【インタビュー】カンニバル・コープス「俺たちは初めからデス・メタルだった」
30年間デス・メタル・シーンを牽引し続けてきたカンニバル・コープスの14枚目となるアルバム『レッド・ビフォー・ブラック』が、ここ日本でも発売となる。当『レッド・ビフォー・ブラック』も、当然“デス・メタル”としか形容しようがない血まみれの作品だ。
◆カンニバル・コープス映像&画像
今回リリースされる日本盤には『ブラッド・カヴァード』と題されたカヴァー集が付属している。MetallicaやAcceptといったビッグ・ネームをはじめ、Kreator、Possessed、Sacrifice、Razor、そしてThe Accusedというカンニバル・コープスが影響を受けたバンドが採り上げられ、ときにオリジナルに忠実に、ときにカンニバル流に料理されているのが実に面白い。デス・メタルを聴きたければ、何はともあれカンニバル・コープスだ。
──ニュー・アルバム『レッド・ビフォー・ブラック』がリリースになりましたが、このアルバムを過去の作品と比べると、どのような点が異なっていると思いますか?
アレックス・ウェブスター:今回俺が提供した曲は、どれも速い。他のメンバーの書いた曲もだけど、今回の作品はとてもオールド・スクールな仕上がりになっていると思う。何と言うか、ロウでプリミティヴとまでは言わないけれど、俺たちの過去の作品と比べるとそれほどテクニカルではなく、アレンジメントもストレートだ。ドゥームという意味では、ロブ(バーレット)の書いた「コード・オブ・ザ・スラッシャーズ」のオープニングはスローではあるけど、実際のアルバムはミッド・テンポや速い曲が中心だよ。
──今回のタイトル『レッド・ビフォー・ブラック』というのは、過去のアルバム、例えば『Kill』や『Torture』などと比べると、ずいぶんと抽象的なものですよね。このタイトルを選んだのは何故ですか?
アレックス・ウェブスター:これはポール(マズルケビッチ)が書いた曲のタイトルから採ったんだ。なのでポールに聞いてもらった方が良いとは思うのだけど、ポールからこのタイトルを聞かされたときは、確かに今までとは違って露骨にゴアではないし、歌詞を読むまでは正確な意味もわからないものだと思った。過去にはあまりに露骨だったり、非常に説明的なタイトルをアルバムにつけてきたけれども、今回はリスナーに「これはどういう意味なんだろう」と考えさせるというのも面白いと思った。これが何を意味するのかを知るには、歌詞を読まなくてはいけないだろ?
──レッドが血でブラックが死なのですよね。
アレックス・ウェブスター:そう。これは歌詞を読んでもらえばすぐわかるとおりシンプルで、決して難しいミステリーじゃない。『Butchered at Birth』と同じくらいシンプルさ。あのアルバムでは、2体のゾンビが赤ん坊を切り刻んでるだろ?今回はそこまでは露骨ではないけれども、アルバムのジャケットでは自分自身が襲われているところが描かれている。誰かが襲われている場面ではなくて、自分自身が被害者という構図だ。意識を失ってすべてが真っ黒になる前に、飛び散る自分自身の赤い血を見る、というアイディアだよ。
──歌詞も、決闘から暴君/ホラー映画的な内容までずいぶんとバラエティに富んでいますが、歌詞を書くにあたってのポリシーなどはありますか?
アレックス・ウェブスター:唯一のポリシーは、歌詞は音楽にふさわしいものであるべきということ。俺たちの音楽はダークでアグレッシブだから、当然歌詞もダークでアグレッシブでなくてはいけない。基本的にはホラーに関するトピック、切り裂き魔的なバイオレンスがカンニバル・コープスにふさわしいものだと思う。30年にわたり色々な内容を歌ってきたから、いつでも連続殺人鬼やゾンビについて歌っているわけじゃなけど…ね。例えば今回のオープニング・トラックは、2人のイーヴルな男が死ぬまで決闘するという内容なんだ。これは連続殺人鬼やゾンビは出てこないけれど、とてもバイオレントだよ。ダークでアグレッシブならカンニバル・コープスにはぴったりくる。
──1対1の決闘についてというのも非常に珍しい歌詞内容ですよね。こういうものは、どこからインスピレーションを受けて書くのですか?
