぼほぼあって、端々にせつなさを感じさせる歌詞だったので、サウンドがハッピーであればあるほど、楽曲としていい感じになるんじゃないかなというのもあって。そこも意識しました。

――「アワーハウス」の歌詞はリスナーの背中を押すタイプですが、押しつけがましくないのがいいですね。

松本:僕は、そういう温度感が好きなんです。熱く押しつけられると、拒否反応が出てしまうんです。自分が嫌なことは人にするなと教えられているから、そういうのはよくないなと思うし(笑)。「アワーハウス」に関しては、伝えたい人に向かって歌っているというよりも、もうちょっと自分に言い聞かせているようなテンションで書いたんです。歌詞ももう何曲も何曲も書いてきたから、この言いまわしは陳腐かなとか、いろいろ思ってしまうことがあるんですけど、この曲に関してはただただ思ったことを素直な気持ちで書きました。だから、歌詞を書くという意識は全然なくて、日記を書くような感覚でしたね。


▲中澤寛規

――ソフトでいながら響く歌詞になっています。では、「アワーハウス」のレコーディングは、いかがでしたか?

石原:この曲のベースは、わりとデモを忠実に再現しました。サビは、おいしいと思うフレーズを勝手につけ足したりしましたけど(笑)。でも、大幅に変えてはいないですね。デモを聴いたときにビートルズを感じて、それを壊すのは違うなと思ったから。この曲はビートルズっぽさを楽しんで弾きました。ただ、ベースの音をポール・マッカートニーに寄せるということはしなかった。そこまでやるのも違う気がしたんですよ。あとは、この曲は久々にドラムとベースとアコギを、“せーの!”で録ったんです。最近はドラムだけ録ったり、ドラムとベースだけ一緒に録ったりすることが多いけど、この曲は三人で一緒に演奏して、それがいい方向に出ていることを感じますね。いい空気感をパッケージできているので、そこも楽しんでもらえればと思います。

中澤:ギターは必要最小限という感じですね。最初は、もっと弾かなくてもいいかなと思っていたんですよ。でも、ライブを想定したときに、それだとヤバいかなと思って(笑)。俺やることないぞ…という(笑)。それで、最後の最後にライブではこう弾きたいなというものを入れました。あと、この曲はウクレレが鳴っていることもポイントかなと思います。レコーディングする前に、素生がウクレレとか入っていたらいいんじゃないかなと言ったんです。それで、友達のウクレレの先生をしている人にお願いして、弾いてもらいました。

松本:曲調を考えるとバンジョーとかアコーディオンが合うと思うけど、そこでバンジョーではなくてウクレレというのが、このバンドの性格を表していますね。例えば、ファッションで、どんな音楽が好きか完全にわかる人っていますよね。「絶対にメタルが好きでしょう?」という人とかね。それはその人の美学だからまったく批判する気はないけど、「こういう曲だし、バンジョー入れましょうよ」みたいコスプレ感は、うちのバンドには似合わない気がするんです(笑)。それで、ウクレレがいいかなと思ったんです。ウクレレを入れてみたら予想以上に存在感があって、いいバランスになったんじゃないかな。

中澤:いろんな要素が入って、結果的になにか変なものになったほうが面白いんですよね。たとえばベーシックな部分はビートルズにしたいと僕が思っていても、一方でウクレレを入れたらいいんじゃないかという声があればやってみる。ビートルズ・リスペクトの曲だからベースもポール・マッカートニーにするぞとかではなくて、ベースはいつものGOING UNDER GROUNDのままになっているし。そういういい意味での誤解が交ざりあって、最終的に面白いものになったほうが楽しいですよね。化学反応が起こるのが、バンドならではの面白さだと思うし。

松本:それは、絶対的にそうだね。「アワーハウス」の歌は、歌いまわしの部分とかでちょっと苦労しました。もう頭の中でできあがっていたんですよ。ウクレレも含めてアレンジも決まった、これを録る、こういうふうに歌いたいなとイメージしていたけど、実際に歌ってみたらちょっと違うなと思うところがあったんです。

中澤:迷ったというか、素生はちょっとスケベったんですよね。歌の感じはそんなに考えなくて良かったのに、ハナからできていたから、ちょっといいカッコしようみたいな色気が出て、何パターンか歌っていくうちに考える方向にいってしまって。

松本:この期に及んで、まだ褒められたいという(笑)。

一同:ハハハッ!!

