【ライブレポート】Linked Horizon、5年ぶりの横アリで総員「心臓を捧げよ!」

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▲Photo:阿部薫

Linked Horizon(以下、LH)によるコンサート公演<Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演>が1月13日、14日の2日間、横浜アリーナにて開催された。13日公演のレポートをお届けする。

◆Linked Horizon ライブ画像

アニメ『進撃の巨人』の世界観に寄り添った最新アルバム『進撃の軌跡』をひっさげ、昨年7月から海外公演も含め、自身史上最大の全国ツアーを行なったLH。今回の凱旋公演はツアーに区切りを付けた後の、LH全体を振り返ったお祭り的な立ち位置での公演だ。LHが横浜アリーナで公演を行なうのは2012年の<Revo Linked BRAVELY DEFAULT Concert>以来5年ぶりとなる。

これまでのツアーには無かった、今回の凱旋公演で初めて登場したギミックも多数ある。開演前からステージを隠すように立ちはだかった巨大なウォールもその一つだ。観客が開演前のアナウンスに耳を傾けていると、コンサート開演を告げるようにウォールが左右へと割れ開き、LH主宰・Revoが多数の鎖地平団メンバーを率いての「二ヶ月後の君へ」でコンサートは幕を明けた。

「よう、5年ぶりだな横浜アリーナ。今日はお前をジャックしに来たぜ」というRevoの声に湧く観客。コンサートはほぼアルバム『進撃の軌跡』のトラック順同様、『進撃の巨人』のタイムラインに添って様々な登場人物たちにクローズアップしていく。長いツアーを走破してきた参加メンバーたちの研ぎ澄まされたパフォーマンスに加え、アリーナの質量が生み出す壮大なスケール感も凱旋公演ならではの特筆すべきポイントだろう。「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」で歌姫・柳麻美の伸びやかな歌声が隅々まで響き渡ったとき、早くもこの会場で『進撃』の世界に触れられる凱旋公演の贅沢さに気がついた。かと思えば続く楽曲はアニメの第一クール/前期OPを飾った「紅蓮の弓矢」を、クワイア隊の荘厳なコーラスを加えて実現。ダンサーもツアー時の4人から6人へと増え、ギター・ベース陣のパートも攻めたサウンドでボルテージの急上昇ぶりが激しい。

『進撃の巨人』の映像をふんだんに取り入れた演出をベースに、「14文字の伝言」では松本英子の母性愛を感じさせる優しい歌声に包まれる。「最期の戦果」では月香による凛々しい歌声に焦燥感を煽る楽器隊のサウンドが分厚く重なり、物悲しい締めの旋律に『進撃の巨人』の登場人物・リヴァイの呟きが重なった。

「広いね横浜アリーナ。いや、Linked Horizonアリーナ」というRevoの声に嬉しそうに反応する観客席の鎖地平団メンバーたち。ここでRevoのリードを受けて観客席の人々も『進撃』内に登場するウォール教の信者さながら一連なりに繋がって祈りのポーズをとる。クワイア隊、バンドメンバー、弦一徹ストリングス、そしてダンサーもステージ上に整列し、M7「神の御業」では最新アルバム『進撃の軌跡』に出演した歌姫たち5人を含め、全ての参加者が一つになっての賛美歌が歌い上げられた。

▲Photo:江隈麗志

そしてここからは「僕もギターを弾いてみたいと思います」とRevoが翼モチーフのフライングV“Flying Freiheit”を手に取り、「『進撃の巨人』の調査兵団の応援歌のつもりで作ったんですが、こうしてライブでやる今、皆さんへの応援歌として、皆さんの未来の栄光を歌う曲として歌いたいと思います」と語る「自由の翼」へ。凱旋に相応しいイントロから転調し、怒涛のサウンドで鼓舞してくる展開にはわかっていてもカッコ良さに唸らされた。

ダンサーがしなやかにその身体で翼を表現し、ストリングス隊の弦色とMANAMIの歌声が切なさを掻き立てる「双翼のヒカリ」では、パフォーマンス中に用いられる『進撃の巨人』からの映像で楽曲の最後に流れる“とある音”のシーンが明らかになる。アルバムがリリースされた時点で洞察力を働かせれば「この音はこのシーンの表現かもしれない」と辿り着ける解釈の一つだが、こういった細かいギミックの補完ができるのもコンサートまで足を運んだ人間の醍醐味だ。

そんな、余すところなく詰め込まれた情報と音楽に酔いしれているうちに本編は終盤へ。「彼女は冷たい棺の中で」で福永実咲が力強いパフォーマンスを見せ、本編ラストとなる「心臓を捧げよ!」ではRevoだけでなく会場の全員が合唱。拳を胸に当てて心臓を捧げ、曲後には溢れる喝采でアリーナを満たした。

