【ライブレポート】布袋寅泰、彼が日本のロック・シーンにおいて必要な理由
卓越した演奏家であり、優れた作曲家でもあるアーティストは稀な存在だ。素晴らしい表現力を持ったプレイヤーが、自身のソロ・アルバムになった途端、その魅力を半減させてしまうということは往々にしてあるが、布袋寅泰はその両方を持っている。そんなことを改めて感じたのが、彼の最新作『Paradox』に伴うツアー<HOTEI Live In Japan 2017 〜Paradox Tour〜>の最終公演だった。
「Rock’n Roll Circus」と名付けられ、12月25日(月)に横浜アリーナで開催された本公演。今回のツアー・メンバーは、ザ・ルースターズのベーシスト井上富雄、デヴィッド・ボウイ・バンドのドラムを務めていたザッカリー・アルフォード、ソウル・フラワー・ユニオンのキーボーディスト奧野真哉、サイドギターには布袋が認めたギタリスト黒田晃年、プログラミングには岸利至らによる今回のバンドでしか出せない最高の音を作り上げ、「BAD FEELING」で聴けるファンクなギター・カッティングを筆頭に、卓越したギタリストとしての魅力を十二分に発揮していた。
そして、最新作『Paradox』で布袋が提示したアダルトな雰囲気と社会性をもった世界観、それこそが今回のライブの魅力でもあった。現在活動の拠点とするロンドンで感じた難民問題、頻発するテロなど激動の渦中にある現代社会について、今布袋が作りたい音楽と伝えたいメッセージが存分に込められた今回のアルバム制作を経て、音楽の多様性を再確認したのかもしれない。
ストレートな言葉で社会情勢を語る「Pandemoniac Frustration」で見せた妖艶でダークなサウンドから「Blue Sky」のJazz要素を取り入れた楽曲まで、『Paradox』の幅広い音楽性をロックンロール・ショウとして提示していた。ちなみに布袋がMCでも語っていたが、<Rock’n Roll Circus>という名前はローリング・ストーンズの有名な映像作のタイトルにも使われている。ストーンズがブルースやR&Bなどロックに内包される多様性を表現したように、布袋も同じ方向性を目指したのもかもしれない。
そんな詮索はさておき、ライブでは「バンビーナ」「スリル」といったヒット曲を惜しみなく披露され、ギターでしっかりと主張をしながらも、多くの人に受け入れられるキャッチーなメロディー、そこにギター・ソロを封じ込める。これらの曲に大いに沸くオーディエンスの反応を観ながら、改めて布袋のギタリストとして、また作曲家としての類まれな才能を感じた。
また、本公演のために特別に演奏されたBOØWYの曲たちも、このライブのハイライトと言える。コブクロの小渕健太郎を迎え「わがままジュリエット」「OH MY JULLY Part I」などを披露。布袋自身、30年振りに演奏するBOØWYの曲もあり、そのサプライズにオーディエンスが熱狂するだけでなく、小渕自身「会場にいるみなさんと同じように、布袋さんに影響を受けた僕が同じステージに立つことができて嬉しい」と語った。
ちなみに「Rock’n Roll Circus」の模様は2月17日(土)にWOWOWにて放送される。このパフォーマンスを見れば、布袋寅泰が日本のロック・シーンにおいて必要とされる存在であることが痛感できるはずだ。その証拠として、横浜アリーナにはBOØWY時代のファンから若いファンまで、多くの世代のオーディエンスたちが、成功を得ても飽くなき探究心でロックンロールの追求し続ける男のステージに魅了されたのだから。
取材・文:伊藤大輔
写真:山本倫子
WOWOW番組情報
2月17日(土)夜8:00 [WOWOWライブ]
収録日/場所:2017年12月25日/神奈川 横浜アリーナ
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