中澤:それで、最初のが一番いいよと言いました。


▲石原聡

――ツルッといいものができて、これでいいのかなと少し不安になるパターンですね。さて、「スウィートテンプテーション」はGOING UNDER GROUNDの新しい魅力を堪能できる一作になりました。シングルのリリースに伴って行う『GUG 20th ANNIVERSARY ICE CREAM TOUR』について教えてください。

松本:初日の札幌が終わったところですけど(※編注:取材時)、セットリストが今までと全然変わりました。一般的なライブの流れというのがなんとなくあるんですけど、それだと今の自分たちのよさを伝えられないので変えたんです。今までやったことのないライブの時間の流れ方になっているから初日の札幌は死ぬほど疲れたけど、むちゃくちゃ楽しかったし、新しいライブのよさは、お客さんにも伝わったと思います。ライブのあり方を自分たちで変えて、なおかつこっちのほうがいいと思えたというのは本当によかったと思う。僕の中には、20年間ずっと一回も休まないで音楽をやり続けているバンドはこうなるんだということのいい手本になれたらいいなという思いがあって。今の僕らのライブは、代表曲といえる「トワイライト」をやりつつ同じセットリストの中に「スウィートテンプテーション」が入ってきて、それを見た人は“なるほどね!”と膝を打つものになっているんですよ。だから、それをぜひ見にきてほしいと思っています。

中澤:今年はCDデビュー20周年という旗を振って活動していて、前半は過去の作品のリアレンジ盤を出したりとか、足取りを振り返るコンセプトのライブをしていたんです。今やっているツアーはようやくそこから一度離れて、新曲も混ぜて自由にセットリストを組めたんですよ。そういう意味で、過去とこれからの未来に向かうという2018年中盤の過渡期のGOING UNDER GROUNDがちゃんと詰まったライブになっているんじゃないかなと思いますね。絶妙なバンドの状態が見れるライブになっているので、ライブにこられる方は期待していてください。

石原:今回のツアーは20年前の曲もやっているし、「スウィートテンプテーション」もやっているし、さらにいえば、また違う新曲もやったりしているんですよ。それを全部同じ熱量で演奏するのが、すごく楽しい。なので、ぜひそれを味わいにきてほしいです。

取材・文●村上孝之


リリース情報

「スウィートテンプテーション」
2018/6/6発売
YRNF0009
\1,852(税抜)
1.スイートテンプテーション
2.アワーハウス
20年前のインンディーズデビュー作「cello」のリリース日当日に渋谷で行われたライブをまるっと収録したDVD付き

ライブ・イベント情報

『GUG 20th ANNIVERSARY ICE CREAM TOUR』
6/23(土) 下北沢CLUB Que
OPEN / 17:00 START / 17:30
【お問合せ】下北沢CLUB Que TEL 03-3412-9979

「Hermann H. & The Pacemakers presents NEVER DIE YOUNG」
2018年7月13日(金) 開場18:00 / 開演19:00
会場:東京キネマ倶楽部
出演:Hermann H. & The Pacemakers
曽我部恵一(Acoustic Set),GOING UNDER GROUND....and more

『We Come One × マイセルフ,ユアセルフ“SUPA STUPID”』
2018年7月19日(木)
会場:北浦和KYARA
出演:
GOING UNDER GROUND
おとぎ話
問い合わせ:北浦和KYARA(080-2250-6969)

『全方位全肯定 vol.9 熊谷編』
GOING UNDER GROUND / フラワーカンパニーズ
8月4日(土)
会場:埼玉県・熊谷市創造館さくらめいと 太陽のホール
http://www.sakuramate.jp/subCont/access.html
問い合わせ先:公益財団法人 熊谷市文化振興財団 tel. 048-532-0002

『夏のVIVA YOUNG! 2018 ~5 Days C.M.C.』
2018年8月12日(日)
会場:下北沢CLUB Que
出演:GOING UNDER GROUND、Drop's、The Songbards
DJ クラヤマナオキ

『MONSTER baSH 2018』
2018年8月18日(土)・19日(日)  OPEN 9:00 / START 11:00
会場 国営讃岐まんのう公園 (香川県仲多度郡まんのう町)
OFFICIAL WEB SITE http://www.monsterbash.jp
問い合わせ デューク高松 087-822-2520 (平日 10:00-18:00)
GOING UNDER GROUNDは8/18(土)に出演

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