【インタビュー】JUN SKY WALKER(S)、新たなスタートの新曲を含む究極のベストアルバムとバンドの過去、現在、未来

■新曲「One -Way」は記念のベスト盤に入れる新曲ということで
■ファンへの恩返しの気持ちを込めたいと思って書き始めた曲です

──ベスト盤は3枚組で、DISC 1は初期の曲が中心、DISC 2は後期、再結成後の曲、DISC 3にはバンドの原点のライブハウス、渋谷Lamamaで2017年の12月に行われたカウントダウンライブが収録されていますが、選曲は大変でしたか？

宮田：僕たち、30周年を共に進んでいこうということで今年、レコード会社を移籍したんですけど、選曲は僕たちというより、プロデューサーにまず曲出しをしてもらったんです。そこで出揃った曲たちについて、ディスカッションを重ねて最終的に決めていきました。やっぱり僕たちは当事者だからなかなか客観的には見られないんですよね。メンバーで決めるのもアリだけど四者四様になる恐れがあったので。結果、プロデューサーが提示してくれた曲でほぼ決まりましたね。マスタリングで曲順どおりに聴いて「これは納得の選曲だな」って。

──例えばDISC 2は「さらば愛しき危険たちよ」（1995年）で始まりますが、この曲で始めたいとか、こだわったところは？

宮田：「さらば愛しき危険たちよ」のベースは寺岡ですけど、曲を書いたのは僕らが学生時代から一緒にやっていて、ジュンスカの後期に戻ってきたベースの伊藤毅なんですよ。だから、僕らが選曲していたら入っていなかったかもしれない。それと今回、3曲を新録しているんですけど、これもプロデューサーから今のJUN SKY WALKER（S）でレコーディングしたらいいんじゃないかという意見をいただいて。



──2018ver.として収録されている「愛しい人よ」「休みの日」「言葉につまる」ですね。

宮田：そうですね。「言葉につまる」はインディー時代の曲でテンポもアレンジも相当変わりました。「休みの日」は中期の曲でオリジナルはピアノが入ったアレンジなんですけど、アコースティックギターとエレキギターで四人だけのスタイルでレコーディングして……。「愛しい人よ」呼人が抜けて解散するまでの後期の曲で、どの曲も“今のJUN SKY WALKER（S）が演奏するとこうなるよ”っていうヴァージョンになりましたね。

──アレンジはメンバーからのアイディアが盛り込まれているんですか？

宮田：アレンジはONE OK ROCKなどを手がけているakkinですね。彼は今年の1月にリリースしたカバーアルバム『BADAS（S）』から参加してくれていて、松任谷由実さんの「Hello, my friend」やスピッツの「楓」、Mr.Childrenの「星になれたら」とか、いろいろな名曲をジュンスカヴァージョンとしてアレンジしてくれたので、引き続きakkinにお願いした流れです。それとベストには新曲「One-Way」が入っています。森純太が書き下ろした曲です。


──「One -Way」はみずみずしくてJUN SKY WALKER（S）らしいナンバーです。どんな想いを込めて書いた曲なんでしょうか？

森：記念のベスト盤に入れる新曲ということで、これまで応援してくれたファンへの恩返しというか、そういう気持ちを込めたいと思って書き始めた曲です。歌詞は川村結花さんと共作しています。

──ファンへのメッセージでもあり、“僕らは今も　心震わせて”とか、JUN SKY WALKER（S）の現在の意志も込められていると感じました。

森：僕たち自身は、30年前にホコ天でやっていた頃と夢や希望の形は変われど、ロックに対する情熱や意欲はそんなに変わっていないんですよね。それは聴いてくれるみんなもそうなんじゃないかなと思って。

──“ここからもずっと　歩き続けよう”というフレーズが出てきますが、歩くというのはキーワードなんでしょうか？

宮田：確かに「歩いていこう」っていう曲がありますからね。「One-Way」の歌詞は“素敵な夜空を”で締められていますけど、僕らには「すてきな夜空」という曲があるので、ジュンスカのファンがグッとくる大切にしている言葉を入れてくれたんですよね。それと“くじけたからこそ　出会えた笑顔も　なくしたからこそ　見つけた光も”という歌詞は、僕がインタビューで話していたことだったりして、川村結花さんはジュンスカのファンに向けてこういうふうに表現したら一つになれるんじゃないかってペンをとってくれたと思うんですよ。歌詞自体、30周年のメッセージになっていると思います。