アレックス・ウェブスター:はっきり覚えていないけれど、何か良い曲のタイトルはないかって色々考えていたんだ。「One of Us Will Die」とか「Only One Will Die」とか、車を運転しながらね。この歌詞の中では、一方的な被害者というのは出てこない。2人の男が、お互いを殺してやろうとしている。2人が同じことを考えているんだ。これまで被害者についてとか、ゾンビが襲ってくるなんていう歌詞は色々書いたけれども、この曲では良いやつが出てこないというのが面白いと思って(笑)。
──今回再びエリック・ルータンをプロデューサーに起用していますが、前作を担当したマーク・ルイスでなくエリックを選択した理由は?
アレックス・ウェブスター:バンドみんなで決めたんだ。過去にエリックとやったときも、とても楽しかったし、彼のスタジオはわりとタンパから近いんだ。だからスタジオに行って作業して帰ってきて寝るみたいなことが簡単にできる。マークのスタジオはオーランドにあるから、車で2時間くらいかかるんだ。12時間スタジオで作業したあとに、2時間運転するというのは少々キツい。となるとレコーディング中2週間ずっとホテルに滞在ということになってしまう。こういったことをすべて勘案した結果、今回はエリックと一緒にやることにしたんだ。彼が過去に手掛けた3作も、とても気に入っているし、彼はとても仲の良い友人でもある。彼のスタジオも素晴らしいしね。もちろんマークは前作『A Skeletal Domain』で素晴らしい仕事をしてくれたし、将来的にまた彼とやることもあるだろうと思うよ。マークとエリックの音作りの仕方は全然違うんだけど、どちらもカンニバル・コープスには合っていると思うし。
──カンニバル・コープスを結成したときは、スラッシュ・メタルではなく、明確にデス・メタルをやるバンドだという意識があったのでしょうか。
アレックス・ウェブスター:そういう意識だった。当時はまだ“デス・メタルの定義”というのは100%クリアではなかったけれどね。例えばSepulturaの『Morbid Visions』やDeathの『Scream Bloody Gore』のことをデス・メタルと呼ぶ人は多いだろう?俺には、これらのレコードは、例えばKreatorの『Pleasure to Kill』やSodomの『Obsessed by Cruelty』と多くの共通点があると思うんだ。だから、『Pleasure to Kill』や『Obsessed by Cruelty』のようなスラッシュ・メタルをプレイすれば、結局それは『Scream Bloody Gore』や『Morbid Visions』のような最初期のデス・メタルととても近いものになるということだよ。俺たちは、ベイエリアのスラッシュを聴くのは好きだったけれども、ああいうタイプのスラッシュをプレイしようとは思っていなかった。そういう意味で、俺たちがやろうとしていたのははじめからデス・メタルであったと思う。もちろん“デス・メタル”という言葉が意味するものを、当時100%理解していたわけではないし、今でもその定義というのは人によって違うよね。例えば若いファンが「『Morbid Visions』はスラッシュだ」なんて言っているのを聞くと、「いやいやあれはデス・メタルだろ」と思うこともある。しかし定義というのは時とともに変わっていくものだ。カンニバル・コープスを結成する1か月くらい前に、ジャックがテープトレードでMorbid Angelの『Thy Kingdom Come』のデモを入手したことを覚えているよ。あれには本当にぶっ飛んだ。俺のメタル人生の中で、何度かぶっ飛んだ瞬間というのがあったけれど、あのデモを聴いた瞬間も、まさにその中のひとつだった。さっき『Ride the Lightning』の話をしたけれど、あのときと同じ感じだった。あのデモは、カンニバル・コープス結成当時、特に俺やジャックに非常に大きな影響を与えたな。
──今回リリースになる日本盤では、『ブラッド・カヴァード』もカップリングされています。色々なバンドのカバーが収録されていますが、その中でやはり、そのThe Accusedだけが異色ですよね。PossessedやKreator、Sacrifice、Razorなどはカンニバル・コープスのルーツというのはわかりますが、The Accusedはずいぶんと毛色が違います。
アレックス・ウェブスター:確かにThe Accusedだけハードコアというか、クロスオーバーのスラッシュ・バンドだけど、彼らはカンニバル・コープスに影響を与え続けているんだ。さっき話したBeyond Deathもクロスオーバーっぽいサウンドだったけれど、カンニバル・コープスへと移行してからは、もっとスラッシュやデス・メタルのイーブルでダークな面に専念するようになった。だけどThe Accusedからは影響を受け続けたんだ。どういうわけかバンドのメンバーはみなThe Accusedが大好きで、オリジナル・メンバーだったボブ・ルーセイは特に彼らの大ファンだった。おそらく彼は曲作りでも大きく影響を受けていたと思う。The Accusedのオープニング・アクトをやったことがあるんだ。1989年に彼らがバッファローでプレイをしたときにね。最高だったよ。確かにデス・メタル・バンドとして彼らから影響を受けるというのは珍しいことかもしれないね。
