【インタビュー】ハーレム・スキャーレム「突き詰めれば、良い楽曲を書けばいい」
通算14枚目となるアルバム『United』をひっさげハーレム・スキャーレムが、クラブ・チッタの30周年記念とともに彼らのキャリア30周年も祝う、特別な2日間の来日公演を開催した。
◆ハーレム・スキャーレム映像&画像
カナダ出身のメロディアスな旋律を持つバンドとして人気を博したハーレム・スキャレムは、1993年のセカンドアルバム『Mood Swings』で日本デビューを果たし、低迷していた日本のハードロックシーンで大きな脚光を浴びたハードロック・バンドだ。その後コンスタントに11枚のアルバムをリリースするものの、2008年に解散してしまう。…が、それから5年の年月を経て、2013年にイギリスのフェスティバルで念願の再結成を実現してくれた。
その後も活動継続を表明し、大ヒットアルバム『Mood Swings』の再現ツアーを遂行した以降、ヨーロッパや日本でも再び活発な活動を続けている。今回は来日公演のタイミングで、バンドの中心人物であるハリー・ヘス(Vo、G、Key)とピート・レスペランス(G)のふたりがインタビューに応じてくれた。
──2年半ぶりの来日公演ですが、昨夜の初日はいかがでしたか?
ピート・レスペランス:本当に楽しかった。今回に限らず日本のお客さんはいつも素晴らしくてこのクラブチッタの会場もとても好きなんだ。
ハリー・ヘス:今回はハーレム・スキャレム史上、最も長いセットリストを組んできた。ファンの為に2日で日替りで特別に組んだセットリストなんだ。
──昨夜は初来日公演の再現Dayとのことでしたが、実際はグレイテスト・ヒッツでしたね。
ハリー・ヘス:1995年の初来日を記念する公演という意味合いもあり、今ではあまり演っていない古い曲も聴いて欲しい思いがあって選曲したんだ。だからといって「Honestly」のようなヒット曲を外すわけにもいかない。絶対にファンは聴きたいだろうと思ったからね。初来日時の曲とファンが望む曲をいかに上手く混ぜてみんなをハッピーにできるかを、かなり考えたんだ。結果的に長いセットリストになったのも、選べないから全部演っちゃえという感じかもね(笑)
──初来日時にリリースされていた最新アルバムは『Voice of Reason』でしたが、当時の日本ではあまり評価されませんでしたね。
ハリー・ヘス:うん、確かにそうだった。
ピート・レスペランス:僕たちの期待以上にね(笑)。
ハリー・ヘス:つまり日本のファンには受けなかったって事だよね。だからこそ1995年の初来日公演をそのまま再現するのはいかがなものか?と思ったんだよ。ライブで演るからにはファンに喜んでもらいたいんだ。初来日公演を再現したら『Voice of Reason』からの曲が多くなってしまうよ。このアルバムはダークでミドルテンポとスローテンポの曲が多いんだ。ライブでのお客さんの反応を見ると、バラードも良いけど明らかにアップテンポの曲が盛り上がるからね。
──ヘヴィでダークな音楽も好きですか?
ハリー・ヘス:色々な音楽が好きで30年音楽をやってきた。ポップもバラードもヘヴィなグランジもその時その時に自分が好きなものをやってきたよ。だから『Voice of Reason』もそうだった。
──新作『United』は、更に攻めたアグレッシブな作品になっていますね。
ピート・レスペランス:アルバムもたくさん作ってきたので、ファンの好みもわかってきたし『Mood Swings』がダントツに受けた事ももちろんわかっているし、『Voice of Reason』とか『Rubber』がイマイチだったこともわかっている。そういう経験を経て、ファンが求めるものと自分たちが好きなものを上手く組み合わせる術を学んできたよ。前作『Thirteen』と今作『United』は上手くできたんじゃないかな。
──日本ではSHM-CDでリリースされている事もあり、音質が毎回向上しているように感じます。プロデュースも質が上がっていますか?
ハリー・ヘス:そうだね、ここ3年の間にサウンド面での向上も見られたと思うよ。機材にもこだわっていて、僕が最高級と思うSSLのアナログ・コンソールとか、ミキシングもDSDレコーダーを使い高ビットレートのハイクオリティなサウンドが作れた。それでハイレゾ音源も出せたんだ。音質面にはとてもこだわっているよ。
──他に何か新しい試みはありましたか?
