【インタビュー】ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ、大反撃を開始
2007年のデビューから破竹の快進撃を続けてきたファイヴ・フィンガー・デス・パンチが、最新アルバム『アンド・ジャスティス・フォー・ナン』で大反撃を開始した。
◆ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ映像&画像
彼らは3作目『アメリカン・キャピタリスト』(2011年)以降、4作連続で全米チャートTOP3入りという無敵ぶりを見せつけてきたものの、メンバーの健康/契約問題などに見舞われ、その歩みが滞る状態に陥っていた。しかしながら、2018年5月18日に世界同時発売となったアルバム『アンド・ジャスティス・フォー・ナン』で見事に復活、猛反撃をみせている。バンドのギタリスト:ゾルタン・バソリーに、話を聞いてみよう。
──バンドのメンバー達はみんな元気でしょうか?
ゾルタン・バソリー:全員が精神的にも肉体的にも健康で、新たな一歩を踏み出すことに意欲を持っている。アイヴァン(ムーディ/Vo)、ジェレミー(スペンサー/Dr)、クリス(ケール/B)がそれぞれ健康上の問題を抱えていたことは隠すつもりもないけど、今では体調万全だよ。ファイヴ・フィンガー・デス・パンチはデビューして10年、7枚のアルバムを出して世界中をツアーしてきた。我々の成功はハードワークの結果だったんだ。これまでメンバーの健康に問題があったのは、そんな生活に慣れるための試練だった。今では新しい環境に慣れているし、全員が世界を獲る意欲に満ちているよ。
──『アンド・ジャスティス・フォー・ナン』は、2016年に完成していながらレコード会社の『プロスペクト・パーク』との契約関係でリリースが延期となったそうですが、それはもうクリアされたのですか?
ゾルタン・バソリー:もう何の問題もないよ。別に『プロスペクト・パーク』とはケンカになったわけじゃないんだ。条件が合わなくて調整が必要になっただけ。今でもレーベルのスタッフには友達がいるし、私怨はまったくない。その調整に時間がかかったことは事実だけど、すべてがクリアになってフレッシュな気分で再スタートするんだ。バンドは最高の状態だよ。
──『アンド・ジャスティス・フォー・ナン』というアルバム・タイトルについて教えて下さい。
ゾルタン・バソリー:“And justice for all”というフレーズはアメリカの公式行事で暗誦される“忠誠の誓い”の一節なんだ。それをアルバム・タイトルにしたのはもちろんメタリカの『メタル・ジャスティス ...And Justice For All』に引っかけた部分もあるけど、『プロスペクト・パーク』との裁判もヒントになった。裁判をやっても勝者がいなかったんだ。弁護士たちが儲けただけだ。“正義”なんてどこにもなかった。アイヴァンがボソリと「and justice for noneだよなあ...」とつぶやいたのをタイトルにしたんだよ。
──アルバムの曲作りはどのように行っているのですか?
ゾルタン・バソリー:基本的にまず曲から書くようにしているんだ。インストゥルメンタルでも最高な曲でなければ、歌詞を乗せても最高にはならない。ヴィヴァルディの『四季』を聴いてみれば、歌詞がなくてもどの季節について歌っているかわかるだろう?そうして曲が完成するとアイヴァンに渡して、彼が歌詞を書くんだ。歌詞の80%はアイヴァンによるものだけど、他のメンバーもアイディアがあれば提案する。それは曲作りにおいても同じだよ。俺がリフを書いて、それを中心に組み立てていくことが多い。でもメンバー全員がクリエイティヴな部分を担っているし、彼らのインプットは歓迎する。今回の曲作りのコンセプトは“ダメなアイディアなんてものはない”というものだった。アイディアがあったら「これはダメだな」と自己完結しないで、とにかく全員で話し合ってみたんだ。だから「シャム・ペイン」でジェレミーのアイディアも使われているし、ジェイソン(フック/G)はリード・ギターのパートを多く書いている。具体的に“このパートを誰が書いた”と指摘できなくとも、全員のクリエイティヴなインプットがあるし、アルバムの作曲クレジットには全員の名前があるんだよ。
──アルバムのプロデューサー、ケヴィン・チャーコとの作業はどのようなものですか?
ゾルタン・バソリー:ケヴィンとは2作目のアルバム『ウォー・イズ・ジ・アンサー』(2009年)以降すべての作品を一緒に作っているんだ。彼がいなかったら、どうやってアルバムを作ればいいのかわからないよ。誇張でなくケヴィンは6人目のメンバーであり、バンドの音楽表現を増幅させるギター・アンプのような存在だ。それと同時に彼はメンバー達の意思疎通をスムーズにする心理学者でもある。彼はオジー・オズボーンやロブ・ゾンビからブリトニー・スピアーズ、シャナイア・トウェインまでを手がけてきた経験豊富なプロデューサーだ。ファイヴ・フィンガー・デス・パンチの音楽性はヘヴィでメロディアス、グルーヴィーなものだし、あらゆる音楽性に精通したケヴィンのようなプロデューサーが頼りになるんだ。
──『アンド・ジャスティス・フォー・ナン』日本盤は通常盤と初回限定盤の2仕様でリリースされます。初回限定盤CDは1曲目にボーナス・トラック「トラブル」(ベスト・アルバム『ア・ディケイド・オブ・デストラクション』初出)が収録されていますが、曲順はどのように決めたのですか?