──ハードコアやクロスオーバーも、カンニバル・コープスの音楽を構成する要素の一部ということでしょうか。それともThe Accusedだけが例外なのでしょうか。
アレックス・ウェブスター:The Accusedが例外と言える。俺たちはみんなああいうスタイルの音楽は好きだけれど、音楽的に影響を受けたという意味ではThe Accusedだけだよ。
──カバーするバンドというのは、どのように決めるのですか?やはりお気に入りのバンドをやるということでしょうか。
アレックス・ウェブスター:そうだね、気に入っているバンド、気に入ってる曲をカバーする。あとは俺たち流にアレンジしたときに、良い感じになりそうな曲だね。オリジナルに忠実にカバーをやるときもあるけれど。
──Possessedなんかは本物そっくりですよね。
アレックス・ウェブスター:そうなんだよ。あれのヴォーカルは本当にジョージ(コープスグラインダー・フィッシャー)なんだ。あの曲では誰が歌っているのかわからない人もいるみたいだけど、あれはジョージなのさ。ジョージはジェフ・ベセーラの最高のオマージュをやったと思うよ。『ブラッド・カヴァード』は、過去にすでにリリースされたものを集めたんだ。例えばRazorやThe Accused、Kreatorのカバーは、確かボックスセット用に録音した。あれはもう15年も前のことか。時が経つのは早いね。Acceptの「Demon's Night」はずっとカバーしたいと思っていた曲だったんだ。Acceptはトラディショナルなヘヴィ・メタル・バンドだけど、カンニバル・コープスのメンバー全員のお気に入りで、インスピレーションも受けている。カンニバル・コープスとAcceptのつながりにピンと来ない人もいるかもしれないし、確かに2つのバンドは違うタイプのメタルを演奏している。だけど、本格的なスラッシュ以前には、「Fast As a Shark」みたいな速い曲は聴いたことがなかったよ。あの曲を初めて聴いた時も、ミュージシャンである俺にとって重要な瞬間のひとつだ(笑)。そういう意味で、Acceptはスラッシュ・メタル・バンドではないけれど、カバーするべきバンドのひとつだと思ったんだ。「Demon's Night」は非常にダークな曲だから、ダウンチューンでやれば、ほとんどデス・メタルさ。デス・メタルと同じくディミニッシュ音程が多用されているしね。
──では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
アレックス・ウェブスター:まず最初に素晴らしいサポートにありがとうと言わせてほしい。ニュー・アルバムを気に入ってもらえるとうれしいな。それからぜひまた日本にいってプレイしたいと思っている。まだ具体的には決まっていないけれど、2019年初頭に行ければという話はしている。オーストラリアの話がまとまれば、そのまま日本にも行けると思うのだけど。日本でぜひプレイしたので、楽しみにしているよ。
取材・文:川嶋未来 / SIGH
カンニバル・コープス『レッド・ビフォー・ブラック』
【通常盤CD】GQCS-90566 ¥2,500+税
※日本語解説書封入/歌詞対訳付き
1.オンリー・ワン・ウィル・ダイ
2.レッド・ビフォー・ブラック
3.コード・オブ・ザ・スラッシャーズ
4.シェディング・マイ・ヒューマン・スキン
5.リマインド
6.ファイアーストーム・ヴェンジェンス
7.ヘッズ・シャヴェルド・オフ
8.コーパス・デリクティ
9.スカヴェンジャー・コンスーミング・デス
10.イン・ザ・ミドスト・オブ・ルーイン
11.デストロイド・ウィズアウト・ア・トレース
12.ヒディアス・イコル
ボーナスCD
1.サクリファイス [サクリファイス カヴァー]
2.コンフェッションズ [ポゼスト カヴァー]
3.ノー・リモース [メタリカ カヴァー]
4.デーモンズ・ナイト [アクセプト カヴァー]
5.ベサニー・ホーム(ア・プレイス・トゥ・ダイ)[アキューズド カヴァー]
6.エンドレス・ペイン [クリエイター カヴァー]
7.ビハインド・バーズ [レイザー カヴァー]
【メンバー】
ジョージ・コープスグラインダー・フィッシャー(ヴォーカル)
パット・オブライエン(ギター)
ロブ・バーレット(ギター)
アレックス・ウェブスター(ベース)
ポール・マズルケビッチ(ドラムス)
◆カンニバル・コープス『レッド・ビフォー・ブラック』レーベルオフィシャルページ