ウォールが閉じて「完」の文字が映しだされると、観客からは「え~?!」という声が。閉じたウォールに向けて観客がアンコールの声を上げると、ここからは凱旋公演ならではの“第二壁”こと第二部へと突入する。13日にはLHの前作アルバム『ルクセンダルク大紀行』にヴォーカル参加したmao、Daisy×Daisy(MiKA)、小湊美和の三人がゲスト・シンガーとして参加した。(14日にはCeui、RIKKI、Joelleの三人が参加)

歌姫が8人になり、ダンサーたちが華麗なステップで舞う中での「Theme of the Linked Horizon」は壮観だった。ゲスト・シンガー達の衣装はそれぞれ鎖地平団テイストでアレンジされている。いずれもオリジナルキャストでの「君は僕の希望 [Vocalized Version]」、「雛鳥 [Vocalized Version]」「純愛♥♡十字砲火 [Long Version]」も5年の時を経て再び横アリで披露されたことを踏まえると感慨深い。楽器隊が猛威を振るった「彼の者の名は」から、荘厳なSound Horizon曲「神話 -Μυθος-」には会場から悲鳴に近い歓声があがった。さらに「光と闇の童話」ではRevoボーカルでのダークメルヘンなロックナンバーでうっかり別の世界線へ入り込みそうになる痛快なパフォーマンスが繰り広げられる。

コンサートの締めくくりを飾ったのは、これまでのツアーでも最後を飾ってきた「青春は花火のように」。『進撃の軌跡』初回限定盤収録曲にして最もお祭り感の高いこのナンバーに、LHのメンバーたちも観客も弾けるように跳ね回る。ダンサーたちの持つブレード(ビジュアルポイ)もここでは横浜のランドマークである大観覧車コスモクロック21さながらの花火アートへと変化し、花道に立つRevoと共に大輪の花を咲かせていた。

最後の挨拶の場でツアーからここまでの道のりを振り返り、「一人胸を熱くしておりました」と語ったRevo団長。80人近くにのぼる公演メンバーたちへの敬意と気遣いを絶やさず、無事横浜アリーナでの凱旋公演までを駆け抜けた。

「皆さんに凄い元気をもらったなと思っています。楽曲の中で“ここは頑張って届けたい”と自分との戦いになっているときでも、絶対にその先には君たちがいるんですよ。当たり前だよね。だけど、誰のためにパフォーマンスをやっているのか、誰に対して届けたいと思っているのか、普段CDを作っているだけだとわからない。見えない時だって一生懸命もがいてるんだけど、今この場に届けてる君たちの顔があるんです。明確に。だから君たちがリアクションしてる時の、喜んでる時のその顔がちゃんとエネルギーとして届いているんだよ。そのことはしっかり言っておきたい。ありがとうございます」──Revo

「また会えると信じて、この号令をかけます。心臓を捧げよ!」とRevoが号令をかけステージを去ったあと、残された団員たちは「心臓を捧げよ!」を斉唱。声を通して同じ場に居合わせた仲間達の熱量を感じ合い、公演メンバー達に想いを返す形でコンサートは終演した。

Linked Horizonというプロジェクトは、音楽担当をする作品が新たに決まるたびに、通常では考えられないほどの膨大なエネルギーを投じて世界観を構築してきた。この先もおそらく成長していくであろうという予感はひしひし感じられる。次の活躍の場は、どこになるのか。『進撃の軌跡』から始まった一連のツアーが大団円を迎えようとしている安堵とともに、この熱量の向かう先がなお気にかかる凱旋公演だった。

▲Photo:佐藤祐介

セットリスト<Live Tour『進撃の軌跡』総員集結 凱旋公演>

2018年1月13日公演 横浜アリーナ

【第一壁】
M1 二ヶ月後の君へ
M2 もしこの壁の中が一軒の家だとしたら
M3 紅蓮の弓矢
M4 14文字の伝言
M5 紅蓮の座標
M6 最期の戦果
M7 神の御業
M8 自由の翼
M9 双翼のヒカリ
M10 自由の代償
M11 彼女は冷たい棺の中で
M12 心臓を捧げよ!

【第二壁】
M13 Theme of the Linked Horizon
M14 君は僕の希望 [Vocalized Version]
M15 〈ハジマリ〉のクロニクル
M16 雛鳥 [Vocalized Version]
M17 澪音の世界
M18 純愛♥♡十字砲火 [Long Version]
M19 彼の者の名は
M20 神話 -Μυθος-
M21 光と闇の童話
M22 青春は花火のように

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