ピート・レスペランス:いくつか新しい楽器を取り入れた。『United』の最初の部分では、東インド風の音が欲しくてドブロを使った。やっぱり毎回少しでもちょっと違うものをファンに提供したいから、従来のハーレムらしさは保ちつつも新しい要素は採り入れているよ。
ハリー・ヘス:新しい要素を採り入れつつファンが望むものを作るにはどうすれば良いか…よく話し合うんだけど、その答えはなかなか出せないね。でも突き詰めれば、結局は良い楽曲を書けばいいんじゃないかと思う。みんなが気に入ってくれる曲を書いてさえいれば、機材とかはその後の添え物的なものさ。根本は曲だよね。
──ピートのギターもテクニカルですが、いつも歌を聴かせる事に重点に置いたプレイですよね。
ピート・レスペランス:そうだね、ハリーの言う通り良い楽曲が大前提だから、それができなくてはレコーディングする価値もない。僕の役割は良いソロを弾く事ではあるけど、最近の曲作りとしてはハリーがサビを書いて、そこを中心にいかに生かして形にできるかを考えている。メロディーを大切にして曲に合ったプレイを心がけているよ。
──ライブでのサビ部分はハリーとダレン(ダレン・スミス/ Vo、Dr)でCDと違うアプローチもありますね。
ハリー・ヘス:何をどう変えるかは曲によるけど、サビの部分はボーカルの嵐的なところがハーレムの特徴だからね。ライブでは自分がどこを歌うのが一番やりやすいかを考えて、僕はここ、ダレンはここ…と自然に決まっていくよ。
──今回のライブでもそうですが、「Sinking Ship」のMVではダレンがドラム復活してるのも面白いですね。
ハリー・ヘス:ビデオはみんな当てぶりだから(笑)。
ピート・レスペランス:一見すると、この関係って変に見えるかもしれないけど、もはやバンドというよりファミリーなんだよね。アルバムではクレイトン(クレイトン・ドーン/Dr)がプレイしているけど、彼はスタジオミュージシャンとして最高で、バンドが彼をクビにしようと思った事は一度もないし、彼からも辞めたいと言われた事はない。ただ、ライブになるとダレンはショウマンでしょ?歌もドラムも上手いしね。そもそもダレンがバンドに復活したのは『Mood Swings』の完全再現ツアーだったから、そこでダレンがドラムを叩くのは意味があったし自然の流れだった。それからはライブではダレンが叩く形になったわけ。クレイトンはツアーにはあまり出たがらないけど、スタジオではピカイチなんだ。
──日本のファンへメッセージをいただけますか?
ハリー・ヘス:ツアーはヨーロッパも終わって日本が最後なんだ。最高の形で締めくくるよ、30年このバンドについて来てくれて本当にありがとう。フィリピンとか他のアジアも初めて行ってみたけど、お世辞抜きに日本が最高だよ。この後はまた曲作りを始めるつもりだ。
ピート・レスペランス:何度も来ているから知り合いも多くて、とてもアットホームで日本は大好き。日本で受けるフィードバックがまた僕らの刺激になるから、とてもありがたいよ。
取材・文・Sweeet Rock / Aki
写真・Yuki Kuroyanagi
<Harem Scarem ~Japan Tour 2018~>
2018.1.26 CLUB CITTA'
1.United
2.Here Today Gone Tomorrow
3.Hard to Love
4.Warming a Frozen Rose
5.Sentimental Blvd.
6.Bite the Bullet
7.If There was a Time
8.Voice of Reason
9.Slowly Shipping Away
10.Paint Thins
11.Beleive
12.Honestly
13.Change Comes Around
14.Mandy
15.Die off Hard
16.Garden of Eden
17.Distant Memory
18.No Justice
~Encore1~
19.Shinking Ship
~Encore2~
20.Something to Say
21.No Regrets
2018.1.27 CLUB CITTA'
1.United
2.Here Today Gone Tomorrow
3.Hard to Love
4.Warming a Frozen Rose
5.Stranger Than Love
6.Sentimental Blvd.
7.Bite the Bullet
8.If There was a Time
9.Beleive
10.Slowly Shipping Away
11.Paint Thins
12.Honestly
13.Change Comes Around
14.Mandy
15.Die off Hard
16.Garden of Eden
17.Distant Memory
18.Weight off the World
19.No Justice
~Encore1~
20.Shinking Ship
~Encore2~
21.Something to Say
22.No Regrets