──“10年先もきっと　一緒に眺めようよ”っていう箇所もさっき宮田さんが話してくれたことと重なりますしね。

宮田：僕ら自身にとっても、新たなスタートになる曲だと思っています。


──「One-Way」をレコーディングするに当たって、みなさんがこだわったところも教えてください。

森：メロディラインに関してはつねに新しいものを求めて作っているんですけど、ギターのフレーズはあえてジュンスカの定番を意識して弾いています。新しいレコード会社と一緒にやっていくこと、川村さんとタッグを組んだこと、新曲のアレンジをakkinさんに初めてお願いしたことも含めて、僕も第一弾というかスタートの意識が強かったですね。

寺岡：ベースはakkinさんが考えてくれた印象的な箇所はなぞりつつ、「ここはちょっと遊ぼうかな」と思ったところは自由にやらせてもらった感じです。カバーアルバムも同じやり方だったので勝手知ったるという感じで。

小林：カバーアルバムで一緒に作業してakkinくんは100%信用できると思ったので、「One-Way」もデモの時点で俺が叩くような感じの音でありつつ、今までやってこなかったこともあって教えてもらった部分がありましたね。あと、この曲、ほとんどハイハットを使っていないんですよ。ジュンスカの曲の中では珍しいと思います。

宮田：歌はカバーアルバムの経験を活かせましたね。あの時は我流で歌わずに、オリジナルの歌い回しを一度コピーして身体に入れてから歌ったんです。自分なりの歌い方はできちゃうんだけど、一度オリジナルに忠実に歌って、そこから自分の魂を入れるっていう。今回も川村さんが歌ってくれたものの譜割りやブレスのポイントをバッチリ練習してから歌入れに臨みました。最近というよりは初期のジュンスカに近い少し太い歌い方をしています。当時は若気の至りもあってなめられないように男っぽく歌っていて、後期はけっこうキレイに歌っているんですけど、最近は初期の荒々しさとか太く歌う手法も取り入れているんです。「One-Way」に関しては、昔の歌い方と今の自分の歌い方を混ぜていて、歌も自分なりに成長しているかなって。これだけ長く歌ってきたけど、まだまだ勉強というか、さらに進化していきたいとつくづく思うし、新しいボーカルスタイルを進化させたいと思っているので、僕にとっては非常にいい歌入れでした。

──30周年から未来へと続く意味を持つ新曲なんですね。初回生産限定盤のDVDは、今は存在しない新宿コマ劇場での1988年のカウントダウンライブや日清パワーステーションでの1991年のライブ映像、TVK(テレビ神奈川）で放送されていた音楽番組『Live TOMATO』、最後のホコ天ゲリラライブなどレアな映像が盛りだくさんの内容ですが、当時の思い出というと？

森：コマ劇場もパワーステーションも今はない会場ということでレアかなと思って入れたんですけど。

宮田：パワステはミスチルのメンバーが見にきていた思い出がありますね。俺がステージからガムをパーンと吐いたら「こっちに飛んできた」って楽屋で言われたのを今でも覚えています（笑）。コマ劇場はMCがひどかったですね。DVDでは全部カットされていますけど（笑）。

──放送禁止用語連発みたいな？

宮田：そうですね。それとTVKさんが保管してくれた映像を貸し出してくれて発売することを許諾してくれたのも嬉しかったですね。カウントダウンにしても東京の夜中の年越しライブなので、地方の人たちはなかなか見に来られなかったと思うし、必見なんじゃないかな。当時からジュンスカを知っている人にとっては懐かしいと思うし、若い人たちは「あの頃、ジュンスカってこんなライブをやってたんだ」って発見もあるんじゃないかと思います。

──最後にBARKS読者に30周年イヤーのメッセージをお願いします。

宮田：30周年ということで9月から30公演の全国ツアーを開催します。そのほかフェスに出演したり、ライブを積み重ねつつ、水面下では次のアルバムに向けて新曲の制作にも入ると思います。30周年を一つの点と考え、35周年、40周年の点に向けて線を引いていきたいですね。そのためにもやることは日々コツコツ。何才になっても練習しかないと思っているんです。それが自分をいちばん支えることになりますし。

──重い言葉です。

宮田：「みんなバンドを長くやりたかったら練習しろよ」っていうのが僕からのメッセージです（笑）。

取材・文●山本弘子


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