ゾルタン・バソリー:1曲目がボーナス・トラックというのは確かに珍しいよね(笑)。通常盤の1曲目は「フェイク」で、ガツンとインパクトのあるナンバーだ。で、「トラブル」も同じぐらいガツンと食らわす曲だと思う。通常のボーナス・トラックのようにCDの最後に持っていくのではなく、オープニング・ナンバーが2回あったらクールだろ?
──2018年5月からシャインダウンとの北米ツアー、夏にはブレイキング・ベンジャミンとの北米ツアーが始まりますね。
ゾルタン・バソリー:今、アメリカで一番勢いのあるヘヴィ・ロック・バンドが誰か?と考えてみよう。いろんな候補が挙がると思うけど、その中にファイヴ・フィンガー・デス・パンチ、シャインダウン、ブレイキング・ベンジャミンの3バンドは必ず入るはずだ。俺たち自身、このツアーにスリルを感じている。ファイヴ・フィンガー・デス・パンチのショーを見たことがある人も見たことがない人も、最高に楽しめるステージになるよ。
──これまで2009年の<サマーソニック>、2014年の<ノットフェス>でプレイしましたが、日本でのライヴについてどんな思い出がありますか?
ゾルタン・バソリー:俺は子供の頃から柔道をやってきて、日本という国に敬意を抱いてきた。バンドで活動するようになって、遂に日本のステージを踏むことができて感無量だったよ。日本のロック・ファンで面白いのは、秩序とクレイジーさという相矛盾する2要素を兼ね備えていることだった。ワイルドに暴れながら周囲の人たちに配慮している姿は美しくすらあった。
──レミー(モーターヘッド)が亡くなり、オジー・オズボーンやスレイヤーが引退を表明、グレン・ティプトン(ジューダス・プリースト)がパーキンソン病を患うなど、メタル界の世代交代が急激に進行しています。そんな状況下で、ファイヴ・フィンガー・デス・パンチの占めるポジションは日々重要なものになっていますが、それをどのように受け入れていますか?
ゾルタン・バソリー:ひとりのメタル・ファンとして、偉大な先達が次々と去って行くのは寂しいね。彼らのようなレジェンドの代わりには誰もなることができないだろう。ただ俺たちには、自分たちができる最高にキック・アスな音楽をプレイして、みんなと一緒に楽しむことができる。それをあと何十年か続けたら、ひょっとしたら俺たちも“レジェンド”の入口にたどり着けるかも知れないね。
文:山崎智之
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ『アンド・ジャスティス・フォー・ナン』
【100セット通販限定 直筆サインカード付き初回限定盤CD+Tシャツ】¥6,500+税
【初回限定盤CD】GQCS-90596 ¥2,700+税
【通常盤CD】GQCS-90597 ¥2,300+税
【日本語解説書封入/歌詞対訳付き】
通常盤CD
1.フェイク
2.トップ・オブ・ザ・ワールド
3.シャム・ペイン
4.ブルー・オン・ブラック
5.ファイア・イン・ザ・ホール
6.アイ・リフューズ
7.イット・ダズント・マター
8.ホエン・ザ・シーズンズ・チェンジ
9.スタック・イン・マイ・ウェイズ
10.ロック・ボトム
11.ゴーン・アウェイ
12.ブラッディ
13.ウィル・ザ・サン・エヴァー・ライズ
初回限定盤CD
1.トラブル(ボーナストラック)
2.フェイク
3.トップ・オブ・ザ・ワールド
4.シャム・ペイン
5.ブルー・オン・ブラック
6.ファイア・イン・ザ・ホール
7.アイ・リフューズ
8.イット・ダズント・マター
9.ホエン・ザ・シーズンズ・チェンジ
10.スタック・イン・マイ・ウェイズ
11.ロック・ボトム
12.ゴーン・アウェイ
13.ブラッディ
14.ウィル・ザ・サン・エヴァー・ライズ
15.バッド・シード(ボーナストラック)
16.セイヴ・ユア・ブレス(ボーナストラック)
【メンバー】
アイヴァン・ムーディ(ヴォーカル)
ジェイソン・フック(ギター)
クリス・ケール(ベース)
ゾルタン・バソリー(ギター)
ジェレミー・スペンサー(ドラムス)
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ『ア・ディケイド・オブ・デストラクション』
【通常盤CD】GQCS-90475 ¥2,300+税
◆ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ・レーベルページ
この記事の関連情報
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ、故DMXをフィーチャーした楽曲をリリース
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ、I・ムーディがまだ完治せず、ヨーロッパ全公演を中止
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ、アイヴァンの術後合併症によりさらなる公演中止
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチのアイヴァン、3箇所でヘルニアを発症
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ、ヘルニアの治療でライブ出演キャンセル
全米アルバム・チャート、バッド・バニーが9週目の1位で『ミラベルと魔法だらけの家』に並ぶ
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチのC・ケール「ヘイト・コメント残すなら、独自のものに」
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチのアイヴァン、公演中にレーザー光線で目を負傷
ファイヴ・フィンガー・デス・パンチ、ニュー・アルバムのタイトル・ソングを公開